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- 日本郵政株式会社の社長等会見
- 2021年5月14日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容
2021年5月14日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容
- [会見者]
- 日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田 寬也
- 【社長】
- 日本郵政社長の増田でございます。本年度から5カ年をゴールとした日本郵政グループの新しい中期経営計画「JPビジョン2025」を公表いたします。昨年11月に中期経営計画の基本的考え方をお示しいたしました。その後、JP改革実行委員会の委員の方から大変有益なご指摘をいただき、また郵便局社員をはじめとするフロントラインの社員も含め、郵政グループ各社の社員の声にも積極的に耳を傾けてまいりました。
これらを基に日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の4社長をはじめとする経営陣で議論を重ねて、本日の発表に至ったものです。
最初のスライドでございます。当グループが2025年をゴールにどういう姿を目指すかということについて申し上げます。まずお客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を目指すということを表しております。
何よりも私どもの最大の強みは、日本全国の地域に根差した約2万4,000の郵便局ネットワークです。そこには日々働いている約40万人の社員がおり、そこでお客さまにご提供している商品・サービスまで含め考えると、当グループにしかない極めてユニークな資産と言えると思います。私たちはこれをプラットフォームとして、もう一度しっかりと捉え直そうと、このように考えております。
このプラットフォーム上へさまざまな企業や、地域コミュニティの参加を促していきたいと考えております。そして積極的にそれらの方々とコラボレーションをしていき、パートナーと共に新しい商品・サービスを創造することで、より便利、より安心、より快適、より豊かな生活を提供して、日本中のお客さまの生活と人生を支えたいと考えております。このような考え方を「共創プラットフォーム」と呼ぶこととしました。
この共創、「共に創る」という意味ですが、価値ある商品・サービスをパートナーと共に創り出す、コ・クリエーションするという意味です。お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を目指して事業を成長させ、社会になくてはならない存在であり続けること、これが当グループの中期的なゴールとなります。
次のスライドですが、いま申し上げました「共創プラットフォーム」を実現するための取り組み方針で、大きく二つあります。
一つ目は、DXの推進によるリアルとデジタルの融合ということです。強みであるリアルの郵便局ネットワークに、デジタル郵便局を掛け合わせます。そうすることで「共創プラットフォーム」全体の価値を高めると同時に、お客さまへ提供する価値も大きく進化させます。
二つ目は、ビジネスポートフォリオの転換です。郵便・物流、銀行業、そして生命保険業といった3分野でのコアビジネスの充実・強化に加えまして、不動産事業の拡大や新規ビジネスの推進といった新たな取り組みを積極的に行います。ユニバーサルサービスの充実と、それをてこにした事業の拡大でビジネスポートフォリオを転換させて、新たな成長を実現させます。
一方でこの構想の実現は当然のことながら決して簡単な道のりではございません。乗り越えるべき課題も多いと認識しております。ご承知のとおり、いま少子高齢化が急速に進んでいます。そして社会全体がデジタル化の進展という大きな社会変化をしております。そのような中、当グループはお客さまと地域を支える価値創造を使命としてまいります。
次のスライドですが、先ほどのスライドでは各社ごとそれぞれの課題を少し分析していますが、こちらはステークホルダーごとに分解したものです。まず日本中のお客さまに対し、人生100年時代の一生を支えるためにいかに良質なサービスが提供出来るかが課題となります。
日本全国の地域社会に対しては、過疎化、高齢化、デジタル格差の中で、地域の発展と活性化にいかに貢献出来るか、これが課題になります。そして約40万人の社員に対しては、より働きやすく、やりがいのある職場づくりが課題となります。当グループの一員であることの誇りを胸に、おもてなしの心で商品をつくり、サービスをお届けすることに磨きをかけなければならないと考えています。
お客さまと地域社会から必要とされ、選ばれ続けることが、結果として当グループの利益に結びつき、持続的な成長につながります。急速に変わる社会の中で、誰一人も取り残さない、こういう志が「共創プラットフォーム」実現の原動力になる。このように信じています。
次のスライドですが、このようなJPビジョン2025は私たちグループの信頼回復だけでなく、新たな成長に向けた取り組みであります。絵に描いた餅に終わらせるのではなくて、これは実行するためにつくったプランニングですので、さらに工程表をつくって施策ごとの進捗管理を行います。
そして、これに基づき私をはじめとした郵政グループ各社の経営陣が責任をもって計画を実行してまいります。また事業環境の変化というのは年々加速をしておりますので、5年間のプランニングですが、3年後を目途に計画の見直しを行うこと考えております。
次のスライドです。資本戦略について、このスライドで明らかにしています。これについては法律の規定に沿って日本郵政、つまり持株会社が保有している金融2社の株式の保有割合を下げてまいります。
この中期経営計画期間の2025年までのできる限り早期に、保有割合を50%以下とすることを目指します。現在はご承知のとおり50%以上ですので新規業務等を行う際は監督官庁の認可が必要となりますが、50%以下となることによって事前届出制に切り替わりますので、より商品ラインナップを豊富に出来るような形態への移行を目指していきます。
なお、本日、かんぽ生命が自己株式取得を取締役会で決議しており、当社もこれに応じるとともに、併せて株式処分信託を設定することにより、かんぽ生命の議決権保有割合を50%以下に引き下げることを取締役会で決議しました。当社のかんぽ生命に対する議決権保有割合は50%を下回るということになりますが、かんぽ生命が当社の連結子会社であることは、変わりございません。
そして将来的に金融2社株式を完全処分した後でも、郵便局ネットワークを核としたグループ一体の事業モデルは変わりません。ゆうちょ銀行、かんぽ生命は「共創プラットフォーム」の核となる最も重要なパートナーでございまして、お客さまと地域を支える商品・サービスの柱となり続けると考えております。
次のスライドですが、先ほどからDXによるリアルとデジタルの融合を申し上げてまいりました。この点について、さらにご説明をさせていただきます。
これまでリアルの郵便局ネットワークでは、社員によるおもてなしのサービスを目指してまいりました。日本中どこに行っても、お子さまからお年寄りの方まで均質なサービスをお届けすることが、お客さまの安心と信頼につながってまいりました。そこに新たに生まれるデジタル郵便局というものを掛け合わせると申し上げたのですが、このデジタル郵便局では当グループの提供しているサービスを24時間365日、いつでもどこででもお届けすることを目指しております。
同時にDXの推進ということを申し上げましたが、分散する膨大なお客さまデータを一元化して事業の革新につなげてまいります。例えばバックヤードの業務プロセスを改善する、それから郵便・物流オペレーションの革新、よりニーズをくみ取った商品・サービスの開発、お客さま接点での提案力の強化などが大きく変わる可能性がございます。
さらにリアルとデジタルが融合した「共創プラットフォーム」は、さまざまなパートナーが参画し、コラボレーションする場となります。従いまして将来的には、郵便局ブランドを通じてお客さまへ提供する商品・サービスは多様に広がるということです。コスト競争力、生産性、スピード、顧客ニーズの把握力を高めながら、同時にお客さま満足につながる多様で価値あるサービスをお届けする。当グループがお客さま本位のマーケティングを具体化するスタートラインとなります。
一方で、一昨年来の不祥事によって大きく毀損したお客さまからの信頼の回復に向けて愚直に全力で取り組むということは、これまでも申し上げているとおりです。信頼回復への取り組みと成長戦略への一歩は決して別々のものではないと認識しており、まさに両者は地続きと思っております。お客さまと地域から必要とされ、選ばれ続けるために、ともに必要な取り組みです。
お客さま本位のサービスをご提供するためには、当グループの組織風土の改革も大胆に取り組む必要があると思います。
この組織風土改革ですが、これは大きく二つあります。ガバナンス強化と人材育成・人事戦略の大きな二つで取り組んでまいります。ガバナンス強化については、持株会社である日本郵政の司令塔機能を強化してまいります。
具体的にはグループCxO制を導入する考えでして、財務・経理、IT、リスク管理、人事など、主要な機能について郵政グループ横串での調整・助言の役割を担ってもらい責任をもってもらうということです。またコンダクトリスクについては早期に探知して対応する体制を構築して、グループ一体でのリスク管理を徹底してまいります。
さらに日本郵政と日本郵便についてですが、こちらは一体経営を推進してまいります。すでに両社役員の兼務は、この4月1日の人事で行っております。本社の人事、採用もさらに今後も一体化していくことを考えております。
一方で支社への権限委譲や郵便局一体のマネジメント体制への見直しによって、お客さま接点に近いところで現場の対応力を強化してまいります。このように経営の意思決定スピードと現場の機動力、対応力を同時に高めるためのグループガバナンスの強化に取り組んでまいります。
そして組織風土改革のもう一つの柱ですが、人材育成・人事戦略について申し上げます。まず販売実績中心のこれまでの営業目標、人事評価の見直しを行います。またグループ内の交流人事の促進、外部の専門人材の採用、グループ内の多様な人材を発掘し育成する仕組みづくりを推進します。
さらにお客さまの声、社員の声が届きやすい組織に改革していきます。グループの組織内、そして組織の外との風通しを良くしてまいります。このようなことで職員が働きやすい職場づくり、働きがいのある仕事づくりに取り組んでまいります。このような組織風土改革には時間がかかると思っておりますが、しかし、こちらも大胆に構想して愚直に全力で取り組んでまいります。
次のスライドです。2025年度のグループ主要目標についてご説明をいたします。まず財務目標ですが、連結の当期純利益は5,100億円、親会社株主に帰属する連結当期純利益は2,800億円、ROEは4%程度であり、将来的にさらなる向上を目指してまいります。そして配当方針ですが、1株あたり50円の年間配当を安定的に実施してまいります。
なお、親会社株主に帰属する連結当期純利益は、持株比率で当然変わってまいりますので、資料中の「(注)」に、それに係る数字等、考え方を記載しております。
それから次にESG目標です。人生100年時代の一生を支え、日本全国の地域社会の発展・活性化に貢献する「共創プラットフォーム」を目指して、この分野で多様な取り組みを進めてまいります。例えば温室効果ガス排出量ですが、これについては対2019年度比で2030年度に46%の削減、そしてその20年後の2050年度にはカーボンニュートラルの実現を目指します。
ちなみに46%削減というのは、政府のほうで言っております46%と数字的にはダブっていますが、政府のほうは2013年度比で2030年度に46%ということです。一方、郵政グループは2019年度比で46%削減ということになっています。実績値が確定している直近の2019年度を起点に、パリ協定の1.5℃目標に基づき温室効果ガス排出量を削減していき、2050年にカーボンニュートラルを実現するというシナリオです。
従って政府の言っている46%とは基準となる年度が違っていますので、実は私どものほうがより厳しく、おそらく2013年度比にすると60%弱の数字になると思いますが、この実現を目指してしっかりと取り組んでいきたいと思います。
また本社における女性管理者比率については、2030年度30%を目標としてまいります。
グループ3社の主要目標については、資料に記載のとおりです。
次に、成長戦略を実現するための投資計画です。大きく三つの領域に重点投資をしてまいります。一つ目は戦略的なIT投資分野でして、5年間で総額4,300億円程度の投資をして、リアルとデジタルを融合させ、グループ一体でDXを推進するというものです。
この4,300億円の規模感ですが、これは2025年度までの5年間でのDXに係るもので、これまでと比較すると、2015年度から2020年度までの6年間は2,685億円であり、単年度ごとに割ると、平均448億円になります。一方、これからの5カ年では総額4,300億円ですから、単年度では平均860億円、すなわち従来のほぼ2倍の投資をしていくということです。IT投資全体はこの5カ年で既存のシステム更新等と維持等がございますので1兆4,000~5,000億円という大変膨大な金額になりますが、その中でDX投資が4,300億円ということになります。
次に、不動産投資です。この分野については総額5,000億円程度投資をしてまいります。当グループの資産であります事業用施設を集約・効率化して、不動産事業への活用を進めてまいります。
そして新規ビジネス等への投資額ですが、総額5,500億円から1兆円程度を投資してまいります。「共創プラットフォーム」を実現するためのグループ外とのコラボレーション先への投資、コア事業の充実強化のための事業投資を想定しているところです。
なお、これらの投資につきましては、オーストラリア・トール社の買収に係る反省なども踏まえまして、検討段階から専門的な知見を入れて、コンプライアンスとリスク管理を徹底しながら慎重かつ大胆に意思決定してまいります。
そして、郵政グループ全体としての業務効率化の関係ですが、こちらは効率化をいま以上に徹底をし、かつ重点分野に投資を行うということで、全体の生産性を向上してまいります。この先5年間で郵政グループ主要4社におきまして、約3.5万人分の業務量を削減し、労働力を減少させてまいります。これは適切な要員配置と自然減で達成する考えです。
郵政グループ3社の効率化、生産性向上に向けた取り組みは資料の通りです。
以上のように大胆な組織風土改革、成長のための重点投資、そして生産性向上をセットにして、リアルとデジタルの融合とビジネスポートフォリオの転換を推し進めてまいります。そして2025年には、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」の実現を目指してまいります。
- 【記者】
- いまご説明があったところの前提でいくつか確認をさせてください。5年後の純利益のところが2,800億円ですけれども、これはご説明があったとおり、ゆうちょ銀行等の出資比率の低下を織り込んだ数字だと思うのですが、このボトムラインというのは業務量の効率化や先ほどご説明のあった不動産や新規ビジネスの、さらにDXの投資、これらもろもろの成果を織り込んだ数字なのかというところが確認したいのが、まず1点目です。
もう一つ、続けて確認させていただきたいのが3.5万人の労働量の減少を見込みますというところですが、これは業務量の削減なのか。実数としてやるのか。実数であれば、それはあくまで採用減や自然減によって達成するものであって、リストラ等は織り込んでいないという理解でいいのか。この点を教えてください。
- 【社長】
- 2,800億円の数字ですが、これはいまお話がありました不動産事業なども、現段階でわかる限り取り込んだものとご理解いただきたいと思います。
それから3.5万人の削減でございますが、これはいまお話がございましたとおり、リストラをするということではなく、自然減や採用の抑制といったことで実現をするという考え方です。いろいろ業務の再配置等々も行った上で、いま、だいたい39万人近くおりますが、3.5万人減らして、四捨五入の関係はありますが、だいたい35万人程度でやっていこうと考えております。
- 【記者】
- 続けていくつか教えてください。数字の上ですが、まず、この2,800億円という5年後の絵姿を増田社長自身はどう評価していらっしゃるかというところ、そちらのご感想を教えてください。
- 【社長】
- 2,800億円ということですが、これはご承知のとおり私どもが持株として持っている保有比率によってこのようなかたちになりますが、グループ全体として見ますと、連結の全体の事業とすると2025年度に全体としては広がっていくということです。私としては厳しい環境ということはございますが、これからゆうちょ銀行やかんぽ生命は、当社の株式保有割合が下がることによって経営の自由度が増しますので、新しいアイデアをスピーディに出して実行していただきたいと思います。
それからDXを大胆に取り込むことによって、価格競争、値下げ競争に巻き込まれることなく日本郵便の荷物の量を増やして、しっかりとした利益を上げられる体質に切り替えていき、株主様に対して、しっかりとした還元も行っていくということを成し遂げていくために、強固な経営体制を進めていきます。
ビジネスポートフォリオの転換は、先ほど申し上げましたように不動産や新規ビジネスになりますが、物事の性格から不動産事業というのは計上する利益が出てくるためには期間がかなりかかります。2025年度までにきちんとした骨格をつくっておけば、数字的にはさらにその後ずっと伸びていきますので、将来的には楽しみな部分になってくるのではないかと思っております。
- 【記者】
- 最後に二つだけ。新規事業というか、ポートフォリオの転換に言及されましたが、既存のコアビジネスではない新しい部分での寄与度というのは、この2,800億円なる利益のうちどれぐらいを構成しているというようなイメージでしょうか。
- 【社長】
- 新規ビジネスという性格上、まだ記者会見の場で公表出来るものにまで至っておりません。それが今後どのように広がっていくかは、いまの段階では5年後を確定させることはできません。
従って、2,800億円の中で新規ビジネス分としてこのぐらいという、そういうかたちでは計上できないので、プラスアルファのようなかたちで考えているところです。
- 【記者】
- 同じく5年後の絵姿で日本郵便の連結当期純利益220億円ですけれども、金融が、出資比率が低下していく中で郵便の収益底上げが課題になっていくと思うのですが、この数字を見るとやっぱりコスト削減の寄与度のほうが高くて、やや縮小均衡感が出てしまうのかなという気がするのですが、そこの受け止めは。
- 【社長】
- 郵便の通数がどんどん減っていくというのが現実の姿でありますが、しかし、ユニバーサルサービスですので、必ず低廉な料金で確実にお届けしなければいけないという大きな社会的使命を負っております。そういうことをしっかりと実現して全国のお客さまに提供していく、そこが一番のベースだろうと思います。
5年経っても、その先でもそうなると思いますが、提供していくことをはっきりと約束した上で、どれだけ収益を上げていけるかということです。
トール社のエクスプレス事業のような毎年赤字が出ていた部分については、私どもから手を離して違う分野に持っていくとか、DXを使ってさらに配達効率を良くしていくことなどが必要です。
内部的にも相当な効率化、そして生産性の向上を併せて図っていくということを実施した上で、堅く見積もってそういう数字ということになりますので、それはボトムということでお考えいただいていいと思います。はっきりとユニバーサルサービスを確固たるかたちで提供していくという、そういう決意が表れているというふうにお考えいただいていいと思います。
あとは先ほど申し上げました新規ビジネスのところは、この「共創プラットフォーム」にさまざまな企業に参加をしていただきますが、それはまだ表れてきておりませんので、それがうまく進んでいくと数字的にはその部分がさらにオンされて、積み重なっていくものと考えています。
- 【記者】
- 3点あります。簡単ですが、一つずつお願いします。一つは利益、純利益の目標が先ほど話題に出ましたが、今期の利益と比較すると、今期の当期純利益4,000億円ですが、これは5年後の数字と比較可能な数字というのはあるのでしょうか。これが1点目です。
- 【社長】
- 資料の「(注)」のところに小さく記載されていますが、ゆうちょ銀行について89%保有した前提の場合には4,200億円です。ただ、かんぽ生命はもう保有比率が下がっていますので、いま計算すれば出てくるのかもしれませんが、それはいずれにしても架空の数字にはなります。
- 【記者】
- 純利益は5年間で今期の決算より増えるのですか。それとも縮むことになるのでしょうか。
- 【社長】
- 本体の66ページに出ております。
連結の純利益で言うとほぼ横ばいで、いったん23年度に下がりますが、ほぼ横ばいになるかたちです。
- 【記者】
- 2点目は18ページに労働力と費用削減の各社ごとの紹介がありますが、日本郵便のほうで1,600億円費用削減しますとあり、この中に1万3,000人分の出向の影響を含むというふうにあるのですが、これは1万3,000人の人件費をかんぽ生命が受け持つことになるという理解でいいのでしょうか。
- 【社長】
- おっしゃるとおりです。
- 【記者】
- 1,600億円の内訳はわかりますか。つまりこれが、1万3,000人が占める内訳ですね。
- 【社長】
- それは開示しておりません。
- 【記者】
- 承知しました。逆にかんぽ生命は1万3,000人分の人件費が増えることになるのでしょうか。
- 【社長】
- この1万3,000人の部分に限って言えば、その分がオンされるかたちになります。
- 【記者】
- かんぽ生命は、それをオンした上で280億円の削減になるという理解でよろしかったですか。
- 【社長】
- そういうことです。
- 【記者】
- 承知しました。3点目は、かんぽ生命の利益、契約数を見ていると、これは今回の決算、あるいは現状よりも、5年後だいぶ縮小していく姿のように受けますけれども、この点の増田さんの受け止めをお願いできますでしょうか。
- 【社長】
- かんぽ生命については一昨年発覚をいたしました不祥事に鑑みて、やはりお客さまのニーズをきちんとくみ取って、会社として収益を上げるというよりは、やはりお客さまの希望にきちんと沿っていくかたちにしたいと考えています。
長い人生の中で生活を支えるということで、お客さまに貢献した上で、結果として純増目標で会社としての収益を目指していく。こういうことがこれからのかんぽ生命としての会社のあり方だと考えております。
今はまださまざまな不祥事からの信頼回復の途上です。それはかなり尾を引くというふうに思いますが、一つ一つ失われた信頼を回復していく中で、いま申し上げましたような考え方をしっかりとお客さまにお伝えをして、地道に、愚直に収益を上げていきたいと思います。
- 【記者】
- いまの点に重ねて、契約数を踏まえても5年後には下がってしまうことになるかと思うのですが、純増目標ということは、次の中計で実現するということになるのでしょうか。
- 【社長】
- 今日発表しました目標の中で、かんぽ生命についても目標を立てております。私としてはかんぽ生命の姿勢というのを支持しておりますし、その中できちんとした収益を上げていく、その前提はお客さまに対してしっかりと寄り添うこと、そういう姿勢でやっていけばいいと思っております。
- 【記者】
- 今回の日本郵便の目標のところです。2025年度にゆうパック取り扱い個数が13.6億個となっており、これが目標かと思うのですが、単純計算で考えますと、年間に増える個数が5,400万個になります。直近5年間の取り扱い個数の年間の伸び幅と比較しますと、かなり弱気であるという印象を受けたのですが、これはヤマト運輸などとの競争激化で従来どおりには個数を伸ばせないと見込んでいるということなのでしょうか。
- 【社長】
- 個数はかなり手堅く見積もっております。競争激化はありますが、私どもは安い価格にして、個数を拾っていくというかたちにはしたくないと考えておりますので、そこはかなり手堅く見積もっておりますが、一方で郵便と物流を将来的には1対1に持っていきたいので、この分野を伸ばしていきたいと考えております。
コロナ禍、あるいはその後も含めて、かなり荷物の総量が多くなると思います。小物中心に多くなると思いますが、さまざまなところがこの分野には入ってきておりますので、そういう中で私どもとして事業モデルをしっかりと確保していくという上で、かなり手堅い目標です。
一方で生産性を上げて、楽天グループ様の楽天市場での荷物を私どものほうで大きく拾っていくといったようなことを大胆に進めていきますので、伸ばせる部分は多くあると思っています。
- 【記者】
- そうなりますと、今回のこの13.6億個という目標は最低限超えられる目標ラインだということなのでしょうか。
- 【社長】
- 本当に最低限とするのであれば、そのとおり書きますが私どもとしてはAIや自動配送ロボットを入れるなどさまざまなことに取り組み、13.6億個をコミットして、これを目指してきちんとやってまいりたいと思っています。
中身は価格によって相当収益に与える影響が変わってきますので、個数でコミットすることになると考えています。
- 【記者】
- もう1点、物流関連でお伺いしたいのが、先日の楽天との提携についての会見で、楽天が日本郵便に2025年度時点で委託する荷物数が3億個から5億個程度というふうな数字を出されたかと思うのですが、下限の3億個を基準に見ますと、今回の13.6億個のうち22%を楽天からの荷物が占めることになります。そうなりますと、一社の大口荷主に大きく依存することになるのですが、そのことについてリスクというのはないのでしょうか。
また特定の荷主に大きくコミットするということは、物流企業として、増田社長はどうお考えなのか教えてください。
- 【社長】
- 楽天様との荷物ですが、JP楽天ロジスティクスを7月に立ち上げる関係で、いま日本郵便のほうで日々いろいろ協議をしているということです。まだ、荷物の数字にはかなり大きな幅があって、そこのところは楽天市場の全体の伸びと、それからご承知のとおり直営店あるいは楽天様のほうに直接委託しているものはまだ20%なのですが、かなり増えていくだろうという、いろいろな仮定、予測の下でやっているので、楽天様の荷物をどこまで堅く読めるかというのは、まだ正直幅があると日本郵便から聞いております。
従って、そういう中で私どもが商売をしていくということになりますので、そこは若干ぶれる部分があるということが一つございますが、一方でかなり確実なマーケットでありますので、きちんと協業して荷物を安定的に取っていく、それを生産性の高い、効率のいい倉庫を使って全国に配送していきたいと考えています。
楽天様については、これまでも荷物を結構取り扱っていましたし、さまざまなお客さまの荷物を受けているということなので、そこの構造は変えません。
ヤマト様との競争というお話がございましたが、ヤマト様ときちんと話をして、ヤマト様の荷物を私どもが受けて配送するということを、北海道とか北陸とか、そういうところでやり始めておりますので、コロナはいずれ克服出来るでしょうが、やはり物流というのはわが国の社会の生命線ですから、そこで大きな企業体が競争したり協業したりというかたちで、さまざまな取り組みをしていくということが大事だと思っております。
また、JP楽天ロジスティクスを7月に立ち上げるにあたっては、さまざま前提条件を置いて、非常に悲観的なシナリオも含めて、さまざまな検討を積み重ねておりますので、そういったリスク予測もしっかりした上で事業を進めていきたいと思っています。
- 【記者】
- ありがとうございます。最後に1点、日本郵便の今回出されている郵便局窓口事業について、営業利益50億円という目標ではあるのですが、これは従来の金融窓口事業と同じというふうに理解しているのですが、そうなのでしょうか。
その場合、今期377億円ある営業利益が2025年度に50億円にまで落ち込む理由というのはどういったものがあるのか。その環境分析を教えてください。
- 【社長】
- まず郵便局窓口事業ですが、これは、これから例えば自治体であったり、「共創プラットフォーム」と冒頭申し上げましたようにさまざまな企業とコラボレーションしていきますので、その大きな舞台を持っているのが郵便局窓口事業になります。
そしてこの郵便局窓口事業については、ボトムがそういう数字になっていますが、取り込めるものについて、いろいろ数字として出てくるものがあるだろうと思っています。
まだ残念ながらDXが進んでいないので、郵便局窓口セクターで投資を行わなければいけません。紙での入力作業を止め、タブレット端末で入力していくということに切り替えていくにも相当な費用がかかってきます。
将来的には非常に効いてくるのですが、今そういったことをやっておかないと郵便局窓口も世の中の変化について行けませんので、そういうことを含めての数字ということです。決してそこを悲観的に考える必要はないと思います。
- 【記者】
- 現状の保険手数料、あるいは銀行手数料、郵便手数料というのは、これは今回の中計では想定されていないということになるのでしょうか。
- 【社長】
- 郵便局窓口事業としてやるべき仕事というのは大きく変わりませんし、収益構造について、大きく変化するということはないと考えています。むしろ、これから新しいものをどんどんどん取り込むためのしっかりとした基盤をこの5年間でつくっておくということが大事だと思います。
例えば高齢者ビジネス、相続もこれから大変多くなっていくと思いますので、そういったことも郵便局の窓口で大胆に展開していかなければいけないというふうに思っています。まだ発表出来る段階に来ていませんが、順次そういったこともご披露出来ると思います。
- 【記者】
- 日本郵政と日本郵便の一体運営ということについてなのですが、この説明資料と増田社長のお話をお伺いすると、日本郵政の持株会社としての位置づけが純粋持株会社から事業持株会社に色彩を変えている、意味づけ、役割を変えているようにも見受けられるのですが、そういう理解でいいのかということと、組織風土の改革という趣旨が盛り込まれていますが、仮にそうだとした場合、これの意味するところをあらためて教えてください。
要するに2万4,000局を持つ日本郵便がプラットフォームとして、そのうえにかんぽ生命とゆうちょ銀行が乗っかって機能提供していくということが明確になっているということなのかなと思うのですが、そのあたりの考え方など含めて教えていただければと思います。
- 【社長】
- まず今日のかんぽ生命での自社株買いで、結果として当社のかんぽ生命に対しての持ち分が約50%まで下がったわけですが、今後この中計の間で、ゆうちょ銀行についても行います。
ゆうちょ銀行の持ち分を50%以下に下げるため、市場売却等を行っていくわけですが、結局持株の比率ですとか資本構成の関係から言いますと、金融2社は自由度を獲得していくために切り替わっていくということになり、商売の仕方、ビジネスモデルは郵便局を活用して、金融を展開する、そういう会社に切り替わっていきます。
大事なのはやはりリアルとデジタルの両方が兼ね備わった郵便局ネットワークであり、そこをきちんとつくっていくということが必要になりますので、持株会社は純粋持株会社としてこれからも存続します。
実はかんぽの宿とか病院とか、そういう事業を一部している部分はありますが、基本、持株会社は純粋持株会社として、全体のガバナンスを効かせるよりどころということになります。ただ日本郵便は100%の子会社ですから、ガバナンス等を効かせていく上ではこのようなかたちになるということです。
残念ながらさまざまな不祥事等も発生しておりますので、そういったことをトータルで考え、グループ全体で抑制していくためにも、郵政と郵便の一体化を進めていきます。人事もそうですし、採用についても一体採用ということを考えていったらいいのでないかと思っています。
ただ会社としては、当然私どもは法律の立てつけがありますので、日本郵政と日本郵便というのは別個の会社として存続し続けます。私どもの100%子会社の日本郵便を核として郵政グループ全体の仕事が成り立っていく、それをよりはっきりと世の中の皆様方に見ていただきたいと思っております。
- 【記者】
- デジタル郵便局の関連でお伺いします。「共創プラットフォーム」をつくるということで、窓口業務のデジタル化、効率化を図るということだと思うのですが、そうするとリアルの2万4,000の郵便局の数というのに関しては、デジタル化による効率等の絡みで言うと削減していく方向とか、この5年間でどういうふうな青写真を描いているのでしょうか。
- 【社長】
- 2万4,000の郵便局はユニバーサルサービスを提供する大事な拠点ですので、これは維持をしていきたいと思います。そして、いま、この時も2万4,000の郵便局で相当忙しく社員たちは働いているのですが、実際にはお客さまにとっても、わざわざ来局いただいて手続きを取っていただかなくてもいいものがたくさんあります。
例えば入院していらっしゃる方が契約を変えるときに、紙を使って窓口に来ていただいてやらなければいけないといったご不便をおかけしたり、他にもさまざまなことを窓口でやるために社員の側も相当時間をかけなければいけないということで、十分にお客さま対応が取れていない部分があります。いま郵便局で私どもが扱っておりますサービス、それを一挙に全部デジタル郵便局に移せるわけでは決してありませんが、順次やれるものからDXで、デジタル郵便局で業務量を効率化すると同時に、2万4,000のネットワークがあることによる新たなサービス、例えば時間をかけた丁寧な相続など、もっと丁寧にサービスに対応していくという考え方もあります。お客さまにとっても選択肢としてデジタルとリアル、両方の手段を持っているということが非常に便利だと思います。
「共創プラットフォーム」を強くしていく上では、リアルの郵便局ネットワークは維持していきます。ただし人員は、かなり削減するということがあると思いますが、それと同時にデジタル郵便局で24時間365日対応出来る、その両方で、「共創プラットフォーム」を新しい姿にしていきたいと思います。
- 【記者】
- 先ほど誰一人取り残さないというお話がありましたが、一方で高齢者を中心にデジタル弱者と呼ばれる方が結構いて、特に地方の郵便局とかを利用されている方とか、そういう方も多いと思うのですが、リアルとデジタル、要はデジタルとの融合によってこういった方々、デジタル弱者の方々が受けられるメリットというのは、いまのリアルの2万4,000からデジタルが入ることでどういうメリットがあるのでしょうか。
- 【社長】
- 実は今のリアルで提供しているサービス、高齢者の方は特にそうですが、郵便局にお越しいただいてやっていることを減らすということは全く考えておりません。
全体の方向としては農協さんもそうですし、自治体もそうですけれども、いまの社会情勢の中でリアルの拠点をどんどんなくしていっています。そのため、高齢者の方々がさらに戸惑うようなことになっていますが、そういうお困りの方のために、郵便局で従来の商品だけではなくて、できるだけ他で行っているサービスについても郵便局で提供出来るように、将来的にはそういう姿に持っていければと考えています。
- 【記者】
- 先ほど新規ビジネス投資のお話の中で、5,500億円から1兆円、M&Aやベンチャー企業とあったのですが、「共創プラットフォーム」と言うからには地域性を生かした自治体だとか地元企業だとかの連携というのも必要になってくるかと思うのですが、地方創生ビジネスへの投資というのはこの枠の中には入っていないのでしょうか。
- 【社長】
- 地方創生ビジネスとして新規につくり上げていくものは、この新規ビジネスの枠の中に入っておりまして、主体がどこになるかということによって変わってきますが、例えば地方のスタートアップ企業のようなところが地方創生の一環で、政府のほうの交付金と、それから自分たちの自己資本等によって何かビジネスをしていく際に、有望なのだけどまだ少しお金が足りないということであれば、ベンチャー企業等への投資の枠も使うことになると思います。有望な収益につながるということであれば、M&Aをしていくということも可能かと思います。
地方創生といってもご承知のとおり分解をすると大学との共同でのスタートアップ企業に対しての支援のようなかたちになったりするものもあれば、自治体が主導してやっていくものもあれば、純粋民間でやるものもあります。それからお金をあまり伴わないような地方創生のやり方、すなわちNPOだとか地域コミュニティの活動の質を切り替えるという点もありますので、そこはさまざまだと思いますが、日本郵便にも、それから日本郵政にも、地方創生を担当するセクションがあります。
日本郵便のほうはきちんと役員も来ていますし、そこは相当強化しましたので、私としても楽しみですが、投資としてはこの5年間で、地方創生でいいものがあればさまざまな投資をする予定です。その枠は十分に取ってあるのではないかと思っています。
- 【記者】
- ありがとうございます。あと1点。ESG目標というのも初めて出たと思うのですが、データ基盤の構築、新たな価値を提供、それらをやっていくのにあたって、やっぱり現場の郵便局長とか社員の方とかの取り組みというのは、どうしても地域を知っているだけにすごく大事になってくると思うのですが、そこの部分というのに期待することというのは何かお話しいただけないでしょうか。
- 【社長】
- ESGをやっていく上で特にSですとか、Gだとかいうところ、要するに私どもの郵便局ネットワークの存在、局長をヘッドとして郵便局ネットワークの存在自体がサステイナブルなのです。社会をサステイナブルにしていく大変重要な存在だと思います。
従って、局長たちの活動自身がESGに大きく貢献するのだという、そういう誇りをもった活動をぜひ行っていただきたいと思います。それに加え、例えば最近特に重要視されているカーボンニュートラルの取り組みなど、さまざまあります。
地域でどのように環境に寄与する取り組みをしていくかというのは、局長が一番良く知っていると思いますので、どんどん地域活動に入っていっていただきたいと思います。それを本社で、あるいは支社でこういうことを支援してほしいというアイデアも出していただければ、それを支援していくということを大いにやっていきたいと思います。そういう局長の意向ですとか考え方がこのグループ全体のESGを引っ張っていくのだということではないかと思います。
今の趣旨は、この中計をさらに社内や現場のほうで議論していく上でよく伝えておきたいと思います。
- (※記者会見における発言および質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)