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2021年11月30日 火曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2021年11月30日 火曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田 寬也
【社長】
本日は、私から2件ご報告をいたします。
 まず1件目です。楽天グループ様との業務提携の進捗状況について報告します。
 初めに、物流分野における新たな取り組みについて説明します。現在、荷物のラストワンマイルの配送の場面で、特にECなどで多くの荷物がばらばらに配送されることがあり、お受け取りになるお客さまに対して大きなストレスをお掛けしている場合があると考えております。こうした問題を解消するため、本日11月30日から、日本郵便で配送する荷物について、楽天市場の複数の店舗の商品の配送をまとめて指定できる、「おまとめアプリ」のサービス提供を開始しました。
 「おまとめアプリ」は、楽天グループ様が提供するアプリですが、まとめ配送の日時設定機能に加えて、置き配や再配達を依頼する機能など、商品の受け取りに関する機能を集約しています。「おまとめアプリ」でご注文いただいた注文情報は、日本郵便の「e受取アシスト」の受け取り変更サービスに連携をされており、ご指定いただいた複数の荷物をまとめて配送する仕組みとなっています。このような新たな取り組みにより、お客さまにとってはより簡単、便利に、ご都合のよい時間、方法で荷物をお受け取りいただけるようになります。また、日本郵便にとっては、荷物の再配達の削減も期待でき、配送業務の効率化につながると考えています。
 今後は、対象を他の配送事業者や楽天市場以外のECサイト事業者にも拡大することで、ECにおける商品受け取りの利便性の向上、そして、EC業界全体の配送の効率化を実現するオープンなプラットフォームの構築を楽天グループ様とともに目指してまいります。
 楽天グループ様との関係では、物流分野でもう1つ、「楽天フルフィルメントセンター中央林間」の開設を11月10日に発表しました。この施設は、日本郵便と楽天グループ様の合弁会社であるJP楽天ロジスティクスが設置をした、楽天市場出店店舗様向けの総合物流サービスであり、楽天スーパーロジスティクス様の物流センターです。
 既存の物流センターの稼働率が上がっておりますので、このたび、新たな施設を設置して、既に稼働を始めているところです。物流拠点は、今後も順次拡大をしていく予定です。日本郵便と楽天グループ様は、今後も連携を強くして、お客さまにより一層便利なサービスを提供できるよう努めてまいります。
 もう1つ、金融分野の取り組みになりますが、2021年内にゆうちょ銀行デザインの楽天カードを発行すべく準備を進めていることを従来から申し上げてきました。本件につきましては、発行に向けた最終チェックを行っているところですが、明日12月1日から申し込み、受け付け、発行を開始する予定です。詳細につきましては、明日、改めてゆうちょ銀行から報道発表します。楽天グループ様とは、今後もお客さまの利便性向上、地域社会への貢献、事業の拡大を目的に、お互いの経営資源や強みを効果的に生かしたシナジーの最大化を図ってまいります。
 本日2件目の報告は、ドローンと配送ロボットを使った新たな実証実験の開始についてです。
 新たな実証実験は、株式会社ACSL様などの協力を得て、明日12月1日から約1カ月間、東京都西多摩郡奥多摩町で実施します。今回の実験は日本で初めてになりますが、ドローンと配送ロボットを組み合わせて、ドローン単体では運ぶことができない場所への配送を想定して行います。
 日本郵便ではこれまで、将来の配送の形を見越して、ドローンや配送ロボットなどの先端技術を取り入れた実証実験を積極的に行ってきました。ドローンでは2017年、長野県の伊那市での実証実験を皮切りに、福島県の南相馬市、浪江町での郵便局間輸送、また、昨年2020年に東京の奥多摩町、明日から実証実験をするところと同じ場所ですが、奥多摩町で初めての実際の荷物を郵便局からお客さまのご自宅まで配送しました。
 配送ロボットについては、2017年、福島県の実験フィールドでの走行実験を皮切りに、2020年に東京逓信病院から麹町郵便局までの、信号機なども含まれる約1キロメーターの公道を走行し、荷物を配送したところです。
 このように、ドローンや配送ロボットそれぞれ単体では実証実験を行ってきたところですが、明日からの実証実験は、ドローンと配送ロボットを組み合わせて行うところに新しさがあります。ドローンが出発地点から荷物を積んで、約2キロ飛行し、到着地点で着陸をせず、配送ロボットに荷物を受け渡し、配送ロボットが約200メーターの範囲内の複数世帯のお客さま宅まで公道を走行し配送するというものです。
 昨年、麹町郵便局まで逓信病院から歩車道が分離されたところを走らせ、歩道をとことことロボットが動くような形でしたが、今回は歩車道分離されていないところをロボットが動くということになります。
 ドローンと配送ロボットの長所を組み合わせることで、より実際の配送への利用の幅が広がることになります。今後、法律改正など制度の整備が加速度的に進み、郵便物・荷物などの配送の高度化実現に近づくと考えています。日本郵便では、新しい技術と物流の融合を図る取り組みをさらに強化してまいります。
 私からは以上です。
【記者】
先日、日本郵便で公表がなされたカレンダーの取り扱いをめぐる問題について、社内調査の結果を社長がご覧になって、どう受け止めたのかと、行政指導もあったと聞いていますので、そちらの受け止めをお願いします。
 また、再発防止策は来年の1月21日に恐らく出されると思いますが、この時期というのは、日本郵便から依頼を受けた調査の終了時期と同じようなタイムスケジュールで考えてよいのか。恐らく先日の発表では、郵便局長らへの処分というのは決めていると思いますが、日本郵便の社長以下の管理監督責任の処分というのも同じような時期に出されるのか。
 最後に、社内調査結果の中で、調査をしっかりしたのかどうか、第三者機関による調査は、日本郵便側としてはしないということを明言されていましたが、そういった考えというのは増田さんも踏襲されるのかどうか、お願いします。
【社長】
いわゆるカレンダーの問題ですが、社員指導が十分でなかった点について、まずお詫びをしなければいけないと思います。昔の郵政省や郵政公社などの時代には公務員でしたので、当然政治活動は行ってはいけなかったわけです。個々に違反などの事実があった時期もあるようですが、いずれにしてもそこは分けられていました。それが、法律上、民営化されて、政治活動もできるようなりました。民営化した際に、会社業務と峻別するようにという指導も行われていたものの、やはり十分にそれが行き渡っていなかった部分があったと思います。
 したがいまして、まず、このような事態になっていることをお詫びすると同時に、総務省からも行政指導を受けたところでありますので、しっかりと再発防止策をしていかなければいけないと思っています。
 なお、総務省への報告期限は来年の1月21日までですが、別途、日本郵便本社、特に経営幹部について調査をするということで、こちらは日本郵便から当社に依頼があり、外部弁護士にその調査をしていただいているところです。12月中にまとまりますので、1月21日までには、どういう内容であるのか、それから、内容によっては、処分などの話にもなりますが、そういったことは終了していると思います。
 また、現場でどういうことが行われていたのかについての調査ですが、日本郵便において、地区統括局長やそれ以外の一般の局長も含めて約1,000人を調査しています。局長全員ではありませんが、北海道から沖縄まで全国的な状況を調べています。さらに、さまざまな投書なども来ておりますので、全体像については調査によって把握できていると私も思っています。
 迅速性も必要なため、純然たる第三者であると時間がかかりますので、日本郵便のコンプライアンス部門で調べ、それにのっとって日本郵便において処分を実施したと受け止めています。
【記者】
日本郵便において、そもそもカレンダーが政治利用されるということを把握していたというようなことについてはいかがお考えでしょうか。
【社長】
経費を措置したときに、カレンダーが政治流用されるかどうかについて、予算措置した一番の責任者がどのように認識したのか。現実には、会社の業務として、また一方で、政治活動として、混然一体となって使用されたということのようですから、日本郵便の当時の経営陣がどのように考えたのかについて、今、第三者の外部弁護士に調べてもらっています。
【記者】
西日本新聞が入手した局長会の会議録では、2020年用のカレンダーについて、会社に対して前回並みに調達できるよう折衝するなどと記載されていて、局長会側が日本郵便にカレンダーの予算を認めるように要求していたことがうかがえますが、その後、別の資料で、予算について、会社側は確約済みと書かれた内部文書などもあります。もともとカレンダーというのは、会社の施策というお話だと思いますが、実際にどのような要求や交渉があって、どういう名目で予算を認めるように局長会は求めていたのでしょうか。
【社長】
予算化は日本郵便本社で行っているので、ご質問の点も含めて調査をしています。本当は11月中にできるだけまとめたかったのですが、内容が多いため、12月までかかっております。ご質問の点も、その中で様子が分かってくると思います。
【記者】
今、私が申したことも把握しているような意味で、それも含めて調べていらっしゃるという理解で宜しいでしょうか。
【社長】
調査の内容は第三者でやっていますので、今、どういう状況にあるかは、当方はまだ報告を受けておりません。
【記者】
分かりました。加えて、今、最初の質問で全体像を把握していると、おっしゃいましたが、カレンダー配布については、日本郵便では、政治利用はなかったと結論付けていて、一方で調査では、どういう文言で配布したのか、現場でそういう配布状況などを、質問に対してちゃんと確認していないような回答がありました。そうすると調査が不十分だというふうにも思えますが、そのあたりをさらに徹底されるお考えというのはありますか。
【社長】
現場の調査は終えていると思っています。今回の件は会社の活動と業務外の活動が会社の業務として混然一体となっていることが事の本質と思います。
 例えばティッシュペーパーなど、お客さまに差し上げる粗品はいろいろありますが、1年の暮れですので、御礼であったり、あるいは、来年、新たにお客さまになっていただきたいといった思いを込めたり、いろいろな意味で配っているのだと思います。お客さまにお配りする意図は多々あると思いますが、その中に、局長会活動と峻別せずに行われたということは、局長会も既に認めているわけで、そうした指示が局長会の中央からあったということです。
 何人かの人たちは、会社の活動と局長会活動とを峻別するようにということを添えて現場に指示していますが、そうではない人たちもいたようですから、やはり混然一体となっていたということだと思います。
【記者】
では、さらに現場の調査を徹底されるお考えは今のところはないということですか。
【社長】
現場の調査は終わっており、残るのは日本郵便本社の調査だと思っています。
【記者】
カレンダーを購入する中で、写真使用料などの名目で経費の一部が局長協会という、また別の局長の団体に流れたという情報提供が複数の関係者からあるのですが、この事実関係についての話と、カレンダーを作る過程などに、問題はなかったかというのは、どのようにお考えになりますか。
【社長】
カレンダーの作成は当然、外部の印刷会社に外注しなければいけないので、それを含めて2018年度が約2億円、2019年度が約4億円、2020年度が約4億円経費化されています。1本あたりの単価も含めて、どういう経緯で、どういう積算でというのは、調査の中で明らかになってくると思います。
【記者】
今の事実関係については、まだ調査中だということですか。
【社長】
そうです。報告をまだ受けておりませんので、どういう範囲で、どういう話が聞けているのかということは、まだ知りません。
【記者】
朝日新聞から10月19日に、局長の個人情報の取り扱い方について質問状を送っており、主に3つの地方会の文書について質問をしています。近畿地方郵便局長会の文書、これは昨年7月、1人80世帯以上の支援者づくりという絶対目標のために、局長がロビーに出て、お客さま対応することで1週間に3人の支援者を獲得しなさいという指示を出していました。中国地方郵便局長会は昨年11月、専務理事がメールで送信した文書の中で、後援会立ち上げまでの最重要取り組みとして、窓口来訪者の記録、「社員の協力も願う、会員自ら窓口に出て、積極的に声掛け」こういうことを記しています。東北地方郵便局長会は、昨年2月の会議で配った資料で、支援者として登録されていない世帯を事業PRのため、訪問などをして信頼を得るというふうに記しています。
 これらは郵便局の普通のお客さまを、政治活動の支援者として獲得しようという考えの表れだと思いますが、個人情報保護法上の問題点も併せて10月19日に取材を申し込み、日本郵便からは調査すると回答をいただき、私の認識では、増田さんも先月の会見で、問題が広がってきたということで、これも含めて今月末までに調べて公表するというご説明だったと思います。
 これに関して、日本郵便、日本郵政の取締役の間で、社外も含めて、速やかに共有されていたかどうかを教えてください。また、10月19日以降、この3つの文書に関して、先ほどの1,000人の中で、何人ぐらいの方にどういう聞き取りをして、何が分かって、何が分からなかったのかを具体的に教えてください。
【社長】
いわゆる社屋の中で政治活動するという話に関して言うと、多くの行為は局舎を出て、お客さまのお宅に伺って「大変お世話になりました、またよろしくお願いします」ということだと思われます。こうした行為はカレンダーを使う場合、使わない場合あるかもしれませんが、民営化後の2008年や2009年頃に、社屋の中で、いわゆる政治活動はできないという通知を出しています。その後も、そういうことについては、恐らく言われ続けてきたとは思いますが、そういう指導が徹底出来ていなかったことが問題だと思います。
 したがって、そうした活動自体と、どういうことが行われていたかということは調べる必要があり、11月中には間に合いませんでしたが、日本郵便でも調査をするということで取り組んでいます。
 また、今回の件については、当社の社外取締役、日本郵便の社外取締役の人たちも含めて、取締役会で報告をしています。ただ、そのときの資料の中に、今、引用されたものは入っていなかったかと思います。しかし、こういう問題が今、起きていて、必要な調査を行っているということを取締役には報告をしています。
 それから、10月19日以降で、約1,000人にどのような調査をして何がわかったのかについては、私も詳細は存じておりませんので、見解をお答えするように日本郵便に話しておきます。
【記者】
少なくとも近畿地方郵便局長会の、お客さまを標的にして政治活動の支援者を獲得するような指示については、日本郵便が確認できているということですか。
【社長】
そこの内容も含めて、調査の詳細を私が把握していないため、日本郵便に言っておきます。
【記者】
この問題も含めて、11月までに明らかにすることができなかった理由はどのように考えていますか。
【社長】
調査対象がかなり多く、日本郵便のコンプライアンス部署で一連の調査をしていますが、現場の局長約1,000人をヒアリングするというのは、短い時間でかなり大変だったと聞いています。したがって、カレンダーの問題にかなり絞って調査をしたと思いますが、それでは不十分ではないかというご指摘もいただいております。加えて今の問題も出てくるので、それについて全国的に調査するのか、少なくとも指示したと言われている地方で調査を行うのかという問題はありますが、内容的には相当大変な作業だったということになろうかと思います。
【記者】
カレンダーのお届け先リストに関しては、お客さまの情報を支援者名簿に写した人はいないという調査結果が出ていますが、このカレンダーお届け先リストについても調査を続けるのか、調査が終わったということであれば、どういう調査をしたのか教えていただけますか。
【社長】
個別のお届け先についてリストがあり、ひな型を日本郵便で入手しているというのは聞いていますが、細かな調査でどういうものが出てきているかまでは報告を受けていません。おそらく何らかの形で現物を手に入れて調査をしていると思いますが、日本郵便から現場でどのような調査をしたかお答えをさせます。
【記者】
増田さんが先ほど語った全体像が分かったという発言は、カレンダーお届け先リストも含まれているのでしょうか。
【社長】
カレンダーお届け先リストも含めて、現場の局長たちに指示がどういう流れで行われていたのかということを把握できたと思っています。新しく作った内部通報などによって、具体的にこういうルール違反があるということが判明すれば、全て個別対応しようと思っています。カレンダーを予算化して、年末に政治活動とオーバーラップする局長会活動を、局長会の中央から指示して行っているということですが、今回、現場の第一線で実際に動いた局長に対しての処分は行っておらず、組織的に行われているだろうということで、幹部の局長を処分しました。
 例えば近畿など、具体的にルール違反のようなものがあれば、それは個別で対応しようと思っています。
【記者】
お客さまを標的にして支援者を獲得する指示は、少なくとも3つの地方会で行われているように見受けられますが、これが個別的なお話だと増田さんはお考えですか。
【社長】
約1,000人の中に、当然今言った3つの地方会の人たちもいて、そこから出てきたものがルール違反になるかどうかについては、日本郵便で調べていると思っておりますので、それ以外、あるいはその3つの地方会についても、より具体的なものがあれば、それは個別の問題だと思っています。
 また、カレンダーお届け先リストについても、その3つの地方会について調べている以上は、何らかの調査は行われていると思っています。
【記者】
全体像を把握しても調査しないというのは、カレンダーお届け先リストはもう調査しないことになるわけですか。
【社長】
カレンダーのお届け先リストについて、個別にどうするかということを私から日本郵便に指示しているわけではありませんので、約1,000人を調べて、全体のカレンダー問題についての指示構図は分かったと思っています。
 個別にそうしたリストがあって、それを作成することが日本郵便としてルールに違反するということがあれば、もちろんそれは調べていきます。
【記者】
ロビー活動は全体像に含まれないわけですね。
【社長】
ロビーでの活動は、今回のカレンダー配布の問題とは少し別だと思います。カレンダーを使っていない場合もありますので、それはまた別途、日本郵便で調査をいたします。ただ、ロビーでの活動の関係と、そのリストというのは、おそらくオーバーラップすると思います。
【記者】
では、引き続き、カレンダーお届け先リストについても調べるということですか。
【社長】
そうです。日本郵便からは、そのように聞いております。
【記者】
先日の記者会見では、引き続き調べるという話は日本郵便から出ておらず、ロビー活動を引き続き調べるのかということの答えが、調査を尽くした、調査を終了したというものであり、ロビー活動に関してどのような調査をしたのか、質問を重ねるうちに、調査終了は間違いだった、調査継続を検討するというお話でした。こうした発言を見ていると、記者から質問がなければそこで調査を打ち切ろうとしていたように映ります。日本郵便としては早く手じまいをしたくて、記者から何も質問がなければそこで終わりにしたのではと見受けられますが、どのようにお考えですか。
【社長】
局長会の活動全体として、いわゆる政治活動と、一般的な会社の業務は区別しなさいというのが、民営化後、やはり十分峻別されてなかったことが、一番問題だったと思います。したがって、カレンダーの配布について、一番大きく問題になっていますが、さらに言えば、局長会も含めた社員全体のマネジメント、特にエリアマネジメント局をどうするかということが今回の大きな問題だったと思います。日本郵便においてそこを正すということについて言えば、カレンダーだけで終わりではなくて、それ以外のことも常に注意をして、調べるべきは調べ、対応策をとっていく必要があると思います。
 日本郵便が先週、記者会見をして、カレンダーについていろいろ対象を区切って調べたということで、その調査結果だけ発表したということから、そういった印象を持たれたり、あるいは言動も、それ以外のところに及ばなかったりということもあるかもしれませんが、いわゆるロビーでの活動と言われているようなものについても、局長会の活動と会社の業務の峻別をどうするかを常に気をつけていかなければいけませんし、調べるものが出てくれば、常に調べる必要があると思います。そこを先週、お伝えするのが不十分だったかとは思います。
【記者】
分かりました。ロビー活動を引き続き調べるという前提ではありますが、お客さまを標的にして支援者を獲得するという考え方についてはどう考えていらっしゃいますか。
【社長】
政治活動においては、やはり支援者にどういう形であれアクセスしたいわけで、それが業務から全く離れてであれば問題はありませんが、局舎の中や、勤務時間の中で、日本郵便の会社の業務と思われるような形で行うことはできないということがルールになっているわけです。
 したがって、そうした活動がどのような場面でどのように行われていたかということをよく見る必要があります。局舎の中ではやめてもらわないと困りますし、一方で、そうではないところで行われた場合は問題がない場合もあります。まさに混然一体となって微妙なところがあると思います。
 局舎の中であからさまに政治活動を行うのはルール違反ですから、これはやめてもらう必要があり、そうしたことがあれば、社員から内部通報が出てくるものと思っています。
【記者】
先ほどの指示内容ですが、局舎の中で政治の話をするわけではなくとも、心の中で、この人は後援会に入りそうという人を見繕って、局舎の外でも、東北地方であれば支援者ではない人のところに業務を装って仲よくなって、おそらく今年あたりに、後援会に入ってもらえませんかということを、業務ではない時間帯にこっそり言い出そうとしていたというように読めます。そうした指示の一部は確認されたと日本郵便も説明していますが、こうした指示を偉い局長の方々が出していたということについては、どんな受け止めですか。
【社長】
局長会の活動自体を制約してもいけないところはありますが、それでも政治活動と疑われかねないものを微に入り細に入り指示するというのは問題だと思います。
 このあたりは非常に微妙で、民営化後に勤務時間中の政治活動の禁止という文書を出したことがあるのですが、一方で、あまりにも政治活動を制約しすぎではないかと言われたこともあったようで、なかなか会社の業務としての活動と局長会の政治活動を定型的に切り分けるというのは、実際に行われている行為からすると、難しいところがあります。ただ、今おっしゃったように、微に入り細に入り記載するのは問題があるかとも思います。地域の方々の中には、郵便局には世話になっているし、こういう時代でも応援したいと言ってくださる方が多くいらっしゃるので、そうした方々に心を込めてカレンダーを配るというのは実施してほしいと一方では思います。受け取る方はそのように受け取るし、頼むほうはいろいろな思いがあって頼むという場面もあるとは思いますが、いずれにしても、第三者的に見て疑念を持たれる行為については避ける必要があると思います。
【記者】
カレンダーの配布問題の調査結果について、政治活動と会社の業務との区別をきちんと整理して指示していた地区統括局長は処分されずに、区別ができていなかった地区統括局長が主に処分されているということでした。ただ、相当数の現場の局長たちは、きちんと区別しなさいという指示を受けて、区別する形で、むしろ政治活動のほうでカレンダーを配っていた方々が相当数いるように見受けられます。
 きちんと区別をして、土日などに政治活動という認識のもと、カレンダーを配っている局長たちが相当数いて、カレンダーはまさに経費で買った物品ですので、政治活動と会社の業務を切り分けた上で、政治活動でカレンダーを配るといった指示と行動のほうが、物品を流用する度合いが強いので、より問題性が高いと思っています。そうすると、今回の調査結果、実は実態はあまり捉えられてないのではと思いますが、いかがでしょうか。
【社長】
そこが今回の問題の難しいところで、どうやっても切り分けがなかなか難しいと思われます。政治活動といっても、それは将来の郵便局のファンというか、郵便局に対してこれからいろいろつながりをもっていただける人であったり、あるいは今まで郵便局でいろいろ保険商品などを契約してくれた人であったり、何らかの形でそういう人たちに配るというのは一般の会社でもよく行われているので、切り分けがなかなか難しいと思います。
 今おっしゃったように、土日に配っているといっても、受け取る側からすれば、曜日は関係なく、これで郵便局のファンになってくれるということも考えられます。こういった粗品はさまざまな効果を狙ってお渡しをするものですから、そこは純然と分けられないと思っております。今回、窓口だけで配布をするようにしますが、配布の仕方はよほど注意をしなければなりません。例えば、局長は管理者ですので業務外という概念は基本的にはあまりないところですが、一応土日が業務時間外になるとすると、そこをどこまでちゃんと切り分けられるかというのが、今回の問題の難しさだと思います。
 その危険性をしっかりと言わずに指示した人たちのほうが、やはり問題だと思っており、ちゃんとそこを切り分けていれば、政治活動で配ることはせず、会社が期待している業務だけで配っていたと思います。
 仮に、政治活動だけで配ろうとしたということで、処分しようとしても、おそらく、「郵便局のファンを拡大するために行った」というに違いないと思います。そこが今回の問題を明らかにしていくところの難しさだと思います。
【記者】
多くの局長はむしろきちんと切り分けているように思う。広島県知事選のポスターを貼ることもそうですが、政治活動するときは休みを、平日だったら年休を取る、あるいは土日を選ぶなど。
【社長】
後援会活動でポスターを貼るのは明らかに政治活動ですから、ちゃんと休みを取らないとできないわけですが、粗品を配るというのは、実際には両方の面を持っていますので、そこがなかなか難しいところだと思います。
 社員に配ったというような話もあり、これは、私は不適当だと思いますが、支援者だからといっても、将来のお客さまを増やす場合もありますし、これまで郵便局の商品を買っていただいたお客さまに御礼の意味もありますし、政治的にもお世話になった方ということで、全てを含めてありがとうございましたという場合と、いかようにでも使えるわけです。
 そこのところをむしろ切り分けてやっている場合があるというご指摘ですが、難しいのは心中どのように考えて物をお渡ししているかというところだと思います。
【記者】
楽天グループ様との業務提携の進捗について、先般の決算などでも、携帯電話事業の投資などが多くの負担になって、楽天グループ側で赤字幅が拡大しているという状況だと思います。
 改めて、単なる業務提携ではなくて、資本業務提携ということで、現時点で、出資の判断は正しい判断だったのかどうか。出資者として、楽天の経営については責任があると思いますが、どう現状見ていらっしゃるか、ご見解を伺えればと思います。
【社長】
楽天グループ様への出資によって、最初に期待されるものはやはり荷物の増量ということになるかと思います。それから、明日から始まるゆうちょ銀行デザインの楽天カードです。私どもがなかなかアプローチできない層に入っていきたいということです。それから、全体的にDXについて、意識改革や仕掛けも含めて、私どもとしても取り組んでいきたいと思います。それぞれについて、日本郵政グループとして出資をしたことによって、楽天グループ様の協力も引き出しやすくなりましたし、考えている以上に成果が上がってきている、下地がしっかりとでき上がってきていると思っています。
 楽天グループ様の携帯事業ですが、当然のことながら私どももそう判断していますし、楽天グループ様はもっと足元を見て、さまざまな策を講じているようです。携帯事業に第4のキャリアとして出ていくためには、相当な覚悟がいると思いますが、恐らく楽天市場が囲い込んで、そこで得ている支持者、利用者に、インフラの携帯電話というよりも、そこを通じて提供するサービスを、楽天市場のユーザーとうまく結びつけたいということで、その先をいろいろと考えておられると思います。
 今一番投資もかかる時期だと思いますが、私どもとしては必要な投資であったし、私どもとして期待している効果は出てきておりますし、楽天グループ様として携帯電話については、恐らく最初から覚悟をしていたと思いますが、次の5Gにおける優位性みたいなものを、これからサービスの面で出していかれるのではないかと思っています。
 楽天モバイルの戦略になりますので、楽天グループ様全体として、いろいろまたこれから新しいサービスを展開されることを私どもとしては期待しています。
【記者】
先日、かんぽの宿の売却の話が公表されました。従業員の方は2年間雇用を確保するというところはお聞きしているところですが、かんぽの宿は郵政グループの宿ですから、公共性というのを皆さま進んでやっているところがあると思うのですが、そうした文化について、次の売却先に引き継がれるのかどうかということについて伺いたいと思います。
【社長】
事業譲渡したとしてもかんぽの宿の施設自体はこれからも引き継がれていきます。かんぽの宿鴨川も非常に評判のいい、利用度の高いところですから、お客さまを引き継ぐ、さらに地域に溶け込んで新たに開拓するというのは、私どもが工夫してやってきた以上のことを、新しい事業譲渡先でもされると思います。
 最低でも2年間は正社員の雇用について継続していただくことになっていますが、本社(宿泊事業部)の従業員をクロージングから1年間は出向で受け入れて、29施設の運営管理にあたらせる中でかんぽの宿全体のマネジメントを学び、今後の運営体制を構築したいと事業譲渡先からは言っていただいております。私どもも、ただ単に赤字だから売るということではなく、今まで地元でご愛顧いただいたものがさらに続いていくことが必要と思っておりますので、かんぽの宿でこれまで行われていること、今は当社の事業として行われていますが、そうしたところでプラスの面は、新しい譲渡先にも極力伝えていきますし、継続していただけるようにしていきたいと思います。
【記者】
何か条件面で担保されているということでよろしいですか。
【社長】
大前提にはなっています。今回の事業譲渡先は、32カ所それぞれの宿について全部評価をして、それで譲り受けることになっていますので、そうしたことを前提に、私どももお譲りすることにしたということですから、先方としても、今現地で行われているような地域と溶け込んで、地域の支持を得るような活動は当然やられるものと思っています。
【記者】
カレンダーの調査で、現場に関する調査というのはもう終わるということでしたが、一方でロビー活動についてはまだ調査が続いているというところで、結局今の時点で、どの調査は終わっていて、どの調査は今後続けていくという認識を教えていただきたいです。
 加えて、いわゆる局長会と日本郵便とのやりとりや、カレンダー政策のプロセスという話は、日本郵政が進めている日本郵便の調査の中に含まれているという理解でいいのか教えてください。
【社長】
当社の調査は、外部の弁護士が行っていますが、これはカレンダーについて、どのような経緯で予算化をされたかなど、日本郵便本社、経営幹部の中でどういう認識だったかという調査です。当社がそれを日本郵便から依頼されて、調査結果を日本郵便に渡すということです。
 一方、フロントラインについては、カレンダーについての上部からの指示などについては、一連の調査が終わり、解明が終わって、個別のルール違反事案があれば対応していきます。
 また、声がけなどの、いわゆるロビーでの活動といったものについては、引き続き日本郵便で調査をするということです。
【記者】
今日の会見も、ほとんどこの質問が出ているわけですが、もともと日本郵便では実質的に局長会の政治活動に参加する人物しか局長になれないという仕組みがあって、増田社長も10月の会見で、見直さなければいけないと発言していた、いわゆる局長会に関する制度については、今回、日本郵便の調査結果が出ましたけれども、今後どのように改めていく考えなのかお聞かせください。
【社長】
現場の業務の推進において、局長会の意見を聞くことは大事だと思います。
 会社のガバナンスの考え方からいうと、最終的に業務を遂行したり、さまざまな問題が起こったときにそれを処分したりするのは、支社長が責任をもってやっていかなければいけないことと組織上なっておりますので、支社長が判断できるような形にしていく必要があると思います。
 問題は、今の支社の体制がまだそういった形に適応できるほど十分でない部分があるということだと思います。特にエリアマネジメント局については、支社長のガバナンスがまだ十分でないところがあって、これを少し重層的に考えなければなりませんし、時間をかけてでも支社の体制を強化しなければいけません。来年以降、支社の体制を強化するということは前々から申し上げていますが、支社でのマネジメント力の強化を行って、エリアマネジメント局も含めたガバナンス構造を確立していきます。以前から局長の登用や評価などについても、局長会が非常に重視されるようなこともありました。日本郵便も再三申し上げているとおり、推薦という制度はありませんが、実際に局長会の人たちが局長候補者を発掘するということに、相当頼っているところがやはりあるわけです。そのため、広く局長候補者を見つけていくような活動を、支社も含めて全体で行っていくようなことを、これからさらに進めていくという体制整備が必要になってくると思います。
【記者】
局長会という、企業の中にこうした組織がある現状を、例えば今後変えていくとか、そういうお考えはいかがでしょうか。
【社長】
局長会は今回、反省文も出していますし、問題を引き起こしているという認識は持っていると思います。一方で局長同士の組織を持って活動することについては、制約もできないわけです。活動するのであれば、会社のためになるように、ルールに反しないようにということはありますが、エリアマネジメント局の意見を集約したりすることが、今までもかなり局長会活動に依存しているところがあって、それが問題を起こすことにもつながってきたと思います。
 私は、局長の現場感覚というのは非常に重要なので、業務を遂行するに当たって丁寧に意見を聞くことはどうしても必要だと思います。大きな工場のようにまとまっているわけではなく、郵便局は局長を中心に全部が個別に散らばっているわけです。そこの一番の管理者の意見というのは非常に重たいものでありますので、私は、会社の業務を前に進めていく上で、大いにこうした組織の意見は聞いていきたいと思います。
【記者】
楽天のおまとめアプリで、どの程度荷物を増やしていきたいという目標値や、再配達の削減の目標値はありますか。
【社長】
今のところ公表できる目標値を持つまでには至っておりません。実際にうまく稼働し、周知が行き渡ったところで、どの程度それを引き上げていくかの数値を持ちたいと思います。
【記者】
郵便局での自治体の行政事務受託が、法律が改正されて以降も、急速には進んでないように見えますが、例えば一日のうち、郵便局の窓口が開いている時間帯、空いている時間帯だけ行政事務を引き受けるような、時間帯を絞ることで手数料を安くして広げていくなどのお考えはありますか。
【社長】
包括なのか一部なのか問わなければ、今、自治体からの行政事務の受託は、約350団体まで広がってきたところです。包括事務受託はまだあまり多くはありませんが、個別のものはかなり広がってきていると思います。自治体もそれによってプラスかどうかは考えておられると思いますので、弊社グループからも宣伝していきたいと思います。自治体のサービス拠点である出張所などは、ますます個別に維持するのは難しくなっていくと思いますので、郵便局に委託したいという自治体側の考え方は、間違いなく増えていくと思っています。そうなれば、今度は自治体がより利用しやすいように、時間を弾力的にするということはあり得るかもしれません。今すぐそれを行うことによって、受託する自治体の数を稼いでいくつもりはありませんが、いずれにしても、自治体側の要望に沿って、郵便局の側で時間帯を区切れば対応でき、自治体側もそれでいいということであれば、そこは柔軟に考え、そうした話は進めていきたいと思います。自治体側にも、そのような制度を使ってみませんかという働きかけを進めていきたいと思います。
【記者】
カレンダー問題について、局長会の新会員研修などの取材で、仕事中に選挙活動はしないようにと役員の方が新人の局長に指示しているのを見てきた。カレンダー配布に限らず、営業活動と選挙活動の峻別が難しいと思う。懸命にお客さまとつながろうとしている多くの局長に一言、激励のお言葉をお願いしたい。
【社長】
現場でのお客さまへのお声がけについては大いにしていただきたいと思います。問題は、そうした自発的なものというよりも、上からの指示について明らかにしたいというのが今回の調査の目的です。
 処分についても、そうした現場の一般の局長には行っておりませんので、現場の郵便局長が自発的に地域のためによかれと思ってやっていることは、ぜひこれからもどんどん積極的にやっていただきたい。
【記者】
今回の調査はやはり不十分ではないか。各種報道の事実や構図に全く届いていない。また、指示はあったが指示に従った者はいないという、常識では考えられない構図を描いており、不十分と言わざるを得ない。なぜこんなことになるのかというと、全国郵便局長会と日本郵便との力関係でいったら、全国郵便局長会のほうが上だからである。これは内部調査ではなく外部調査でやるべきだったと思うがいかがか。
【社長】
日本郵便本社の幹部に対しては、現在外部の弁護士による調査を行っております。現場の指示系統と、ルール違反があったかどうかということは、会社としてコンプライアンス部門が対応するというのが一般的なやり方だと思います。そうはいっても、個別の不祥事案ではなく、局長会が相手だからというご意見なのかもしれませんが、全国での状況を調査するには、全体の迅速性を考えると日本郵便の今の仕組みを使わざるを得ないと思います。全体的な調査をするとなると、第三者調査といっても、どのような第三者を使うのか、各県毎でも、弁護士が少ない地域もあります。2万人近くの局長について調査するのは大変難しいですが、会社のコンプライアンス部門を使えば、会社の指示によって日にちを決めて実施するのは可能になります。約1,000人を対象にするのも結構大変だったようですが、年末のカレンダーの配布にどのように対応するかも含めて間に合うような形で公表できました。
【記者】
組織の巨大さを理由にしてしまうと、真実にたどりつかないのではないか。調査の状況を想像してみると、局長会にお聞きするような感じであり、追及が甘いのではないか。
【社長】
調査をどのような形で実施しているのか詳細まで承知しておりませんが、いずれにしても指示系統がデジタルフォレンジックなどの調査手法の活用で判明すればいいのではないかと思います。
【記者】
現場ではなかなかデジタル化が進んでいなから難しいかと。
【社長】
デジタルフォレンジックは日本郵便本社の調査になります。
【記者】
以前、局長から聞いた話で、政治活動しか私はしていないと豪語する局長もいた。局長の中には、次の選挙で誰に入れるか聞いてこいと社員に指示を飛ばしているという状況もあります。誰々は丸、誰々はバツというところまで、綿密に管理していた。そういうことを考えると、局の配置や人員の配置、ここに余剰が相当あって、政治活動ばかりしていられる時間や、機会があるというおそれがあるのではないかと思いました。これはネットワークの維持と裏腹の話だととれなくもないのですが、お受け止めを教えてください。
【社長】
仮に政治活動しかしてないのであれば、辞めていただくしかないと思います。どういった状況でどのように言ったのか分かりませんので、何とも言いようがありませんが、当然、会社の仕事を中心に行っていただく必要があります。仕事を離れたところまでは会社で束縛するつもりはありませんが、会社の仕事をしていないと外部に向かって公然と言う人は、当グループには必要ないと思います。
【記者】
先ほどの件は極端な例ですが、全体のネットワークの緩み、あるいはもっと民間企業として絞るべきところの再点検というのが必要だと思うのですが、お受け止めがあればお願いします。
【社長】
ネットワークの問題や仕事量については、常に点検しておく必要があります。リアルなネットワークというのは今の時代、ほかにはあまりありませんので、それによって提供できるサービスで収益につながるものをしっかりと育てていきたいという思いもあります。
 過疎地域は、今のネットワークを最大限、公共的なサービス基盤として使う方向感があると思いますが、都市部についてどうするかというのはこれからの大きな課題だろうと思います。それについては、会社としての業務との関係でよく考えたいと思います。
 政治活動との関係でネットワークをどこまで維持するかというのは考えたことはなく、業務との関係で考えるべきだと思っています。政治活動の件については、日本郵便の本社の調査などもさらに行い、全体の調査が進んだところでよく考えたいと思います。
【記者】
ロビー活動に関する調査は継続するということでしたが、スケジュール感は。
【社長】
当社の調査については、12月中にまとめたいと考えています。日本郵便の調査については、できるだけ早めに日本郵便で実施するものと思います。
【記者】
カレンダーのお届け先リストに関して、カレンダーを渡した相手、関係先にはお客さまを選ぶ欄があって、そこにさらに投票行動を推測して評価する欄もありました。近畿地方では、例えば昨年、郵便局でたくさん買い物をしたら、後日、面識のない局長が家に訪ねてきてカレンダーを渡されたというお客さまもいらっしゃいます。そうしたお客さまの立場でお届け先リストを見ると、自分の情報があのリストに載っていて、投票行動を予想されて、記録されているのではないかということを不安に思いながらも、いつも使っている郵便局だから聞くに聞けないというお客さまの声も聞いているのですが、今回の調査と、お客さまへの対応、説明ということについて、どのようにお考えですか。
【社長】
お客さまがどう思われているかという、お客さまの気持ちや反応というのは非常に重要です。しかし残念ながら、なかなか個別には分からないため、先ほど申し上げたように内部通報などがあれば、個別にいろいろ調査ができますが、今のところそうした形にはなっておりません。
 詳細は承知していませんが、ご指摘の内容の苦情や不満などがお客さまから来ましたら、その中からさらに調査が可能になると思います。
【記者】
元々その方が後援会員であれば何とも思っていないと思いますが、既に新聞でご紹介したお客さまは、昨年初めてカレンダーを受け取って、局長がご自宅にやってきて、少なくとも昨年は、厚意だと思って、いい思い出だったと喜んでいらっしゃった。ただ、お届け先リストというものを見て、気味が悪いし、それについて自分がどうだったのかというのを本当は知りたいけれども、顔なじみの郵便局だけに、そこに聞けないという声があったのですが。
【社長】
局長が選挙の投票を頼もうとしてそうしたことを行っているという、典型的な例をうまくつかまえれば、さらに解明できるところがあるかもしれませんが、かなり難しいと思います。
【記者】
今年になってから後援会の働きかけが問題になっていなければ、あったかもしれないと。
【社長】
局長がどういった形で声をかけたかというのは、局長側からは出てこないので、何とも言えないと思います。
 個別のルール違反があれば、分かった段階でしかるべき措置はとりますが、懲戒処分をするにはしっかりとした根拠がないとできないので、そのようなものについてどう調べるかというのは非常に難しいことは事実です。
 いずれにしても、端緒が出てくる可能性もあるので、そうしたことがあればさらに調査したいと思います。
【記者】
お客さまへの説明に関しては。
【社長】
全体が終わったところで検討したいと思います。まだ途中段階なので何とも言えません。しかし、一連の報道を見て、お客さまもさまざまな思いを寄せられる可能性がありますので、そこにはちゃんと応えていきたいと思います。
【記者】
ロビー活動の指示に関して言えば、個人情報の取り扱い方、取得の仕方というところのモラルがかなり低いと疑われる状況だと思いますが、日本郵便、日本郵政グループが、地方自治体からの行政サービスの受託などを進めたり、中計でも今後さまざまなデータを利活用したりしていこうというときに、こうしたモラルの低さが表れると不安になる部分があると思うのですが。
【社長】
総務省で毎年こうした情報をどのようにビジネス化するかに関する委員会があり、常に問題になっています。これは当グループに限ったことではありませんが、業務上取得した情報をどのように今後のビジネスにつなげていくかということについては、必ず問題になるところです。
 基本、当グループでは、同意をいただいているものしかビジネスには使わないとしていますが、情報を匿名化するという方法もあると思います。いずれにしても、関係法令や個人情報保護法などについて十分に注意しておかないと、お客さまから反発を受け、ビジネスどころか検討にすらなかなか入れなくなってしまいます。
 当グループはさまざまな情報を持っているのに、なぜもっとビジネスに使わないのかと言われていますが、だからこそ慎重にやっていかないとなかなか使えないということです。そのため、現実にはあまりそうした情報を使ってないという状況があります。
 これからちゃんとルールを確認して、問題がないという確証が得られたら、そうしたデータを活用したいと思いますが、そこはできるだけ慎重に進めていきたいと思います。世間の評価というのは、こうした問題を考えるときはとても大事だと思います。
【記者】
郵便局長の組織の中で、郵便局長の間にも、物言えぬ雰囲気というか、上意下達で、問題があっても、あるいは感じても、組織の中で上の人が怖くて言えない雰囲気があるように感じられますが、そこはどう感じていらっしゃいますか。
【社長】
局長会の雰囲気については、私はよく分かりません。会社の中のことについて言えば、会社の業務の仕方については、いつでも支社長に伝えてほしいと思います。指示文書が山のように降ってくるということを、よく局長から言われますので、それは大変申し訳ないと思っています。
【記者】
会社の中では、そうしたものをお感じにならないですか。
【社長】
支社長ですら郵便局から遠くて、なかなか現場を分かってくれないという意見は山ほど来ますので、そこはもっと距離を縮める必要があると思っています。会社の業務を進めていく上でも、常に現場の局長から、どう見えているかというのは意識しておかないと、組織はついてこないと思います。
 当グループの場合、一つ一つの郵便局という拠点が5人や10人、最低は2人ですが、非常に細かく分かれていて、その中に管理者として局長がいます。約40万人も社員がいる会社というのは、当グループくらいだと思います。10万人とか、数万人規模の会社はもちろんありますが、工場であったり、大きな支社であったり、各拠点にかなりの人たちがいて仕事をしているわけです。郵便局は本当に点的にばらばらになっています。
 その人たちが仕事をしていく上で不安があれば上に伝えるという仕組みをどのように作っていくかというのが難しいところです。不安や不満、問題を抱えたときに、それをぶつけやすい環境というのは常に作っておく必要があります。
 十分できているとは思っていないので、そこはもっと改善する必要があると思いますが、会社の業務については、ダイレクトに意見を言える仕組みをつくったので、不満をぶつけてきてほしいと思います。
 その中で局長会活動の話も、会社として応えられるものについてはできるだけ応えていきたいと思います。
【記者】
日本郵便が公表している郵便局舎の公募がかなり激減していますが。
【社長】
郵便局舎については、私から日本郵便に対して、過去に遡って、もう一回よく調べてくれと言っています。
 取締役会にかかる急ぎの案件を最優先で調べるのと、過去の案件についてもよくプロセスを調べてくれと言っておりますので、その影響があるかもしれません。
【記者】
調査の主体は、またコンプライアンス部門ですか。
【社長】
コンプライアンス部門が関わってくることもありますが、店舗の担当で行っています。支社で取りまとめをしていますので、当時の関係者などに、本社から出向いてよく話を聞いてほしいと言っています。
【記者】
郵便局で使われているリストが、政治に使われているリストとイコールになっているというようなお話の流れだと思いますが、地方で選挙の取材をすると、実際リストというのは、さまざまあって、電話をかけたりはがきを送ったり、さまざまな作業を事務所でやっていると思いますが、かんぽ生命やゆうちょ銀行の営業のリストをもしかして使っているのではないかと思いましたが、それは業務として大丈夫なのでしょうか。局長や局長の奥さまが、選挙期間には選挙の候補者の事務所で活動していると思うのですが。
 選挙期間中は合法的な行為ではあると思いますが、そういったリストと郵便局のお客さまはオーバーラップしていて、逆のこと、政治で使ったり、知り合った人のリストを控えたりということもあるかと思うのですが。
【社長】
選挙事務所で使っているリストは、当グループに限らず、会社の業務として会社が提供しているということは基本的にはないと思います。任意団体である同好会などのリストで、その中の人たちが持ち寄って、本人が電話したり、知り合いのところに電話したりということをしていたのではないかと思いますが。
【記者】
個別のことは分かりませんが、局長ではなく、おそらく奥さまが活動していることもあると思います。そのときに電話かけたり、はがきを書いたりするリストはあるわけで、そういったものが、逆に日本郵政のお客さまリストになっているかもしれない。今は、郵便局に来た人のリスト、例えばかんぽ生命に入っている人のリストを、支持者にしたり、後援会のほうに流したりという話がありますが、逆にそのリストを使って営業活動をしていることは大丈夫なのでしょうか。
【社長】
選挙事務所から取ってきたリストを会社の営業で使うということですか。
【記者】
自分が直接何かお願いしに行った人については、覚えているわけですよね。
【社長】
知り合いに何かの形で営業するということはあり得ると思いますが、選挙事務所に手伝いに行って、そこにあったリストを取ってきて、かんぽの営業などに使うというのは聞いたことはありません。
【記者】
オーバーラップしているのであれば、使うこともあるかもしれませんが、それは処分の対象などになるのでしょうか。
【社長】
会社としてどのような営業活動をするかということだと思いますが、選挙事務所で得た情報を営業活動に使うことについて、会社として推奨するということはありません。
 会社で決めているルールにのっとってやってもらわなければいけないと思います。
【記者】
日本郵便の調査で、最初に社員指導が十分ではなかったと、陳謝されていますが、何に対しての陳謝なのかというのをはっきりもう一度確認をさせていただきたい。政治流用した疑いが出ている、疑念を抱かれて信用を失墜したことに対して社員指導が十分ではなかったという考えなのか、もう事実上、政治流用しているという認識での社員指導が十分ではなかったという発言なのか。
【社長】
社員を懲戒処分する事態を招いたことに対して、社員指導が十分でなかったということです。民営化後出した通知に、局長会の活動と会社の活動を峻別して実施をするということがうたわれていました。社員指導が十分であれば、それを今回もちゃんと守っていれば、処分に至るような事態にはならなかったということで、そのことについて、社員指導が十分でなかったということを申し上げました。
【記者】
そうすると、政治流用、要は名簿やカレンダーについては、政治流用したと断定したわけではないということですか。
【社長】
活動が混然一体となっており、外から見て局長会の政治活動として、粗品で配るカレンダーが使われているように見える部分があるということに対して、峻別がされていないということです。これは反省点であり、十分な峻別がなされなかったということを捉えて処分をしています。
【記者】
今回の総務省からの行政指導については、厳密に言うとどのような内容で指導されているのでしょうか。
【社長】
詳細は総務省にご確認いただく必要がありますが、職員の法令遵守意識の欠如、服務規律の徹底の不足などがあって、それについて職員の服務規律の徹底等の再発防止策を講じることが必要とのご指導をいただいております。
【記者】
では現時点でも、社内で断定はされてないということですね。
【社長】
カレンダーを配布することについて、業務の峻別が十分されていなかったということを私どもでは言っているということです。
【記者】
郵便・物流事業について、今年9月までの実績ですと、ゆうパック、ゆうパケットともに減少していて、特にゆうパケットは非常に減少幅が大きく、競合である佐川急便やヤマト運輸では、むしろ荷物数が前年に対して増えている、あるいは若干横ばいというような状況ですが、日本郵便に関してはそうではない。冒頭、楽天からの荷物増というのを期待している一番のポイントだとおっしゃいましたが、足元の状況を見ておりますと、楽天以外のところに関しては非常に苦戦していて、ずっと減少傾向にあるという、この状況に関してどういった受け止めかというのと、対策としてどういったものを考えていらっしゃるのかというのを教えてください。
【社長】
昨年、コロナウイルスによる巣ごもり需要などで荷物が増えましたが、特に今年の夏以降、全体的に振るいません。これについては料金などの問題もあると思います。
 できるだけさまざまなPRをして荷物を取れるように、法人向けの営業活動を強めるように、日本郵便で今努力をしていますが、まだ十分な個数を得るまでには至っていません。郵便・物流事業は一番中心的なところなので、できるだけ経費削減するため、法人から多くの荷物を得て、物によっては地域区分局を通さずに、直接集配局に配送して、それで配送コストを下げるなどの取り組みも進めるようにしています。
 そうした経費節減と同時に、荷物をどう増やすかでは営業力の強化しかないと思います。楽天グループ様から、荷物を大きくこちらに回してもらうようにはしましたが、それ以外でも、さまざまな対策を講じていきたいと思っています。
 基本はBtoBをもっと増やしたいと思っていますが、数字的に上がってきていないので、そこはよく考えたいと思います。
【記者】
地域区分局を通さない輸送などというのは、まさにJP楽天ロジスティクス、当初設立された際の配送効率化の在り方といいますか、そういった取り組みをしていきたい、システム連携をして、輸送の在り方も柔軟に対応していくというものだったと思いますが、ようやくアプリケーションが出てきたと。ただ、輸送のルートを楽天ともう少し密接に再構築するような取り組みというのはまだできていらっしゃらないということかと。JP楽天ロジスティクスが設立されてからもう半年経過しようというタイミングですが、いまだ成果と呼べるものが出てこない現状というのは、進みが遅く、課題点ではないかと感じますが、この受け止めと、今後の展開を教えてください。
【社長】
JP楽天ロジスティクスの進みが遅いとは思っておりません。これらは相当仕組みの改善も必要になってきます。具体的な配送ルートを組替えていくというのは時間がかかると思っています。新中期経営計画の5カ年の間におよそ2.7億個程度、全体の量が増えればいいと思っており、5カ年の後半で、具体的な個数は稼ぐ形にしています。先日、中央林間で物流センターが稼働しました。次はまた九州に物流センターをつくる予定にしていますが、そうしたことをしっかりと行い、効率的な配送の組み替えを実施していかなければいけません。数字については早く増やしていきたいと思っています。
 7月に設立して、間もなく12月になろうかということですが、進めるべきところはちゃんと進んでいると私は理解しています。日本郵便でさらに加速度を上げるためには、楽天グループ様以外のところについても、相当努力して営業活動をしていく必要があると思っております。
【記者】
日本郵政は今、楽天のグループの1割程度持っている主要株主です。楽天としてはモバイル事業に注力しているタイミングです。ただ、荷物増というのが第一の大きな目標としてあるとなりますと、楽天側に対してもっとeコマース事業に注力するよう、モバイル事業に対するリソースを割くのを少し限定的にすべきだというような提案や要請を出すのも、主要株主としてあり得るかと思いますが、それはしないのでしょうか。
【社長】
楽天モバイル自身は相当経費も使いますが、その財務的な手当ては楽天グループ様で行っています。楽天グループ様から話を伺い、現場を見たりしていますが、全体からすると、楽天市場を中心に回っていると思います。楽天市場には相当注力されていて、年に4回大きなセールをして伸びてきていることもあります。そこを日本郵便で引き受ける部分が出てきています。楽天市場についてもさまざまな取り組みをしていくというのは、楽天グループ様自身がおっしゃっているので、そこについては特に心配はしていません。先ほど言及した受け取りやすいアプリなど、ともにサービスをよくしていけば、さらにお客さまが利便性を感じて楽天市場を使ってもらえるようになると思っています。
(※記者会見における発言および質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)