社長室通信
Vol.58
9月29日(木曜日)、増田社長と日本郵政でDXを担当する飯田執行役(日本郵政株式会社 執行役・グループCDO・日本郵便株式会社 執行役員・株式会社JPデジタルCEO)・大角部長(日本郵政株式会社 DX推進部長・株式会社JPデジタルCOO)が、次のテーマで意見を交わしました。
- ≪テーマ≫
- ○日本郵政グループにおけるDXの現状と今後の展望
- ○働きやすい職場づくりにおけるリーダーのあり方
日本郵政グループにおけるDXの現状と今後の展望
- 2021年4月の着任当初、日本郵政グループでDXを推進するというのは、正直に言うと非常にハードルが高いと感じていた。そのような中、JPデジタル設立を早々に実現したことは、大きな意味がある。意欲ある若手社員を中心とした人材も確保でき、機動的に動けるようになった。
- 現在、グループ内外合わせて200人規模の組織になった。しかし、まだまだ人員の増強は必要。新たな取組みも増やしていきたいので、リソース確保は引き続き行いたい。
- サービスは段階的にリリースしていきたい。常にPDCAを回していき、早ければ3~6か月ごと更新・改善をするつもり。いわゆるアジャイル手法で、不断にサービスを磨いていく。
- みらいの郵便局が、お客さまの生活をよりよくするというのが至上命題であり、そのためにはID活用が不可欠。One IDをDX推進の柱としていきたい。
- 元々、事業やサービスごとにバラバラにIDを持っており「同じお客さまを別々に扱っているのではないか」という課題感があった。
- これまで事業ごとに持っていたさまざまな情報を紐づけるとともに、リアルとデジタルのデータをつなげ、あらたな価値提供につなげていきたい。
- IDと聞くと、無機質で事業者都合のように感じられるかもしれないが、そうではない。IDとは、お客さまをよく知り、よくつなぐためのもの。
- 登録情報を更新すると、全ての利用サービスの情報を一括で更新できるというのが、One IDの魅力のひとつ。たとえば、e転居というサービスがあるので、それを拡張できると良いと思っている。
- LINEで送れるスマートねんがも、来年に向けさらに磨きをかけていきたい。
- つまり、デジタル技術を活用して、よりスマートに、より親切にサービスを提供できるということ。
- 郵便局は、地域住民の拠り所のような存在。ゆくゆくは、グループ内のサービスに留まらず、自治体等の公共的なサービスを含めた親切なご案内ができるようになると良い。
- また、郵便局はすべての生活者と必ずどこかで接点がある。しかしそれらは、これまでは点でしかなかった。点と点をつなぐことで、より多くのお客さまと接することができるようになるだろう。
- One IDを、お客さまにとってどれだけ価値のあるものに仕上げ、メリットを提供できるかが重要。便利なものであれば、既存のお客さまにもすすんでIDを取得いただけるだろう。
- 本格的に活用できるようになるまで、世代交代を待つのでは遅すぎるので、新規登録や移行を後押ししてほしい。
ピックアップQ&A ① One IDへの挑戦
- 多様なサービスを一元的に利用できるようにするためには、情報利用のための同意取得が必要ですよね。その作業は相当地道なものになると予想されます。日本郵政グループが膨大なお客さま情報を持っているからこその、悩ましい問題です。
- お客さまへOne IDへの移行を促すためには、どういう方法があるのでしょう。
- One IDへの完全移行は、もちろん簡単なことではありません。旧ID体系を併存させる方法もありますが、私は思い切りが必要だと考えています。
- たとえば、転居のタイミングでOne IDへ移行いただいて、電気・ガス・水道などの公共サービスとつなぐことで、便利になると考えています。
- われわれが共通のIDを持つということには、社会的な意義があります。小手先のIDではなく、お客さまにとっての生活インフラのひとつとして捉えていただければと思います。
働きやすい職場づくりにおけるリーダーのあり方
- 前例踏襲型のカルチャーが強い組織の中で、新たな価値を生み出すことは容易ではない。そこで、JPデジタルの職場環境は、これまでの日本郵政グループにはないオフィス形態とした。これは、「失敗はつきもの。ここは安全な環境なので、恐れずに挑戦してほしい」という私からのメッセージ。失敗を恐れず挑戦するというマインドセットのためにも、環境は大事だと思う。
- 社員一人ひとりが、安心してやりたいことを試せる環境をつくるとともに、「失敗しても良い、思い切ってやって良い」と伝え、挑戦を促すことがリーダーとしての私の役目だと自負している。
- 今の組織風土では、失敗を恐れ、責任を考えて慎重にならざるを得ない。一方で私自身は、若いころからやりたいことをやらせてもらってきた。自身が管理職になってみて思うのは、やりたいことができるよう、部下たちを後押ししたいということ。部下には「報告さえしてくれれば、責任は私がとる。自分が思うようにやってほしい」と伝えている。
- 失敗すると経歴に傷がつくと考える人もいるが、私自身は、その傷は挑戦の証であり、本来は自慢できるような、価値あるものだと思う。
- 傷を負ったり、叩かれたりといったことは、それだけの立場を任せられ、そして何かに挑戦してきたことの裏返しとも言える。私自身も、部下に傷をつけないように何もさせないよりかは、適切な試練を与えた方が育つと思う。
- いまは多様な働き方もある。個々の事情等は尊重しつつも、それと「試練に挑ませる」こととは切り分けて考える必要があるだろう。努力し挑戦を続けていれば、必ずどこかで批判にさらされることはあるだろうが、だからこそ磨かれるものもある。
ピックアップQ&A ② 変革か、不変か
- お二人には、JPデジタルが最大のパワーを発揮できるように、引き続き努力していただきたいです。そして、出向等の人事交流を通じて、JPデジタルの文化が若手に伝わっていくと良いなと思います。
- 一方で、フロントラインがもつ文化はまた違ったものがあり、そちらも尊重すべきだと思っています。お客さまと接するなかで、変えられない・変えてはいけない規律もありますからね。
- 私が日本郵政グループに来て思ったのは、「優秀な人材が多いな」いうことです。良い意味で驚きましたし、「日本郵政グループの未来は明るい」と、率直に客観的に、そう感じました。これからも、挑戦を恐れず、日本郵政グループの将来を担う人材を育てていきたいと思います。
- また、日本郵政グループは社会インフラを担っている企業グループですので、守るべき良い文化は、しっかり守っていこうと思います。こうした伝統的な側面と、新たな価値を生むという面とは切り分けて考える必要があるでしょう。
意見交換会を振り返って
(増田社長)
- 日本郵政グループは膨大なデータを抱えているからこそ、One IDへの移行は、決して簡単なことではありません。飯田さんのこれまでの経験も活かして、ぜひとも乗り切っていただきたいです。
- また、JPデジタルという豊かな発想を出しやすい環境で生まれた成果が、お客さまだけでなく、全国津々浦々で働く社員の満足度向上にもつながるということを、うまく伝えていってほしいです。
- 飯田さん・大角さんには、できるだけ多く各社の関係者と話をしていただき、全員をDXという大きな変革へ巻き込んでいってほしいと思います。
今後も日本郵政グループ役員・社員と増田社長との意見交換会を定期的に行ってまいります。
開催模様については、随時発信していきますので、ご注目ください。