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2021年10月1日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2021年10月1日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田 寬也
【社長】
本日は2件ご報告します。
 1件目です。当社が運営をしているかんぽの宿の32施設を事業譲渡することとしました。
 事業譲渡先ですが、山梨県のかんぽの宿石和は、株式会社シャトレーゼホールディングス様。福島県のかんぽの宿いわきは、株式会社ノザワワールド様。大分県のかんぽの宿日田は、株式会社日田淡水魚センター様。そして、この3施設以外の29施設は株式会社マイステイズ・ホテル・マネジメント様の4社です。
 かんぽの宿は簡易保険加入者のための福祉施設として、1955年(昭和30年)から設置され、その運営は簡易保険福祉事業団から日本郵政公社、そして、2007年10月の郵政民営化時に当社へ承継をされました。
 かんぽの宿事業の経営状況は当社が承継する前から恒常的な赤字体質でした。当社に承継後、増収施策、コスト管理の徹底のほか、不採算施設の一部廃止などの経営改善を進めてまいりましたが、毎年約30億円から50億円の赤字が継続しており、2020年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響が非常に大きく、施設をかなりの期間休止をしていた状況もあり、約113億円の赤字を計上するに至りました。
 今年もこれまでのところ、新型コロナウイルスの影響で大変苦戦している状況です。
 民営化以降、昨年までの14年間の累積赤字は合計で約650億円に上ります。
 当社グループでは、今年の5月に中期経営計画を策定しました。その中で、厳しさを増す経営環境の中、経営資源をコアビジネスの充実・強化、そして新規ビジネスの推進に振り向けることでビジネスポートフォリオを転換させることが必要不可欠と申し上げてまいりました。この宿泊事業の経営改善についても喫緊の課題になってきたところです。こうした状況を踏まえ、本事業をホテル・旅館ないしは不動産業等の運営に実績または意欲のある事業者の方へ譲渡することが最善と判断しました。
 また、譲渡に当たって重視したのは次の3点です。
 1点目、かんぽの宿は地域の集客拠点、雇用の場でもあるため、譲渡後も営業を継続していただくことです。そのためファイナンシャルアドバイザーを通じて、全国の宿泊・不動産事業等に実績のある事業者にお声がけをしました。また、譲渡後も営業を継続していただくため、施設の一定期間の転売制限をつけました。
 2点目、かんぽの宿での雇用を希望する従業員は、正社員で約300人、期間雇用社員で約2,000人いますが、こうした従業員の継続雇用を条件としています。
 3点目は、適切な価格で譲渡するということです。譲渡価格については、事業譲渡の市場価格の一つである不動産鑑定評価額を基準として判断しました。32施設の譲渡価格は全体で約88億円となり、鑑定評価額を上回る経済的合理性のある価格での譲渡となったと認識しております。
 今後、従業員の転籍など、事業の円滑な移行に向けた作業が必要になってきますので、譲渡実行は半年後の来年4月を予定しています。
 かんぽの宿は運営主体が替わることになりますが、継続して営業を行ってまいります。譲渡先となった皆さまは、宿泊事業や不動産事業等の経営において高い実績をお持ちで、かんぽの宿の経営を今後とも維持し、発展させていただけると考えております。
 最後に、これまで長年にわたりましてかんぽの宿をご愛顧いただきましたことに厚く御礼を申し上げます。
 2件目です。郵便法改正に伴うサービスの見直しについて、改めてご説明します。既に新聞広告、そして皆さまのご自宅へのチラシの送付などによりお伝えしていますが、今月から普通扱いとする郵便物、ゆうメールの土曜日配達の休配、お届け日数の段階的繰り下げというものを実施いたします。
 お届け日数の繰り下げは、10月2日から、まず土曜日の配達に係る部分が繰り下げとなり、続いて、2022年1月以降、地域ごとに段階的に全ての曜日でお届け日数を繰り下げます。このほか、速達郵便料金の値下げ、郵便区内特別郵便の差し出しができる郵便局の追加などのサービスの見直しも行い、お客さまのニーズにきめ細かに対応致します。
 なお、ゆうパック、ゆうパケット、レターパックライト、レターパックプラス、速達、書留、簡易書留、こうしたものは今月以降も引き続き、土曜日、日曜日、休日も配達を行い、お届け日数に変更はございません。ご利用のお客さまにご不便をおかけしますが、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
 私からは以上でございます。
【記者】
かんぽの宿は33施設中32施設を売却することで、宿泊事業はもう終了するという理解で宜しいですか。
【社長】
当社としては終了しますが、事業譲渡先により宿泊事業自体は継続します。
【記者】
残る1施設が、かんぽの宿の恵那ですか。
【社長】
そうです。
【記者】
これもいずれ手放す方向だという理解で宜しいですか。
【社長】
そのとおりです。地元からの申し出があり、自治体で引き受けたいということで、協議を進めることとしています。
【記者】
民営化して14年で650億円の累積赤字ということですが、2008年、2009年ごろでしたでしょうか、西川社長の終わりのころに売ろうとして、安過ぎるということで差し止めた経緯があったかと思いますが、これを振り返って、単純に金額を見ると、あのとき売ったほうがまだよかったのではないかと、素人には見えますが、増田さんの評価をお願いします。
【社長】
まず、歴代の経営陣も経営コンサルタントなどを雇ったり、コスト削減を図ったりということをやってきたという事実があり、いろいろ経営努力をしてきたと思います。
 今ご指摘のとおり、2008年の暮れから、2009年だったと思いますが、当時70施設売却しようとして、随分国会も含めて議論があったようで、譲渡を断念して、そのまま経営を続けました。そうしたことがあったがゆえに、経営改善に向けて努力を続けることができました。ただ、どうしても経営改善が見込めないものについては施設を閉鎖したりしました。
 これまでの間に半分ほどは施設を閉鎖して、残りの施設で営業をしてまいりました。これまでにやれることは随分やってきたと思っています。
 ただ、昨年度は約113億円という赤字でした。今年も実は非常に多くの赤字が予想される状況で、このまま事業を継続するのは大変難しい状況です。コロナがこの後どうなるのかという議論はありますが、それを待っていては、その間も赤字が相当積み重なりますので、今の段階で、営業を継続する、雇用をしっかと確保できる、それから価格も適正なものということで、今回、事業譲渡をするという結論に至りました。
 もう一言申し上げますと、かんぽの宿自体は、そもそも民業圧迫を行わないように、周辺に配慮するということで、あまり収益を目的としてない中で作られてきたものです。郵政民営化法におきまして、今もなお民業圧迫規制もございますので、観光客とか地域のさまざまなレクリエーションの拠点としてやっていく上では、私どもが事業主体であるよりも、経営の自由度が高い本業の方たちで運営をしていただいたほうが地域のためにとってもいいのではないかという判断をして、今回の事業譲渡を決断しました。
【記者】
650億円の累積というのは、21年3月期までの14年間ですか。
【社長】
そうです。
【記者】
今年度、また赤字が膨らんでいるという理解でいいですか。
【社長】
そうです。
【記者】
2008年のちょうど麻生政権のころだったと思いますが、会社としては、今おっしゃったように売却をしようとして、政権ないしは総務大臣などから、待ったがかけられて売れなかったという経緯だったと思いますが、そのときの会社の判断と、それから政権の介入については、今思うとどういうことが言えますか。
【社長】
私が総務大臣を辞めた後、後任ないしはその次の総務大臣のときの話ですので、詳細を把握しているわけではありませんが、記録を見る限りは、価格の問題と、それから手続き的な面で、会社が意思決定をするまでにちゃんとした手続きを踏んでいなかったのではないかということが議論になったと記憶しております。価格については70施設で約109億円でした。また地元の意向をどこまで丁寧に聞いたのかといったようなことも指摘を受けて、撤回という決定になりましたが、当時は会社の意思決定の際に、指摘された部分について十分な対応が至らなかったところがあったと思います。とはいえ、当時としては相当広く議論した上での決定であり、合理性のある決定だったと、今の立場で受け止めています。
 当時の決定は決定として、その後の状況、特に昨年度、今年度の状況を見れば、事業継続はさらに難しいのではないかと判断をしたということです。
【記者】
今回、自民党の総裁に岸田さんが就かれて、今度総理大臣になりますが、岸田政権に期待すること、それから、増田さんとのご縁があれば、教えてください。また、増田さんが起用されたときの菅政権が代わることになりますが、それによる経営への影響などについて何か考えていらっしゃることがあれば教えてください。
【社長】
来週月曜日に発足ということで、新政権に期待することですが、今も少し減ったとはいえ、コロナ禍でみんな苦しんでいます。経済も傷んでいますから、まずは命を守る感染症対策を最優先で取り組まれると思いますが、それと経済活動をどう両立をさせていくのか、コロナ後を見据えた手をどのように打っていくのか、ここをしっかりと、大きな絵姿の下で具体策を講じてほしいと期待をしています。
 それから、今の政権の中で打ち出された脱炭素やDXの話、デジタル庁などいろいろあります。この脱炭素やDXというのは非常に重要な取り組み、手段であり、考えるべき要素だと思いますので、こういったこともうまく織り交ぜて、日本の強い経済を呼び戻すような、そういうことに積極的に取り組んでいただきたいと、大いに期待をしているところです。
 岸田新総裁、来週からは新総理になるわけですが、ちょうど岸田総裁が初入閣のときと、私が総務大臣になったときが一緒でした。安倍改造内閣でしたが、そこは1カ月ぐらいで、安倍総理が第1次政権を退陣しました。福田政権では1年一緒でした。北方問題やそれから北海道・沖縄担当ということで、途中から消費者行政なども担当されたと思います。そういったお仕事に携わっていて、総務省とも重なる部分もありましたし、よくお話もしました。大変温和なお人柄の中に的確に仕事をされる方だと思っておりまして、当時はまだ、宏池会をまとめるお立場にはなっていらっしゃいませんでしたが、その後、そうした大きな議員集団を率いていかれる、そういうお立場になられたのだなと思って見ておりました。
 いずれにしても、大変な難局ですが、ぜひ十分な成果を上げていただきたいと思います。非常に人の話をよくお聞きになるということを、ご自分でもおっしゃっていましたが、非常に落ち着いて、人の話をじっくり聞かれるような、そんな執務スタイルが印象に残っております。
 それから、体制が変わったことによる経営への影響ということについてですが、会社として、政権が代わっても、法律が特に何か変わるということではありませんので、直接の影響はないと思っております。私どもに課せられた社会的な役割をしっかと進めていくことが必要だと思っております。
【記者】
今週、政府が持っている日本郵政の株の売却について報道が出ました。現段階での検討の状況や、政府がその株を手放すことについての認識について、可能な範囲でお願いします。
【社長】
報道は把握しておりますが、私どもはコメントを申し上げる立場ではなく、財務省でしかるべきことが行われているかどうか、行われているのであれば、何か報道発表されると思います。
 今現在、当社の、政府の株式保有割合は約60%ほどですが、約33%まで比率が下がることはもう法律で決められていることですから、いついかなるときにどういうことがあったとしても、私どもとしては適切に対応できるように、準備をしておきたいと思っております。いずれにしても、私どもからのコメントは差し控えますし、政府でいろいろお考えになることと思います。
【記者】
かんぽの宿という名前は今後使わなくなるということですか。
【社長】
まだ協議がそこまでは至っておらず、来年の4月までの間に決めるということになります。
【記者】
以前はかんぽの加入者がいろいろ優遇を受けていたと思いますが、それもまた今後の協議でしょうか。
【社長】
かんぽの宿メンバーズカードのポイントなどについては当分の間は続きますが、来年の4月以降どうなるかについては、今後の協議で決定します。今回は基本的な契約の部分までであり、そういったことは今後、またさらに細かく詰めてお知らせをしていきます。
【記者】
赤字が続いていたという一方で、継続雇用が条件になっていると、なかなか黒字化が難しいと思いますが、そのあたりの考え方というのは、異業種のノウハウなど、どのあたりで考えていらっしゃいますか。
【社長】
私どもだけですと、単体の宿泊施設だけでの運営です。これは譲渡先の相手企業様のお考えだと思いますが、いろいろなレジャー施設やゴルフ場などをお持ちになって、その中でこの宿泊施設もお使いになるという企業戦略を立てていらっしゃるように見えます。あるいは全国に非常に多くの宿泊施設をお持ちになっていて、その中で新たな拠点を加えてPRなどを行うなど、私どもが持ち得ない戦略をお持ちになっていると思っております。雇用の継続についてもしっかりとお話をして、相手企業様から了解を得ておりますので、何かしらの形で、雇用の問題も消化していかれると思います。
【記者】
かんぽの営業自粛期間中に103件のルール違反なり法令違反もあったという報道がありましたが、これについてのお受け止めを教えてください。
【社長】
ルール違反自体あってはならないことです。さまざまなものがその中に含まれているということは聞いておりますが、一つ一つよく調べて、そうしたことがないようにしていく必要があると思います。
 一方で、こうしたルール違反のようなものが、完全に世の中からなくなることが理想ではありますが、必ず何らかのものが起こり得るという想定をして、起こった場合でもお客さまにはご迷惑をかけない、あるいは不測の広がりを持つことがないようにする手だても必要だと思います。一昨年、大きな問題があって、昨年1年かけて、ルール違反が起きないような仕組みをつくったり、別の人間やコールセンターから問い合わせしたり、さまざまな手だてを講じましたが、常にそうした仕組みがうまく運用されているのか確認し、改善できるようにしていく必要があります。また研修なども、不都合が起こらない、質の高い研修にしていかなければいけないと思っています。
【記者】
JP改革実行委員会で、野村委員から、信頼回復をしている中での不祥事の発覚というのは最悪だとご指摘がありました。この指摘に対するお受け止めを教えてください。
【社長】
野村委員からは何点かご指摘いただきましたが、大変もっともなご指摘です。会社に対してなぜ帰属意識がそれほど多くなく、ブランドが傷つけられることについて、一致結束してそれを防いでいくということが起きないのか、この問題に対する経営陣の取り組みの不十分さもご指摘いただきましたし、会社の中で見られる縦割りやお詫びを中心とした活動についての評価をいただいた後、もっと突っ込んだ信頼回復のためのフェーズに変わるといったときに、直線的に移っていくのではなく、野村委員の表現をお借りすると、らせん的に、ステップアップをしていくようなものだと捉える必要があるということで、いずれも大変的確な、外部からよくご覧いただいた上で、大事なご指摘をいただいたと思っています。1年やってきましたが、まだまだ取り組みが足らない部分が多々あると思いました。
 したがって、こうしたご指摘をただ単に指摘として捉えるだけではなく、私どもの次の活動の糧にしていかなければいけませんので、やるべきことは多いと受け止めております。
【記者】
かんぽの宿について、事業先の選定のところで、営業の継続や雇用の継続とおっしゃっていますが、それぞれ具体的に何年ぐらいのものなのか教えてください。
【社長】
2年間で考えております。
【記者】
いずれも2年間ですか。
【社長】
そうです。ただ、これから地元自治体で協議するところもございます。恵那などはこれから協議ということになるため、今回外しています。
【記者】
恵那以外のものについては基本的に2年間ということが契約に盛り込まれているということですか。
【社長】
2年間継続していただくということで考えています。
【記者】
一番大きい規模はフォートレスグループへの譲渡ということですが、どういう理由づけ、背景になりますか。
【社長】
私どもは、先ほど申し上げた事業継続や雇用継続、価格の面でお話をしています。フォートレスグループ様のほうでどのような事業戦略を立てるのかについては、フォートレスグループ様なりのお考えをお持ちになっていると思います。
 フォートレスグループ様は大変大きな企業グループで、宿泊事業においては、運営受託客室数で国内第6位の実績を有しており、私どもが考えている以上に、さまざまな展開を考えていらっしゃると思います。ビジネスホテル的な部門と、各地域の温泉を中心とした、いわゆるレジャー的な分野で相当多くの施設をお持ちになっているので、そうしたところとの連携で、これからそのノウハウを生かされるのではないかと思っております。いずれにしても、私どもが考えている非常に重要な3要素の条件とも合致するということで、譲渡に至りました。
【記者】
今回売却の手続きというのは、何かしらの入札手続きをされたということでしょうか。
【社長】
入札を行っております。
【記者】
いずれも複数の札の中からそれぞれ選んだという理解でよろしいでしょうか。
【社長】
おっしゃるとおりです。
【記者】
譲渡完了が4月とおっしゃいましたが、それが32施設を指しているのか、それとも33施設全てを指していますか。
【社長】
4月と言いましたが、個別に1施設ずつ行うものが4月1日、29施設については4月5日です。それから残りは恵那ですけれども、自治体とこれから協議しますので、恵那については未定です。
【記者】
含まれていないということですね。
【社長】
そうです。それはこれから協議します。
【記者】
88億円に恵那は入っていますか。
【社長】
入っておりません。
【記者】
政府による郵政株の売却の判断は政府がすることだとは思いますが、郵政側としては、先ほどの法律に則って、来るべきタイミングに備えて、今後どういったことに取り組んでいかなければならないのかということについてお伺いしたい。
【社長】
私どもとしては、政府の株式売却については、コメントできないという立場であり、それを前提に私が話すことはできませんので、一般論で申し上げます。
 政府としても、法律で3分の1超の株式を持って、ユニバーサルサービスを提供している私どもを資本的にコントロールし、いい仕事をさせるということだと思います。
 一般の株主様は、市場に流通している中では4割ほどですが、今後その割合が非常に増えます。多くの方が株をお持ちになるということですので、市場規律が余計に高まり、私どもから見ると多くの株主様からさまざまな指摘を受けて、そうしたものにしっかりとお応えしていかなければいけないということです。今でも、当然、株主様からさまざまなご要望やご批判をいただいておりますが、今まで以上にそうした市場規律の中で健全な経営をしていかなければいけないということになります。
 そのためにやるべきことは、株主様により高い評価をいただけるように、経営の中身を考えていかなければいけませんが、会社としての経営理念では、お客さまの幸せと、社員の幸せ、それによって地域の発展に貢献をしていくということで、ユニバーサルサービス義務が課されています。非常に社会的使命、公共性の高い企業ですから、民間の株主様にも、私どものそうした部分を十分踏まえていただいた上で、しっかりと企業価値を向上させます。他社ではなくて当社の株をご購入いただくということは、やはり当社の特性を評価された上でということになると思いますので、より一層、経営理念や、法律に記載されている社会的な使命の達成に、私どもは努力をしていく必要があると思います。
 過去の大きな不祥事などは言語道断ですが、全国のしっかりとしたサービスネットワークを維持し、ちゃんとしたサービスを提供できるように、さらに知恵と工夫を絞って経営を磨いていかなければいけないと思っています。
【記者】
そうした中長期的な視点での企業価値向上策と併せて、通常の企業ですと、株式価値を上げるための、自社株買いを含めた資本政策というのがあるわけですが、ユニバーサルサービスというのはありつつも、上場企業であるわけで、そこら辺の資本政策についてはどのようにお考えですか。
【社長】
これまでも自社株買いや株式の消却も行い、当社の株主様から見た株主価値を上昇させてきました。さまざまな状況を判断して、経営全般を見ていく中で、資本政策についてもこれからも十分に考えていきます。
【記者】
完全民営化に向けて郵便局を基盤とするグループ一体化が重要として、その一環としてCxO制度の導入も夏にあったかと思いますが、さらに一体化を堅持することに向けた準備や実施などは何かありますか。
【社長】
日本郵政と日本郵便について、一体的な意思決定ができるように、さまざまな部門で役職員を兼務させています。それから、一番は郵便局ですので、金融2社も含めた研修などは今まで以上に厚くしていきます。また、他社勤務経験のような人事異動も、会社を超えて、今までより質・量ともに多くしていくことによって、郵便局を中心として、地域に根差したさまざまなサービスができるように事業活動の展開を実施に移していきます。
 資本的には完全民営化ということになると、金融2社の日本郵政の持分を今後さらに減らしていくことになりますが、ビジネスモデルについては、郵便局を舞台にさまざまな事業を展開できるように、今まで以上にアイデアを出して工夫していきたいと思います。
【記者】
逓信病院のほうでも何か売却などの予定というのはありますか。
【社長】
逓信病院については、東京都、京都府、広島県の3つを私どものほうで運営しております。コロナ禍でありますので、この事業は非常に地域からも重宝されています。ただ、逓信病院も大変経営が厳しいため、さらに工夫をしていかなければいけませんが、今の段階で逓信病院の扱いについて決まったことはございません。さらにこの3カ所の経営を磨き、コロナ禍にあって、医療体制を地域でしっかりと維持し、コロナ以外のほかの疾患も含めて、いい医療サービスを提供するというのは非常に重要なので、地域の期待に応えられるようにしていきたいと思います。
 したがって、逓信病院3病院については、経営をよりよくして、医療機能を発揮できるように、さらにやるべきことを展開していきたいと捉えております。
【記者】
郵便局の窓口や空スペースなどの一部をほかの企業に貸すことで収益を上げていくというようなお考えはありますか。
【社長】
形態はさまざまあると思いますが、郵便局のスペースに余裕があるところを他企業様に貸すというのは、すでに枠組みにありますので現在でも可能です。
 一方で、窓口の事業を住民の皆さまから喜ばれるよう、どのような形で行うのかというのは十分にやり方などを考えていく必要があります。
 他企業様と郵便局とでコラボを考えたいという際には、地域で喜ばれるようなものはどんどん積極的に実施していきたいと思います。郵便局も、いわゆる共創プラットフォームの重要なプラットフォームですから、多くの民間企業にお入りいただき、郵便局をその企業様にとってもプラスになるようにお使いいただくということは、私どもとしては歓迎しています。
【記者】
郵便局長が移転する郵便局舎を保有する数が多いことについて、前回の記者会見では、特に郵便局長協会が利息収入を得ている点については、これから確認するというお話でした。1カ月たって現状の認識はいかがでしょうか。
【社長】
局長、あるいはその親族や元局長が局舎を所有している割合が非常に多いというご指摘がありましたが、私の基本認識は前回申し上げたことと変わりありません。今、局舎の約4割近くを局長が所有しているというのは事実ですが、私どもとしては、局長や関係者が所有しているところに局舎を移転するというのは、やむを得ない場合の例外措置になっておりますので、本当にほかに適切な土地がないのかどうか、そのチェックをしっかりするということと、局長と契約するということになると利益相反が気になりますので、価格についてしっかりとチェックしております。そのことによって公正さは担保できるという認識は変わっておりません。
 それから、局長協会などがお金を融資して、そうした土地の取得について資金対応しているということですが、互助会的な組織が必要な資金を融通するというのはよく見られることではあります。今回こうした局舎の取得についてお金を融資するというのは、そもそも局長たちの集まっている郵便局長協会で、局舎というものが彼らにとって非常に重要なものだということから、そうした事業を始めたもの思いますが、そこで高い利率を取って稼いでいるというよりは、私どもが考えている局舎の使用料より低い利率で貸していることからも、非常に簡便に、すぐに貸せるということで、互助会組織的な形になっていると思います。それから、郵便局長協会で局長が勤務していることもありますが、全て無報酬になっており、局長たちにお金を貸して、何か事業収益を上げているという形跡はないと思います。
 それではこの仕組みにそもそもどういう意味があるのかということにもなりますが、長期的に安定した収入ということを前回申し上げました。
 これには随分長い歴史的な経緯があると思います。昔は使用料が無償で、戦後まで局舎の提供義務が規定されていました。局舎の提供義務については戦後なくなり、途中から施設の使用料もお支払いするようになりました。そういった経緯を見ると、局長が局舎も全部確保して、地域のために貢献してきたという歴史性と、こうしたやり方は関係しているのは当然のことであって、これまでの創業150年の歴史の中でずっと築いてきたやり方が、今のような状況に反映されていると思います。
 数字を確認しましたが、民営化の直前は局長などが所有しているところを借りているのは約8割くらいでした。その後民営化されて、どんどん割合が減り、今は約4割まで落ちてきております。確かに一般のほかの企業と比べると多いように見えますが、相当急激に減ってはきております。40年以上長く続く契約になっているため、残っているものがありますが、一方で、先ほど述べさせていただいた郵便局長の果たしてきた当社の中での役割と非常に密接に歴史的にも関係しているため、一概にそれが異様なものだとは言えない、むしろ、それだけプライドを持って、局舎もちゃんと自分たちで手当てをして、地域に貢献していこうという思いを持っている局長も多いと思います。経営上は、いずれにしてもその使用料、その建物の賃料が高いということがあってはおかしいので、そこはしっかりとチェックします。それから、移転するときについても、本当にその場所がいいところなのかもちゃんとチェックをして、取締役会まで上げる資料ということで、何層にもわたってチェックを行い、利益相反的なことを排除するということをしていくべきじゃないかと思います。
 さらに言いますと、そういった現場での確認が会社として十分行われているのかどうか、会社の確認が形式的ではないか、また、さまざまな人たちから働きかけがあって、地主が会社ではなく局長のほうに貸すという話があるようなこともご指摘をいただきましたが、そこは会社として、私どもは確認できていません。そこまでして土地を確保するということは行き過ぎだと思いますので、そのようなことはないように、最終的にしっかりと現場の土地の状況がどうなっているかということを地主さんとお話しするなどといったことを繰り返して確認することに尽きると思います。
【記者】
9月に福岡県の統括局長2人が、経費の不正があったということが発覚しましたが、起きたのは2年ぐらい前の出来事で、その過程で経費の処理に関わったホテルの従業員が郵便局長として採用されているということも報じられています。
 ホテルの従業員が採用された経緯というのは適正なのかどうかということと、2年前の出来事が今回発覚した経緯で、以前の日本郵便のコンプライアンス担当役員がこの情報を知っていながらなかなか処分に至らなかったと聞いていますが、その経緯を可能な範囲で教えてください。
 それと、愛媛や長崎の事案など、統括局長に対する責任の求め方が少し変化しているとも受け取れますが、そのあたりも併せて教えてください。
【社長】
福岡の不祥事案について、ホテル側とやりとりをして、実際には行われなかった会合を、行ったということにして、利用券を購入したといったようなことがあり、そのときのホテル側の従業員が後に局長に採用されているということです。2019年にホテル側の従業員から、郵便局長の採用試験に応募があり、選考を経て2020年に局長として採用されたのは事実です。また、その採用された者が配属された郵便局が、懲戒処分を受けた元地区統括局長の地区連絡会の中の郵便局だというのも事実です。
 今回、内部から申告があり、それについて調査を行い、これはやはりルールに反しているということで今年の8月16日に懲戒処分を行い、同日地区統括局長を解任しました。これは関係していた局長が2人いましたので、その2人の地区統括局長の職を解任しています。
 ただし、処分を受けた局長が、採用された者の推薦をしたり、推薦に関わったりという事実は確認されていません。採用された方の前職は福岡市内のホテルですが、そのホテルの方は営業職として郵便局長と関わってきた経験から、局長の採用試験に応募したようです。選考の状況についても確認しましたが、日本郵便の支社においてちゃんと面接を行い、合格の判断をしておりますので、適切な選考プロセスで行ったということです。
 採用についてはそうしたことですが、処分の経緯もありますので、しっかりと現場を見ておく必要はあると思いますし、採用選考自体も疑念を持たれることのないような選考を、今後もしていかなければいけないと思っています。
 8月に処分ということで、申告から処分まで時間がかかっているのは事実です。私からも、そういう事実が確認されたのであれば、すぐに現場を調べて、処分すべきものは処分するといったことを、早く行う必要があると伝えております。
 郵政グループとして大きな不祥事などもございましたし、社会的にもコンプライアンスに対しての要請が非常に高まっていますので、いずれにしてもどのような行為があったのかということを丁寧に確認し、決まったルールに違反する場合は、厳正に対処していくということを、一層しっかりとやっていきます。前回の発表とも関係してきますが、今回も内部からの申告であり、それに対しての対応は、やはり体制も含めて十分ではなかった点もあると思います。前回申し上げましたように、外部調査については、かなり体制も整備しているのですが、やはり社内の調べる体制の整備も必要だと思いますので、その点も厚くして、このような問題に対処していきたいと考えております。
【記者】
申告があったというのは、もうかなり前ですか。
【社長】
2019年と聞いています。
【記者】
申告から長く処分に至らなかった原因、理由というのは。
【社長】
私どもも時間がかかり過ぎていることについては反省をしており、当時の対応が十分ではなかったということだと思います。日本郵便の中での仕組みの関係もあったのかもしれませんが、現場への確認についても、やはり十分ではなかったところがあるかもしれません。いずれにしても、こうしたものについては迅速に処理していくというのが、今回の大きな反省点だと思います。
【記者】
今回のように以前に申告されながら、なかなか処分されずに、最近処分されたものであったり、今も処分されていなかったりするものというのは、ほかにもある可能性がありますでしょうか。
【社長】
私自身が聞いているものでは、大阪の守口の事案があります。こちらは懲戒解雇した事案がありますので、捜査との関係が整理できれば、公表をしたいと思っています。
【記者】
先日、かんぽの営業体制について発表があり、コンサルタントが623局に集約されるということで、ゆうちょの貯金と投資信託などの金融商品は窓口というように分けられたということでした。この先ずっと郵便局の窓口はゆうちょ、623地点はかんぽというように、分けられるのでしょうか。利用者にとって金融商品とは、生命保険もあれば、投信もあれば、貯金もあると思いますが、ばらばらになってしまうことが、利用者にとっていいのかどうか、社長のお考えをお聞かせください。また、郵便局の局長たちは、さまざまな活動を通じて知り合った人に、保険のお願いをしているのが現状であり、それで今維持されているというところもあると思いますが、そういった郵便局のリソースが今回の措置によって使い切れず、グループ全体でシナジー効果が上げられないのではないかなと思いますが、どのように考えておられますか。
【社長】
保険商品のニーズ自体が、今は、貯蓄性ではなく保障性が中心となっており、お客さまにご紹介するのが難しい商品が各社とも多くなってきています。したがって、お客さまのニーズにしっかりとお応えするようなセールスをしていく上では、研修等も踏まえて高度な知識を身に付け、商品の販売をしていかなければいけないようになってきています。
 そのため、コンサルタントについては、生命保険の専担として、一人ひとりがお客さまとの関係を結べるような形にします。同時に、620強の拠点にコンサルタントが集まりますので、研修などのレベルアップや、管理監督についてもしっかり対応できるような体制になります。
 問題は、窓口とコンサルタントがうまく連携が取れるかということです。拠点を集約すると、どうしてもそこから漏れるお客さまについて、地域の郵便局の窓口で対応することになりますので、先ほどのゆうちょ銀行の投信などについてもそうですが、お客さまのほうで保険と投信とご一緒にということについては、ちゃんとそれぞれのところに連携をして、今まで以上にエアポケットのようなものを失くし、お客さまがサービスから取り残されることのないようにしていかなければいけません。そのシミュレーションのために準備期間を置き、半年後からということにしていますので、現在さまざまな訓練を行うなど、準備をしているところです。
 確かに体制を変えるということになりますので、今までとは少し変わっていきますが、内容的にはより質が高く、一昨年発覚したような不祥事につながらないようにすることと、対応もお客さまが望んでいるものを、的確にすぐにご案内できるような、そうした体制に切り替えるために行っているものです。この関係については、あと半年ありますので、その間にしっかりと訓練や研修を行い、ご懸念あったような点が生じないようにしていきたいと考えており、かんぽ生命と日本郵便で相談して取り組んでいます。
【記者】
確かに商品を説明するのが難しいと思いますので、深い知識というのが必要だと思います。ただ、新しい商品を出した場合、民営化委員会の扱いもすぐに届け出でできるという運用を考えていらっしゃると思いますが、そうしますと、623局になる前に対応すると思うのですが、2,000局でかんぽのコンサルタントだけが新しい商品を売るということで、郵便局の窓口では売らないというようなことになりますか。
【社長】
窓口に来られるお客さまへの対応がコンサルタントだけでカバーできないというところは必ず出てきますし、コンサルタントがマンツーマンで担当する部分というのはありますが、窓口でご要望をお聞きして、お引き受けするというところは、残っていくことになります。スムーズな役割分担や連携について、どれだけしっかりと行われるかということが、これから重要になると思います。
(※記者会見における発言および質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)