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郵政ネットワークの
持続的発展と
成長実現に向けて

日本郵政株式会社
取締役兼代表執行役社長
グループCEO
根岸 一行

郵政ネットワークの持続的発展と成長実現に向けて

日本郵政株式会社
取締役兼代表執行役社長
グループCEO
根岸 一行

前中期経営計画を振り返って

平素より日本郵政グループをご支援いただき、誠にありがとうございます。

2025年度は、前中期経営計画「JP ビジョン2025+(プラス)」の最終年度となりました。主要な数値目標であるROE(株主資本ベース)4.5%、連結当期純利益7,434億円、親会社株主に帰属する連結当期純利益3,745億円を達成することができました。

しかし、郵便・物流セグメントは118億円の赤字となり、課題も残りました。クロネコゆうパケットの引受計画が大きく変更となったことや、点呼業務不備に伴う行政処分などにより、取扱量が想定を下回ったことも要因ですが、郵便物数減少が加速したことは、当社グループが直面する構造的課題を明確に示すものであり、事業モデルの再構築が急務であることを改めて認識する契機となりました。

一方、国内金利上昇による運用環境の好転等により、銀行業及び生命保険業セグメントの業績は堅調に推移しました。金融2社の収益貢献は、グループ全体の利益を下支えする重要な基盤であり、今後も適切なリスク管理の下で持続的な収益創出を図っていきます。

日本郵政グループ全体主要指標の図(説明は本文)

新中期経営計画「JP プラン 2028」

当社グループが今後も成長していくためには、10~15年後の環境変化を見据えた戦略が不可欠です。2026年5月に公表した「JP プラン 2028」は、「日本郵政グループが長期的に目指す姿」に向かって、今後3年間で取り組む具体的な施策と数値目標を策定したものです。この3年間でユニバーサルサービスの持続的な提供に向けた事業構造の見直しを行いながら、経営資源を成長領域へ重点的に再配分する方針を明確にしました。 郵便・物流事業や郵便局窓口事業の構造改革を進めつつ、物流・金融・不動産といった成長分野で着実な利益成長を目指します。

経営資源を成長領域へ

「JP プラン 2028」には、従来の中期経営計画から進化させた3つの点があります。

一点目は、物流事業や不動産事業といった成長領域へ経営資源を戦略的に再配分し、収益基盤の強化と事業ポートフォリオの最適化を進める方針を、より具体的な計画として位置づけたことです。

郵便・物流事業及び郵便局窓口事業では、業務効率化を含む構造改革を進め、ユニバーサルサービスの持続性を確保します。具体的な成長領域として、ラストワンマイルに加えて、国内外の企業間物流を強化し、国際物流と国内物流のすべてを一体で事業運営できる物流網を構築し、あらゆるお客さまに利便性の高い物流サービスを提供する総合物流プラットフォームの構築を目指します。

不動産事業では、日本郵便における集配拠点の再編と連動し、集約された郵便局跡地の開発を進めるなど、グループ保有不動産の事業化を一段と加速します。

例えば、都市部の郵便局の移転・集約を行い、跡地で不動産開発を実施することで不動産価値の最大化を起点に郵便・物流拠点の再編を検討するという、新たな視点で取り組みを進めます。

また、当社グループの不動産事業はこれまで賃貸事業が中心でしたが、今後は事業領域を拡大します。分譲マンション事業、用地仕入れ・開発・売却によるフロービジネス、マネジメント事業によるフィービジネスなど、多様な収益モデルを組み合わせ、利益成長と収益性向上を実現していきます。

特に分譲マンション事業は、立地条件を踏まえると高い収益ポテンシャルを有しています。賃貸事業と並行して展開できる体制を整備し、分譲事業で得たキャッシュを次の開発へ循環させることで、「開発→売却→再投資」という資本効率の高い事業サイクルを確立します。手元資金だけに依存せず、開発物件の一部売却によって資金を創出し、次の投資へとつなげる仕組みを構築します。

不動産事業は社会との接点が大きく、街づくり、地域課題の解決に貢献し、社会価値と経済価値の両立を通じて企業価値を高める新たな柱としての成長を後押しするものです。グループ総力を挙げて事業を発展させ、安定収益と成長機会を確保しつつ、地域社会への貢献を伴う収益基盤へと育成していきます。
 

不動産事業セグメント業績の推移の図

株主・投資家との対話の深化

二点目は、資本市場との対話をより深めるための、市場の声を踏まえた積極的な情報開示です。

「JP プラン 2028」では、資本政策に対する市場の関心が高まっていることを踏まえ、ゆうちょ銀行とかんぽ生命を除いたキャッシュアロケーションを明確に示しました。営業キャッシュフローや株式保有先からの配当に加え、余剰資金を戦略投資と株主還元に適切に配分することで、重点戦略の実行と資本効率の向上を両立させます。

また、「JP プラン 2028」の策定にあわせて株主資本コストを再検証し、当社の資本コストを7〜8%程度と認識しました。その上で、重点戦略の着実な実行を通じて、株主資本コストを上回るROEを継続的に創出することを中期的な目標とし、2028年度にはROE7%の達成を目指します。

株主還元については、3年間累計で総還元性向50%以上を掲げています。さらに、金融2社の大幅な増益見通しを踏まえ、2026年度には配当を60円へ増配し、業績に応じて配当を引き上げる累進配当を導入します。増配は、2018年3月期の郵政民営化10周年記念配当を除けば、上場以来初めてとなります。

今後も、安定的な配当を維持しつつ、株主還元の充実を図り、資本市場からの信頼に応える持続的な資本政策を推進していきます。

ガバナンス体制の強化

三点目は、ガバナンス体制の実効性を高めるための構造的な改革です。

ガバナンスやコンプライアンスの強化は従来の中期経営計画でも掲げてきましたが、不祥事の再発を完全には防止できていない現状を踏まえ、2026年6月時点で全国65か所(支社を含む)に約2,000人を配置して、コンプライアンスや業務品質を確保するための新たな組織(金融業務支援部)を設置しました。

郵便局員一人ひとりの状況を的確に把握し、法令等のルール遵守の徹底や業務品質の確保に向けた指導・支援をきめ細かく行う体制を構築します。

これにより、従来の「本社→支社→郵便局」という縦の指導だけでなく、フロントラインに密着して支援する機能を加え、ガバナンスの実効性を高めます。

しかし、信頼回復は制度や組織を変更するだけでは実現しません。これまでも不祥事が発生するたびに再発防止策を行ってきましたが、重要なのは、策定した対策を組織の隅々まで徹底し、その運用の質を継続的に高めていくことです。

今回導入する新たな対策に加え、従来からの取り組みについても、実施状況と効果を厳格に検証し、改善を積み重ねていきます。お客さまに「郵便局は安心して利用できる」と実感していただける水準に到達するまで、ガバナンスの完成度を追求し続けることが、当社の責務であると考えています。

人的資本経営

人的資本は、当社グループの重点戦略を支える基盤であり、事業構造改革やガバナンス強化を進める上でも不可欠な要素です。当社グループは、全国で働く約37万人の社員によって支えられており、社員一人ひとりの能力と成長は、グループの競争力と価値創造の源泉です。人的資本の強化は、当社が描く将来像を実現する上で欠かせない経営基盤であると考えています。

社員が安心して働き、主体的に挑戦できる環境を整備することを経営の重要施策と位置づけ、働くことに誇りを持てる企業への進化を通じて、企業価値の向上につなげていきます。

人的資本経営を深化させるため、当社は「事業環境の変化や成⾧戦略に応じた人材ポートフォリオの構築」と「社員一人ひとりの可能性の最大限の引き出し」の2つを重点テーマとして、成長領域への積極的な人材配置、キャリアデザイン研修などによる自律的な学びの支援、多様な人材が能力を発揮できる職場づくり等、人的資本の質的向上に直結する施策を体系的に進めていきます。

人事戦略の2本柱を示す図。①事業環境や成長戦略に応じた人材ポートフォリオの構築(柔軟な社員配置、派遣・外国人労働者活用等)、②社員一人ひとりの可能性の最大限の引き出し(新人事制度の確立、女性活躍推進、働きやすい環境づくり)。

私の使命 ―日本郵政グループの価値を次世代へ―

当社グループは、郵便の全国均一サービスに加え、全国どこにおいても身近な郵便局で貯金・保険サービスをご利用いただける体制を維持するなどのユニバーサルサービスの責務を果たし、日本の社会インフラの一翼を担っています。こうした、ユニバーサルサービスの提供に際しては、各事業を担うグループ各社が一体となって取り組むことが不可欠であり、私としてもその連携を一層強化すべく、引き続き全力を尽くしてまいります。

一方で、郵便・物流事業や郵便局窓口事業においては、構造的な課題が明らかになっています。ユニバーサルサービスを持続的に提供し続けるためには、事業構造の見直しが急務であり、最優先で取り組むべき経営課題です。「JP プラン 2028」に掲げた各施策を着実に実行していくことが、その第一歩だと考えています。

同時に、当社グループは、地域のニーズに応じて、行政サービスの補完、地域コミュニティの形成支援、高齢者の見守りなど、社会課題の解決にも取り組んでいます。これらの取り組みは、単なる地域貢献ではなく、地域との信頼関係を強化することを通じて、当社グループの長期的な競争力につながる「価値創造の基盤」となります。

当社は、民営化と株式上場を経て、市場の評価を受けながら事業運営を行っておりますが、ユニバーサルサービスの責務を確実に果たしつつ、全国に展開するリアル拠点という他社にない強みを最大限に活かすことで、ステークホルダーの皆さまの多様な期待に応えていきたいと考えています。

本年6月に、郵政民営化法の改正が成立しました。その趣旨は、ユニバーサルサービスの確実な提供、郵便局ネットワークの活用による地域住民の生活支援等を目的としたものと理解しています。これまで全国各地の郵便局を訪れるなかで、私が随所で感じてきた果たすべき使命が、より明確なかたちで示されたものであると受け止めています。

郵便局を中心とする当社グループが、地域の多様なニーズに応え、生活を支える存在としてご利用いただいている姿を、将来にわたって途切れることなく次世代へ引き継いでいくこと――それこそが、「日本郵政グループの価値を次世代へ」つないでいく、私の使命であり責務です。

当社グループの未来は、ステークホルダーの皆さまからの期待と評価を真摯に受け止め、その声を確かな歩みにつなげていくことで築かれていきます。今後とも、厳しくも温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2026年7月

日本郵政株式会社
取締役兼代表執行役社長
グループCEO
根岸 一行