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2023年6月27日 火曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2023年6月27日 火曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田 寬也
【社長】
本日は、私から2件発表いたします。
 1件目です。AIを活用したお客さまの声などの分析を通じたガバナンス態勢強化の取り組みについてです。お手元の6月20日付のプレスリリース資料をご覧ください。
 当社では、「JPビジョン2025」に掲げております、お客さまと地域を支える共創プラットフォームの実現に向けて、日本郵政グループにお寄せいただく多くのお客さまの声を分析して活用しております。この全体のボリュームですが、当グループでは、過去5年間の平均で、年間約590万件と大変多くのお客さまの声をいただいております。その全てをいわゆる目検、人がいろいろその内容を見て分析・判断をするということは、全体の量からしても著しく困難です。しかし、その中には潜在リスクやミスコンダクト事象などが含まれており、非常に貴重なもの、まさに宝の山ということです。
 AIを活用して分析を行い、そうしたリスクなどの早期発見だけではなく、魅力ある商品やサービスにつながるお客さまのニーズの把握にも取り組んでおり、AIから検知されたお客さまの声などを業務改善やお客さま本位のサービスへの反映につなげるような、いわゆるガバナンス態勢の強化に活用しております。
 次に、補足資料をご覧ください。2022年4月に、「コエ活プロジェクト」というものを立ち上げております。具体的な取り組みの1つ目として、当グループにお寄せいただくお客さまおよび社員の苦情の声から、ミスコンダクト事象など潜在的なリスク事象を検知する分析モデルや、2つ目として、お客さまのご意見・ご要望の声から、商品・サービスの改善に活用できる声を抽出する分析モデルなど、複数の分析モデルを設計、運用しているところです。分析結果は私ども経営陣に報告されるとともに、当グループ各社にも連携をされて、業務改善、商品・サービスへの反映などに活用されているところです。
 今後は、これらの取り組みをさらに発展させていくとともに、お客さまの声以外の内部統制の領域などにもAIによる分析領域を拡大して、業務改善、商品・サービスの改善などに役立てることで、お客さま本位の業務運営を実現していきたいと考えております。
 これらの一連の取り組みにつきましては、補足資料の下段に記載をしておりますとおり、7月19日に開催予定のFRONTEO様主催のAIイノベーションフォーラムや、当社とFRONTEO様で共催して開催するメディアセミナーにおきまして、これまでの成果を交えて発信をしてまいります。ぜひ皆さま方にもご参加、ご覧いただければと思います。
 2件目です。「JPビジョン2025」にお示ししております「麻布台ヒルズプロジェクト」についてです。お手元の森ビル様の昨年12月のプレスリリース資料をご覧ください。
 現在、虎ノ門・麻布台地区の市街地再開発組合のもとで、森ビル様が主導している「麻布台ヒルズ」プロジェクトについて、日本郵便が権利者および参加組合員として参画をしているところですが、このたび、竣工日と建物名称が決まりましたので、この場でお知らせいたします。
 まず、6月30日に竣工の運びとなりました。
 次に、資料の4ページをご覧ください。本事業地のうちのA街区は、日本郵便が所有していた旧麻布郵便局と旧東京支社の跡地を含む開発エリアということもございますので、A街区の建物名称を「麻布台ヒルズ森JPタワー」という名称に決定いたしました。エリア全体は「麻布台ヒルズ」ということになっております。竣工いたしますと、しばらくの間、日本一高い建物になります。
 今後は、森ビル様と連携しながら、賃貸事業や分譲事業として運用していく予定です。引き続き当グループの資産である事業用施設などを集約、効率化して、不動産事業への活用を進めてまいります。
 私からは以上になります。
【記者】
先日、日本郵政グループとヤマトグループの協業が発表されました。かつて、ヤマトさんは郵政事業や規制と対抗して会社を大きくしてきたと思います。今回、要は長年敵対関係にあった相手と手を組んだことになりますが、そのことに関する受け止めを教えてください。
【社長】
以前は、ヤマト様とまさに敵対関係に匹敵するような、非常に激烈な競争をしていた時代があったということは承知しております。しかしながら、ドライバー不足・ドライバーの長時間労働是正といった物流2024年問題と、CO2の削減・環境問題といった2つの大きな変化を背景として、やはりお互いが、これから成長していく上で得意分野を十分に使い切るということが必要になってくるのではないか、こういう判断をいたしまして、今年の初め頃から鋭意協議し、先般合意を見たということでございます。
 やはり、それだけ時代や環境が以前と比べて大きく変わったことを受け止めていく上では、手を組むところはこれからも手を組み、しかしながら、お客さまサービスについてはお互いに知恵を出し、競い合うところは競い合って、お客さま目線で、両者が、会社を成長させていこうということになりました。今後も今回の提携の内容を踏まえながら、どのようなサービスが可能なのかを両者で考えていきたいと思います。
【記者】
ヤマトさんとの協業提携の件で、今回、小口荷物をヤマトさんから引き受けるということだと思いますが、日本郵政、日本郵便側として、どれぐらいの収益面での貢献、プラスを見込んでいるのかということについてお願いします。あまりもうからないのではないかとか、ヤマトさんから押しつけられたのではないかとか、そういう厳しい声も聞かれましたので、日本郵便側としてのプラス、メリットについて教えてください。
【社長】
ヤマト様の現在の商品2つを終了し、新しい商品、「クロネコゆうメール(仮称)」と「クロネコゆうパケット(仮称)」に切り替えますので、それらの商品の値段をどうするかということは、現在、協議をしているところです。先日の共同会見でも申し上げましたが、今、ヤマト様のほうで、私どもに委託するとしている2つの商品の全体の売り上げは大体1,300億円程になります。それが、私どもが受ける金額的な総量ということになります。
 したがって、それにどれだけコストを合理化して利益を取れるかということになりますが、細部については、これから順次引き受けをしていく中で、オペレーションをどうしていくのかなど、いろいろとお互いに相談をしていくことになっております。日本郵便でどの程度の利益になるのか、お客さまに対しての提示料金など、さまざま決める部分について現在協議中なので、もう少しお待ちいただければと思いますが、全体の収益的なボリュームは今申し上げましたように大体1,300億円程度ということです。
 それから、数量で申し上げますと、小型薄物荷物領域については、現在の「ゆうパケット」が4億個程度ですが、さらに4億個入ってくることになり倍増することになります。それから、メール便領域については、日本郵便がほとんど取り扱っておりますが、ヤマト様から引き受ける分を日本郵便で既に取り扱っているものの中にうまく流し込むことにより、だいぶコストの部分も工夫ができるのではないかと思っております。順次、1年以上の時間をかけて日本郵便に持ってきてもらうものと、来年2月に持ってきてもらうものとありますので、さらにこれからよく協議しながら、その内容を詰めていきたいと思います。
【記者】
その1,300億円のうち、どれぐらいをという、イメージといいますか、意気込みはございますか。
【社長】
現在、詳細を詰めているところですので、まだ申し上げる段階にありません。
【記者】
先日、日本郵政の株主総会がありましたが、株主の方からは、株価の下落や金融会社株式の売却によって配当収入が減るということを心配される声が幾つか聞かれました。2023年6月14日に総務省から配当に当てる剰余金の処分、約1,730億円が認可されましたが、2023年度の日本郵政の事業計画では日本郵政の当期純利益は1,745億円です。今年度も1株につき配当50円ということで、同じ条件だと思いますが、この金額を比べると、かろうじて配当が支払える状態ということになっております。利益はそのまま配当に支払うというような経営状況だと思いますが、その現状をどのようにお考えになっているかということをお聞かせください。また、それに関連して、法律では金融2社の株式を今後も売却していかなければならないと思うのですけども、現在の中期経営計画までは50%で、その後、ちょっとどうなっていくか分からないですけれども、その経営上の問題点についてお聞かせいただきたいです。
【社長】
まず、ゆうちょ銀行の株式を売却いたしました。当然のことながら、当社の持分比率が下がって、現在、89%から61%ぐらいまで下がりました。したがって、持株会社である当社に対しての配当収入は、保有比率に応じて減りますので、今ご質問いただいたように、配当比率が下がっているということになります。
 一方で、ゆうちょ銀行株式の売却益が私どもに入ってきておりますので、それを成長分野、いわゆる成長投資に使うことで、それによって、ビジネスポートフォリオを転換するということを「JPビジョン2025」でも申し上げております。例えば物流施設、不動産、それからDX分野の投資などです。今、郵便のシステムも、いわゆるポスタルデジタルトランスフォーメーションということで、来年2024年2月に郵便の基幹的なものが計画どおり出来上がれば、追跡サービスなど、お客さまに訴求できるいろいろなサービスが出てきますので、そういう形で郵便をもっとお使いいただくということになれば、日本郵便は100%子会社ですので、配当が100%私どもに入ることになります。日本郵便、それからゆうちょ銀行、かんぽ生命もそれぞれ新規ビジネスなどで努力していただきたいと思っておりますが、成長に向け、売却益を投資に振り向けていきたいというのが1つです。
 それから、もう1つは、今年度3,000億円を上限とする自己株の取得をすると発表しております。これは今年度中に行ってまいりますが、自己株式の取得によって、発行済みの株式総数が減少します。
 今後も、売却益を適切に成長投資に振り向けたり、株主還元に振り向けたり、それから、内部でさまざまなことに活用するということにより、グループ全体としてこれからに備えていきたいと思っております。今のところ公表をしているものについては以上ですが、今年度は中期経営計画の見直しを、今年度の後半に行う予定です。中期経営計画では、金融2社の持ち株比率を50%以下まで下げることになっており、まだ、ゆうちょ銀行についてはもう少し残っていますので、それをどのようにしていくのかも含めて考えていきたいと思います。
 全体の株式を売却するという郵政民営化法がありますが、まず、中期経営計画の残りの期間でどうしていくのかということを、今年度の後半で、しっかりと議論して、明らかにしていきたいと思います。
【記者】
具体的に成長分野に投資したところで、どのくらいを見ているとか、何か計画はないですか。
【社長】
2025年にどのような姿を目指すのか、例えば不動産についてはどのぐらいの収益を目指すのかとかいうのは、「JPビジョン2025」でもう既に数字をお出ししています。作業としてはこれからですが、今年度に見直しを行う予定であり、可能な限りその際に株式の売却についても織り込んで、その数字が収益で取り込めるような、そういう見直し内容につなげていきたいと思っています。
【記者】
今年度の事業計画で出されている1,745億円の日本郵政の当期純利益というのは、ほぼゆうちょ銀行とかんぽ生命から来ている配当だと思うのですけども、配当を1株50円と決めたときに、今のような状態、日本郵政のもうけはそのまま配当に回るみたいな、今の状況というのを、民営化当時の議論の中で想定していたのでしょうか。民営化当時の話をお聞きすると、どんどん成長していってお給料も上がっていってという、何か夢のようなビジョンを描いて民営化に賛成した人もいるという話は聞いているのですけれども、今のこの、ほとんど配当を払ったら利益が残らない状態というのを想定していたのでしょうか。
【社長】
郵政民営化のその時期の議論について、私は関わっておりませんので分かりませんが、2回大きな議論があったわけです。自民党で最初に民営化法をつくられたときと、途中、民主党政権で改正されたときですが、特に私は直接関わっておりませんし、どういう議論がそれぞれのところで行われてきたということをつまびらかに承知しているわけではありませんが、少なくとも、現在の当社の配当性向は連結で大体41%程度ですから、配当性向の数字としては大体適切なところではないかと思います。今年の3月期で配当性向41.4%、1株当たり配当50円ですが、連結の当期純利益に対する配当性向は大体その程度ですから、問題ないレベルかと思います。
 当社は当グループ全体の持株会社として、事業会社の横串を通してバランスを見るということになっているのですが、やはりそれぞれの事業会社、それからグループ全体で、成長に対してどのような新しいビジネスをつくれるかどうかにかかってきますので、そのことに全力で取り組むということです。大きな構造改革だとか、法律の立てつけについては、また別の場でちゃんと議論していただくことですので、今は、決められた枠組みの中で毎年毎年の収益向上策を考えていくということが私どもの役割だと思っています。
【記者】
株主の中には、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を完全売却すると日本郵便しか残らない。そうなると株価が300円ぐらいに下がってしまって、配当も払えなくなるのではないか、日本郵便にもうちょっと頑張ってもらわなければならないという話をしておられた方もいます。最終的に、今までに自社株買いをして300億円ぐらい配当は減っていると思うのですが、減ったところで、最終的にそのもとの収益がなくなってしまうと、支払えなくなるのではないかなと思うのですが。そこのところは、増田さんとしては、民営化にも携わられてきたと思うのですけど、どのようにお考えになっているのでしょうか。
【社長】
まず、日本郵便が郵便物流事業をコアビジネスとして稼ぐという意味では、今回のヤマト様との協業などでもっと収益を取れるようにしていくということが必要です。もう1つ、民営化法の立てつけで、金融2社については株式を100%売却することが定められていますが、ビジネスモデルについては、金融代理店業としての郵便局を使わないと、全国あまねく金融サービスをしっかりと提供するためには、やはりゆうちょ銀行、かんぽ生命が単独で対応するということは到底考えられません。したがって、大きな日本郵便の収益源として、少しずつ減ってきてはおりますが、金融2社からの委託料があるわけです。その他、郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構からのネットワークの交付金がありますので、そういうものを使いながら、ネットワークを維持して、できるだけ身近な存在として金融サービスを国民に提供すること、この部分は変えられないと思いますし、変えるべきではないと思っております。
 ゆうちょ銀行及びかんぽ生命もそういった金融商品を販売する上で、郵便局をベースにしていくということになっておりますので、その商品サービスの内容、ラインアップをどれだけ豊富にできるかというところをこれから努力していく必要があると思います。
【記者】
楽天さんとの資本業務提携について2点お願いいたします。1点目は、楽天グループの株価がだいぶ下がっていまして、日本郵政にとっては多額の減損のリスクが強まっているかと思います。他社の株価についてはコメントしない立場だとは思いますが、日本郵政にとってかなり額の大きい、減損のリスクが強まっているということについて、また配当への影響がないのかどうか、コメントをお願いいたします。
 2点目は、楽天さんとの協業について、スタート時、多くのラインアップが出ていたかと思います。物流面についても、物流センターの投資がかなり今、重い負担になっていますし、協業で荷物が増えたのかどうかというのは、外からは見えにくいところかと思います。金融部門もあまり成果が見えないように映りますが、この協業の成否について現時点での認識をお願いしたいと思っております。
【社長】
楽天グループ様の株価については、マーケットが決めるということではありますが、特に私どもの認識ですと、直近で3千億円ほど増資をするという発表があり、その後、株価の下落が相当大きく出てきていると認識しています。
 そして、今ご質問いただいたように、他社の株価についてではありますが、私どもが資本参加をしているわけですので、当然株価の動向は注視をしております。また、当社の会計ルールがございますので、それをちゃんと当てはめて、何か公表する事態があればすぐにそのルールに則って公表したいと考えております。社内のルールは対外的には公表しておりませんが、一般的に言えば、株価についてマーケットでの時価が著しく下落をした場合、回復可能性の判断をして判定をするかということになっておりますので、私どもも、会計ルールをちゃんと厳格に適用して対応していきたいと、今の段階ではそう考えております。
 いずれにしても、全体のボリュームから見ると、先ほどの配当のご質問、利益剰余金の中から対応していけるかということですが、私ども全体の利益剰余金のボリュームから言えば、今回楽天グループ様の株価が今後どうなるか、来月、再来月以降どうなるかという問題もありますが、配当に影響を与えるレベルではないと考えております。
 それから、協業についてですが、幾つか私どもで取り組んでおりますが、やはり一番大きな期待をして取り組んでいるものは、楽天市場の荷物をどれだけ私どもが取り扱えるかということです。楽天市場については、一昨年、そういった協業を始めたときは楽天様の倉庫からの出荷が大体2割ぐらい、楽天市場に出店するお客さまがご自身で手当された倉庫からの出荷が8割ぐらいでした。
 現在は、JP楽天ロジスティクスという日本郵便が50.1%、楽天様が49.9%出資した子会社を設立しており、JP楽天ロジスティクスの倉庫からの出荷割合を増やすために、だいぶ倉庫の整備を行ってまいりました。私も幾つか訪問しましたが、神奈川・中央林間にできたものやそれから千葉・流山や市川にできたものなど、相当大きなものもございます。また、西のほうですと大阪・八尾、福岡と、10を超える大きな倉庫を展開できつつあり、少し時間をかけながら、投資もして展開してきました。
 倉庫の中をできるだけ早く埋めたいということで取り組んでおり、今年度に入って、4月、5月、6月と毎月数字を見ておりますが、期待された数値を上回るなど、良い数値になってきておりますので、物流全体では、ゆうパックの中でもかなり下支えをする構造ができてきていると思っております。
 楽天様についての認識は、eコマースですとか、ほかにも金融事業など広くやっておられ、事業自体はどれも非常に伸びていて全体としても良い数字になられていると思いますが、とにかくモバイル事業について非常に資金がかさんできておられますし、通話の品質も今いろいろ変えようとされているようですが、そこが大きくグループ全体の収益構造を圧迫するような形になっていると思っております。モバイル事業については楽天様がどれだけてこ入れをできるかということかとは思います。今の事業全体の中で、新しいモバイルの料金メニューも今月発表したと聞いていますが、楽天様でのそういった取り組みに期待をしたいと思っております。
 いずれにしても、ご質問の関係については、当社としては会計ルールに則って、しっかりと、その時点での適用を判断したいと思っております。
【記者】
1点目に関しては、リスクについては今どういうご認識をお持ちでしょうか。減損のリスクが高まっているという認識はお感じになっているのでしょうか。
【社長】
楽天グループ様の株価はその他有価証券に計上されます。投資をすれば必ずリスクについてどうなっているかということを問われますので、今の時価の状況もよく注視をしております。私どもとすれば、楽天グループ様の株価が下がっていることについては、しっかりと毎日見ております。それ以上のことはまだ申し上げられないという段階であります。
【記者】
物流面で言うと、JP楽天ロジスティクスは1年目にかなりの赤字を計上していて、昨年度はまだ数字が出ていませんけれども、まだ投資段階にあるように見受けます。そうすると、少なくとも2年見たところでは、負担額のほうが相当重いのではないかと思いますが、今のお話とすると、物量は今年度になって伸びてきているということでしょうか。
【社長】
設立当初から荷物を取り込んでおりますので、他社に行っていたものが私どものほうに来ておりますが、当然のことながらできるだけ早く黒字基調に持っていきたいと考えています。今年度はスタートの4月から、かなりの荷物が私どものほうで取れてきております。要は昨年まで、用地確保から建設といった倉庫投資、それに伴うオペレーションの人員確保など、各地域でやってまいりましたが、それらの効果がだんだん出てきております。今月の楽天スーパーセールなどの結果はまだ見ておりませんが、いろいろオペレーションのほうも好調だったと聞いておりますので、これから物流の面では効果が出てくるのではないかと期待しております。
【記者】
そういう減損のリスクが強まっていて、さらに協業の成果、今の時点では見えにくいところが多いと思うのですが、それをもってこう、かつてトールでうまくいかなかった構図に似ているのではないかと懸念する意見があります。そういう意見に対してはどう思われますか。また、提携時には最高のパートナーというふうにおっしゃっていたと思うのですが、このあたりの認識が今変わってないかどうか、一言お願いします。
【社長】
まず、やはり物流などについて、日本郵便が多くの荷物を扱うという上で、楽天様と組んで、楽天市場のものを持ってくるというのは非常に有力です。効果はその部分について出てきていると思っております。
 それ以外に、これは数字でなかなか表せないのですが、DXの関係で、人材を当グループに出していただいておりますし、そこに連なるいろいろな事業について、楽天様から随時、人を出していただいて、さまざまなものに取り組んでおります。これは全体に当グループのほうでDXの取り組みが遅れていたことに対して、楽天様の人材だとか、ノウハウに期待する部分がありますので、今後もその成果を随時いろいろなところに出していきたいと考えております。
 例えばご承知のとおり、今まで日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命など各社それぞれIDを使って、通帳アプリや、新しいアプリなどを出しておりますが、グループ共通IDでそういったものを全部使えるようにしようと、遅まきながらやっております。やはりお客さまサービスをできるだけ増やしていく上では、そういうノウハウが非常に重要になりますので、物流とDXなどについては、今後もさらに楽天様の力をお借りしながら、日本郵政グループを成長させていきたいと思います。
 それから、クレジットカードなど、幾つか他もやっておりますが、既存の他のクレジットカード会社との関係を崩すまでに至らないものですが、金融関係のサービスなどについては、これからさらに検討を深めていかなければいけないと思っております。
 また、先ほどトールのお話がありましたが、いずれにしても、ある程度これからもリスクを取りながら、成長に向けていろいろ手を打っていかなければいけないと思っておりますが、楽天様との協業については、まず物流、それからDXなどについて、これから成果をしっかりと具体化するところに、私どもも楽天様とともに努力していきたいと思っております。
【記者】
最高のパートナーであることは変わりないですか。
【社長】
提携会見のときもそう申し上げましたし、物流やDXを進めていく上でも、そういう思いで取り組んでおります。
【記者】
郵便局での新規ビジネスの関係でお伺いしたいのですが、JP未来戦略ラボでいろいろと取り組んでいらっしゃるという話を伺っております。郵便局のネットワークを維持していくという観点でも、郵便局のそれぞれの収益性の向上は重要なテーマだと思うのですが、改めてそういう観点から現状の取り組みについてお考えなどお聞かせください。
【社長】
郵便局の収益性の確保というのは、まず上流のほうで、今回のようにヤマト様と組んで、物流を強化し、それによって荷物の流し込みを多くするといった取り組みがあります。一方で、それぞれ地方によって違う個々の郵便局のタイプに応じて、その地域の郵便局、あるいはその周辺で収益をいろいろ上げていく取り組みがあります。
 例えば、東京電力様と組んで、急速充電器を置いている栃木・小山郵便局とかもございますし、農村地帯ですと、JP未来戦略ラボの発案で、機械メーカーと組んで幾つかの郵便局に精米機を置いて、多くの人に活用してもらうと同時に、郵便局への来局者数を増やすといった取り組みもあります。さまざまな取り組みを、地域のお客さまのニーズに応じて出していくということです。また、渋谷や流山の郵便局に、環境問題を考えて衣服のリサイクル・リユースのために回収ボックスを置いています。
 そういう発想については、今ご質問いただいたJP未来戦略ラボで、中堅、中核的なグループ各社の社員が、具体的にさまざまなプロジェクトを動かしています。かなり若い層ですが、入社数年ということではなく、自分たちで責任を持って、いろいろな決定を行ったり、調整をしたりすることができる中核的な社員のチームです。そういった施策をこれから横展開して、もっと広げていこうという、プロジェクトのパイロット的なものが各地で幾つか出てきております。また、まだまだアイデアを出せるのではないかと思っております。そういうものを今後、JP未来戦略ラボには期待しています。
 それから、JP未来戦略ラボには、そういった個別の収益向上だけではなく、もう少し郵便局全体の業務運営などにつながるような制度論についても、もっと見直すところはないかということを、チームをつくって取り組んでもらっておりますので、できるだけグループ各社を縦ではなく横につないだ発想など、縦割りの壁を破ることに大きく期待をしていきたいと思います。
【記者】
マイナンバーカードの交付事務が郵便局でできるようになりましたけれども、コンビニエンスストアとマイナンバーの新しい取り組みも、何かまた始まるようです。マイナンバーに関連する形で郵便局がさらに自治行政と関わりを深くする次の一手として、何かお考えはありますでしょうか。
【社長】
今お話しになられたように改正マイナンバー法が可決されました。自治行政と関わり合うというのは、それに対して郵便局でかかるコストですとか、その分について補助金を活用できることになり、私どもから見ると非常にメリットが大きいと思っております。
 それから今、自治体からの事務の受託が随分広がってきており、これを郵便局で、5,000局を超えて6,000局ぐらいまで広げていきたいと思っております。まだそこまで到達しておりませんけれども、地域からのニーズは相当高いものと思います。郵便局の大きさとか、自治体の様子によって、私どものほうでやれる事務というのは非常に多様です。郵便局に事務を委ねたい自治体など、多数の自治体の事務について郵便局で取り扱っている状況ですが、順次、自治体サイドも考えられていくと思いますので、今は事務の分野は特定せずに、多様な自治体の事務、例えば証明書の交付などのようなものは問題なく郵便局でできるようになりますが、個別の相談業務などについても、現在、一部もう既に行っておりますが、タブレットを使って直接市役所の担当者と、郵便局の来局者がやりとりをする、そういった相談業務なども十分こなせるような実例も出てきております。
 マイナンバーのようなかなり定型的であり、しかも法律の根拠がないところに穴があいたので、従来から行ってきた自治体の業務の受託をより進めていきたいと思います。そしてその際には、できるだけ柔軟に仕事の内容は郵便局で捉えていきたいと考えています。そして、それに対してのコストを自治体サイドでちゃんとそれなりに負担していただくことが重要になりますので、財源的なものでどのような工夫ができるかということがあります。
 それから、自治体の仕事の中には、地方創生的な仕事が多くなってきておりますが、それには地方創生の交付金が今、措置されております。交付税と同じように、地方創生交付金なども活用しながら、自治体がなかなか手の届かない、しかし、対住民との関係でやれることについて、郵便局でもっとできるところは取り組んでいきたいと考えております。地方創生の総合戦略の中に、2年ほど前に郵便局の位置付けを記載してもらいました。まだここの部分は十分深掘りできておりませんが、これから自治体と相談しながら取り組んでいきたいと思っております。
【記者】
ゆうちょ銀行のΣ(シグマ)ビジネスは、地方創生ビジネスを実現するために不可欠になってくる資金の好循環のための共創プラットフォームづくりだと思います。池田社長はゆうちょ銀行のエリア本部と日本郵便の支社との連携も強化されたいとゆうちょシンポジウムでおっしゃられていましたが、日本郵政グループをつかさどる増田社長として、郵便局の地方での取り組みと、何か連動されていきたいというお考えはありますでしょうか。
【社長】
Σ(シグマ)ビジネスは、ゆうちょ銀行の資金を地方で有効活用するということです。ゆうちょ銀行がこれから問われるのは、さまざまなラインアップをこれからどう発掘し、どういうものをちゃんと事業として仕立てていくのか、そしてそれが地方でちゃんと回るビジネスになるように仕掛けていくかということです。そのためには、ゆうちょ銀行は各地域にエリア本部や支店がありますが、さらにきめ細かく、地域に深く入っている郵便局で得られる情報をどれだけΣビジネスとしてまとめ上げられるかということが大事になってきますので、エリア本部と郵便局とのつながりを、常日頃からよく情報交換して、情報を吸い上げるということが重要になってくると思います。
 聞くところによると、幾つか地域を決めてモデル的に始めることを考えているようです。そこで何か良いひな型が創り出せれば良いと思っております。地方銀行も含め地方の金融機関に随分こういうお考えはあり、それにある程度長けた会社と組んだりして実施していますが、やはりグループとしては、ゆうちょ銀行とともに行うのは、まだほとんどそのようなことに携わってない郵便局ということになりますが、郵便局の中でも、情報を多く持っている郵便局とか、その地域での差もあると思いますので、そこはゆうちょ銀行と日本郵便の現場で、良いパイプや仕組みづくりについて、これを契機に行っていただきたいと期待しています。そういった話をそれぞれの会社に言っておりますので、これから具体的な動きに私どもも入って、つなげていければと思っております。
【記者】
あと1点。2ヶ月ぐらい前も聞いたのですが、改正郵政民営化法成立から11年経って、もしも見直したほうがいいというように感じられる部分、経営の眼から見て感じられる部分があるとしたら、どのような部分になりますでしょうか。
【社長】
民営化法をどのようにしていくかというのは、当グループにとっても大きな話なので、このような場で公表できるものはございません。今はビジネスを展開していく上で、民営化法に沿って、しっかりと事業を行っていきたいと思っております。
【記者】
話題が戻ってしまって恐縮ですけれども、ヤマトさんから委託を受けるビジネスのところで、現状のサービスよりも配送日数が変わるとか、そういったものがあるのかというところを教えてください。実際のサービスがどう変わるのかということを気にされている一般ユーザーの方が結構多いようなので、ちょっとお聞きしたいです。関連して、以前、日本通運の宅配便事業を統合したときに苦戦された歴史とか、そういうものがあったと思います。今回について、協力会社をしっかりと手配ができているとか、そういう見通しがあるかとか、その辺について増田社長のお考えを教えてください。
【社長】
日数については、今現場でいろいろ調整していると思います。品質を落とさないように、日本郵便で回していくのが一番肝になってきます。詳細を今詰めており、まだしっかりと固まっていないと思いますが、基本は同等なレベルということだと思います。料金も含めて、今いろいろ協議中です。
 それから、日本郵便で配達する荷物が非常に多くなりますので、そこでオペレーションがしっかりと組めるように、ヤマト様からも、配送などについてはサポートを受けることになっています。この間、長尾社長ともお話しをしましたが、ヤマト様もいろいろな協力パートナー、協力会社様がいらっしゃり、そこについての労働問題などについても考えられると聞いています。私どものほうでも、例えばゆうパケットは、今取り扱っているものの倍、今、日本郵便で4億個のものが8億個ほどということになります。パケットソーターで区分できるところもありますが、手作業で行っているところもあります。今度の新商品のオペレーションがしっかりと回るように、先方から当方に移管していただくものを5段階ぐらいに、時期もずらして、順次、場所も見ながら、移管していただくことになっています。その間に、協力会社様のより具体的な協力の仕方なども、よくヤマト様と詰めたいと考えております。
 ちょうど、協業を発表した翌日からヤマト様といろいろな協議が始まったと聞いています。内容の性質上、今までなかなか現場のほうにお話もできませんでしたので、随分現場からいろいろ問い合わせが来ていると聞いています。これから一つ一つ丁寧に対応していきたいと思っております。
(※記者会見における発言および質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)