第三者意見

立教大学経営学部 教授 高岡 美佳 氏

高岡 美佳 氏
立教大学経営学部
教授・経済学博士

日本郵政グループは、2021年4月に創業150周年という節目の年を迎えました。トップメッセージにあるように、150年という時の流れの中で、時代は変われども、郵政事業は常に地域社会の発展を支えてきました。本レポートを読むことで、日本郵政グループが、事業活動を通じて新たな価値を生み出すことに取り組むとともに、環境配慮を含めた持続可能な社会の実現に貢献していることが理解できます。

今回のレポートで高く評価したいのは、次の3点です。

第1に、2021年5月に公表したグループ中期経営計画「JPビジョン2025」を策定・公開したことです。非常に意欲的な内容であり、経営の自由度確保と新ビジネスへの投資、ビジネスポートフォリオの転換、そして資本効率の向上などが描かれています。サステナビリティ関連では、ESG投資の推進のほか、2050年にカーボンニュートラルの実現を目指すことが明言されており、第一歩として2021-25年度にEV(電気自動車)の導入拡大等により温室効果ガスを削減し、2030年度に温室効果ガス排出量を2019年度比46%削減とする目標を掲げています。また、同ビジョンでは、ダイバーシティの推進の一環として女性管理者比率の向上とそのための取り組みも描かれています。中期経営計画の中にサステナビリティを位置づけることで実効性は飛躍的に高まることでしょう。日本郵政グループの持続可能な社会の実現に向けた真摯な取り組み姿勢を高く評価したいと思います。

第2に、サステナビリティ推進体制が整備されたことです。2021年1月に経営会議の諮問機関である「CSR委員会」を、経営企画部を担当する執行役を委員長とする「サステナビリティ委員会」に改組し、事務局として「サステナビリティ推進室」を設置しました。また、グループ全体でのサステナビリティ推進体制の強化を目的として、グループ各社の経営企画部を担当する執行役を委員とする「グループサステナビリティ連絡会」を開催するなど、グループ一体となってサステナビリティ経営を推進するための仕組みが整いました。

その他、これまでと同様に人事や環境に関する数値データを公開することに加えて、今回のレポートではガバナンスに関する情報開示が進捗した点も評価のポイントです。

最後になりますが、すでに日本郵政グループのサステナビリティ活動は高いレベルに達しています。今後は、つくり上げた素晴らしい枠組みの中で、より効果的に活動を行うための工夫をしてはいかがでしょうか。例えば、2019年4月に「日本郵政グループ人権方針」を制定し、その内容も含めて取引先に理解・協力いただくために国連グローバル・コンパクトに定める4分野10原則を順守した「日本郵政グループの調達活動に関する考え方」をレポートに掲載しましたので、次回は、取引先を対象とする「調達に関するアンケート調査」を実施してはいかがでしょうか。また、2030年および2050年の温室効果ガス排出目標は、SCOPE1(自社が直接排出する排出量)とSCOPE2(他社から供給された電力等の使用に伴う排出量)」を対象としており、SCOPE3(サプライチェーンや投資を通じた排出量)は含まないとの記載がありますが、今後、SBT認定に向けてSCOPE3の算出をすると思いますので、それを中期経営計画の2030年・2050年の排出量目標値に反映させることをご検討ください。

(2021年12月)

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