現在位置:
日本郵政ホームの中の
日本郵政株式会社の社長等会見の中の
2022年9月30日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2022年9月30日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田 寬也
【社長】
本日は私から4件発表します。
 まず1件目です。日本郵政グループのNFT企画の始動について説明します。
 当グループは、近年成長を続けるNFT、すなわちNon-Fungible Tokenやメタバースを活用して、お客さまへ新たな体験価値を提供していくことを検討してきました。その第1弾として、楽天グループさまが運営する販売プラットフォーム「Rakuten NFT」において、日本郵便が提供する切手原画のNFTアートを10月3日の月曜日17時より販売いたします。
 これは当グループと楽天グループさまの、昨年来の連携施策の一環として、双方の強み、特色を生かした新しい取り組みです。今回のNFTアートは、日本郵便が通年で販売し、皆さまに親しまれている動物、そして花、さらには景色、これらをモチーフにした普通切手の原画15種類です。一本一本丁寧に描かれた動物の毛並み、繊細に表現された花、奥行きのある景色など、普通切手のサイズでは気づけない魅力を、高画質の原画データを通じて再発見いただけます。日頃切手をご愛顧いただいているお客さまはもちろんのこと、全てのお客さまに対してNFTの新たな技術を活用し、当グループが提供する商品の魅力を発信していきます。
 第2回目以降は、幅広い世代の方に人気のある「ぽすくま」を題材としたNFTアートや、人気のある特殊切手の原画などを順次販売していく予定です。どうぞご期待下さい。
 続いて2件目です。このたび、郵便局ネットワークを活用した取り組みとして、空き家のみまもりサービスの試行を開始することとしました。
 日本全国の空き家数は2018年で849万戸、空き家率にして13.6%となります。これは年々増加してきており、シンクタンクのシミュレーションによりますと、2038年、今から16年後には1,367万戸、空き家率が21.1%となると試算されています。人口動態などを考えると、ほぼこのぐらいの率になってくると予測をされています。
 防災、衛生、景観などの観点において、空き家が及ぼす悪影響が各地で顕在化してきています。また、空き家の所有者の中には、居住地が離れているため、恒常的、定期的なメンテナンスが困難な方々もいらっしゃいまして、思い出の詰まった大切なご実家などの維持管理にご苦労されていると考えます。そうした課題の解決策の一つとして、日本郵便では、全国津々浦々にある郵便局ネットワークを活用した空き家のみまもりサービスを試行することとしました。
 具体的なサービスの概要ですが、基本サービスでは、定期的に郵便局の社員が空き家を訪問して、空き家物件の外周りの状況や戸締まりなどを確認し、写真つきの報告書でご報告します。また、オプションサービスとして、空き家物件の鍵をお預かりして、物件内、すなわち空き家の家屋の中の換気や通水、郵便受け箱の片づけなどのほか、災害後など、ご利用者からの要請の都度、物件を見回って報告するサービスも提供してまいります。
 今回試行にご協力いただける方を、先着順で100名程度募集します。期間は来月10月28日から来年の1月末まで、日本郵便のホームページで募集します。具体的なサービス提供は、来年の2月から再来年2024年1月までの1年間を予定しています。
 空き家を所有するご本人に代わって、近隣の郵便局社員が現況をチェックすることで安心をご提供し、空き家問題による地域社会の課題解決に貢献をしていくと考えています。この試行の結果を踏まえて、実運用に向けた検討をさらに深めてまいります。
 続いて3件目、配送ロボットの実証実験についてです。日本郵便は、オフィスビルの物流機能の向上を目指して、愛知県名古屋市のアーバンネット名古屋ネクスタビルにおきまして、10月3日月曜日から、10月21日金曜日まで、ビル内のエレベーターと連動してフロア内を移動する配送ロボットにより、配送などの実証実験を行います。
 日本郵便ではこれまで、2020年3月にこの大手町本社ビルで実験的に社内便の配送を実施しました。そして昨年、2021年3月には千葉県のオートロックつきマンションで配送ロボットを活用した配送の試行を行ったところですが、今回初めてオフィスビル内のテナント企業さまの郵便物などの配送および取り集め業務を行います。
 日本郵便は今後も配送ロボットやドローンなど新しい技術を活用して、輸送・配送ネットワークの高度化、効率化を進めてまいります。今年度は、今回の配送ロボットによる配送と同様に、ドローンについても実運用を見据えた実証実験を行います。まずは2023年度以降の実運用を見据えて、実用化候補地において、現行制度に即した実証実験を行います。さらに今後、国が予定している航空法の改正に基づく実証実験にも積極的に取り組んでいきます。このドローンの関係についてはまた、計画がまとまり次第、皆さまにお知らせします。
 4件目、グループ内部通報制度への取り組み状況についてご説明します。昨年9月1日から各種通報・相談を一元的に受け付け、適切な窓口に通報・相談でき、情報システムの活用に通報・相談の秘密保持も徹底できるワンストップ相談・通報プラットフォームを開始しました。通報の受け付けから調査など、一連の通報の対応を外部の弁護士などから成る外部専門チームが実施することで、客観性、公平性を確保する仕組みを導入しました。こうした新制度導入から1年がたちましたので、この間の内部通報制度の取り組み状況をご報告します。
 新制度導入当日である昨年9月1日に、私の動画メッセージの発信を行い、全グループ社員に対して改善策導入の趣旨を伝えました。従来から制度はあったのですが、昨年9月1日に制度を大幅に改善したため、その改善された新制度導入の趣旨を伝えたところです。また、制度を所管する日本郵政の内部通報制度管理室において、定期的に情報紙を発行するなどして、グループ各社でも新しい制度の周知に取り組んでまいりました。
 本年4月からは、外部専門チームにおいて、新たに電話とeメールによる通報などの受け付けを開始し、本年6月の改正公益通報者保護法の施行に当たって、私の動画メッセージを配信し、より厳格に通報者の秘密保護の徹底に取り組む旨を伝えたところです。こうした取り組みの結果、より多くの社員から内部通報窓口に声が寄せられるようになりました。
 グループ全体の2020年度の通報件数が2,006件だったのに対して、2021年度の通報件数は2,302件となりました。新制度は9月という途中段階から導入しているため、2020年度と21年度との正確な比較ではありませんが、半年強、7カ月の導入で、2021年度の通報件数全体で2,302件です。
 新制度導入前後で申し上げますと、新制度導入前の1年間、一昨年9月から昨年の8月までの通報件数が1,991件であったのに対し、新制度導入後のグループ全体の通報件数が3,265件となっており、約1.6倍の大幅な増加となりました。このように新制度導入から1年が経過し、内部通報制度の利用は着実に進んでいると受け止めています。
 一方で、いまだにグループの隅々まで内部通報制度の浸透が行きわたっておらず、制度の利用に対する不安感などがあるとも考えておりますので、より多くの社員が信頼し、安心して積極的に制度を利用できるよう、引き続き改善を続けてまいります。
 来月以降、制度の利用方法や通報者保護の仕組みなどを丁寧に説明するため、キャラバン活動の実施を行います。また、窓口担当者のスキル向上、グループ共通の電話受け付け対応体制の整備などの改善を行います。
 また、内部通報制度を利用して寄せられた社員の声については、通報者保護の徹底を図りながら、統計として分析を行い、問題事象や課題を把握し、経営改善などに生かしてまいります。さらに今後は内部通報制度の利用実績などについても開示・公表の方針を策定し、適切な開示・公表を行ってまいります。
【記者】
先般、政府、日銀が24年ぶりに為替介入を実施しました。これに関する増田社長の所感と、為替が円安方向にずっと張りついているという状況で、日本郵政グループへの業績への影響をどのように捉えているかお聞かせください。
【社長】
9月22日の夜だったと思いますが、政府から為替介入を行ったということで発表がありました。
 受け止めとしては、為替相場というのは市場で決定されるのが原則だと思いますが、投機による過度な変動が繰り返されると政府で見立て、見過ごすことができないということで介入を行ったと理解をしています。政府の発表もそのような趣旨だったと受け止めています。
 当グループに対しての影響についてですが、まず、海外の子会社であるトール社については、連結決算上、外貨建ての財務諸表の換算になっているため、円安の影響を受けて、営業収益や営業損益が増加、また資産・負債が増加するなど両面のいろいろな影響が出ます。今年度の第1四半期決算におきましては、前年度と比較して、為替の影響で営業収益はプラスの影響が出ており、163億円の増収になっています。EBIT、営業損益でも、ごくわずかですが、6億円の増益効果ということになっていますので、トール社においては、円安がプラスに働いてきているということが、その部分からは見てとれます。
 そのほか、日本郵便で考えますと、円安で輸出しやすい環境になってきておりますので、輸出が好調になった場合は国際郵便の引き受けが増加してくると思いますが、一方で、ウクライナ情勢などもあり、一定の国あるいは地域宛ての国際郵便の引き受け停止を継続していますので、輸出が好調だとしても、それによる大幅な増収益ということは見込めないと思っています。
 また、これは社会全般についてですが、輸入コストの上昇は進んできますので、例えば原油価格高騰、それから諸物価高騰、そして、水道光熱費の増加などが既に起きています。まだ数字で経営にマイナスの影響を及ぼすようなものにはなっていませんが、相当多くの車両なども使っており、ガソリン代なども高くなっていることから、こうしたさまざまなコスト上昇が今後どれだけ影響があるのか、状況を注視しているところです。
 金融2社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命については、保有している外国証券や外貨建ての債券について、為替リスクの大半をリスクヘッジしているため、今般の円安による収益の影響というものは極めて限定的であると受け止めています。
 日本の今の円安についてだけ見ればそういうことですが、一方各国でアメリカのFedはじめ、かなり急激な利上げが行われているため、保有外国債券の時価の下落や、ヘッジコストの上昇などは今後出てきます。そうしたことは織り込んでおかなければいけないと思いますが、引き続きさまざまな市場動向がこれから変動していくものと思いながら、その状況をよく注視していきたいと考えています。
【記者】
空き家のみまもりサービスの発表がありましたが、以前から取り組んでいらっしゃる、高齢者のみまもりサービスの足元の状況をどういうふうにご認識されているのか伺いたい。それに併せて、明日10月1日で民営化15年になるわけですが、新規ビジネスの展開が、当初描いていたような目標から、なかなか現実は進んでいないように拝察する。日本郵政グループとして、金融も含めた新規ビジネスの展開はなかなか思うように進んでいないのか、精一杯やっている状況なのか、ご認識を伺いたい。
【社長】
本日発表した空き家のみまもりサービスの趣旨は、地方で抱えている人口減少や高齢化が全体として進んでいることに対して高齢者のみまもりサービスが必要であり、お子さんが都会に出ていって、いわゆる老老の形で生活している所帯であったり、あるいはどちらかがお亡くなりになったり、施設に入られたりして、単身で住まわれている方、そういう方のみまもりサービスが必要だということと同時に、それがさらに進み、空き家になって処分もなかなか難しいという、そういった空き家についても当グループとしてできる範囲でサービスを提供しようということです。
 高齢者のみまもりサービスについては、ニーズが非常に高まってきており、さまざまな企業グループがみまもりサービスを、それぞれのリソースやアセットを生かしながら展開をしてきています。その中で当グループもみまもりサービスをやっていますが、それによって、大きな収益を確保するという形にはなく、そもそも社会福祉系統の分野に熟知した社員が少ないため、みまもりサービスは、自治体との連携を成功させる上では非常に重要なものの、当グループでサービスを提供するときは相当限定的だろうということは、社長に就任する前から思っていました。
 しかしながら、AIスピーカーなどを活用しつつ、人のサービスとうまく組み合わせるなど、やり方はあると思いますので、それを今、当グループでも取りかかったり、利用料金をもう少し利用しやすいような形にならないかという工夫を行ったりしています。
 人のみまもりサービスの契約数は今手元に持っていませんが、一定数の契約は獲得できていると思いますが、利用の内容をもっとうまく工夫すれば、より契約数は増やせると思います。
 ただ、私はこのサービスであまり稼ぐということではなく、地域を支える上での郵便局らしいサービスにつなげていきたいと思っています。もちろんできるだけ収益を上げたいということはベースにありますが、やはり郵便局が果たすべき、ネットワークが提供する価値として、これを生かしていくべきであり、むしろ他社でまだ取り組まれていない今回の空き家のほうが、郵便局員が行うにはやりやすい部分も多いと思います。しかし、やってみなければ分からないこともあると思いますので、過疎地域で抱えている問題を、当グループが持っている郵便局の全国ネットワークで解決していくという考え方のもと、提供できるものをより磨いていきたいと思っています。
 新規ビジネスの展開についての見方はさまざまあると思います。私自身が考える新規ビジネスの最たるものは、私の就任以前からのものになりますが、例えば不動産の分野などがあります。民営化前はほとんど取り組まれておらず、2018年にようやく日本郵政不動産という会社をつくって、都市部にあるものについて、容積率の有効活用がほとんどできていなかったものを有効に活用するなど、いろいろと取り組みを行ってきました。
 不動産は収益的にも賃貸料が数十年にわたって安定的に入ってきます。当グループとしてみれば不動産のアセットを多く持っていますので、まだまだ十分取り組めていない部分もありますが、これからもしっかりと取り組みたいと思っており、それが新規ビジネスの最たるものと思っています。
 そのほか新規ビジネスについては、幾つか、小粒のものも含めて出てきていますが、全体として見ると、やはりDX基盤をもっと整備するとより効果が出てくると思います。あるいはカーボンニュートラルを前提に、新しい事業の投資では、ESG投資などを増やしていく分野の中でビジネスとして成長させることが新規ビジネスの考え方としては非常に重要になってきますし、これについてもっとさまざまな仕掛けができないかと思っております。他の企業で既に提供されているところもありますし、当グループの全国ネットワークである郵便局も撤退せずに、郵便局のネットワークを生かしつつ、これからの社会で要請されるサービスにどれだけ入っていけるかだと思っています。
 例えば今、共創プラットフォームということで東京電力さまと組んで実験的に導入している急速充電器を、沼津郵便局や小山郵便局において地域の人たちにも使っていただきながら、地域のEV化に貢献するといったことをやっていますが、こうした取り組みを広げ、全国の郵便局ネットワークを活用できるよう検討していきたいと思います。
 おっしゃるとおり、新規ビジネスについてはまだまだ途上であり、これから伸ばしていくべき分野ですが、だいぶ形になってきた不動産を別にすると、私としては、そういう新しい時代の要請にかなう部分、あるいは人口急減、急激な過疎化のような地域にもいろいろな方が暮らしていらっしゃるので、そういう方々に欠くべからざるサービスを当グループの特色やリソースを生かしてビジネス化できるものはビジネス化していきたいと思っています。
【事務方】
先ほどご質問いただいた、ご高齢の方のみまもりサービスの足元の状況ですが、9月時点で契約中の契約は約4,600件、休止中も入れると約5,100件程度ご契約いただいています。
【記者】
本日発表がありました内部通報制度について、件数が1.6倍に増えたというのは非常に興味深いと思いますが、社内、社外、あるいは事業会社ごとにあるかと思うので、件数の前提を少し丁寧に教えていただきたい。それと併せて、通報の後、処分であったり、問題の改善、被害の回復などにつながったものが、定性的にどのようになっているのか、何か把握されていることがあれば併せて教えてください。
 また、件数は社内も社外も事業会社の個々の窓口も全部含めた件数という理解でいいのでしょうか。
【社長】
件数はご指摘のとおりです。
【記者】
そうすると、大きな動きとしては外部の窓口をつくったということだったと思いますが、増えた効果というのは、単にそのワンストップができたからなのか、どのように受け止めたらいいのかもう少し、細部についてお伺いしたい。
【社長】
当グループの内部通報件数について、会社別のものは日本郵政のホームページで開示をしています。会社別では日本郵便が一番多いですが、どのような件数になっているのかは、今週開示しておりますので、それをご覧いただければと思います。
 内部通報できたものは、それぞれプラットフォームを通じて、ちゃんと調査するものは調査をして、最終的にどのようにするかという改善策につなげていきます。具体的な通報を、その根っこでどのようなことが原因になって生じたのかということを分析して、例えば業務のやり方、職場環境などさまざまなことについての改善策につなげていくという取り組みを行っています。
 今のところ、通報について、2,000件を全体としては超える数になっていますが、その後については、制度が動き始めて時間もあまりたっていないことから、今のところ公表できるものはありません。内部通報があったものについて、その利用実績や対処などについて今後開示をしていくか、公表していくかという開示・公表の方針を今検討しています。通報者の方が、そういったことを望むか望まないかという問題もありますので、方針、考え方がまとまり次第、それに則って開示・公表していきます。現在開示しているのは、全体のまとめた数字のみとなります。
【記者】
民営化して15年が経つ日本郵政グループがどうだったのか、いま一度振り返っていただきたい。1つは、いろんな識者の方に聞いていると、かなり変化に乏しい、スピード感がない、それから土曜の休配も含めて利便性はむしろ15年見渡すと下がっていると。窓口の営業時間が短くなったこともありました。こうした15年間の民営化の利便性はどうだったのか。
 加えて、新規事業も振り返ると、確かに不動産というのは1つの成功例かもしれませんが、やはり失敗した事例がかなり目立つと思います。今掲げているネットワークを生かした新規ビジネスができれば非常に貴重だと思いますが、逆に過去15年、どうしてそれができなかったのかなという疑問も生じてしまう。過去15年の新規事業に対する取り組み、足りなかったところを特に、どのようにお考えでいらっしゃるか教えてください。
【社長】
この15年の歩みを振り返って、私は、2万4,000の郵便局ネットワークを民営化した後、維持できているということが、非常に重要なところではないかと思っています。この15年間に、やはりさまざまな地域のネットワークはほとんど、都市部に撤退をするなどがありました。2007年10月に、民営化になったあの頃一番言われていたのは、民間企業になった途端に、郵便局の数を大きく減らすのではないかということです。国会での質問でも、郵便局を減らしていないかとかいうことを聞かれたものです。
 こうしたリアル拠点で最後に残るのは、自治体、それから警察と郵便局ぐらいではないかと思っていますが、自治体はもう支所や出張所を維持できなくなり、どんどん数を減らして、むしろ郵便局が肩代わりをしています。警察はほかでは代替できませんが、郵便局はサービスの内容、レベル、さまざまご批判などもあるかもしれませんが、従来5人いたところが3人になったり、2人になったり局員の人数は減ったりはしていますが、リアル拠点を維持できており、最近は、急激に増えつつありますが、自治体の業務の肩代わりを始めており、そうした郵便局のネットワークを今後も可能な限り維持していく、地域の人口減少の数字と明らかに違う形で守ってきているというのが、この15年の中で大きくやれてきたことではないかと思います。
 プラスで何か新しいことをしていくことも大事ですが、これだけ地域の姿が急激に変化していく中で、以前のサービスをずっと維持していくというのは、実はかなり地味ですが、それがなくなったときの姿と、それから今ある姿とまた比較するのもなかなか難しいものです。私はそれが維持できていて、それによってさまざまなサービスを基本的に展開しているというのは、民営化されつつも、ただ単にコストカットだけではない考え方で、インフラを維持している企業として、歴代の経営者が取り組んできた成果ではないかと思います。
 一方で、おっしゃるとおり、普通扱いとする郵便物・ゆうメールの土曜日配達の休止や、窓口の営業時間を短縮したりということはありますが、これは今の利用状況からも必要な措置であり、また中で働く社員の適正な働き方を確保する上でも、深夜の時間帯の業務を翌日にずらしたりということは、どうしてもしていかなければいけないことだと認識しています。その辺りのサービスについては、私どもでもさらにご利用者の皆さま方にご理解いただくようにしていかなければいけないと思いますが、やはりこのサービスレベルを極力低下しないようにしつつ、今の働き方改革に沿うような形にしていく上で、ぎりぎりのところのバランス取ったやり方だと思っています。
 これから新たな利便性を向上していく上で、リアルの拠点というところは守っていきたいと思いますが、よりサービスレベルを向上させる上では、デジタルを使って、リアルの営業時間は減らすけれども、例えばスマートフォンで利用できるデジタル上のサービスは24時間365日ずっと開くなどといったことで補っていく必要がありますし、むしろ世代間の交代が進んでいけば、そちらが主力になってくると思いますので、そうしたサイバー空間上のネットワークの構築をより急いで、郵便局全体が提供するサービスを質的にも向上できればということで経営に取り組んでいるところです。
 これからそういった郵便局ネットワークを当グループだけが独占して使うのではなく、他企業や自治体も含めて利活用するというような形にして、今、都市部でも郊外を中心に、人口動態が急激に変わりつつありますので、そういったところでの生活を守ることについて、企業として貢献できればと思っています。
【記者】
新規事業について、不動産は確かに好調だというのは承知の上ではありますが、15年間見渡したときには失敗が目立つし、なかなかスピード感がないということについては。
【社長】
他社の例になってしまいますが、例えば昭和62年に国鉄がJRに民営化された後の取り組みを考えてみますと、やはり新規事業へ数多く取り組まれており、それからだんだんに収斂してきたというか、一気に広げた上で、多くのものをまた整理するといったことをなさったと思います。
 一方、当グループは新規事業について、それほど多く取り組んではいないと思います。支社単位で取り組んでいたものも含め、そこで消滅していったものもあるのかもしれません。全体像を把握しているわけではありませんので、おっしゃるとおりの事業もあると思いますが、私は、当グループに、何か新しいことがあればやってみようという雰囲気を育てていきたいと思っています。
 もちろん新規事業で消滅していったものが無駄な投資になることは問題なのかもしれませんが、それよりも、新たにチャレンジしていくことをいろいろ推奨していきたいと思います。特に当グループのネットワークをうまく利用するアイデアをもっと出したいと思っています。
 ただ、当グループの場合にはまだ民営化法上の業務範囲についての制約があるため、その範囲の中で取り組めるものになります。それがどのように新規事業について影響が出てきているかというのは、細かく分析しているわけではありませんが、金融2社はやはり新規業務については相当、制約を受けているという要素があると思いますので、そのことも、新規事業についての取り組み数やマインドに影響している部分はあると思います。
【記者】
2万4,000のネットワークの維持について、この15年間それを維持してきた他方で、雇用も1割以上減り、働く時間も減り、それから郵便サービスは少なくなってと、やはりコスト削減はかなり進めて、そこでも利益を維持してきた面があるかと思いますが、基本的には郵便局網を維持して、かつその間、新規事業が振るわなければ、コスト削減をしていかないと、郵便物が減ったり、保険契約が減ったりするのを賄えないと思うのですが、そこに将来、限界に近づくような心配は、懸念はないのかどうか、これからそういう方向、そのまま進むということに何か不安材料はないのかどうかご見解お願いします。
【社長】
郵便局の数や、配置、提供するサービス内容、それらを地域的にいろいろ見ていく必要があると思っています。過疎地域を中心に地方部のところは、郵便局を維持する社会的なニーズがかなり高いと思います。
 それを1局ごとでの収益で賄うわけにいかないので、エリアでまとめて相互に補完し合いながらネットワークを維持しています。そこに新たに自治体サービスなどの地域で欠くべからざるものに対して、これは総務省でも今、地方交付税措置など地方財政対応のことも考えてトライをされているようですが、そういった理解をどれだけ広げられるかによって、コスト削減の程度も変わってくると思います。
 したがって、仕事のやり方やDXを使ったサービスの仕方というのを、今、いろいろと考えているところです。また、地域で必要不可欠なサービスをもっと掘り起こしたり、追求したりしていくことが必要ですし、社会的なニーズに応えるという意味では、まだまだやる余地があると思っています。
 一方で都市部などについては、今の郵便局はかなり稠密な配置になっておりまして、サービスを代替する企業、代替機関も相当ある中で、そこのサービスをどうするか、これはいろいろと考えていく必要があると思っています。身近に郵便局があるというのは、他企業にもお使いいただく上で、ある種社会インフラとしては、ネットワークを都市部も含め、全国共通で維持しているということが非常に強い武器になりますので、今まで社員5人、6人で対応したところを、もっと人を削減したり、一定のエリア内の郵便局で人員をお互いに、業務範囲に応じて融通し合ったりということは、もっと柔軟にきめ細かく行っていくということを考える必要があると思います。まず、そうしたことをやり尽くす、それから、今後人口動態が少しずつまた変化していく可能性もありますので、そういったことをよく見た上で、この郵便局のネットワーク水準の維持を考えていきたいと思っています。
 日本全体でどの企業分野も、どのサービス分野も、今直面している問題ではありますが、当グループは一番そのあたりをよく見ておかないといけないと思いますので、来年また全国で市町村ごとの30年先までの人口動態の詳細な分析が出ると思いますが、よく分析した上で将来どうするか考えていきたいと思います。
【記者】
内部通報制度について、先ほど増田社長、グループの隅々まで行き渡っていないという認識を示されましたけれども、それの根拠というのは、どのあたりになるのでしょうか。
【社長】
担当部署で社員のアンケートを取った結果として、発足以来、趣旨が十分に浸透していない、まだ通報することが身元の調査のようなことにつながるのではないかと不安に思っている人もいるということです。
【記者】
前の1年が1,991件、今度の導入後の件数が3,265件ということで、今まで出てきてなかったものが出てきたということでは、増えたのはいいことだと思いますが、一方でこの内部通報が3,265件もあるような会社というのはかなり問題があるのではないかと思いますが、こうした状況については、増田社長はどのように受け止めますか。
【社長】
この分野では、通報率という概念があり、当グループの場合、全体の社員数から見ると、まだまだ少ないということのようです。制度が機能していると、本来もっと多くなるということのようで、具体的に他企業で通報制度がかなり整備されているところは、通報率はもっと多くなっているということです。むしろ、当グループの場合には、母数となる社員数も大変多いので、通報せずに潜っているというか、そういうものがまだあるのではないかなと思っています。
【記者】
360度高性能監視カメラは、昨年金融庁に対して、こういったものを導入していくという考えを示していたと思いますが、現在の実施状況について教えてください。九州の一部で試験運用が始まって、2026年までに全国に展開するという理解でいいのでしょうか。
【社長】
既に配置されているカメラがもう耐用年数相当が過ぎていることもあり、それによって、今回の更新ということが基本にあります。今回計画している、360度カメラについての導入は、2035年度ぐらいまでかけて、長いスパンで運用を考えています。
 導入のスケジュールですが、今年度はまだ実施しておらず、一部試しにカメラでどの程度映像が映るかということを確認している程度と思います。今回の郵便局で使用している防犯カメラの更改については、防犯カメラの設置のみならず、故障、取替などの維持管理を含めた契約内容を予定しており、2035年度までの運用を予定しております。
【記者】
これは局長とか局員の犯罪をも監視できるような360度の監視カメラのことですか。
【社長】
撮影の範囲は360度です。当然のことながら、何か不審な動きがあればアラームが鳴ってそこを見たりなどすることはありますが、それだけではなくて、例えば土日や無人のときや何か災害があったときに、郵便局の機能がちゃんと保たれているかといったことまで含めて、いろいろ確認できるよう、多用途な使用を考えておりますので、その中に当然のことながら犯罪の抑止などについても含まれると考えていただいて結構です。
【記者】
2007年のときは1万8,000局に設置ということで、700億円かかったと思いますが、今回は幾らかかるのでしょう。また、これは2007年に設置したにもかかわらず、プライバシーの監視につながるということで、2009年以降撤去ということになったというのは違いますか。
【社長】
2007年のときの経緯は、私も詳しくは存じ上げず、ちょうど私が総務大臣をやっていた頃にそういった話があったと思うのですが、確か撤去ではなく場所を切り替えたという話を聞いたことがあります。
 なお、今回の金額については、これから入札によって調達をしていくため申し上げられない状況です。
【記者】
規模感としては、数百億円というのはその通りでしょうか。
【社長】
今の機材と台数からすればそういうことになると思いますが、具体的には入札など、これから手続きを取りますので、お答えは控えさせていただきます。
【記者】
空き家のみまもりサービスですが、日本郵便の保有するデータ活用を、自治体や企業に今後どのように働きかけていきますか。
【社長】
日本郵便で持っているさまざまなデータがありますが、データを利活用する際には順番があり、まず、特に自治体の災害などの対応について、日本郵便の持っているデータを活用するということが、最優先で言われています。これは昨年度から今年度にかけての総務省の検討会でそういう話になっていまして、災害など緊急時に生命、財産などを保護するということで、自治体が活用するときに、私どもも協力をすることを最優先で考えていきたいと思います。
 さらに、郵便局が持っている情報をどのように地域にお使いいただくかということですが、私は、具体的には自治体などが入って、さまざまな自治体の公的なサービスにお使いいただくことを、一つ一つ整理して、それで考えていく必要があると思っています。
 それから、データがどのようなものかによっても内容が変わってくると思いますので、個人情報で極めて機微に触れるようなものはご本人の同意がないと活用が難しいため、本人同意があればいろいろな形につなげられると思いますが、やはりそのあたりは公的なところが間に入るなりして、その上でこの郵便局のデータを使っていくことが重要だと思います。
 逆に言うと、地域の公益性をしっかりと高めていくためには、そうしたものを優先に、これから郵便局のデータを活用していくということが必要になってくるのではないかと思います。あとは、個別具体的に、さまざまなケースごとに、これから考えていくべきではないかと思っています。
【記者】
今後マイナンバーに関連した郵便局の可能性を検討されていることはありますでしょうか。自治体の首長の方が、銀行口座と紐づけないと、マイナンバーは本格的に広がらないのではないかとセレモニーで発言されていましたが、例えば、将来、ゆうちょ口座と紐づけするような構想というのはありますでしょうか。
【社長】
マイナンバーについては、政府において、自治体で発行するという原則は崩していないので、当グループでもモデル的な事業、申請の補助業務、要するに申請者をサポートする、手助けするというところで、今、郵便局がお手伝いをしています。
 ここは政府、あるいは自治体でどう考えるか、特に基本は政府ですが、政府がどう考えるかによっているので、今はそうした法律の立て付けの中で、当グループも協力できるところはぜひ協力していきたいということです。
 実際のマイナンバーの利活用になると、おっしゃるとおり、さまざまなメリットが考えられ、社会保障給付などでも、生活が大変な住民税非課税世帯にピンポイントで支給していくなど、所得制限についても相当柔軟に、スピーディーにやれることがあると思いますが、一方で銀行口座への紐づけなどは全体として大きな問題があるため、当グループのゆうちょ銀行だけが先にということはなくて、そこは全体としてマイナンバーと金融機関の口座の紐づけをどうするかの議論、その動きを見た上で、ゆうちょ銀行としてはどうするかということを考えていくのが順番だと思っています。マイナンバーの利活用についても、今カードの普及率は49%位だと思いますが、さらにそれを高めるためにまた政府のほうで新たな動きや対応を考えると思いますが、その状況をよく見ていきたいと思っています。
【記者】
最近、豪雨が激しくなり、これまで大きな被害がなかった地域が被害を受けるようになってきていますが、先ほど東京電力との協業によるEVの急速充電器のお話も出てきたところ、それに関連して、あれは何か防災拠点にもなるというのを当時やっていたと思いますが、地域防災拠点としての郵便局ネットワークの活用や、また、郵便局の中には地域防災の冊子を作成し、来客者に配布するところもあるようですが、こうした取り組みは広げるべきとお考えでしょうか。
【社長】
日本郵便と、それから各自治体などの包括連携協定の中に、最近見ていると、相当多く防災関係の項目が入っています。
 したがって、そうした自治体をはじめ防災機関側でも郵便局に対しての期待が大きくなっていると思います。災害時は、身の安全性を確保するのが最優先となります。郵便局は防災についての専門部隊ではありませんから、そこは限界があると思いますが、連携協定なども、随分災害関係で件数が増えてきていますので、期待感が高まっており、しっかりと協力していきたいと思います。
 本日、多くの報道機関の方がお集まりですが、NHKさまとも防災協定を結んでいまして、皆さまテレビをご覧になるときの、地域の大雨、災害の状況、道路状況はどうなっているかということは、かなり的確、適切に、必要な情報を郵便局長が提供できる部分があると思います。そうした役割や、当グループでやれる業務について、生命、身体、財産の安全を確保する上でお役に立てるということであれば、積極的にさまざまなところに協力していきたいと思います。
【記者】
4月からかんぽの新しい営業体制が始まったと思いますが、なかなか営業成績が上がらないという話も聞いています。それはかんぽ側の営業の話だと思いますが、先日、9月15日に、業務改善計画の報告を金融庁と総務省に11回目をされたと思いますが、その中で郵便局の営業体制について、支社に上半期の調査を行ったということで、それはなぜ行ったのかお聞きしたところ、一部の金融商品について、窓口担当者が変更になっていることから、移行後の窓口の営業体制に問題が生じてないかというのを調査したという話を聞いているのですが、具体的に何か、うまくいっているのか、それとも何か問題があったのか、お伺いします。
【社長】
郵便局の窓口で取り扱うものが問題になっているということは、聞いておりません。4月に営業体制が変更になって、窓口の役割も以前と変わりましたので、それでおそらく状況を調べたと理解しておりますが、少なくとも私のところに日本郵便から具体的な報告が来ているということはありません。
 かんぽ生命の営業は、以前、2018年頃に比べると、件数など、特に新規契約などは少なくなっていますが、ここで気をつけるべきは、2018年の数値は、不適正な募集問題を起こす前の相当無理をして契約を取ってきた数字だと思いますので、そういうことを考えて、現在、かんぽ生命では二つの取り組みをしています。一つ目は保有契約を大事にしていくことで純増目標をつくること、二つ目はフォローアップ活動など、お客さまに対してどれだけちゃんと対応したかという活動目標です。営業ですから、必ずそういう目標は必要だと思いますが、以前のように、ただ契約を乗り換えさせるといったことにはつながらないように今取り組んでおり、ちょうど半年くらいたちましたが、その考え方はしっかりと維持して、これからもやっていくべきだと思います。
 改善点は、今後分かってくることがたくさんあると思います。かんぽ生命の幹部も、フロントラインミーティングなどで、お盆前と、また年内にもう一度やる予定です。拠点にコンサルタントを集約しましたが、モチベーションなどのマインドを上げていくために、彼らとコミュニケーションを取って、親密にやっていくと同時に、今は高度な商品が多くなってきていますので、やはり知識やスキルについても、繰り返し、研修ビデオやロールプレーイングなどの研修を実施して、向上させていくということが必要と思っています。
 私も出張の都度、郵便局に顔を出して、かんぽサービス部を訪ねています。この下半期に向けて、正しい営業活動がより積極的に行われるようにしていく必要があると思っています。かんぽ生命はより現実に即した形で今動いていると思います。大きな問題が発覚して以降、営業をずっと止めて、そこから再スタートし、新しい商品も投入して実際に動き始めたところです。4月、5月は見ているとなかなか足が動いていなかった感じがありましたが、そこもだいぶ払拭してきていると思います。まだまだスタートしてそれほど時間がたっていないので、今改善すべきところをいろいろ手直ししていく時期だと思っています。
【記者】
結局、集約をし過ぎてしまったことで、営業しづらくなっているのではないかなとも思うのですが、そのあたりは。
【社長】
かんぽ生命からはそうした話は聞いておりません。かんぽ生命でもいろいろと現場の声を聞きながらのようですが、集約し過ぎという声は、私には来ていません。むしろ営業活動中の休憩場所について、途中にある、適切な郵便局を使えたらいいといった話は出てきているようです。
【記者】
今、把握している改善点の一番のところというのはどこにありますか。
【社長】
やはりモチベーションや営業などの知識、スキルの向上です。研修やそのやり方、頻度など、コロナウイルスの影響でオンラインの研修が多かったのですが、そろそろリアルな研修に移っていけるところもあると思いますので、もっと実践に即した研修のやり方でその辺りをもっと高めるということが必要だと思います。
 やはりあれだけの問題を起こしての再スタートですし、他社の数字を見ても、コロナウイルスを経験して、お客さまのところに顔を出すことがいかに難しくなったかというのは、同業他社でも生じている問題ですから、あまり時間で追い込まないようにしながら、彼らのモチベーションを上げるということをしっかりとやっていく必要があると思っています。
【記者】
拠点数のことですが、やはりエリア、その地域に遠くなると、保険の営業をする人の一人一人のネットワークも、なかなか範囲が狭まってしまうのではないかと思ったこともあるのですが、新規の獲得、新しい商品も出して、使えるようになってはいますが、そういうところで、何か今後、考えていることはありますか。
【社長】
郵便局の窓口、かんぽ生命に移ったコンサルタント、かんぽサービス部が連携をし、広くお客さま担当制を敷いて、お客さまのところにしっかりと連絡をしつつ、営業、それからフォローアップ活動をするということなので、今はそれを徹底すべき時期だと思います。
(※記者会見における発言および質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)