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2022年3月30日 水曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2022年3月30日 水曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田 寬也
【社長】
本日は、私から3件発表します。その後、質問をお受けします。
 まず1件目です。4月からスタートする日本郵政グループの新しいコミュニケーションについてご説明します。当グループは、昨年5月に発表した中期経営計画「JPビジョン2025」の中でお客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」の実現を目指しているところです。この「共創プラットフォーム」を実現するにあたり、グループ共通の資産であり、また、お客さまとの一番の接点である郵便局を核としたグループ統一コミュニケーションをこの4月から展開していきます。
 続いて、2件目です。楽天グループ様との協業に関する報告です。楽天グループ様とは、両社グループの経営資源や強みを効果的に生かし、シナジーの最大化が図れるよう、精力的に協議、検討を行っているところです。本日は、物販分野における協業について、2点発表します。
 1点目は、楽天市場商品のカタログ販売です。楽天市場において特に女性のお客さまに人気の商材や独自性のある商材から、ファッション、日用品、インテリア、美容関連商品を中心に、約50品目を選定し、日本郵便の近畿支社管内、大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良および和歌山の2府4県の郵便局で、4月1日から6月30日までの間、カタログ販売するものです。こちらは日本郵便の持つリアルの郵便局ネットワークと楽天グループ様の持つ楽天市場をはじめとするEC分野のアセットや知見を互いに生かした取り組みです。普段、インターネットなどをあまり利用されないお客さまの目にも多く触れるため、楽天市場の販売チャネルを増やすことにもつながるものと考えます。
 また、6月からは、北海道支社管内において、近畿支社管内で取り扱う50品目のほか、アウトドアグッズや車用品など、北海道のお客さまのニーズが高い商品を加えたカタログ販売も新たに展開することとしています。
 今後も、地域それぞれのお客さまのニーズを的確に捉え、ターゲットを明確化した商品を提供してまいります。
 2点目は、すでに3月1日から取り扱いを始めていますが、日本郵便の子会社である郵便局物販サービスでは、青果、加工品などの産直商品を中心に、約300の商品を楽天市場で出品しています。こちらは普段、インターネットなどでよくお買い物をされるお客さまにも、郵便局物販サービスで扱っている商品を知っていただく機会になり、販売拡大につながっているところです。
 今後は、全国の名産品を中心に、800品目程度まで拡大していくことを目指しています。引き続き、楽天グループ様とともに、お客さまにとって魅力的なサービスを提供できるよう努めてまいります。
 最後に、3件目です。「グループコンダクト向上委員会」の設置について報告します。
 本委員会において、当グループのコンダクトを向上させていくための各種取り組み事項全般について、委員の方々に前広にご示唆いただくことを予定しています。
 当面は、お客さまや地域社会の期待に応えるための各種取り組みや、お客さま本位の業務運営を阻害する事象の予防、探知、対応のためのグループ内連携体制などを審議していただくことを予定しております。
 また、来年度、当社では、「グループ行動憲章」の実践と中期経営計画「JPビジョン2025」実現に向け、社員一人一人の心がけ、基本姿勢となるような「JP行動宣言」の策定を予定しています。この「JP行動宣言」の策定にあたっても、新たに外部の第三者で構成する「グループコンダクト向上委員会」で策定プロセスや浸透策の展開などについてご助言などを賜ることを予定しています。
 私からは以上です。
【記者】
3点目の「グループコンダクト向上委員会」とも関わりのある話ですが、先般、JP改革実行委員会の方が活動を終えたことについて、まず、その総括と、その活動を踏まえた「グループコンダクト向上委員会」との関係について、聞かせて下さい。
【社長】
JP改革実行委員会ですが、約2年間活動をしていただき、さまざまな知見、成果をいただいたと思っています。設立の経緯は、かんぽ生命保険商品の募集に係る問題を受け、当時設置された特別調査委員会からの改善提案、業務改善計画の進捗状況などの検証を行っていただくというのが、このJP改革実行委員会の基本的な役割でした。また、そうしたかんぽ生命保険商品の募集に係る問題のみならず、当グループの幅広い事項、例えば内部通報制度やゆうちょ銀行のガバナンスなどについても、ご助言をいただきました。
 さらに、昨年5月に策定した中期経営計画における一番の大きな柱となる「共創プラットフォーム」という考え方についても、以前、JP改革実行委員会の委員長をしていただき、現在は郵政民営化委員会の委員長である山内先生を中心に、先生のお弟子さん方で組織されたJP改革実行委員会の下部組織にあたる成長戦略研究会において、今後の当グループの成長に向けて議論していただいた成果です。このように、JP改革実行委員会では、かんぽ生命保険商品の募集に係る問題の対応策のみならず、当グループの成長につながる面についても、さまざまなアドバイスをいただき、私どもとしても大変ありがたく思っています。
 それから、先ほど発表した「グループコンダクト向上委員会」ですが、JP改革実行委員会とかなり被るところもあると思います。グループコンダクトの向上を目的とするものですので、かなり幅広に、リスクあるいはコンプライアンスなどにつながる事案についてもそうですし、さらには社員あるいは経営陣一人一人が今後どのように行動を取っていくのかという、グループとしての意識や組織風土などについても第三者的視点からご意見をいただくことを考えています。委員の皆さま方との事前の話し合いなどもしっかりと行いながら、私としては、今度立ち上げる「グループコンダクト向上委員会」の内容についてもできるだけ幅広に考えていきたいと思っています。これから当グループが中期経営計画の実行などを通じて直面する課題などについても、適宜ご意見いただければと考えています。
【記者】
そうすると、グループコンダクト向上委員会の役割は、これから起こるであろうことや事象、新たに策定していくものに対して意見を出すものであり単純にこれまでに策定したできたものを監視していくというような位置付けではないということですか。
【社長】
JP改革実行委員会の委員であった横田先生に、引き続き、これまでと同様に業務改善計画などの進捗についての検証をお願いすることにしています。
 それから、今度の「グループコンダクト向上委員会」では、違うメンバーが、これまでと違う第三者的視点から当グループをいろいろ見ていただくことになりますので、今後委員がいろいろ話し合いをされる中でコンダクト向上に向けての取り組みを幅広に扱うことになっています。
【記者】
先月の会見のときに、カレンダー問題などの再発防止のため、4月から日本郵便の支社の体制を強化するとおっしゃっていました。具体的にどのような体制強化を行うのかについて教えていただければと思います。
【社長】
日本郵便の支社の体制は、現在、全国13の支社が支社長の下で仕事をしています。今回各都道府県単位で、支社長の業務を補佐する形で、支社長の下に地方本部長というポストを新たにつくり、その地方本部長において人事評価も含め行うことにより、特にエリアマネジメント局とのコミュニケーションを深め、人事体制についてより密接に現場に近いところで見ていく、そういった支社機能を強化することにしています。
 4月1日に発令の予定ですが、地方本部長とその下に、本社から派遣する社員と、支社の中で配置する社員も置いて、人事の体制を強化するという制度改正を、日本郵便において計画をしていると聞いています。
 総勢が何人になるかは、詳しく承知はしていませんが、少なくとも本社から支社に派遣する人数は、全体で約80名になると聞いています。まずはこれまで必ずしも十分でなかったエリアマネジメント局における人事面の体制強化を行っていきます。これが今後いろいろ行っていく上での第1弾ということになります。
【記者】
今の質問に関連する話ですが、新たに地方本部長を置き、本社から80人派遣することで、郵便局長の人事に関して、支社の権限はどのように変わるのでしょうか。また、それにより、どのような再発防止の効果が得られるとお考えでしょうか。
【社長】
現在でも局長の人事の発令は、支社が行うものについては支社長が発令をしているため、発令権限自体は今回のことで変化はありません。
 これまでは、いわゆるエリアマネジメント局の人事関係について支社長がしっかりとした評価を行うための体制が必ずしも十分ではありませんでした。そこをより強化いたします。支社長が複数の県をまたがった仕事をするのに対し、地方本部長は都道府県単位で1人ないし大きな都道府県では複数人を配置して、エリアマネジメント局とのコミュニケーションをよりきめ細かいものとしていくと聞いています。
 再発防止という面では、支社管内が抱える問題については、最終的に責任を持って解決していくのは支社長だと思いますので、地方本部長がエリアマネジメント局ときめ細かいコミュニケーションを行うことにより、支社長が判断するにあたり有益な情報を提示することによって、さまざまな問題の解決にもつながるものと考えています。
【記者】
それに加えて、こうした局長人事については、もともと局長会が採用者を事実上人選しており、会社での役職も局長会の序列どおりに決まるという慣例があるため、支社の体制を強化しても、こうした慣例を改めなければ本質が変わらないのではないかという指摘もあると思いますが、その点はどのようにお考えでしょうか。
【社長】
かつての人事が実際どのように行われていたかについては、私も十分承知しているわけではありません。
 以前、こうした会見の場で、日本郵便社長の衣川から、局長の人事配置は支社あるいは日本郵便本社で行っており、会社とは別組織の局長会でのさまざまな役職の決まり方と、会社としての役職の決まり方が一致しているのであれば、それはかなり偶然的な一致だという趣旨の話があったかと記憶しています。要は実力のある社員、具体的には部会などをまとめていくことのできる社員なのか、そして、そうした社員がどういう人間性を持っているのかということを、ちゃんと把握することに尽きるのではないかと思います。
 さまざまな観点で社員を配置するわけですが、まずはその社員の実力、リーダーシップがあり、その地域をまとめていける者として選ばれた社員が結果として会社も局長会も同じであれば、それはそれで問題ないと思いますし、逆に会社としての評価と局長会としての評価が異なる場合は、それぞれの観点からの評価に基づき配置をしていけばよいものと思います。そういう意味では、会社として、会社の視点で、地域にどういった社員が実際にいるのか、そこをまず把握することが第一歩であると思っておりますので、今回の支社の体制強化が、会社としての組織をしっかりと運用させていくことにつながっていくことを期待しています。
【記者】
局長人事の関係で、2点お願いします。
 まず1点目です。
 昨年夏の会見では、たしか局長の転勤自体も増やしていくというお考えを表明されており、例年、600人程度あるという話でしたが、今春の異動ではどうだったのか教えてください。
 また、今回、地方本部長を新たに設置するということでしたが、肩書は正式には覚えていませんが、たしかこれまでも、県単位で人事調整役といったような方がいて、そういう方が各郵便局長会の役職を事前に聞いたりして、結果的に会社と郵便局長会の役職が一致していると思うため、新たに地方本部長を置いても、これまでの人事調整役と同じような仕事をしていると、同じ結果になってしまうのではないかという気がしますが、そこも含めて教えてください。
 併せて、さきほどの確認ですが、統括局長には人事の評価や案を出すといった権限をお持ちですが、こういった権限は基本的に変わらないという理解でよいでしょうか。これが1点目です。
【社長】
まず、局長の異動の関係です。エリアマネジメント局長間の異動については、今年の4月1日の異動数も含めて、この直近の1年間では、エリアマネジメント局長間の異動が536名と日本郵便からは聞いています。
 前の年が524名ですから、少し増えている状況です。
 また、人事調整役という役職が、これまでどういった年次の社員でどのような形で発令されたかについては、個々の状況を知っているわけではないのですが、少なくとも、今回新たに設置する地方本部長は支社長の次に位置する者ですので、これまでよりはずっと経験年数の多い社員、平たく言えば実力のある者を選抜して、配置をするということです。
 それから、統括局長が人事の第1次案のようなものをつくり、それを踏まえて支社が発令をするということになっている点については、今回変えていないと日本郵便から聞いています。
 今後、第1次案を見るにあたり、地方本部長によるエリアマネジメント局長とのコミュニケーションにより、第1次案でいいのか、会社としてのエリアマネジメント局に対するマネジメントの観点から、地方本部長の意見を支社長が十分に聞きながら判断するということになります。
 大事なことは、今回の新たな取り組みをどのように根づかせるかということです。地方本部長は都道府県単位で、場合によっては都道府県単位で複数人を配置しますが、地域密着のポジションであるため、支社の中にいるのではなく、担当地域内の郵便局をたくさん回り、実際の郵便局での局長の仕事ぶりを、まずは自分の目でよく見るということを、繰り返し行い、鍛錬を積み上げるということが最初は大事であると思います。
【記者】
1点目の補足ですが、先ほど、この春の取り組みが第1段階であるということでしたが、第2段階ではどういうことを想定しているのか補足をお願いします。
【社長】
まだ取り組みを始めたばかりの段階であるため、次にどういったことが必要になるのかについては、地方本部長の意見もいろいろ聞き、今回のことが実際にどう機能していくかも十分見ていく必要があると考えています。
【記者】
分かりました。以前おっしゃっていたエリアマネジメント局長の転勤数を増やすことや、地方本部長を実際に置いた上で転勤を検討するというのが、少なくとも、今見えている第2段階と受け止めてよいでしょうか。
【社長】
そもそもは、親子間で局長職が引き継がれ、または、他の郵便局員が転勤をする中で、局長だけが長い間転勤なしでずっと同じ郵便局にいると、どうしても長年の経験から全て詳しく知っていることから、ある種の威圧感のようなことで、新しく転勤で来た社員が、局長に物を言いづらく、そのことが場合によっては不祥事にもつながっていくのではないかという問題があります。ですので、そこを異動させることによってけん制する効果をより出していくべきではないかということが、この取り組みを行う発端です。
 一方で、同じ地域に長くいるということによるプラスの面もあるため、そのあたりも両方勘案しながら、地方本部長が現段階で異動させることがコンプライアンス上ふさわしいと思うのか、あるいは地域密着という効果をより出していくのか、そのあたりを判断してもらうことになります。併せて、約5年に1回程度の頻度で、1カ月程度、郵便局長同士を交代するということを行いますので、そのことと、数年間別の地域に局長を異動させることをどのようにかみ合わせるかについて、地域ごとに判断することになると思います。
 おそらく異動数は今後増える方向ではあると思いますが、その進度だとか、その妥当性については、地域ごとに、実際の対応の中でよく検証したいと思います。
【記者】
分かりました。ありがとうございます。
 2点目ですが、関連して日本郵便の局長の人事というのは、局長会と事実上連動しており、かつ局長は、局長会に入らないと仕事に支障が出る、役職にも就けないということが昨年あり、刑事や民事の裁判でも認定されたり、指摘されたりしています。また、この点については、専門家からすれば、思想信条の差別に当たるのではないかという指摘もあります。増田社長は、差別があってはよくないとこれまでおっしゃっており、現状、この差別的な状況というのが今回のことで改善されるのか、あるいはそれ以外にも、何か局長会に入っていなくても仕事に支障が出ないようにするべきだと昨年おっしゃっていましたが、そのための何か対策など具体的に取られているものがあれば教えてください。
【社長】
まず、局長会の役職に就くということは、何らかの形で実力が評価されている部分があるのだろうと思います。例えば部会長でも、大体が十数局の郵便局を束ねているわけですから、期待される役割がリーダーシップや、人をまとめるという能力ですので、会社の考えと一致する部分もあると思いますし、一致しない部分はどう違うのかということを考える必要があると思います。
 というのは、この大きな組織でリーダーとして引っ張っていく上では、やはりまとめ役になれるということが必要ですが、それは主導権を取ってということではなく、年次や経験を見ていけば、おのずから、ある程度まとめ役となれる者というのは、おそらく絞られてくるのではないかと思います。
 例えば本社では、部下が上司を評価する360度評価をしたりすることもありますが、できるだけ評価軸をはっきりさせて、それで人事を動かしていくということが必要になってきます。今回、第1弾として、地方本部長には人事面を見てもらいますが、これまで、ともすれば会社の人事が、局長会の人事に追従するようなイメージを持たれているという部分を、今後の運用を通じ払拭していき、実績を積み上げていくことを期待しています。当然会社側は会社の観点で人事をしますので、日本郵便においても地方本部長にも十分、事前の研修などで伝えていますが、まずは実際に動かしてみてからということになります。
 思想信条などで差別されるという話はどこまで実際に正しいものなのかということをよく調査してみないと分からないところはありますが、特に人事などを通じて、何か不公平感や差が出ることが極力ないように、その社員の実力、持っている力、それから対人関係を形成していく力などを総合的に判断していくということが会社の人事に必要だと思います。少なくともそこは、今回の第1弾の異動によって、その趣旨が伝わるように、その点を特に留意してやるよう私も日本郵便には話をしています。
 私が今の職に着任する前からも、長い歴史の中で、特にエリアマネジメントの人事についてはほとんど変わっていないという話を聞きますので、今回の取り組みによって、社員や、特に局長たちにとってエンパワーメントされることを大いに期待しているところです。
【記者】
分かりました。今、思想信条による差別については実態がまだよく分からないため、調査してみないと、というお話でしたが、調査してみるというお考えもあるのでしょうか。
【社長】
そういった社員の声は届いておりませんが、調査が必要なものについては調査をしますし、どういうことなのかということは現場に当たるようにしています。昨年9月からの内部通報制度の方を使っているものもあるかもしれませんが、そちらは、部外を活用した通報ですので、私どもでは内容は分かりません。いずれにしても、声を上げやすくする、それから、上げられたものについてはしかるべく調査をするということにしていますので、そこは変わらずにこれからもやっていきたいと思います。
【記者】
ありがとうございます。あと1点だけ、局長会に入るにあたっては、政治活動、選挙運動に取り組むことを入るときに約束させられますし、入った後は、ほぼ自動的に自民党に入党することがあるので、逆に、選挙はやりたくない、自民党には入りたくないというような人は局長会にも入れないし、今の日本郵便の人事構造だと、役職に就くことがほぼできないということが言われています。そういった点で、選挙を頑張っている人が評価されて役職に就いていく、それが連動していくというところにすごく不公平感があるように映りますが、そのあたりは、増田社長から見ていかがでしょうか。
【社長】
局長会の活動は会社の業務ではないため、そこでの思想・信条の部分、あるいは政党活動の部分は、どこの会社もそうだと思いますが、基本的には自由といえば自由です。したがって、その自由はちゃんと担保しないといけません。その中で、会社の業務と重なって、そこの峻別をつけずにやってしまうと問題ですが、局長会の方でさまざまな政治信条について取り上げるところまで、会社としてはそのこと自体は問題にできないと、一般論ではありますがそのように思います。
 したがって、会社の業務といろいろ重なってくるところが問題になってくるわけで、やはり会社の観点で、必要な実力者をちゃんと登用していくということに尽きるのではないかと思います。
【記者】
昨日、日本郵政の岩崎芳史副社長が退任されると公表されましたが、この方は、郵政不動産の代表も務めていたと思います。その後任などは決まっているのかということと、今回の件で、不動産事業に何かしらの影響は出るかと思いますが、このあたり、可能であれば、退任の経緯とともに教えてください。
【社長】
岩崎副社長は、三井不動産で長らく実績を積んでこられた方で、当社に来て6年、不動産部門をずっと引っ張ってこられました。ちょうど年度の切り替わりでもあり、今回退社をされるということです。
 それから、子会社である日本郵政不動産の社長の後任については、日本郵政不動産の取締役会などがありますが、昨年から山代専務に当社に来ていただいて、岩崎副社長の仕事にもかかわるような形でこれまでやってきていただいています。したがって、今後、当社としてはさまざまな場面で、山代専務をヘッドにして不動産事業を強力に展開していくことを考えています。
【記者】
ありがとうございます。岩崎副社長も山代専務も、三井不動産からいらした外部の人材であるということで、現状、日本郵政不動産は外部の方々が支えている状況だと思いますが、そのあたり、自社の人材をどう養成していくのかというところと、あるいは、外部からの人材の確保が今後もメインになるのかというところの方針を教えてください。
【社長】
これから不動産事業を第4の柱にしていくには、自社での人材育成と外部人材の確保と両方をやって体制を強化していくということが非常に重要になります。今でも建築などの素養がある社員は、郵便局の建替えなどを行う施設部に随分いますが、日本郵政不動産は、2018年に新たにつくった会社ですので、不動産開発への知見についてはまだ十分ではないため、その点については、外部のデベロッパーなどで経験を積んでいる方に当社に来ていただき仕事をしていただいている状況であり、今後もしばらくは人材育成と外部人材の確保を両方やっていく必要があると思います。
 それから、これも「共創プラットフォーム」の一環ですが、日本郵船様が港や都心に不動産をお持ちで、その子会社に郵船不動産というのがありますが、その株式を日本郵政不動産が51%取得していますので、そこからもビル管理などに大変知見のある方々にこちらに移ってきてもらっています。自前での人材養成と、外部からの積極的な招聘、場合によってはM&Aなども使いながら体制の強化を図っていきたいと思っています。
【記者】
ありがとうございます。不動産部門は郵政グループにおいて成長戦略の1つですが、ただ、今のお話ですと、まだ外部から人を集めて育てている段階なのかなと。その先にある成長戦略というのは、これから中期経営計画が終わってからできるような段階なのかなと感じています。
 その場合、日本郵政として、プライム市場に上場維持されるかと思いますが、プライム市場においては、ある程度、成長性ですとか成長戦略が明確にあって、そういった上場市場を選択されるかと思います。日本郵政として見ると、ずっと減収が続いており、成長を期待される不動産事業に関しても、このような規模感であると、プライム市場をそもそも選択しなくてもよかったのではないかと感じてしまいますが、増田社長として、そのあたりのご認識と、改めて、成長戦略とともに、市場選択について、どういったお考えをお持ちなのか教えてください。
【社長】
プライム市場の適合条件というのはかなり広く、当グループはゆうちょ銀行、かんぽ生命まで含めて、全てプライム市場を選択しています。特に当社は不動産分野を含め、さまざまな成長において、郵便局を中心としたコア事業という点を強化していくことが、グループ全体を引っ張っていく持株会社として大変重要だと思っています。具体的には日本郵便をさらに強化すること、加えて、まだ活用度の低い不動産を、より広く活用していくという点が重要です。不動産については、少なくとも今の体制でもすでに公表している5つの大規模案件以外にも、それに続くものとして、グループ不動産開発推進委員会で相当な数の案件を検討しています。大規模案件は、今年度から順次竣工していきますし、別の案件についても相当数そろえております。
 体制強化で言えば、自前でやるというのはかなり時間がかかるため、先般の郵船不動産のように外部からこちらに人材が移ってくるという形もありますし、または、こちらが保有する不動産の魅力を見て、個々の外部の会社から、ご縁があってこちらに移ってきている方々が随分いますので、そういう方々のノウハウ・スキルも十分活用しながら、成長する分野だからこそ、体制も同時並行で、常に広げていくということが必要ですし、それこそがまさに成長の1つの証しではないかと思います。
 したがって、プライム市場の選択というのは、当社の会社の規模感とか、それから保有しているアセットからすれば、当然の選択だと思っていますが、そういう選択がよかったと市場から評価されるように、中計にはさまざまなM&Aや不動産について投資をしていくと書いておりますが、今後、そうした投資を確実に実行していきたいと思いますし、しっかりと評価をしていただけるようにしていきたいと思います。
【記者】
先般のかんぽ生命様の新しい営業体制の会見で、千田社長が健康増進、介護、相続など、生活に寄り添う新サービスについて、グループ一体を意識されるということをご発言されていらっしゃいましたが、今日、発表された、グループの新コミュニケーションの「進化するぬくもり」をテーマに、日本郵便が提供する相談サービスを、郵便局窓口から全グループ的に提供する形に発展させたいというお考えというのはありますでしょうか。
【社長】
千田社長の考え方は先般の記者会見にて公表したとおりですが、当グループの各社社長同士のディスカッションなどで、やはり郵便局が当グループとして一番の拠点になるという話はしております。ですので、グループの新コミュニケーションは、郵便局の価値をより高めていくために、ぬくもりを世の中に対してお伝えするだけではなく、郵便局が基本であるということを、そこで働く社員に向けても伝える意味合いもあります。
 今、お話にあったように、郵便局に持ち込まれるお客さまからのご要望の中で、相続など、いわゆるご高齢の方々が必要とされるサービスについてのお問い合わせが随分あります。それは、当グループの提供するサービスの中では、かんぽ生命の商品などが非常にオーバーラップする部分があり、郵便局において、今後、ご高齢の方々からのご要望をお聞きしていく上で、かんぽ生命としても民営化委員会の手続きなどを経た上でとなりますが、商品化をして、それを郵便局で提供していくことなどを通じて、ゆうちょ銀行も含め、グループ一体となったサービスの提供、郵便局の拠点化ということを今後さらに図っていきたいと思います。
 金融2社の株式は今後、法律にも書かれていますので、売却を進めていきます。かんぽ生命の株式保有比率は50%以下になりましたし、ゆうちょ銀行の株式売却もあります。一方で、さまざまな方から、グループとしての一体性について、金融2社が郵便局から離れるのではないかというようなお話もあるのですが、そうではなく、私どもとしては郵便局にしっかりと軸足を置いて、そこで提供されるサービスというものを、金融2社としても十分生かしていきたいと思っていますので、そういう考え方で、かんぽ生命も今後、営業を展開していくことになるということです。
【記者】
ありがとうございます。昨日の北海道と楽天との包括連携協定で、遠方距離という費用的なハンデを解決するために、一括的な配送策も考えていく提案がありましたが、楽天様と組みながら自治体との連携や、あるいは、他の企業と組みながらの、特に都心から遠距離の自治体との3者連携のような形を、全国的に増やしていきたいお考えはありますでしょうか。
【社長】
北海道はまさにこの典型ですが、北海道も、札幌、函館、旭川あたりはかなり都市的な要素がありますが、極端に言うと、札幌一極集中となっています。北海道は179の基礎自治体がありますが、今、本当に過疎に苦しんでいる自治体があります。非常に面積が広いためなかなか合併というわけにもいかず、1つ1つ自治体が数千人の人口というところが非常に多くなっています。
 ですので、そうしたところでの生活の利便性を提供していくために、デジタルの力を使うことも必要になりますし、それから、昨日発表したように、今後トライしていくドローンでの配送など、ラストワンマイルのところをどのようにやっていくのかということが非常に重要になります。北海道で、かなり条件が整ったので先行してやっていきますが、同じようなことが他の自治体でも組めるようであれば、もっと積極的に他の自治体にも働きかけていきたいと思います。
 楽天様は、たまたま、私どもよりも早く道庁と包括連携協定を結んでおり、そういう意味では、私どもとしても非常に組みやすかった相手です。知事からもすぐに連絡があり、取り組みやすかったのですが、今回のモデルをもっと、他にも手を広げていきたいと思います。配送のコストは、普通にやっていくとどんどんかさんでしまうため、共同配送のようにしたいのですが、そのことによって利便性が損なわれたら困ります。そこをどう両立させるかという点で、例えばドローンなどをどのように導入していくのかなどが大事になるのですが、その辺りを北海道で実験をして、経験値を積み、それをまた、他地域にも展開していきたいと思います。
【記者】
あと、もう1点だけ、郵便局窓口の営業力を高めるために、局長や社員の方に、どのような行動や学びを期待しますか。
【社長】
窓口の役割というのは、今後、ますます重要になってくると同時に、例えば、4月から、かんぽ生命の営業体制を切り替えるということで、いわゆる投信などは今後窓口で取り扱うことが非常に多くなります。したがって、窓口社員はそういったスキルをいろいろ学ばれるということになるわけです。そこにはまだ不安の声もありますが、支社、あるいは場合によっては本社からしっかりとサポートすることにより、4月から万全の体制で取り組みます。
 それから、現実に増えてくるのは、各自治体のいわゆる行政サービス的なものについて、自治体では支所や出張所が維持できず、郵便局で一緒にやれないかというお問い合わせが多く来ています。また、地銀からのお問い合わせも来ており、特に、ATMのお問い合わせが多いと思います。
 自治体からの公的な証明書の発行や、さらには行政相談も今では相当数、郵便局で取り扱うようになってきています。それらについては全て窓口の社員がこなすということになりますが、私も、幾つかそういった郵便局に行って、窓口の過剰な負担にならないかと聞いてみたところ、自治体とうまく連携が取れているところは、iPadなどで郵便局の窓口の社員も自治体にすぐに相談できるため、もっと業務を広げられますという意見が多かったです。そういうことを考えると、窓口の役割がこれからますます高まってくると思います。
 単独マネジメント局でも、今、局長がちゃんと窓口を管轄して、窓口の社員に声かけをするようになってきていますが、全ての郵便局で、局長が窓口の社員によく目配りをして、そこでの問題解決に動くことにより、郵便局の地域の拠点としての機能もより高まるのではないかと思いますので、そうした方向に行くよう、これからも努めていきたいと思います。
【記者】
局長の人事でもう一点だけお願いします。先月の増田社長の記者会見で、局長のなり手がいないという課題を挙げていましたが、取材をしていると、局長になるには、局長会に入らないと人事構造上、仕事に支障があるし、役職にもつけないし、さらに、局長会に入るには、土日に配偶者も含めて、政治や選挙活動をしないといけないし、自民党にも入党しないといけないし、年に何十万円も徴収されると。こういうこと自体が、局長になりたくないという原因になっているのではないかと見られるのですが、そういう認識は、増田社長はお持ちなのか、あるいはそれを改善するお考えというのは何かお持ちでいるのでしょうか。
【社長】
私が局長のなり手が少ないと言ったのは、地方の局長の話を聞いていると、例えば、お子さまが少人数であり、しかも東京などの都会に出ていってしまい、なかなか帰ってこないということを嘆いておられて、郵便局長を別の方や、あるいは支社からあっせんしてもらっているという話をよく聞きます。
 ご質問は政治活動の観点でという話であり、それについては直接言われたことはありません。地域で、どこでもそうですが、今はやはり若い人がいないため、中小企業などではなかなか事業承継ができないということがあると思います。私としては、地方で抱えている人口の減少などの問題、特に若い人たちの減少度合いは強烈ですので、人事もこれから回らなくなるのではないかと思っています。したがって、先ほど申し上げたような悩みや嘆きがあちらこちらで、出てくるのではないかと考えており、私が「なり手がいない」と言ったのは、そういったことを捉えて申し上げたところです。
【記者】
そうすると、社員からの登用が難しいというよりは、世襲する人がいないということだけをおっしゃっていたということですか。
【社長】
なり手を探すのがなかなか大変だということは、どこでも出てくる話だと思います。
 ですから、局長から聞く「なり手がいない」というのは、おそらくいろいろな意味があるのかもしれません。私がストレートに聞くのは、とにかく自分の後を継ぐ人がいないということです。今まで多かったのは世襲だったと思いますので、そこはもうなかなか難しいということです。
 それ以外にも、近隣で候補を探す、あるいはいろいろな形で継いでいるところもあったのかもしれませんが、そういったことすらも今難しくなっているということが多いのではないかと思います。なり手を探すのが大変という問題は必ずしも世襲に限られるわけではないとは思います。
【記者】
そうすると、例えば局長会に入らなくても局長になれるとか、局長会に入ってなくても、局長として仕事ができる環境をつくれば、もう少しなり手を見つけることができ、それがまさに差別のない環境だと思うのですが、そこに対する問題意識というのは特に今はお持ちではないということでしょうか。
【社長】
持っていないというよりは、もっと根本的な、地殻変動のような問題が起きているのではないかと思います。今、おっしゃっていただいているのは、なりたいと思っている人がいて、ただ、今の局長会の体制を理由に嫌だというケースだと理解しております。
 そもそも、参議院選挙の選挙区も一つの県で維持できないくらい地方では激変が起きており、若い人が都会に移ってしまっているわけです。
 ですから、若い人を中心に、局長を継ぐような人たちが、今後出なくなってくるのではないかと危惧しております。その一方で、リアルの拠点は、地域の状況を見るとやはり何らかの形で維持していかなければ、行政サービスも提供できなくなってしまいます。そこをどうするかというのは非常に難しい問題だなと思います。
【記者】
分かりました。いずれにしても、局長会自体が局長のなり手を減らす要因、弊害になっているとは思ってないということですね。
【社長】
おっしゃるように、そこはよく調べないと分からないところもあるのかもしれませんが、ただ、そういったこと以上に、先ほど申し上げた地域の問題があちこちに今後出てくるのではないかと思います。
【記者】
JP改革実行委員会のときは、われわれ報道陣にも公開されて、かなりオープンな形で進んでいたかと思うのですが、今回グループコンダクト向上委員会は、公開するおつもりなのかどうか、その点について教えて下さい。
【社長】
先般、委員の皆様方と事務局が集まって話したとのことですが、会議そのものは非公開で実施します。ただし、議事要旨だとか、そのときに使った資料は全部、直後に公開します。そういった形で運用していくと聞いています。
【記者】
非公開とする理由は。
【社長】
よく言われるように、委員間あるいは事務局と委員会間の自由な意見表明を確保するということに、最後は尽きるのではないかと思いますが、個別のいろいろな案件などについて、委員の皆さまに説明する場合や、委員が意見を述べて、委員全員で議論をして意見を固めていく、意見を形成していく過程のものについても全て公開されるとなると、意見が言いづらいということもあると思います。ですので、非公開とすることで自由な意見交換を確保するということです。
 しかしながら、議事要旨や使った資料は公開するということで、外部性、透明性を確保するということで今回は運営するということです。
【記者】
その点について、委員会の透明性が例えば失われるとか、そういう問題意識を持っているかどうか、増田社長自身はどう思っていますか。
【社長】
こういった議論の場に私も参加したりしますが、意見交換の内容まで全て記者の皆さま方に公開しているのは、やはり現実に非常に限られています。
 ですので、私自身は、今回のこういった非公開とする、ただし使った資料や議事要旨は速やかに公開するということで、両方のニーズを満たす上ではこれでいいのではないかと思っています。ただ、議事要旨などの公開のスピードだとか、どの程度の議事要旨がちゃんとつくれるのかなどは相当注意をしなければいけないと思っています。
【記者】
先日、佐川急便と日本郵便で協業の進捗説明があったのですが、例えば投函型荷物については、ここまで進展しているとか、こういった見通しだというお話があったかと思うのですが、その中で国際EMSやゆうパケットに関しては、首都圏あるいは全国展開など、もう既にある程度形になっている一方で、日本郵便から佐川急便へのクール便の委託に関しては、物販サービスのカタログの商品2商品にとどまっている状況だと伺いまして、当初ですと、大口顧客の要請、クール便の要請を日本郵便が受けて、それに対応したいということで、佐川急便と協業に至ったかと思うのですが、そのスピードといいますか、進展がかなり遅いのではないかと感じていまして、このあたり増田社長はどういったご評価でしょうか。
【社長】
まず佐川急便様との協業については、今おっしゃったように多少、進度に差があるかもしれませんが、全体としては、佐川急便様との協業は大きな問題なく進んでいると理解しています。
 そして、実際にいろいろ始まったのは、2月頃からであり、現状、まだ3月ですので、進度調整などについてしっかりと佐川急便様とやっていければと思います。共同便などでコストが相当下がってくるのはこれから出てくるところですので、その点はあまり今、私自身は問題視していません。むしろ双方にとってお互いに補完し合い、足りないところを伸ばしていけるのではないかと考えています。まだ始まったばかりなので、当グループの担当も佐川急便様といろいろ話をしているようですので、それをしばらく見ていきたいと思います。
 JP楽天ロジスティクスの方も、最初は、会社を立ち上げていろいろ進めていく中で、細部を調整することなどに、やはり何カ月間かかかった後、今、軌道に乗ってきたというところですし、そういった状況というのは、当初はどこの会社でも出てくるのではないかと理解しています。
(※記者会見における発言および質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)