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2020年12月25日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2020年12月25日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田 寬也
【社長】
日本郵政の増田でございます。本日は私から3件、ご報告をさせていただきまして、その後、皆さんからご質問をお受けしたいと思います。
 1点目です。昨日、記者会見をいたしましたが、楽天グループさまとの物流領域における戦略的提携の関係でございます。
 本件は昨日の記者会見の場でご説明申し上げましたが、楽天さまが有する楽天市場での需要予測、物流領域における受注データ、この運用のノウハウ、そして、日本郵便が培ってきた全国の物流網や膨大な荷物のボリューム、そのデータなど、両社のデータを共有化するとともに、お互いの資産と知見を最大限に活用することによりまして、荷主、受取人、物流従事者など、全てのステークホルダーにとって満足度の高い新たな物流プラットフォームの構築を推進するものです。
 このプラットフォームは排他的なものではございません。オープンにすることで、むしろ他のeコマース事業者や配送事業者にもご利用いただきたいと考えております。それによりまして、国内の物流環境の健全化、持続可能な社会の実現に貢献してまいりたいと思います。
 なお、昨日、私から口頭で補足説明いたしましたが、楽天グループさまとは、今後、物流事業以外の事業分野におきましても、お客さまの利便性の向上、地域社会への貢献ならびに双方のブランド価値の向上、事業の拡大を目的に、お互いの経営資源、そして強みを効果的に生かした提携について、幅広く協議・検討をすることといたしております。
 今後、さらに協議・検討を重ねて、3月に予定しております最終合意につきましても改めてご報告を申し上げます。
 次に、株式会社日本共創プラットフォーム(JPiX)への出資について、詳細は昨日発表のとおりでございますが、私からも一言付言をさせていただきます。
 日本共創プラットフォームへの出資につきましては、ゆうちょ銀行の資産運用の多角化の一環として、長期・安定的なリターンの追求手段の拡張という観点から有益であることはもちろんですが、地域への資金循環の実現という副次的な効果も期待をするものでございます。このようなゆうちょ銀行の出資を通じて、日本郵政グループが地方創生への貢献を実現できると考えているところです。
 3点目、年末の業務運行の状況について申し上げます。今年も残すところ、あと1週間ということになりましたが、これまでのところ、順調に郵便物流処理ができており、特段の遅れなどはございません。12月23日までで、対前年で105.6%の荷物を取り扱っております。
 また、15日に引き受けが始まった年賀状の関係でありますが、12月23日までで、対前年で104.2%、枚数にしまして約3億枚の差し出しがございました。今年はコロナ禍で会えない人に年賀状を出したいため、年賀はがきを購入したといったような声も私どもに頂いております。また、帰省ができないという方も多いと思いますので、ふるさとに年賀状をといった需要もあると考えられます。改めて年賀状の持つよさを実感していただければ幸いです。
 本日25日までに投函していただくと、元旦にお届けすることとしておりますが、本日以降にお出しになられたものにつきましても、できる限り元日にお届けできるように努めてまいります。
 以上3点申し上げましたが、本日は今年最後の記者会見になるかと思いますので、最後に1年間の振り返りを少し述べることにいたします。
 今年1月に、私は当社の社長に就任したわけですが、当時はかんぽ生命保険商品等の不適正募集の問題で、業務改善計画等の取りまとめが待ったなしでございました。就任初日から対応に追われる状況でした。また、その後、コロナ対応に大変苦心したということも事実でございます。
 社内外の多くの方にご協力をいただきまして、10月5日から信頼回復に向けた業務運営を開始することができました。決して終わったわけではございませんが、社員がお客さまを訪問することができるようになったということ、これは大きな一歩だったと考えております。
 また、実際に業務に携わってみて、一生懸命頑張ってくれている、大変真面目な社員が多いと感じました。そのように感じる一方で、大変巨大な組織で、縦割りの構造がそこここに残っており、閉じられた組織という印象も拭えないところがございます。これを突き破っていくためには、さまざまなことをしていかなければいけないと思います。例えば、これまでよりも柔軟に、内部においても、外部とも人事交流を行っていくなど、そうしたことに取り組んでいく必要があると思っているところです。
 課題は山積しているわけでありますが、来年は、グループの経営理念にさらに立ち返る必要があると思います。「お客さまと社員の幸せ」を目指す、「社会と地域の発展への貢献」を使命とすることがグループの経営理念に書かれているわけですが、こうした理念に立ち返り、しっかり取り組んでいきたいと思います。
 コロナ禍のせいにするわけでもありませんが、今年はフロントに足を運ぶ機会が限られてしまっていたのは事実です。まだまだコロナ禍が続くようで、この年の暮れから来年にかけて、一段と厳しい状況もあります。そうした状況が変わってくれば、フロントラインへ足を運び、社員とともに新年の我々の新しい課題に取り組む、そして社会的な使命にお応えしていきたいと思っているところでございます。以上、少し時間頂戴しまして、この1年間の振り返りを申し上げました。
 私のほうからは以上でございます。
【記者】
幹事社から1問、お伺いします。
 今年最後の記者会見ということでお聞きいたしますが、増田社長は10月30日の会見で、膿のようなものは今年に出し切り、新しい年は次の中期経営計画の実行に臨みたいとおっしゃっておりますけれども、膿は出し切ったというご認識でしょうか。
【社長】
今年はかんぽ生命保険、ゆうちょ銀行の金融2社の商品サービスにおいて、あってはならない不祥事を起こしました。こうしたことによりまして、お客さまの信頼を大きく損なったということです。これには上意下達などの組織風土も関与していると思いますし、リスク感度の低さや、持株会社としてもグループガバナンスの在り方を改革しなければいけないとも感じました。やはり経営陣の責任も大きいわけです。
 こうした最優先に取りかからなければならない問題と同時に、ほかにも大きな問題がございました。例えば、日本郵政が保有するゆうちょ銀行の株式減損や、トール社の一部事業の売却などです。当社グループが構造的に抱えてきた懸案事項を念頭に置いて、今年1年しっかり取り組み、膿を出し切りたいと申し上げたわけです。
 今、振り返ってみますと、それらの中で道半ばのものもあると思いますし、会社経営ですから、日々、新たな問題も起きているということですが、引き続きやらなければならないこと、やはり最優先にすべきは信頼回復に取り組むことだと思いますが、一方で当社グループの新たな成長に向けて、かじを切っていくことも必要だと思います。新年に向けて、そうしたことにも取り組めるように、環境整備をしていきたいと思っております。今のご質問について申し上げますと、問題を顕在化させて、一定の方向感を出せたものもありますし、道半ばのものもございますけれども、来年に向けては、やはり経営理念に立ち返り、もう一度それをしっかりとかみしめた上で、信頼回復に最優先に取り組みたいと思います。それから、当社グループの新たな成長に向けてかじを切り、取り組んでいきたいと思っております。
【記者】
先ほどご紹介がありました楽天との提携や、日本共創プラットフォームの話で、物流の効率化や、地方創生という意味で社会的課題に貢献しようとする趣旨はよく分かるのですが、一方で、次期中計の基本的な考え方でも示しているように、2万4,000の郵便局ネットワークや、そこで得られるデータを、どのようにマネタイズしていくかということは重要な課題だと思います。楽天との提携や、日本共創プラットフォームへの出資、あるいは、先般、長期固定金利型の住宅ローンの直接取り扱いの認可申請の発表など、このところ、いろいろな施策を打ち出していると思います。それが日本郵政の収益にどのように貢献をしていくのでしょうか。現下の日本郵政の業況を踏まえて、一連の施策の収益貢献についてのお考えをお伺いいたします。
【社長】
楽天さま、JPiXのいずれも、目的はビジネスですので、収益を得るということです。特にJPiXは、経営共創基盤さまが設立し、ゆうちょ銀行が出資した組織ですが、先方も資金運用の多角化ということを考えているわけです。楽天さまとの今回の提携は基本的な合意書ですので、収益にどう結びつけるかはこれから詰めていくということですが、かなり長期的な観点で、経営の下支えをするようなものと考えております。
 JPiXは、ファンドと異なり、かなり長く企業の再生に取り組み、それによって必要なリターンを得ていくということになります。楽天さまとの提携は、昨日は数字を全く出しておりませんし、まだその段階ではないと思っておりますが、これから細部を詰め、数字に落とし込むことで、どういう部門から進めていくのかということを、時期が来たら明らかにしたいと思っております。これも幾つか取り組むべきものを頭に描いておりますが、それぞれの持っている技術やデータを、うまく組み合わせて、将来の事業の基礎をつくっていくということですから、当然のことながら経営に寄与すると思います。ただし、その中で、急いでやるべきものと、時間をかけながらやっていくものがあると思いますので、そのあたりは、順番等も考えながらやっていきたいと思います。
 いずれにしても、我々が持っている2万4,000のネットワークを有効に活かし、お客さまの期待に応えていくという観点から、経営上プラスになると判断して、取り組んでいくことにしております。数字は、これから中期経営計画、あるいは、もう少し手前の楽天さまとの最終合意書までに、取り組みたいと思っておりますが、短期的な視点ではなく、長期的な視点で経営に寄与するということを念頭に置いて、この取り組みを実現していきたいと思っております。
【記者】
先ほど増田社長から、楽天との提携のお話の中で、国内の物流環境の健全化に努めていきたいというお話がありましたが、現状の物流環境のどこが健全でないのかという点と、その課題をどのように解決したいとお考えなのかという点について教えてください。
【社長】
今回は、戦略的な物流プラットフォームを、オープンなプラットフォームとしてつくっていきたいと思います。今、物流業界では、人手不足や、勤務環境等が苛酷な状況でもありますので、そこで働く皆さん方の立場からの課題があると思います。
 また、例えば荷物を受け取る立場からも、物流業界として常にスピードが要求されますので、その期待感にしっかりと応えられるような、トータルとして物流の質をより向上させることが必要になってくるだろうと思います。
 さらに、今の傾向で、コロナ禍による巣ごもりということが言われており、物流のボリュームがこれから相当大きく伸びていきそうだと言われております。そうすると、どの会社も健全な形で仕事をこなしていくことが難しくなるのではないかと危惧しております。昨日、日本郵便社長の衣川が申し上げましたが、5年後の物流のボリュームがどこまで爆発的に増えていくかは、いろいろ見方はありますが、どの人たちの見方を取っても、今よりもかなり増えるとされております。よって、日本郵便としても業務のキャパシティーがオーバーになる可能性があり、非常に危機感を持っています。
 したがって、いわゆる商流の最初、例えば、物を購入する際のデータを早く入手して、決済と同時に、お届けするまでの組み立てを、AI等を使い、瞬時に、かつ合理的な形で、しかも再配達がないように仕上げることで、より物流環境の効率性が増すのではないかと思います。
 私どもと楽天さまでできるだけ理にかなった形プラットフォームを作り上げ、これを閉じた形にするのではなくオープンなプラットフォームとして多くの皆さまにお使いいただけるようにすることで、業界全体にとってもプラスになるのではないかと思います。そうしたオープンなプラットフォーム作りというところで理念が一致して、楽天さまと提携することになりました。詳細については、今後、明らかにしていきたいと思います。
【記者】
5年後のキャパシティーオーバーを見据えてというお話があったと思います。現状、物流の現場の社員の方から、コロナ後に荷物の量が急増した結果、「休憩も取れない」、「5分も休めない」、「車の中で寝てお弁当を食べている」といった声も聞こえてきます。キャパシティーオーバー寸前な状況が、現状、起きているのではないかと思います。本部に応援要請をしても、今の人員で増えた業務を対応してくれと言われ、残業も増えるといった悪循環が起きているわけです。この現状に対して、増田社長はどう理解されているのでしょうか。また、それに対して、今後、どういった施策を打っていくのか、喫緊の課題として考えていらっしゃることを教えてください。
【社長】
昨日の会見で、日本郵便の社長は、ポストコロナを考えても、5年後に必ず荷物のボリュームは増えるということを申し上げたと思います。
 現状、大変厳しい状況になっていることは、感染リスクなどの見えない恐怖感もあり、恐らく物流業界はどこも、直面している問題だと思います。現場の声を聞きながら、マスクやアルコールなどを配布するなど、できるだけの対策を取りたいと思います。
 人員についても、日本郵便の場合は、以前に比べると、コロナ禍の影響で職を失った方たちなどの受け皿として、応募が増えてきているという声を聞いています。それだけでは全体を解決することにはならないと思いますが、配送ルートについて、従来社員の勘に頼っていた部分を、データを使って合理的な配達の仕方になるように取り組んでいます。また、再配達をできるだけ防ぐという意味で、お客さまがいらっしゃるであろう時間帯にできるだけお届けするようにして、配達を1回で済ませるなど、現場レベルで工夫もしています。直近の今日、明日、あるいは、大みそかの対応は、そうした形で乗り越えていきたいと思います。それに対して、常に現場全体をコントロールする立場の人たちが、耳を傾けていくということではないかと思います。
 これは日本郵便の場合で、他社さまについては、まだよく分からないところがあります。ただ、物流業界全体としては、今以上にお客さまに置き配の活用を呼びかけるなど、荷物を届ける側、受け取る側の双方が、コロナ感染の危険を気にすることのないようにする必要があると考えているところです。
【記者】
今、現場の人員問題ですとかご苦労について触れていただきましたけれども、2万4,000の各郵便局の業務について、実際のデジタル化やAIの導入などについて、具体的に検討されているものがございましたら、教えていただければと思います。
【社長】
例えば、荷物や手紙の配達ルートなどについて、AIの力によって合理的なルーティングにすることを検討しています。できるだけ時間を短縮して、無駄のないルーティングにしていくというところを、AIを活用して、現場でスマホ上にある程度のデータを入れることで、新人アルバイトのような立場の人でも合理的に荷物をお届けしたり、郵便物を配達することができる技術を開発しています。テクノロジーをできるだけ取り入れて、それを実用化していくということが大事で、今、日本郵便ではそうした取り組みを順次、行っているところです。
 もう少し先になると、法律改正が必要となりますが、自動走行ロボットでの荷物の配送を実用化することも、現場を合理的に効率化していく上で、大きな力になるだろうと思います。実験ロボットが配達できるのは20キロまでなので、いきなり実戦投入するというわけにはいきませんが、そうした検討が進んでおります。
 また、過疎地の配達などはご承知のとおり、ドローンを使う方法もあり、実用化の少し手前ぐらいのところまで来ています。もう少し汎用性を高めると、本当に投入できるのではないかと思います。来年以降、社会実装化に向けて工夫をして、できるところはどんどん取り入れていきたいと思います。
【記者】
先日、地方の郵便局の移転出発式を取材させていただきましたが、今後、郵便局は、さまざまな自治体や地域金融と協業されていくと思います。それに伴い郵便局の外観や内装は変わっていくのでしょうか。
【社長】
郵便局の外観について、ESG経営やSDGsの取り組みで、例えばソーラーパネルを装備したり、その他、さまざまな再生可能エネルギーを取り入れていくべきではないかと思います。場所や規模感にもよりますが、EV車に切り替え、EV用の電源供給装置を導入し、そうした装置を郵便局のすぐ脇に置くということもあると思います。次世代の郵便局にふさわしい建物の外観や内装について標準的なモデルを考え、それを基に、地域でいろいろな工夫をしながら、周辺にマッチしたものにしていくということがあるのではないかと思います。
 再生可能エネルギーは、以前は車両のEV化やライトのLED化などのことでしたが、最近は、都内の大規模な不動産開発でもRE100に対応するなど、更に面的にすべてを再生可能エネルギーで賄うことを考えています。郵便局の外観も内装も、そうした考え方に沿った郵便局にしていく必要があると思います。
 もう1つの視点は、SDGsの一環として、女性の社員が休憩しやすいなど、社員にとって働きやすい職場にしていくことも、これからの郵便局にふさわしいと思います。
 また、少し論点が違うかもしれませんが、JR東日本と協力して、無人駅である外房線の江見駅に郵便局舎を造り、そこを駅と郵便局が共同で利用するという取り組みがありました。今後、自治体の支所がどんどん撤退をしていくと思いますが、住民は少なくなっても一定数は残りますから、公的な仕事をどこが担うかという問題が残ります。郵便局がその拠点の一つになるべきではないかと思います。聞くところでは、政府が郵便局に対して自治体の事務の包括委託をする内容を広げる法改正を検討しているようですので、そうした場合は、自治体の支所業務を担う形の郵便局に内部の構造も変えていく必要があるかもしれません。地域の人たちが寄り集まって、空いているスペースで休憩するということも考えながら、地域に合った形に郵便局舎を切り替えていくということも今後進めていくべきですし、そのような指針を郵便局に示したいと思います。これは次期中期経営計画の中で一つのテーマになっていますので、改めて考え方をお示ししていきたいと思います。
【記者】
楽天の話に関連して、データの利活用に対する御社のスタンスについてお伺いいたします。御社はユニバーサルサービスを提供しているということで、ユーザーは全ての国民ということになると思います。住所はもちろん金融資産など膨大なデータを持っていると思います。これが楽天などの幅広いサービスを持つ企業と連携することで、利便性の向上や業務の効率化に資するということはよく理解できたのですが、一方でユーザーからすれば楽天との提携で自分の個人情報などのデータが、どのように使われていくのかという不安感もあるかと思います。
 実際問題、御社からユーザーに対して、データの使い方に対する説明等がなされていないようですが、今後、どのように説明をして、どのような活用をしていくのかというスタンスを教えていただければと思います。
【社長】
データの活用は、デジタル化を進めていく上で、極めて重要なポイントだと思います。幅広く個人データを使う際には、幾つか整理しておくべきことがあり、一つはデータを幅広く使うことに対して、ご本人の同意をいただくことが必要です。
 また、当然のことですが金商法等の遵守が必要です。銀行や保険等は厳しいデータ管理が求められていますので、代理店業務として行う郵便局も、しっかりと情報を保護するという規制があります。法規制はもちろんのこと、データを今後活用していく上では、慎重な取り組みが必要になります。私どもとしてデータの取り扱い方針をこれまでも示しておりますが、今後さらにしっかりと明示をしていきたいと思います。
 更に、郵便局が固有に保持している郵便物流のデータなどを活用する際には、例えばビックデータとして匿名化をして利用するなど、そうしたデータがそのまま外部に漏れるということのないようにする必要があります。デジタル化時代の中で、データをどう扱うかということを常に見ながら、場合によっては、我々がしっかりとした指針を提示して、世の中をリードしていくぐらいのつもりで、データを取り扱っていきたいと思います。
【記者】
3点教えてください。かんぽ生命の自社株買いが年内にもという報道がありました。株価が上がってしまったので、年内はないという話も聞こえてきますが、この点についていかがでしょうか。
 2点目は昨日の会見で、楽天モバイルの拡大に資することについて協議、検討をするとのご説明がありましたが、これは方向性としては大きく2つあると思います。ネットワーク、基地局を拡大するという拡大もありますし、単純に契約を拡大する、端末販売を拡大するという方向性もあると思います。昨日のご説明は、あらゆる拡大のことをイメージされているのでしょうか。何か明確なイメージがあるのでしょうか。
 3点目はNHKの受信料授受を郵便局員にやってほしいという話が出てきています。現段階であるのかどうか分かりませんが、これに対するスタンスがあれば、教えてください。
【社長】
1点目について、報道は承知していますが、私どもグループが発表したものではありません。私どもは株を市中で売却した場合もありますし、自社株買いという形を取ったこともございますが、いずれにしても、私どもが公表した事実はありません。何か決定をした場合には、速やかに公表することにしたいと思います。
 楽天さまとの提携に関して、楽天モバイルの拡大をどのようにするのかということですが、お話がありましたように、契約を拡大する、あるいは基地局を拡大するという両方の方向があります。契約を拡大することについては、楽天さまと今後検討していきたいと思いますが、他社様の例では、郵便局に書類を置くなど、既にビジネスベースで実施しているものがございます。ビジネスとして成り立つということであれば、さらに進んでいきたいと昨日申し上げました。いずれにしても、最終合意に向けてさらに詰めたいと思います。
 次に基地局の拡大ですが、楽天さまは、第4番目の携帯電話キャリアとして、全国で基地局づくりをされています。これまでも、他の携帯各社さまが郵便局を基地局としてお使いいただくということをやっております。楽天さまは後発で、今、急ピッチで基地局づくりを進めているということで、こちらのビジネスとうまくマッチングできるところがあれば、郵便局を基地局としてお使いいただきたいと思います。こうしたことで、具体的に詳細を詰めているところで、来年の3月までにお示ししたいと思っております。
 NHKの受信料については、総務大臣から検討をするようにというご要請をいただいております。今、日本郵便の担当部署において、どのような形で我々が貢献できるのかNHKさまと検討しているところです。私も詳しく内容を承知しているわけではございませんが、貢献できるところはきちんと貢献していきたいと思います。NHKさまの事情もあると思いますが、日本郵便は日本郵便でできること、できないことがありますので、どういう形で受信料のコストを下げることに貢献できるのか、さらに話を詰める必要があると思っております。まだ検討途上ということでご理解いただければと思います。
【記者】
2点お願いいたします。1点目が、12月21日に首相と会食をされていると思います。どのような意図でお会いされて、どのようなお話をされたのか、教えていただけますでしょうか。もう1点、かんぽ生命株の売却については決定した事実はないということでした。仮に50%以下まで売却した場合、認可制から事前届出制に移るということです。事前届出制の対応については、郵政民営化法で定められていますが、法律というのはある程度解釈に委ねられる部分もあると思います。仮定の話になりますが、認可制から事前届出制に移った場合に、どの点で一番意味があるのか、現状の考え方を教えていただけますでしょうか。
【社長】
1点目、21日の朝、総理にお目にかかりました。総理に限らず、相手があることですので内容を申し上げるわけにはいきませんが、これまでも何度かお話しする機会があり、今回は時間もございましたので、お会いをしたということです。
 次に、日本郵政のかんぽ生命株式の保有割合を、早期に50%程度とすることを目指すと申してまいりましたが、その場合、一般的な説明としては、かんぽ生命保険商品のラインナップをより充実させていく上で必要だという意味で申し上げております。
 現在は認可制でさまざまな手続きがあります。届出制になった場合、何でもできるというわけではありませんが、郵政民営化法の精神により、少なくともスピードは大分縮まってくると思います。
 ただし、良い商品であることが、社会に受け入れられる大前提だと思いますので、商品の中身を磨くことをきちんと行っていきたいと思います。
【記者】
増田社長が就任して、意見、投書を受け付ける制度を設けられたと思います。社内でその意見書の整理をされていると思いますが、増田社長自身が、かんぽ問題で社内の不信感が強まっていることを認めていらっしゃるようにお見受けいたします。この社内の不信感はどのような理由で起きているのでしょうか。来年以降、そうした不信感をどのように解消していくのかということをお伺いしたいと思います。
 関連して、かんぽ問題ではやはり管理職以上の方、あるいは経営幹部も含めて、不正の実態をある程度は知っていたと疑われるにも関わらず、知らないということで、軽い処分で済ませているとのことです。こうしたことが社内の不信感の根っこにあるのではないかと思います。そこをどう思っているのでしょうか。
 また、ゆうちょ銀行のガバナンスの問題と、内部通報制度の問題も年内にうみは出し切れずに、来年に持ち越しになっていると思いますが、これらも含めて、どちらかというと、本社の機能の検証や見直しが必要だと思うのですが、コメントをいただければと思います。
【社長】
寄せられる意見等は、膨大過ぎるため、担当部署で整理をして、週末に全部目を通すということを繰り返しやってきています。減る様子もない状況です。
 大きな不祥事があった組織では、内部通報が多くなります。通報内容がどこまで正確なのかに注意が必要ですが、大きな傾向としては、何か問題意識があって通報してくるのだと思います。
 例えば、かんぽの処分について、実行行為者は非常に重たい処分を受けています。確かに経営トップは辞職しましたが、支社やエリア本部等の中間組織や直属の管理者には何ら処分がなされない、あるいは営業インストラクターで、不適正な募集方法を指導した人たちがそのままになっている、そうした不公平感が多くなってきている、とのご指摘をいただいております。
 こうした指摘について、「誰が、何をしたのか」という事実を掴むことが難しいのですが、できる限りご指摘の不公平感を除外したいと思います。本来であれば、通報制度が機能しなければいけないのですが、機能していないところがあり、正直、隔靴掻痒の感があるのは事実です。
 いずれにしても、事実を把握できたものや、お客さまに不都合を起こしたものは、必ず何らかの処分を受けるということを繰り返しやっていきたいと思います。
 また、大規模な組織では、カバナンスの基礎を、本社、支社、郵便局と下ろしながら規律を正す必要がありますが、今まで、本社や支社でも分かっていながら目をつむっていた部分があったと思いますので、何とかそこを変えていきたいと思います。募集人のすぐ上の管理職にパワハラがあったかどうかといったことだけではなく、実行行為に近いところで処分ができないかと思っています。そうしたことについて事例を出して、処分を行っていきたいと思います。
 さらに、幹部の処分や人事をどのように評価するのかという問題もあると思います。まだ最終結論に至っておりません。年を越しますが、来年も今申し上げた考えを、組織全体に共有しながら、処分、あるいは人事に臨みたいと思います。
【記者】
昨日の楽天との共同会見の中で、金融決済やモバイル部分で提携をするとのご説明がありました。そうした中で、モバイルや情報を郵便局の見守りサービスで活用することや、今後の遠隔医療などの社会課題の解決に活用するなど、ご活用の構想をお持ちでしょうか。
【社長】
一人でいるお年寄りが、日々、AIスピーカーと会話をして、それを遠隔地にいるご家族が確認できるようにするなど、見守りサービスなどに新しい技術を使うことは、これまでも日本郵便の社内でも検討されていました。
 Alexaを使うようなサービスがありますので、リアルの店舗とつないで、そこから物が届くなどの形で発展できないかとも思っております。楽天さまがそのようなアイデアをお持ちになっていると思いますので、それを具体化していきたいと思います。
 そうした意味で、昨日の共同会見では、物流以外のこともよく相談していきたいと申し上げました。見守りサービスや遠隔医療など、日常生活のさまざまなサービスと、当社グループが持っているリアルなネットワークをうまくつなげるという観点で、楽天さまと、幅広く協議をしていきたいと思います。
 楽天さまは、次世代の中心になる若い人たちの心をきちんとつかんでいると思いますので、見守りサービスに、高齢者側のニーズだけではなく、若い人のニーズとしてどのような機能が必要なのかというアプローチもできると思います。いずれにしても、楽天さまと幅広く、共創できる分野のアイデアを出し合ってビジネスにしていきたいと思います。
【記者】
過疎地で買い物サービスやデリバリーサービスを実現しようとしている小さな企業や団体もたくさんあると思います。オープンプラットフォームという意味で、中堅だけではなく、小さな企業や団体も利用できる可能性があるのかというところについて、どのようにお考えでしょうか。
【社長】
われわれは公共に近い役割をこれまでも担ってきましたので、閉じられたプラットフォームはいかがなものかと思っています。オープンでいろいろな人たちが加わることができるプラットフォームにしていくことで、楽天さまと合意いたしました。これからつくり上げるプラットフォームは、多くの方がお使いいただけるものにしたいという思いで、細部を詰めていきたいと思います。
【記者】
昨日公表されました、経営共創基盤さまが設立する新会社にゆうちょ銀行が出資する件についてお伺いたします。地方創生に貢献するということで、地域金融と連携することが必要になってくると思います。政府からも地銀再編を進めるべきだという話があり、そうした中でゆうちょ銀行が今回の出資などを通じて、地銀との関係をどのように考えているのでしょうか。ゆくゆくは、例えばさらに地銀との連携を進めていくお考えなのでしょうか。
【社長】
ゆうちょ銀行としては、これまでも地銀との連携を進めていくスタンスで、地方創生のファンドづくりを多くの地銀と取り組んできました。また、南都銀行さまなど、地銀のATMを郵便局に置いていただく事例もあります。そのほか、ゆうちょ銀行で地銀の業務をお引き受けするといった形での協力ができるところがあれば、進めていきたいと思います。
 地銀の数が大変多く、地銀再編ということが、世上では言われているようですが、今回のJPiXへの出資が、そうしたことを意図して関わるということはありません。ゆうちょ銀行は地銀との連携を深めていく認識はありますが、今回の件でゆうちょ銀行が地銀再編に取り組むといったことはありません。
 JPiXはさまざまな地方の企業を再生していくものです。いい技術を持ち、地域の信用はあるけれども、経営者が高齢化して後継ぎもいない、このままだといずれは消えていく企業に、人や技術、ノウハウ、取引先を紹介するなどの支援をしていく。ファンドのように5年でエグジットするのではなく、長期間にわたり、プライベートエクイティとして、その企業をハンズオンで支援していく仕組みです。そうしたことに実績のある経営共創基盤さまが、それ以外の方たちも含めて展開をしていくことに共鳴して、地域の企業をお支えする形で取り組むものだと認識しております。
【社長】
1年間、大変ありがとうございました。新型コロナウィルス感染症も拡大しているようですので、どうぞ気をつけていただきながら、よい年をお迎えいただきたいと思います。どうもありがとうございました。
(※記者会見における発言及び質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)