人権尊重・労働
人権尊重に関する取り組み
人権方針の策定
日本郵政グループでは、企業の人権尊重に関する社会的要請の高まりを踏まえ、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」などの考え方に基づき、2019年4月に「日本郵政グループ人権方針」を策定しています。
同方針によって、人権尊重の姿勢を示すとともに、人権デュー・ディリジェンスの枠組みを構築して人権への負の影響を特定し、社員一人ひとりの人権意識を醸成するべく、人権啓発活動を推進していきます。また、国連「子どもの権利とビジネス原則」を支持し、子どもの権利実現を推進していきます。人権啓発活動については、企業活動、ビジネス環境の変化等を踏まえ、グループサステナビリティ委員会おける審議を経て、定期的に見直してまいります。
グループ人権啓発推進体制

有識者ダイアログ
ビジネスと人権の重要性に鑑み、有識者からのアドバイスを踏まえ、取組の推進体制を整備し、基本的な考え方や方針をしっかりと持ったうえで、上層部が理解したサステナビリティ経営の重要性について社内浸透させるよう、取組の深堀を図っていくこととしています。
人権デュー・ディリジェンスの実施
日本郵政グループは事業活動によって影響を受ける人々の人権を尊重するため、以下の人権デュー・ディリジェンスプロセスを実施します。

なお、2022年度は、グループ持株会社である日本郵政株式会社の全社員を対象に「ビジネスと人権」に関する社内研修を、東京法務局の講師を招いて実施しております。
社員ひとりひとりが、企業活動では、従業員、消費者、取引先、株主・投資家、地域社会など、様々なステークホルダーと関わり合い、これら全ての人の人権に配慮する重要性について学んでおります。
目的 | 実施内容 | 対象者 |
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「ビジネスと人権」の理解促進 | 企業と人権の関わりについて | 日本郵政株式会社(グループ持株会社)(約1,000人) |
人権への影響評価
日本郵政グループは日本最大規模の社員数を抱え、日本全国で約24,000の郵便局を通じて郵便・物流事業・銀行業・生命保険業等、多岐に渡る事業を展開しております。各事業に関連して発生する潜在的・顕在的な人権に関するリスクの全体像を把握し、重点リスクの特定を行っております。
重点リスクの特定においては、法務省「ビジネスと人権に関する調査研究報告書(2021年3月)」、経団連「人権を尊重する経営のためのハンドブック(2021年12月)」等の様々なガイドライン、外部コンサルタントの知見、人権に関する意識調査を行った従業員アンケート等を参考にしております。
特定した重点リスクは以下のとおりです。
〈重点リスク〉
- パワーハラスメント・セクシャルハラスメント
- 過剰・不当な労働時間
- 賃金の不足・未払・生活賃金
〈参考:従業員アンケート(人権に関する意識調査)〉
質問:日本郵政グループが事業活動を行っていく中で、人権にかかる重点リスクとなる可能性が高い項目の上位3つ※を選択してください。
※法務省「ビジネスと人権に関する調査研究報告書(2021年3月)に記載がある25の人権リスクから選択
回答数:965名(回答率:約90%)

特定したリスクについては、今後モニタリング等を実施して管理していき、見直しを行ってまいります。
予防・是正措置
顕在的・潜在的な人権に関するリスクの負の影響に対する予防・是正措置の実施状況は以下の通りです。今後、人権への影響評価の実態に合わせ、各種活動の見直しや拡充を行います。
教育・研修の実施 |
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社内環境/制度の整備 |
※雇い入れについては、本人の応募に基づいた採用を行っているほか、雇入労働条件通知書を交付して事前に労働条件を明示し、退職については、従業員からの退職の申出日から14日を経過すれば退職となることを就業規則に明示するなど、退職の自由も保障し、意思に反する強制労働を防止しています。
※徹底した相談者保護を実施するとともに「ワンストップ相談・通報プラットフォーム」による相談の受付や、十分な調査スキルを持った担当者が調査に当たる態勢の構築を行っています。
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サプライチェーンの管理 |
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取組みのモニタリングの実施
人権に関するリスクについてのモニタリングは以下の通りです。今後、人権への影響評価の実態に合わせ、モニタリング項目や手法の見直しを行っていきます。
- 社員・職場環境の調査
- 人権・ハラスメントチェック(2回/年)
- 全ての事業所でのストレスチェック(1回/年)
- 事業所におけるヒヤリハット事例の募集による職場環境の改善
- 長時間労働是正の取組
部署別超勤時間数のチェック(月次)、事業所への勤務時間等モニタリング実施(随時)、ICカードチェックによる勤務時間管理(月次) - 疲労度チェックの実施(超勤月80時間超等の社員に対し)(毎月)
- メンタル不調発見プログラムの実施(超勤月80時間超等の社員、社外からの転入者等)(毎月)
- 労働組合との意見交換
- 労働組合とワークライフバランス等を議題とした分科会を開催(1~2回/年)
- 労働組合支部と超過勤務時間実績等について、2か月に1回意見交換
- サプライチェーンの管理
- サプライヤーCSR調達アンケートを実施(1回/年)
日本郵政グループでは、「グループの調達活動に関する考え方」に基づき、サプライヤーと共同で地球環境や地域社会に配慮した調達活動に取り組んでいます。
昨年に引き続き2022年に、サプライヤーのCSRに関する取り組みを把握し、継続的な向上に努めていくことを目的に「サプライヤーCSRアンケート」を実施しました。■調査の概要- 実施時期 2022年12月
- 対象サプライヤー数:209社
(内訳)
日本郵政株式会社:67社
日本郵便株式会社:49社
株式会社ゆうちょ銀行:43社
株式会社かんぽ生命保険:50社 - アンケート内容
国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンにて2017年に作成されたセルフ・アセスメント質問票(SAQ)を採用しました。
この質問票を採用した理由は以下の2点です。- 国連グローバルコンパクトの4分野10原則との整合性がとれている。
- 業界や業種を超えた統一書式を利用することで、サプライヤーの回答負荷を軽減できる。
今回の調査では、以下の9項目についてアンケートを実施し、各項目それぞれに小項目を設定し、「法律の認識」、「方針」、「体制・責任」、「取組み結果の確認」及び「是正」の状況を尋ね、取り組み状況を点数化しています。
<調査項目9項目(大項目)>
(1)CSRにかかわるコーポレートガバナンス、(2)人権、(3)労働、(4)環境、(5)公正な企業活動、(6)品質・安全性、(7)情報セキュリティ、(8)サプライチェーン、(9)地域社会との共生
■調査結果の共有サプライヤーCSRアンケートの結果については、回答を得たサプライヤー全社に対してフィードバックを行ないます。
調査結果により、課題が明らかになった場合、直ちに取引を停止・解除するのではなく、サプライヤーの皆様とともに課題の改善に取り組んでいきます。
- サプライヤーCSR調達アンケートを実施(1回/年)
救済措置
当グループでは、人権啓発活動及びハラスメント根絶に向けた活動として、各種研修を通じ意識の醸成を行うとともに、安心して相談できる「ワンストップ相談・通報プラットフォーム」等の相談態勢を構築し、コンプライアンス全般に係る社員の声の把握に努めています。
ハラスメント相談・申告に対しても、相談者の意向を踏まえ調査を実施し、ハラスメント認定を行っています。ハラスメント認定を行った事案については、グループ各社で定めている懲戒規程に基づき厳しく対処しています。併せて、内容に応じ、人事評価への反映や人事異動等の措置も実施しています。
日本郵政グループ | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
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ハラスメント件数(※1) | 118 | 134 | 88 | 108(※2) |
- ハラスメントに係る懲戒件数
- 全社員(約37万人)に対する発生率は、約0.03%
- (集計対象範囲) 日本郵政株式会社、日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険
労働に関する取り組み
環境変化に対応した人事諸制度の実現
日本郵政グループでは、事業環境の急激な変化を踏まえ、事業の将来像を見据えた労働力構成の見直しや同一労働同一賃金関連法令等への対応を行っています。また、社員の処遇についても、期間雇用社員から正社員への登用の継続実施、より一層の処遇改善や、シンプルでより納得性の高い給与制度の実現に向けた取り組みを行います。
労働時間削減の取り組み
日本郵政グループは、36協定等労働時間に関する法令を順守し、過度な労働時間を削減する方針を掲げています。この方針のもと、従業員一人ひとりが持てる能力を存分に発揮し、いきいきと働くために、各事業場における労働時間の適正管理に取り組むとともに、業務の効率化や職場風土改革による時間外労働削減に向けた各種取り組みを実施しています。
労働安全衛生法令の順守
日本郵政グループは、既存の事業運営において、労働安全衛生法令を順守し法令違反が起きないよう常時管理および確認を徹底しています。また、新会社の設立またはM&Aにおいても、労働安全衛生法を順守し法令違反が起きないような体制を構築しているか確認を行っています。
賃金水準の向上
日本郵政グループは、健康で文化的な最低限度の生活(日本国憲法第25条)がおくれるよう、労働法令を順守し、全ての従業員に対し、地域毎の最低賃金を上回る賃金を支払うことを厳守し、更に役職等職務内容に応じた適正な賃金を支払うことを基本方針としています。また、全ての地域の従業員とその家族がより豊かな生活がおくれるよう、毎年労使協議を実施し、給与・賞与・生活関連手当等賃金水準の改善を行っており、今後とも更なる改善に努めて参ります。
なお、日本郵政グループは、国際労働機関の第 100 号条約「同一価値の労働に対する男女労働者の同一報酬に関する権利」を支持しており、同一価値の労働において性別による差別なしに給与基準を定めています。
労働法令の順守
日本郵政グループは、既存の事業運営において、労働法令を順守し法令違反が起きないよう常時管理および確認を徹底しています。また、新会社の設立またはM&Aにおいても、労働法令を順守し法令違反が起きないような体制を構築しているか確認を行っています。
労使関係
日本郵政グループは、日本国憲法・労働組合法に則り、労働者の権利(団結する権利および団体交渉その他の団体行動をする権利)を尊重しています。
日本郵政グループでは、日本郵政グループ労働組合等の労働組合が組織されており、社員の賃金や労働時間を含めたさまざまな労働条件について、労使対等の立場で団体交渉を行っています。
※団体交渉協定の対象社員数(日本郵政・日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険):約34万人(4社全社員数のうち占める割合は約85%)(2023年3月末時点)