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2020年11月13日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2020年11月13日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田 寬也
日本郵政株式会社 専務執行役 谷垣邦夫
日本郵便株式会社 執行役員 上尾崎幸治
【日本郵政社長】
日本郵政グループ中期経営計画の基本的考え方について、配布資料をご覧いただきたいと思います。
 現行の中期経営計画は2018年度からの3年計画であり、今年度が最終年度に当たりますので、来年度以降の次期中期経営計画の検討を行ってきたところです。この度、その基本的考え方を取りまとめましたので、公表させていただきます。今後、この資料をベースに検討を進め、定量的な情報も含めて、来年5月に次期中期経営計画をお示しする予定です。それでは、まず資料の2ページ目をご覧ください。
 対象期間については、これまで、現行中計も含めて3年間でしたが、新型コロナウイルスの影響を踏まえた最近の事業環境の急激な変化や、今後ビジネスポートフォリオの転換を進めていくためのタイムスパンを考慮し、5年間の計画といたします。ただし、2~3年後、事業環境の変化を踏まえて必要に応じて見直しを行います。
 次に、「基本的考え方のポイント」です。一言で申しますと「真の「トータル生活サポート企業グループ」を目指す」ということですが、その下に丸三つ記載してございます。特に強調したいのは、2番目の丸です。我々の強みであるリアルネットワークである郵便局のデジタル化を進めてまいります。DXをリアルのネットワークと組み合わせて、リアルとデジタルの融合によって新しい価値創造を目指すこと、これが一番強調しておきたい考え方です。ページをおめくりください。
 3ページ目は、全体を俯瞰して、わがグループの今置かれている事業環境、それに沿った形での課題認識をご説明するものです。これまでに言われていたものもございますし、ウィズコロナ、ポストコロナを踏まえて、サービス系の機能の拡充でも、非接触、非対面のサービス提供をこれから工夫してやっていかなければならない等の認識を持っております。
 下にグループの強みということで、全国の郵便局ネットワークから始まり、右に向けて六つ記載しております。そうした課題認識を解決する際に強みとして生かしていくということです。一番右側のところに、価値創造として、お客さまに対しては「お客さま本位の良質なサービスの提供」、地域社会に対しては、「地域の発展・活性化に貢献」をしていく、いわゆる地方創生的な観点をきちんと踏まえた価値創造をしていきたいと考えております。ページをおめくりください。
 一番初めの項目として、当グループとして取りかからなければいけないのは、「まずはお客さまの信頼回復から」だと思っております。その後の成長を考える前に、まず失墜をした信頼を回復させていかなければいけないと思っております。4ページには、お客さまの信頼回復に向けて愚直に全力で取り組むということ、先般公表いたしました、お客さまの信頼回復に向けた約束5項目をきちんと果たして、生まれ変わっていきたいという決意を記載しております。ページをおめくりください。
 5ページ目は、どのようなサービスを提供していくのか、「お客さま本位のサービスの提供」をより具体的に記載しております。魅力ある商品・サービスの開発・提供、それからサービス提供スタイルの改革、チェック機能の態勢整備、そして、安心安全、セキュリティの確保が柱になると思います。
 また、「組織風土改革」について、時間がかかることではありますが、今の組織風土を大きく変えていく必要があると思います。資料に5点記載させていただいておりますが、特にお客さまの声や社員の声を改善に活用していく、そして、営業目標、手当、マネジメントの見直し、加えて、人事評価の仕組みの改革、さらには、グループ組織内の風通しをよくしていくために人事交流を進めてまいります。人事交流は、本社、支社、フロントラインの間の縦の人事交流、グループ各社間の横の人事交流、そして、グループの外の人たちとの交流を目指して、具体的に進めてまいります。最後に、当然のことながら、グループガバナンス機能を強化するということで、具体的な取り組みを今後も続けていきたいと思います。ページをおめくりください。
 信頼の回復にきちんと取り組むと同時に、やはり成長に向けて取り組んでいかなければなりません。6ページに記載してございますとおり、現在のグループのコアの事業であります、郵便・物流、貯金、生命保険などの生活基礎サービスに加えて、地域にあるさまざまなニーズに応じた多種多様なサービスを提供してまいりたいと思います。こうしたサービスを主に郵便局等を通じて提供する成長モデルをつくっていきたいと思っております。
 まず初めに、「コアビジネスの充実・強化」を図っていく必要がございます。ユニバーサルサービスを提供する当グループとしては、こうしたコアビジネスをよりお客さまのために、そして、会社の経営のために強固にしていかなければなりません。①に「ウィズ/ポストコロナ社会におけるDXの推進等」と記載してございますが、デジタルトランスフォーメーションによる新たな価値の創造やサービス機能の拡充として、デジタル技術を使って、全てのサービスをオンラインで提供しようと考えております。こうした戦略を取る企業さまも数多くいらっしゃると思いますが、一方で私どもは、郵便局等のリアルネットワークがこれからも唯一無二の極めて価値の高いものになっていくであろうということで、ウィズ/ポストコロナ社会においても、リアルのネットワークをうまく活用しながら、非接触、非対面サービスを加味することで、リアルが持つ価値というものを十分尊重しながら、お客さまにサービスを提供していきたいと考えております。
 7ページですが、続いて「収益力向上」と、「効率化・生産性向上」がコアビジネスの中で重要な課題だと思っております。収益力向上に向けましては、資料に記載しました具体的な方策に取り組むと同時に、効率化、生産性向上に向けましても、お手元に記載しております取り組みを進めてまいります。
 続いて、二つ目の柱に「不動産事業の拡大」と記載しております。不動産の利用につきましては、まだ十分にその価値が生かしきれていないと考えております。一方で、今、コロナ等の状況もありますので、マーケットの動向もよく注意しながら、不動産事業を成長させていきたいと思っており、大きく二つ申し上げておきたいと思います。
 一つはグループが保有している郵便局、社宅等の不動産の価値を最大化してまいります。特に都心部の保有不動産の有効利用、具体的に多くの郵便局がかなり老朽化をしており、一方で、駅に近い非常に利便性の高いところにございます。社宅も同様の状況です。そうした不動産の有効活用を含めて、価値を最大化してまいりたいと思います。
 もう一つは、グループの外の不動産に対して、ここは十分な査定を行いながら、投資を拡大していきたいと考えています。
 8ページですが、「新規ビジネス等の推進」についてです。まず、一つは生活をトータルでサポートするための事業の拡大ということでございます。お手元に①、②で具体的に記載してございます。特に、お子さまが誕生されて、進学、就職、結婚、出産、子育て、資産形成、セカンドライフというライフステージ全てを意識し、それぞれのところでお客さま本位のサービス提供を目指し、トータルで末永くお付き合いをしていきたいと思います。お客さまをそうした形で、しっかりとサポートするということになれば、今は若年層に対しての取り組みが非常に弱いので、戦略を考えていかなければいけません。そうした問題意識を持っております。
 二つ目に考えるべき新規事業の分野は、「社会的な課題の解決に向けた新規ビジネス等の創出」だと思っております。二つ目の黒ポツに書いてございます、グループ横断的な新規ビジネスを考案して、実行してまいりたいと思います。郵便局と物流・金融ネットワークを持つグループでございますので、そこを核としたビジネスプラットフォームづくりを新規ビジネスとして考えてまいります。また、これは自力でできるものでもございませんので、幾つかの企業と話を進めておりますが、そうしたものを具体的にできるものから取り組んでまいります。
 9ページですが、「日本郵政の資本戦略」についてです。これにつきましては、法律の規定があり、持株会社が保有しております金融2社の株式について、保有割合を50%まで下げることで、新しい業務が事前届出制になりますので、商品ラインナップを豊富にできる形態への移行を早期に目指してまいります。
 また、「人事戦略」につきましては、社員視点に立った働き方改革を推進してまいります。
 「ESG経営」につきましては、SDGsの17分野それぞれに対して会社が貢献していかなければいけないと思っております。それから、環境等に配慮した事業のみならず、資金運用に対しても、こうしたESGの視点を持ちながら、具体的に取り組んでいきたいと思っております。
 大変駆け足の説明になりましたが、この段階で、中期経営計画の基本的な考え方をご紹介いたしました。本社の社員には、いろいろと意見を聞く場を設けておりますが、これから本格的にグループ全体、フロント社員も含めて基本的な考え方を示し、社員の意見を丁寧に取り入れ、それから社外の皆さまの多様なご意見を取り入れていきたいと思います。通期決算がまとまり、そうしたものを見ながらきちんと定量的な数字を検討して、次期中期経営計画を策定してまいりたいと思います。そして、その実施に取り組んでまいりたいと考えております。
 私からは以上です。
【記者】
DXの推進についてお聞きします。「データドリブンによる郵便・物流事業改革」という項目は新しいところだと思います。これはシステムの更新、追跡システム、あるいは配達員の端末等の更新を伴うのではないかと思いますが、具体的に何をする構想なのか教えてください。
【日本郵政社長】
資料に注釈が記載されておりますが、今回公表しましたのは、さまざまな郵便や物流のデータが、日々そのまま消えてしまっておりますけれども、そうしたものをきちんとデータ化をしたいと考えております。これは、郵便・物流のサービスを高度化することに寄与し、確実性を高めることになりますが、それだけではなく、そうしたデータを、グループのみならず他の企業との新規ビジネスにも活かすことを考えております。物流の関係では、そうしたプラットフォーム的なものを構築していくことをイメージしております。
【記者】
コアビジネスとして郵便・物流を挙げられていますが、現在、郵便物は全体的に縮小の傾向にあります。宅配に関しても、価格競争が激しくなっており、ヤマト運輸さんなどでも配送単価が下がってきています。そうした中で日本郵便として競争力の強化を掲げていらっしゃいますが、具体的にどのように郵便・物流を立て直して、高収益な事業へと転換させていくのか、もちろんDXも大事なのですけれども、DX以外の部分について教えてください。
 関連して、今回の中期経営計画の基本的な考え方に、トール社のお話が一切ありません。エクスプレス事業を売却する中で、今後、トール社をどのように活かしていくのか、トール社の立ち位置を少し補足していただけますでしょうか。
【日本郵政社長】
ご指摘のとおり、郵便事業の将来が厳しいのは事実だと思います。時代の趨勢としてどんどん別の手段に変わっています。ただ、物流については、巣ごもり需要が続くとは決して思っておりませんけれども、国際物流も含めてコロナが収まってくれば、さらに増えていくことが予想されます。
 そうしたものに対して、荷物を運ぶだけでなく、さまざまな付加価値を付けて、お客さまの商売を内部に取り込み、一体としてやっていくことが必要だと思います。単に物を動かすところで熾烈な競争をしていれば、お互いに価格競争に巻き込まれて経営体力が弱くなってしまうので、違うところでどれだけ付加価値が付けられるのかを磨いていきたいと思います。
 抽象的で恐縮なのですが、企業から出ていく荷物には、さまざまな荷物がありますが、企業側で処理するのではなく、我々が全て処理をしてお届けするようなことができれば、相手企業にも喜ばれ、競合他社と差別化ができます。具体的にそうしたことを実現するためには、DXの推進がベースとしてなければなりませんが、単にものを動かす企業から付加価値も含めてトータルの価値を動かしていく企業に変わっていきたいと思います。
 トール社については、エクスプレス事業はオーストラリア国内が難しい状況でございますので、今回売却ができないかということで、相手先と交渉することになっております。
 それ以外に、フォワーディング事業とコントラクト事業がございますけれども、コントラクト事業としては貴重なお客さまを獲得できており、アジアの中で収益が取れる状況になっておりますので、トール社をきちんとプレーヤーとして活躍できるように立て直し、国際物流の中でトール社を位置付けていきたいと思います。コントラクト事業、フォワーディング事業は、トール社の経営を立て直すことで、我々でコントロールしていきたいと思っております。
【記者】
次期中期経営計画の柱は、DXやデジタル化ということでしたが、郵政グループ全体でDXやデジタル化がどの程度導入できているのか、実際は出遅れているのか、ある程度取り組めているのか、外部からはよくわからない部分もありますので、増田社長の評価をお願いします。それを次期中期経営計画の期間中にどのようなレベルに持っていきたいのかも併せてお願いいたします。先ほど物流ではプラットフォーム的というお話がありましたが、他部門についてもお願いいたします。
【日本郵政社長】
当社グループが持っているシステムは、かなり歴史があり、郵便・物流業としての日本郵便のシステム、銀行業としてのゆうちょ銀行のシステム、生命保険業としてのかんぽ生命のシステムがあり、他社と遜色のないものが出来上がっていると思います。
 一方で、例えば郵便や物流などでは、荷物を引き受けてからお届けをする際の区分機等のデータなど、1回限りの情報を、きちんと整理して使えないかという思いもございます。
 それから、事業子会社それぞれのシステムが、会社の事業形態が違うので当然なのですが、横串を通して総合的に新しいサービスをつくるという意識に欠けていた部分があると思います。今も、不祥事件を調べる際に、ゆうちょ銀行はゆうちょ銀行のお客さまデータを持っており、かんぽ生命はかんぽ生命のお客さまデータを持っておりますが、同じお客さまが、両方の商品をお買いになっているのかどうかは、日本郵便でないと分かりません。日本郵便は委託を受ける側なので、形式的にお客さまの情報をつくることはできますが、まだ十分なお客さまデータをつくり得ていないところがございますので、今後、お客さま情報について、きちんとしたデータベースをつくりたいと思います。
 それから、個人情報などは高いセキュリティで守ることが前提になりますが、物流、銀行、生命保険など、相当多数のお客さまを持つグループとして、横に貫いて新しいお客さまにトータルなサービスを提供できないかということが、大きな考え方になっております。
 今のご質問に回答いたしますと、システム自身はかなりきちっとしたものが出来上がっておりますが、それを横につなぐ考え方が欠けていた部分や、お客さまにより良いサービスを提供するという観点です。これまで取り扱っていなかった、日々消えているデータがたくさんあります。次期中計では、それらを有効活用して、お客さまのためになる仕事をしていきたいと考えております。
【記者】
増田社長は、今年1月の就任後、不祥事対応の会見ばかりしてきたと思いますが、今回、前向きな成長ビジョンについて説明できるようになったことに対する心境を改めてお願いします。
【日本郵政社長】
就任当初は業務改善計画等が待ったなしの状況で、とにかくそれに取り組まないと何も始まらない状況でした。まだ決して終わっているわけでもありませんし、信頼回復のための業務運営の開始ということで、やっと現場に少し顔を出せるようになったばかりです。それでも、やっと募集人も不十分ながら現場に行っておわびを申し上げる段階まで来ました。
 一方で、来年の5月には、投資家をはじめ、国民の皆さまやお客さまに、次期中計をお示しする時期になります。内々に検討は行ってきましたが、今回の中間期決算の発表の際に、計画の骨子を公表し、今後に向けての考え方をご説明するのが良いと思いました。信頼回復が最優先になりますが、それだけではなく、今後の基本的な考え方をお示しして、ご批判をいただきながら修正を加え、数値を落とし込んで次期中計を策定したいと思っております。そして、来年度以降5年間、途中の見直しも含めて、誠実に取り組んでまいりたいと思っております。
【記者】
今回5年間の中計を策定するということですが、5年間という期間にすることは初めてなのでしょうか。5月に発表する中計の数値は、5年間で出していくことになるのでしょうか。
【日本郵政社長】
おそらく5年間の中計は初めてだと思います。
 次に数値ですけれども、具体的には5月までに検討いたしますが、今の私個人の考えでは、3年間の数値は確実に従来どおり出します。加えて、5年間の数字もできるだけ出したいと思っております。一つ気になるのは、最近はまたコロナがかなり勢いを増してきておりまして、そうした中で数値をどのように出すのかというところです。
 しかし、3年の数値、さらに全項目ではないかもしれませんが、5年の数値は、できるだけお示しするのが、こうした計画を出す以上、出した側の責任だと思っております。
【記者】
9ページ、資本戦略の(1)に、「日本郵政が保有する両社の株式について保有割合50%程度とし、新規事業の事前届出制への移行を目指す」とありますけれども、5年の中計期間中に、基本的には金融2社に関しては、認可制ではなく届出制にできるような保有比率まで下げるという理解をしてよろしいのでしょうか。
【日本郵政社長】
できるだけ早く届出制に移行したいと思っております。したがって、年数も特に我々から申し上げておりませんけれども、次期中計の期間は当然ですが、できるだけ早く50%程度まで下げたいという思いを持っております。
【記者】
中計というより決算の分野になると思いますが、今回、期末配当が50円ということをお示しになりました。業績自体は減益ですが、50円の配当を実施するに至ったお考えをお伺いいたします。
【日本郵政社長】
配当は、経営者が投資家に対する意思をお示しするものだと思います。年度初めに未定としたこと自体、大変心苦しく思っておりましたが、今よりもさらにコロナの影響等が読めない状況でしたので、むしろ未定とするほうが誠実だと思い、そうさせていただきました。現在もまだまだ不安定なところがございますが、業績も上方修正する形になってまいりました。さらに、ゆうちょ銀行でも、期末配当予想を50円とすることを決定いたしましたので、予定ということでありますが、私どもも株主さまに50円の配当をお約束することが、経営陣の意思として適切であると考えました。
【記者】
先ほど、若年層に対する戦略が弱いというお話がありましたが、この点についてはどのように強化していくべきだとお考えでしょうか。
【日本郵政社長】
例えば、ご両親さまがお子さまのことを考えて、お子さまの名義でゆうちょ銀行の口座をつくるケースがかなりございますが、そのお子さまが成長されて、就職する際に給与の振込口座として使っているのかというと、そこには断絶があります。いろいろな理由があり、しかも積極的に当社グループから十分にお客さまに働きかけをしていないため、その段階で、お客さまとの関係が切れてしまっているということがございます。例えばNISA、iDeCo、確実性の高い積み立て型の投信商品など、全く新しい形で若年層に対して魅力のある商品を、きちんとご説明をして、お取引をいただくような部分が欠けていましたので、これまで関係をいただいている若年層の皆さま、それから新たに関係をいただけそうな若年層の皆さまに対して、今後のライフステージを考えながら、丁寧に対応していきたいと思っております。
 物流の分野も同様で、メルカリ等で使いやすい商品にするなど、社会の動静にあった形に商品構成を見直すことで、将来のお客さまを獲得することにつなげていきたいと思います。
【記者】
先ほど物流・銀行・保険それぞれ別のシステムで、横串でシステムを貫く部分が弱かったというお話がありましたが、これを強化していく考え方としては、例えば各グループ各社の共通基盤システムをつくるなど、どのように強化していくのでしょうか。
【日本郵政社長】
システムがかなり高度に出来上がっているので、それを大きく変更するということは、手間もかかり、大変だと思います。しかし、今、持株会社と、事業会社との間で、IT担当部署の役割をもう一回きちんと整理をしたいと思っております。お客さまの基本的なデータベースは、持株会社がきちんと作り直し、それをベースに、各社がお客さまに対して、商品を売り出すことを考えております。そうした共通のデータベースが出来上がることで、お客さまに対して、どのようなサービスを提供すれば良いのかという発想も豊かになってくると思います。そうした部分が、今、一番弱い部分ではないかと思います。
【記者】
資料8ページ、(3)新規ビジネスの項目、①事業環境・お客さまニーズの変化への対応の三つ目に、「エクイティ性資金を供給するファンド運営を行うGP態勢強化」という文言があります。これはどのようなファンドなのか、金額や規模感などのイメージがあれば教えてください。ファンドの運営主体になるということで、GPの態勢を強化するということであれば、LP出資を募ることも想定しているのか、その場合、どのような相手を想定しているのかについて教えてください。
 資料8ページ、(3)新規ビジネスの項目、①事業環境・お客さまニーズの変化への対応の一つ目に、「地域金融機関との連携強化」とありますが、ここの部分とは連携する話なのか、全く別の話なのか、そのあたりも具体的に構想があれば教えてください。
【日本郵政社長】
エクイティ性資金を供給するファンド運営を行うGP態勢強化と書かれている部分は、我々だけでなく国全体で取り組まれておりますが、地域金融機関の連携強化が非常に急がれるという話と、関連する部分があると思います。
 決まったことは、ゆうちょ銀行から発表が行われていくと思いますが、具体的な相手や金額など、既に決まったものはございません。考え方としてこういうことを、今後、取り組んでいきたいということです。
【記者】
エクイティ性資金を供給するその先は、地方の有力な企業なのか、どういうものを想定されているのか、どういう役割を果たすのかについて、もう少しご説明をお願いします。
【日本郵政社長】
具体的に決まりましたら、きちんとゆうちょ銀行からご説明申し上げます。おっしゃるとおり、ゆうちょ銀行は、例えば海外のオルタナティブ投資でも、PEなどをいろいろとやっておりますけれども、日本の地方創生に対しても、もっと寄与する部分が必要ではないかと思います。
 まだ決まったものは一切ございません。こうした考え方で、これから5年間で取り組んでまいりたいと思います。
【記者】
中計の期間を5年に設定されたということですが、今、コロナという言葉もありましたけれども、世の中の不確実性が高まっている中、むしろ中計の策定を見送る、あるいは、短くするという方向に動くことも考えられると思います。あえて長くした理由について教えていただけますでしょうか。
【日本郵政社長】
そもそも年限を決めて中計を出すのかどうかの判断があります。中計の策定を見送っている企業さまもあるようですけれども、我々としては、企業のグループの責任として、きちんと将来の図を出すべきだと思っております。その中で悩ましいのは、コロナがどのような形で収まっていくのかということが見通しづらいことです。したがって、3年でこれを実現するということは、なかなか言い難い状況です。そうした意味では、コロナの影響を考えると、少し実現の時期は先延ばしにする必要があります。それから、今後、事業ポートフォリオを大きく変えていかなければいけませんので、そうした期間を考えると、3年の次は5年だろうと考えました。ただし、それが中期ということで言うと、少し長過ぎるのではないかと思いました。しかも、今後、それが固定化することによる硬直性を心配しておりまして、5年という今までよりは長いタームの計画で、2年ないし3年たてば、随時見直しをすることにしました。これはコロナが収束すれば、大きく事業環境が変わりますので、適宜、見直しながら、しかし、少なくとも具体像はお客さまや投資家の皆さま方に明らかにしていくことにしました。
【記者】
中計に配当方針を盛り込むお考えはありますか。もし盛り込まないようであれば、今の中計に配当方針を盛り込んでいたゆえに、今回の50円の配当を進めてきたと思いますが、その反省を踏まえてということなのか、教えていただけますか。
【日本郵政社長】
まだ方針は決めておりませんが、一番きちんと検討しなければいけないところです。配当政策として、株主さまの期待に応えられる、評価されるものをつくりたいと思います。
【記者】
DX化を進めていく一方で、リアルチャネルも大事にしていくということですが、通常の企業ですと、DX化は業務の効率化という意味合いもあり、金融機関の場合、店舗を削減したり、無人化店舗を作ったり等、そうした方向に動くと思います。今回の郵政グループの戦略ですと、デジタルとリアルで二重投資になり、コストだけが増加し、それだけ負担になる懸念も持っていますが、どうお考えでしょうか。
【日本郵政社長】
二つ考えなければいけない点があると思っております。一つ目は、法律でユニバーサルサービスを義務づけられているリアルネットワークは、それだけ大事なものです。全てをDXによるオンラインに切り替えるのは、実際上、難しいのではないでしょうか。
二つ目は、これまで我々に寄せられていた信頼感は、郵便局というリアルネットワークにて、きちんとしたサービスが提供されたことによって築き上げてきたものです。今後も、我々にそうしたサービスを期待する層がかなりいらっしゃるという実感があります。
 他の企業が、今からこのようなリアルネットワークをつくろうと思っても、企業どころか行政でさえも、到底構築することはできないだろうと思います。その住所に実際にお客さまが住んでいらっしゃるかどうかが分かるなど、住民票よりもはるかに正確な居住データを持つネットワークです。そうした観点から、ユニバーサルサービスという性格があり、我々に期待を寄せられているお客さまや、今後も我々に対して期待を寄せていただけそうなお客さまのお気持ちを考えると、やはりこのリアルネットワークをうまく活かす戦略をとることが、郵政グループとしては良いのではないかと思っております。
【記者】
金融2社の株式売却についてですが、先ほどのご回答からすると、次の中計の5年間のうちに売却することは当然として、できればさらに早く売却したいというお話だったと理解しました。今、株価が少し下がってしまっている状況の中で、株価や信頼回復の状況も含めて、どのような条件がそろった場合に金融2社の株式を売却できるようになるのか、お考えがあればお願いします。
【日本郵政社長】
市場の評価については、我々から申し上げることができません。市場の皆さまが会社の状況を理解して、売出し価格に比べると非常に低い評価となっております。それが、少数株主を含めた投資家さまや株主さまの、我々に対する評価だと思います。これを変えていくためには、きちんと信頼を回復しなければなりません。
 もう一つは、金利の状況や金融情勢などの事業経営環境が、3年、5年前に比べて非常に厳しくなっていますが、そうした状況を抜け出して将来に向けて進んでいく方向感をきちんと示すことが重要です。それがあると、投資家の皆さまの我々に対する見方が変わってくるのではないかという期待感を持っています。
 次期中計に記載いたしましたが、一番目は、約束をきちんと順守して、信頼回復に向けて、一歩一歩進んでいくこと。次に、コアビジネスのところで、きちんと新しい価値を生み出すこと。郵便・物流、銀行、生命保険の全体を通した新しいビジネスを少しでも構築できると、お客さまにこれからの郵政グループの行く末を明るいものとして見ていただけるのではないかと思っております。加えて、国民のインフラ的な部分を支えていることもあり、非常に真面目な社員が多いので、そうした社員一人一人にこの計画をきちんと理解してもらい、日々誠実に、実行していくことが必要だと考えます。そうした上で、株式の売却などの話につながっていくのではないかと思います。
【記者】
日本郵便執行役員にお伺いいたします。ESG経営のところで、「環境等に配慮した事業運営を行うとともに、地域社会への貢献などの各種課題に対してグループのリソースを活用」とあります。先日、防災拠点や電気自動車について発表されておりましたが、これらもグループのリソースを活用することに含まれるのでしょうか。
【日本郵便執行役員】
EVの拡大に関しましては、これまでも他社に先駆けて取り組んでいる印象はございます。引き続き、シフトできる車両に関しては、EVの拡大を進めてまいりたいと思います。一方で、まだまだEVについては価格も高いレベルにありますので、採算性も考えながら、着実に進めてまいりたいと思います。
【記者】
増田社長にお伺いいたします。先日、事務の受託ではなく、郵便局の中に支所がそのまま入ったという事例がありました。このような不動産の活用もどんどん増やしていかれると考えてよろしいのでしょうか。
【日本郵政社長】
環境が整ったところでは、そうした箇所を増やしていきたいと思います。
【記者】
今回、中期経営計画としては初めてSDGsが入ったと思いますが、SDGsの取組をもっと進めていくのでしょうか。SDGs全体の大きな目標として2030年という年限があると思います。中期経営計画の期間が5年だとグループとして掲げる目標の終わりの期間が2025年になると思いますが、関連性が出てくると思いますがいかがでしょうか。
【日本郵政社長】
SDGsの流れやESG経営は、これからより意識をして、強めていかなければいけないという認識でいます。グループ中期経営計画2020の中にも、特に重きを置いて書いているわけではありませんけれども、考え方としてはあったと思います。今回さらにESG経営ということで、SDGsの各分野について果たせる役割をきちんと果たしていこうと思います。そうした流れは、2025年に終わるものではなく、おそらく、世の中はさらにその方向性を強めていくと思います。現時点の中計としてはこのような書き方になっておりますが、ここの部分はまだ記載が弱く、議論も十分ではありません。これから来年5月まで十分考えてまいります。SDGsについては、中計として書かれるものは第一歩ですが、その後も継続して強めていくべきものと理解しています。
【記者】
SDGsや地方創生というのは、結局ビジネスにつなげていかないと、収益として戻ってこないと思います。ビジネスと結び付けるのに、他社との連携というリリースがどんどん出てきていると思いますが、そうしたところも強化するということなのか、そのあたりの方向性やイメージがあればお願いします。
【日本郵政社長】
地方創生について申し上げますと、地域貢献、社会貢献はとても大切なのですが、持続性ある形にするためには、必要なコストをきちんと賄うだけの収益がないと長続きしません。したがいまして、地方創生を日本郵政グループが取り組むにふさわしいビジネスとして、具体化していきたいと考えています。地方創生の担当もきちんと決めて、政府の窓口とコミュニケーションもとり始めました。
 ビジネス的な観点で、地域にどのように貢献していくのかについては、行政の仕事を包括受託することや、地方創生につながるかどうかという議論はあるかもしれませんが、地銀のATMの管理を郵便局で請け負うこともあると思います。これは、地域の金融機能をなくさないために、郵便局もより利便性を高めるために、お互いにライバル同士協力しようというもので、地方創生の役に立つ話だと思います。
【記者】
そうしたところへの投資もお考えでしょうか。
【日本郵政社長】
必要なものはそうした形で対応したいと思います。
【記者】
決算に関して増田社長にお伺いしたいのですが、本日の中間決算の評価と、通期に関して上方修正されましたけれども、足元、下期はおわび行脚も始まっていますし、通期の見通しを戦略的なところも含めて教えていただければと思います。
【日本郵政社長】
コロナ等があり、ゆうちょ銀行やかんぽ生命の営業を止めていたこともあり、きちんとしたサービス提供が上期はできていませんでした。したがって、非常に業績を保守的に見ていたのですが、例えば、ゆうちょ銀行では、今年春先の海外のクレジットスプレッドが非常に拡大していた状況が収まってきたこともプラスになっています。対前年から見ると赤字になるのは、ある程度やむを得ない部分があるかと思いますが、この4月から9月までの業績の状況は、落ち着きつつありますので、我々としてはやるべきことをやった成果が出てきていると思います。
 ただ、下期におわび行脚等を引き続きやっていきますが、そこでどれだけお客さまとの信頼回復ができるかどうか、それが今後につながっていきますので、経営環境は相変わらず厳しい状況です。コロナ等の問題もあり、お客さまと接する機会も極めて限定的ですが、ここでお約束した業績予想は必ずクリアできるように努力していきたいと思います。
【記者】
ビジネスポートフォリオを転換されていくということですが、そうした場合、銀行手数料や保険手数料など、収益構造もこの先大きく変わっていくという認識でよろしいのでしょうか。
【日本郵政社長】
まだ具体的には申し上げられませんが、変わる可能性はあります。
【記者】
銀行や保険の手数料はだいぶ減ると考えておいたほうが良いのでしょうか。
【日本郵政社長】
増えるということはなかなか考えづらいと思いますが、具体的にはまだ申し上げられません。内部的な検討となりますが、日本郵便とゆうちょ銀行、日本郵便とかんぽ生命で、検討はしていかなければならないと思います。
【記者】
保険に関して、「保障ニーズに応えるための保障性商品の充実」とありますが、具体的なイメージがあれば教えていただけないでしょうか。また、限度額についてのお考えもお願いいたします。
【日本郵政社長】
今の環境下で、貯蓄性商品は難しいことはお分かりのとおりだと思います。社会のニーズとしては、医療の分野などでさまざまなニーズがありますが、基本的には保障性商品へのニーズです。しかし、現段階では、郵政民営化委員会等の手続きもあり、具体的な商品について申し上げることはできません。今のところは保障性商品の多様な検討というところにとどめさせていただき、具体化しましたらまたご紹介したいと思います。
 限度額の引き上げについては、いろいろな考えがあると思いますが、今のところ、考えておりません。資金を大量に集める時代ではございません。
【記者】
先ほどから成長戦略のお話もありましたが、増田社長ご自身として、株式会社として業績を伸ばしていく、収益を上げていく中で、成長をけん引する事業はどの事業を考えていらっしゃるのか、確認させてください。
【日本郵政社長】
それは、コアビジネスであり、その中でも物流が一番期待できると思います。また、ゆうちょ銀行、かんぽ生命が、当社グループの中心になっておりますので、個社それぞれというよりは、できるだけ横串でつないで、新たなサービスにつなげていくことに期待をしています。あまり新規ビジネスに過大な期待をかけることはよくないので、今まで提供していた商品、かんぽ生命や、ゆうちょ銀行の安定的で堅実な商品で、コアビジネスを営々と変えていきたいと思います。それから、グループ全体で新しいサービスにつなげられるものを堅実に取り組んでいくことが大事だと思います。
【記者】
コアビジネスの中で物流が一番というお話がありました。先ほどのトール社のお話とも関連するのですが、トール社はフォワーディング事業の経営をまず立て直すというお話がありましたが、現状、トール社というのが日本郵便に上乗せされているような形で、相互にシナジーを生むことができていない状況です。フォワーディング事業を立て直した後、それをどのように活かすのかについて、これまであまりお話がなかったので、教えていただけますか。
【日本郵政社長】
現在、コントラクト事業が一番稼いでいると思います。もちろんコントラクト事業、フォワーディング事業の両方が大事ですが、トール社の持っている強みを生かしていくマネジンメントをしていくことが大事だと思います。
 サイバー攻撃を受けたこともあり、トール社のシステムがどのようになっているのかもしっかりと見ていく必要があると思います。トール社については、国際戦略の柱にしていかなければいけないと思いますから、我々も、さまざまな部隊を投入して、きちんと強化したいと思います。物流の中で、国内をきちんと固めつつ、今後、国際物流をどうするのかということは、さまざまな場面で必ず問われる話ですので、そこに対して答えを出したいと思います。今まで少しトール社任せになっていたところがあると思うので、そこを変える姿を具体的に見せたいと思います。
【記者】
先ほど新規事業にそこまで期待してはいけないというお話もありました。一方で、以前から増田社長は不動産事業に対してある程度、あるいはかなり期待できると評価されておりましたが、不動産子会社である日本郵政不動産が前年度も赤字で着地しており、まだまだ収益化できていません。また、直近ではヒューリックとの提携がありましたが、以前、野村不動産の買収が頓挫するなど、具体的にどのように展開していくのか見えていない印象はあります。不動産展開をどのように考えていらっしゃるのか教えていただけますでしょうか。
【日本郵政社長】
不動産の収益構造は、非常に長い期間で投資を回収していく事業構造になっておりますので、短期で期待をするというのはよくないと思います。コロナやリーマンショックのようなことがなければ、長期にわたり安定的にリターンが期待できるものであるべきだと思います。
 日本郵政不動産は、2018年4月に設立した会社で、歴史のある会社ではありません。最初に5大物件として取り組んだものが、目処がつきつつあります。その次として都心部の郵便局と社宅があり、ご覧いただくと分かりますが、容積率を余していて、しかも最寄り駅から近い物件が随分あります。
 こうした物件の開発は、単独で行うのか、共同で行うのかなど、いろいろな手法はあると思います。まずは自治体との話し合いが優先されると思いますが、積極的に開発に取り組み、短期的なリターンを期待するのではなく、地域にとって役立つ不動産開発につなげていく必要があると思います。
 加えて、具体的な案件を考えているものではありませんが、我々の所有不動産以外への投資についても記載しております。特に都心部は、良い立地の郵便局はかなり老朽化しており、そうした郵便局をコアとした建て替えで周辺の開発を進めていきたいと思います。不動産開発も将来のコアビジネスになるように、長期の視点で育てていく必要があると思います。
 また、内部の体制も強化しなければいけませんので、同時並行で考えていく必要があるという問題意識を持っています。
【記者】
今のお話ですと、物流不動産も開発対象になるということですか。
【日本郵政社長】
現在、他社も含めて、物流不動産は非常に魅力的でもあり、取り合いのような構造にもなっていますから、隊列走行や、自動運転などの技術とともに、よく考えていく必要があると思います。特に高速道路周辺で、日本郵政グループの物流に貢献する部分もありますので、不動産としてもきちんと考えていく分野だと思います。
(※記者会見における発言及び質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)