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2023年8月8日 火曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2023年8月8日 火曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田 寬也
【社長】
日本郵政の増田でございます。まず、令和5年台風第6号による災害に係る被災者の皆様に謹んでお見舞いを申し上げます。日本郵政グループとしても、災害救助法にのっとり非常取り扱いなどを実施しております。詳しくはグループ各社のホームページをご覧いただければと存じます。
 なお、現在台風が九州のほうに近づいているという状況でございまして、窓口を休止している郵便局が、今朝の9時時点で55局ございます。ほとんどが鹿児島県内の郵便局ですが、この後、またさらに陸地に近づくという予報になっておりますので、最大限の警戒をしながら、安全に、業務の遂行に当たっていきたいと思います。
 本日は、「みらいの郵便局コンテスト」を通じて、社員の想いの実現、その第1弾であるコンセプト型のポップアップストア「ズッキュン♡郵便局」のオープンと今後の取り組みについて発表いたします。
 はじめに、本件の施策実施の検討の経緯などについて申し上げます。当グループでは、これから5年後、10年後、20年後の郵便局の姿をグループ社員全員で考える施策として、昨年7月下旬から8月にかけまして、「みらいの郵便局コンテスト」と称して、全社員を対象にアイデアを募集いたしました。お客さまと日々接する社員のアイデアを実現していくことは、お客さまの声を聞くことにもつながるとともに、その実現は新たな郵便局の魅力をお伝えすることによるブランド価値の向上に資する上、社員満足度の向上や当グループの一体感醸成にもつながるものと考えております。
 応募期間が約1カ月と非常に短かったにもかかわらず、社員自身が設定したテーマに基づいた自由なアイデアが合計で1,402件寄せられました。その中でも一工夫されている作品、具体的な事例の検討までされている作品を中心に58件を選び、これを「JPみらい賞」として表彰したところです。これまでコンテストで受賞したアイデアの実現に向け、提案した社員の想いも直接聞きながら、2021年の7月に発足したJP未来戦略ラボを中心に関係各部と連携をして、グループ一体で取り組んでまいりました。
 取り組みの中心となっているJP未来戦略ラボは、会社を支えるフロントライン社員の声やアイデアをダイレクトに取り入れ、グループ横断的に施策を展開できる体制とするため、組織の置き場所は私の直轄組織になっております。また、先例にとらわれない柔軟な発想を形にできるように、グループ各社の若手社員を中心に組成しているものです。
 新しいアイデアを尊重して、そのチャレンジを後押しし、実現に向けた社内外の調整をJP未来戦略ラボが支援していきます。このような取り組みが、上意下達と縦割りになりがちな組織風土の改革につながると考えております。そして、実際にグループの貴重な財産である切手原画を使った「NFTアート」の販売や社会的な課題となっている事業の担い手不足に対応する「あとつぎ探し」支援、そして、「みらいの郵便局コンテスト」の実施など、数々の取り組みにチャレンジをしてきております。
 今回発表いたします「ズッキュン♡郵便局」ですが、こちらはコンテストで受賞した58件の提案の中でも、特に象徴的な案件です。もともと応募の際には「KAWAII(かわいい)郵便局」という名前で、日本の文化の「KAWAII」を前面に出した郵便局、今までの郵便局のイメージを覆す、局内はかわいいものであふれていて、その場で撮った写真が切手になる、気になる人や推しにその場で書いて手紙を出せるポストも設置する、といった社内の若手の提案をくみ取ったものです。
 このままのネーミングでもよかったのですが、より大胆なネーミングとすべきとの意見が担当した若手の中でも多く、想いを届ける象徴、かつ「KAWAII」の象徴であるハートをモチーフに、相手の心を射抜きたいという思いから、ハートに矢を重ねて、「ズッキュン♡郵便局」という名称にしたところでございます。当グループのアプローチが足りていない若年層の皆様に、「郵便局ってこんなこともしているのか」、「郵便局って楽しいね」といったポジティブな印象を持っていただくというのが狙いです。ポジティブな体験の積み重ねにより、将来的なお客さまとなっていただきたい、そうした思いを形にしたものです。
 それでは、改めて「ズッキュン♡郵便局」の詳細についてご説明をさせていただきますので、お手元のプレスリリース資料をご覧ください。
 当グループでは、大切な人に思いを届ける郵便局ならではの新しい取り組みとして、ハートをモチーフに、「KAWAII」を詰め込んだポップアップストアとして、「ズッキュン♡郵便局」をこの夏、渋谷にオープンいたします。期間は、8月17日の木曜日から30日の水曜日までの2週間となります。
 現地ではさまざまなコンテンツを用意しておりますが、デジタル化が進展する現代社会だからこそ、あえての「手紙」というものを打ち出しております。自ら筆を走らせ、大切な人への想いを手紙にしたため、受け取る喜び、そして贈り物を送る楽しさは時代が変わっても色あせないものと考えております。流行の発信地渋谷にて、Z世代をはじめとした若い世代の皆様に体験していただき、郵便局をより身近に感じていただくきっかけにしてもらえたらと思います。
 体験可能なコンテンツにつきましては、お手元のリリースに記載をしてございますが、普段は伝えづらい思いを上手に楽しく届けられる仕掛けが施された「ドッキン♡ハートレター」や、自分の顔でオリジナルの切手がプリントできる「ズッキュン♡切手プリ」など、ここでしか体験することのできない「KAWAII」コンテンツとなっており、若い世代の皆様にも楽しんでいただけるものと考えております。体験コンテンツのほかにも、オリジナルのグッズの販売を予定しております。
 なお、既に記者の皆様にご案内させていただいておりますが、オープン日の8月17日木曜日に、メディアの皆様へ向けた開局イベントを行う予定です。冒頭でもお伝えしたとおり、本件は「みらいの郵便局コンテスト」の実現化の第1弾でございまして、この後も子育て世帯向けのイベント開催、それからデジタル化による郵便局サービスの利便性向上など、お客さまと日々接する社員が中心となって企画した郵便局の将来像の実現を進めてまいります。
 私からは以上でございます。
【記者】
「ズッキュン♡郵便局」の後に堅い質問で恐縮なのですが、金融政策についてお尋ねさせていただきたいと思います。日銀が先月の決定会合で、いわゆるYCCの修正を決めました。修正のタイミングを含めて、これをどのように評価されるか教えてください。また、今回のこの政策修正が、金融2社の事業にどういう影響を与えるかについても併せてお聞かせください。
【社長】
YCCの修正ですが、先だって日銀総裁が交代されました。その上で、日銀で経済や物価、市場機能への影響などについてバランスよく目配りをされた上で今回の決定に至ったのではないかと思います。金融政策自体、日銀の専管事項なので、私どもが評価というわけにいきませんけれども、今申し上げましたように、経済、物価、市場機能というところをよく見ながら、7月のタイミングでの公表になったのではないかと思っております。
 マーケットの動向を見ていますと、多少不安定に推移しているように思えますので、まだ消化が十分なされてないという印象もございます。私どもも市場動向をよく注視をしているという段階です。
 金融2社への影響についてですが、ゆうちょ銀行の方から申し上げますと、一般論でいえば、円の長期金利が上昇しているということで、新規の投資利回りが向上していきますので、経営にはプラスの影響が出ると思います。
 一方で、保有する国債などについては評価損益の悪化要因ともなるのですが、これまでゆうちょ銀行も、その運用については従来から政策修正を見据えたポートフォリオの運用を行っていますので、影響は相当程度抑制されていると思います。したがって、今後全体的には、収益改善の方向にこの影響が寄与していくだろうと見ております。
 それから、かんぽ生命の方ですが、ここは国内債券をポートフォリオの中核としています。したがいまして、こちらも再投資金利の上昇を通じて、将来の収益改善につながるものと思っています。今回の修正で長期金利も上がってきていますが、これはかんぽ生命の経営にとっても好ましいものと考えております。
 BSにどれだけ影響するかという問題がありますが、かんぽ生命の方では、保有する国内債券の大部分を簿価計上される満期保有目的および責任準備金対応債券という形で保有しておりますので、金利上昇によるBSへの影響も限定的と考えております。
 最後に長期金利の上昇など、市場運用環境の好転が大きく長く継続するということが見られる場合には、予定利率の引き上げなど、かんぽ生命商品の改定を検討する可能性があります。これは今後の将来的なものとご理解いただければと思います。
【記者】
ヤマトさんとの協業で2点です。一つ目が、10月から一部地域で「ネコポス」が「クロネコゆうパケット(仮称)」になって、日本郵便さんが配達をするということになると思います。単純計算だと、2025年3月末までに「ネコポス」4億個、「クロネコDM便」の8億個分、物量が増えると。オペレーション面ではどういった部分に懸念があって、対応に向けてどういった体制を整えているかを教えていただきたいのが一つ目です。
 二つ目が、改めてになりますが、長く大規模に持たれてきた二輪の配達網に、より多くの物量を乗せていくことの経営的な必要性やメリットというのをお教えいただければと思います。
【社長】
まず、ヤマト様との協業の関係で、私どもの方で受け持つ荷物が相当増えますが、オペレーション関係では、以前、日通様の「ペリカン便」との統合のときに現場がだいぶ混乱したということがございましたので、同じように現場の混乱などが生じないように、しっかりと要員配置なども含めて、オペレーションをちゃんとうまく回していく必要があります。
 したがって、オペレーションをしっかりとヤマト様とうまくすり合わせてやっていきたいと考えております。まずヤマト様のオペレーションのやり方と、日本郵便のオペレーションの仕方が多少違っていますので、それを現場でよく意見交換をして、どういう形であれば一番スムーズにいくのか、それから要員体制についてどういうふうにしていけばいいのか、これは郵便局単位で、最後はちゃんとすり合わせる必要がありますので、今そこをしっかりとヤマト様側と詰めている状況です。
 今お話がございましたように、いわゆる従来の「ネコポス」を、日本郵便の方で「クロネコゆうパケット(仮称)」としてお引き受けしてまいります。移行段階を5つに分け、段階的に引き受ける都道府県を拡大して、2024年度中に全国における引き受けを実施する予定ですが、オペレーションをしっかりとヤマト様とうまくすり合わせていきたいと考えております。
 ヤマト様とお話をしていると、先方は2トン車が街の中で稼働しているという形態を取っておられます。日本郵便は二輪あるいは軽四輪ということで、非常に小回りが利くということと、薄物、小物の荷物については配達のスピードが相当きめ細かく、速く行われているということがあり、それが当方の強みになっているということですので、日本郵便のメリットが今回も最大限に生かせるようにしていきたいと思います。やはりこういう時代でどうしても郵便物自体はだんだん減ってきておりますので、それにより空いたスペースにそれがうまくはまるよう、もちろん足りないところはまたさらに増やして、両社の協業の成果がより上がるようにしていきたいと思います。
 最後に、今お話の中でございました「クロネコDM便」は、ご承知の通り来年2月までと、少し「ネコポス」よりも余裕があります。こちらは約8億個が一度に日本郵便に来ることになっていますので、そこのオペレーションをうまく回すことを準備期間の間にしっかりとやっていきたいと思います。
【記者】
麻布郵便局と東京支社の上に、「麻布台ヒルズ森JPタワー」が竣工し、今日、記者向けの説明会があって、私も行ってきまして、すばらしい建物を拝見しました。それで、日本一の高さということで、大きなプロジェクトがこの郵便局の上で完成したということで、まずはご感想をお願いします。
【社長】
本日ご覧になったということですが、今お話のとおり、あの場所はかつて麻布郵便局や歴史的には逓信省時代の貯金局、それから逓信省の本省庁舎としても使われたことがありまして、その後、郵政省や国土庁もあそこに入っていた時期がございます。そういうこともございますので、歴史のある、そして、当グループの社員やOBなどには大変思い入れのある場所です。
 私自身も実は国土庁に出向していたときがあり、そのときは麻布台の今回の場所で、2年間仕事をしていたことがありました。そういう意味で、個人的にも大変よくなじみのある場所で、思い入れもございます。そこに約330メートルの、日本一の高さのビルが出来上がって、間もなくオープンするということなので、大変感慨深いものもあります。不動産事業を収益の柱の一つとさせたいと、前から申しておりますが、それに一歩近づくようなものにしっかりとしていかなければならないと思っています。オープンはこれからですが、収益をしっかりと上げられるような、そういう運営をしていきたいと思います。
【記者】
その関連なのですけれども、その収益の柱にする、新規事業ということで取り組んでいらっしゃると思うのですけれども、先日、ゆうちょ銀行株の売却益1.2兆円のうち、不動産のほうにも投資されるということで、今、例えばゆうちょ銀行の株の範囲の中で、例えばどのくらいの割合で不動産に投資されるとか決まっているのでしょうか。
【社長】
不動産開発については、建設コストがこの大体2年ぐらいで、建設資材が非常に高騰してきているのと、それから人のやりくり、労務費自身も非常に上がってきていますので、もう一度、不動産開発について全体の見直しをして、しっかりとした収益の柱にする必要があります。これはタイミングも含めてしていかなければいけないと思っておりまして、今、2025年までの中期経営計画のちょうど中間年ですので、今年の秋からその見直し作業を行うということにしています。
 その中で今申し上げたような大きな環境変化、条件の変化をちゃんと踏まえて、どの程度のものを投資していくのかということを明らかにしたいと思っていますので、具体的な数字などについては、これから見直し作業ということになります。中計の見直しの中で検討して、その上で来年発表していきたいと思っています。
【記者】
中計の見直しの話が出たのですけれども、それ以外の部分で、不動産以外の部分でどのあたりを見直さなくちゃいけないだとか、見直したいだとか、何か方向性みたいなものがもし決まっているところがあれば、お教えいただきたいのですけれども。
【社長】
全般について、もう一度総点検するつもりではあります。収益について、現在の中計を発表する前段階、策定段階でいろいろ条件を設定して、検討した結果が今の中計に落とし込まれているのですが、その後の状況の変化、当グループもベースアップなどがございまして、これは当然必要なことですから、今後も可能な限りそういうことに応えていきたいと思っていますが、そういうことなどもございますし、また、郵便・物流はその中計を発表したときの想定よりもコストが上がっている分だけ厳しくなっております。下方修正をしなければいけない分野があれば、それを打ち返すだけの別の事業ですとか、新規施策をどのように展開をして打ち返していくのかなどを中計の見直しの中で、検討していかなければいけないと思っています。
 現在は2025年度までの中計になっているのですが、次期中計は、何年の計画にするかは決めていませんが、次期中計にもつながるような、特に新しい事業などについての芽出しもしておきたいと思っています。要はどういう分野かというお尋ねでございましたけれども、基本、コアビジネスが一つ大きな分野としてありますけど、それ以外の新規事業の分野も、できるだけ広く議論をしておきたいと思っています。
 したがって、中計の見直しについてはかなり大がかりにやらなければいけないと思っています。
【記者】
ありがとうございます。あと、ヤマト様との協業の中で、会見のときに、ヤマト運輸の専務の方だったと思うのですけど、郵便ポストの将来、そういう何か利活用みたいなことも考えたいみたいな発言もあったと思うのです。今回は全然違うと思うのですけれども、将来、例えばそういう少し開放をして、そこからお金を向こうから頂くだとか、そういうような構想というのは現段階ではあるのでしょうか。
【社長】
今の段階では特にそういう話は持ち上がっていません。郵便ポストについては、ご承知のとおり、総務省情報通信審議会の郵政政策部会のほうで、ポストの本数などについて、今、議論をされております。いずれはその本数とともに、それ以外の活用の可能性についてもいろいろと議論いただけるのではないかと思っていますが、まだその段階まで至っておりません。基本、郵便ポストは郵便事業のために設けられた、お客さまの利便性を高めるためのものということです。日本郵便のほうでも「ゆうパケットポストmini」というポスト投函商品をこの間発表しましたが、そういうことも、今後、活用法としてあり得ると思っていますが、将来の動向については郵政政策部会のほうの議論を見ながら、また考えていきたいという段階です。
【記者】
あと、ちょっと外れているかもしれないのですけれども、新しいGDPが2025年に策定されるということで、その大きな論点の一つにウェルビーイングがデジタル化とグローバル化と一緒に入ってきたみたいなのですけれども、ウェルビーイングというと、今まで郵便局がやってきたこととすごく親和性があるのかなという気はしていて、これからの公共サービスだとか、公共サービス的なサービスだとか、あと、それをビジネスにしていくだとか、そのあたりのことを含めて、将来像というか、お話しいただけないでしょうか。郵便局との関連性についてどういうふうに感じられるのか。それが経済指標に入っているというか、論点に入っているということに対してのお考えをお聞かせください。
【社長】
ウェルビーイング、最近よく使われますが、かなり感性というか、そういうところに訴える分野もあると思うのですが、郵便局ですとか、当グループの提供しているサービスについて、今お話があったように公共サービス分野、あるいは準公共、公益的分野に伸ばしていく必要があるのだと思います。それは地域ニーズの観点などから、そのような分野により伸ばしていく必要が社会的要請としてあるのではないかと思っています。ビジネスとして、あるいは経営の数字としてどのような形でなるのか、多分、それとは少し離れた別の観点でそういうことをこれからより深く考えていかなければいけないのではないかと思います。
 もちろん、そのことによって経営に重しをかけるようなことはできませんので、あくまでも損失を覚悟とかではなく、しっかりと持続可能な形でということになりますが、ただ、こういうウェルビーイングと言われている分野でのサービス、あるいは、そういう分野での役割ということをより意識していくことがこれから多くの企業に求められると思いますので、私どもも中計の見直しの中で、そういう問題意識も持ちつつ、見直しの検討をしていきたいと思っています。
【記者】
あと1点だけ。先ほどもご質問ありましたけれども、「麻布台ヒルズ森JPタワー」でコンパクトシティーって言われていたのですけれども、金融機能というのは何か計画ってあるのですかね。郵便局はあの中に入っていくってことでいいのですか。
【社長】
ビルの中に入ります。
(※記者会見における発言および質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)