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2020年9月30日 水曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2020年9月30日 水曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田 寬也
【社長】
日本郵政の増田でございます。本日は、私から5件ご報告させていただき、その後、皆さまからご質問をお受けしたいと思います。
 まずはじめに、ゆうちょ銀行が提供する各種サービスの不正利用につきまして、お客さまをはじめ、関係者の皆さまに多大なるご迷惑をおかけしておりますことを、深くお詫び申し上げます。
 先週24日に、ゆうちょ銀行社長の池田が会見を行いました。その後の進捗状況についてご説明いたします。
 「9月24日報道発表(ゆうちょ銀行関連)の進捗状況について」と書かれた資料をご覧ください。
 まず、お客さまへのお取引確認等についてです。ゆうちょ銀行は、即時振替サービスをご利用のお客さまへのお電話やメール、お手紙によるご連絡を、それぞれ開始しております。また、mijica会員のお客さまへのお電話やメールによるご連絡も開始しております。お客さまにはお手数をおかけいたしますが、お取引等のご確認をお願い申し上げます。
 なお、ゆうちょ銀行から、電話、メール等でお客さまの口座暗証番号などを求めることは絶対にありません。お客さまの情報が盗まれることがないよう、偽メール等には、くれぐれもご注意いただきますよう、お願い申し上げます。
 次に、お客さまへの補償についてです。お客さま本位の観点から、被害にあわれたお客さまへの補償を最優先で取り組むよう、私から、ゆうちょ銀行に申し入れを行っております。
 9月24日に報道発表しました即時振替サービスの不正利用による被害のお申し出をいただいたお客さまについては、調査の結果を踏まえ、補償対象となられた全てのお客さまへの補償を、24日の発表では10月末目途で完了させたいとしておりましたが、対応をさらに早め、10月5日までに完了できる見込みとなりました。
 また、その後に被害をお申出いただいたお客さまへの補償についても、可及的速やかに対応してまいります。
 なお、mijicaの不正送金による被害にあわれた54名のお客さまへの補償については、9月28日に全て完了したとの報告を受けております。
 次に、セキュリティの関係です。各種決済サービスの不正利用事案の発生に鑑み、ゆうちょ銀行の社長が直接指揮をとるタスクフォースを9月25日に設置しました。
 今後、即時振替サービスやmijicaを含め、ゆうちょ銀行が提供しているキャッシュレス決済サービスについて、本人認証や、データに基づく不正取引の検証態勢を総点検してまいります。点検の結果を踏まえ、10月末までにセキュリティ強化策を決定し、速やかに公表いたします。
 なお、点検の結果については、セキュリティに精通した第三者の監査を受ける予定としております。また、JP改革実行委員会にも検証いただくことを予定しております。
 資料の別紙に、タスクフォースの体制等をお示ししておりますので、ご参照ください。
 お客さまに安心してご利用いただくためには、セキュリティも含めたサービスの向上に全力で取り組む必要があると考えます。日本郵政は、親会社として、今回ご報告したゆうちょ銀行の取組が確実に進むよう取り組んでまいります。
 2件目、本日適時開示いたしました、当社が保有するゆうちょ銀行株式の減損処理についてご説明いたします。お手元の資料をご覧ください。
 今回の減損処理は、当社の子会社であるゆうちょ銀行の株価が著しく下落していることを踏まえ、企業会計基準に基づき定めた当社の会計ルールに則り、日本郵政が保有するゆうちょ銀行株式の簿価を引き下げるものです。なお、その影響は持株会社である日本郵政単体の財務諸表にとどまり、ゆうちょ銀行の財務諸表に影響はなく、また、経営の健全性に影響を及ぼすものでもありません。
 今期決算における減損処理に伴う損失額の規模については、2021年3月末のゆうちょ銀行の株価をもって最終的に確定いたしますが、中間決算の時点では、本日の株価を踏まえると3兆円程度を計上することとなります。
 繰り返しになりますが、これは当社単体の財務諸表で見た場合に、当社が保有するゆうちょ銀行株式の評価を変更するという会計処理であり、ゆうちょ銀行の経営の健全性に影響を及ぼすものではありません。また、今年度2,800億円の当期純利益を見込んでおります、当社グループ連結の業績に影響はありません。
 加えて、当社単体において減損処理に伴う損失が生じるとしても、現預金の流出は発生せず、資金繰りに影響はありません。
 株価は様々な要因によって形成されるものでありますので、ゆうちょ銀行の株価が著しく下落していることについても、その正確な要因を特定することは困難ではございますが、現在の株価水準については真摯に受け止め、引き続き、グループ一体となって企業価値の向上に取り組んでまいります。
 3件目、「新規ビジネス室」及び「DX推進室」の設置につきまして、ご説明いたします。お手元の資料をご覧ください。
 日本郵政グループでは、今後、2021年度からの新たな中期経営計画を策定する予定ですが、その中において、新規ビジネスの検討、DXの推進を盛り込むことを考えています。
 つきましては、これに先立ち、日本郵政は、明日10月1日付で、グループ横断的な新規事業等に関する企画立案・調整等を担う「新規ビジネス室」およびグループ横断的なDX施策の推進に関する企画立案・調整等を担う「DX推進室」を、社長直属のプロジェクトとして立ち上げることといたしました。
 まず、「新規ビジネス室」では、当社グループの成長戦略に資するよう、当社グループの強みを把握・分析し、それを踏まえて、当社グループとシナジー効果が見込まれるグループ横断的な新規事業等、子会社単独では着手困難な新規事業等の検討を行います。
 メンバーにつきましては、室員11名に、3事業会社からのメンバーを加えたグループ横断的なチームとして、全体で20名体制となります。
 次に、「DX推進室」についてです。以前の会見で申し上げたように、コロナ禍において、郵便局というリアルなネットワークの重要性を再確認する一方、デジタル化への対応が急務であることを強く認識をしております。
 この「DX推進室」では、当社グループのリアル・デジタル双方を兼ね備えた強固な事業体への変革を推進するべく、グループ各社が個別に取り組んできたデジタル化の取組をグループ全体で加速させるとともに、グループ横断的なデジタル化の取組を推進します。
 メンバーにつきましては、室員13名に、3事業会社からのメンバーを加えたグループ横断的なチームとして、全体で28名体制となります。
 4件目、既に8月31日にプレスリリースをさせていただいておりますが、不動産事業関係のお話をさせていただきます。お手元の資料をご覧ください。
 日本郵政不動産において進めている蔵前土地の開発事業計画について、9月16日に建設工事に着手いたしました。
 本計画は、土地面積14,400㎡、延床面積99,300㎡、用途としては、オフィス、高齢者住宅、賃貸住宅、物流施設、保育所等を設置する大型複合開発であり、賃貸事業を行います。
 また、主たる入居・運営者も決定しています。この中で特にオフィスについてはライオン株式会社様の本社をお迎えすることになりました。
 都市の中で貴重な約3,000㎡の緑豊かな屋上庭園も計画しており、ここで子供から高齢者まで利用者等による様々な交流の場を創出します。下町文化と新しい文化が混ざり合うまち「蔵前」の魅力の向上に貢献したいと考えております。
 今後も引き続き、不動産事業において様々な取組を進め、グループ経営基盤を支える新たな収益の柱の一つとなるよう成長させてまいります。
 最後に、グループの内部通報窓口の運用状況の検証状況について、ご報告させていただきます。
 グループの内部通報制度の運用状況につきましては、既にお伝えさせていただいているとおり、JP改革実行委員会に検証をお願いしており、横田委員を中心とした検証チームに、関係者に対するヒアリング等を行っていただいているところです。
 検証に当たって、JP改革実行委員会に、グループの社員から、内部通報窓口その他各種の窓口等の運用状況等に関して、広く意見や情報提供を募るためのWebサイトの情報提供窓口を設置いたしまして、昨日、9月29日から運用が開始されていますのでご報告させていただきます。もう既に、そちらの方に情報が寄せられているという報告も受けております。
 私からは以上となります。
【記者】
幹事社です。2問お願いいたします。まず、ゆうちょ銀行でのキャッシュレス決済での不正引出に関して伺います。そもそも、一連の事案が発覚したのが、高市前総務大臣が閣議後の記者会見で公表されたことがきっかけとなりました。かんぽ問題に続き、グループガバナンス、情報公開の体制が至らないのではないかという印象を受けました。改めて、増田社長は情報開示の遅れや被害の公表の遅れについて、どのようにお感じになっているかということを教えてください。
【社長】
情報の開示が遅れたということは、そのとおりです。グループのガバナンスという点でも問題を露呈したこともそのとおりかと思います。私の立場は持株会社でありますので、今回、ゆうちょ銀行からそうした情報があった後、被害拡大防止のために、分かる範囲で迅速に情報を公表すべきということを申し上げました。グループ全体で何か問題が起こったときに、対策まで内部でいろいろと考えて、その上で行動すると、非常に腰が重たく見られますので、特に今回の問題については、被害拡大防止のために、分かる範囲で迅速に情報を公表すべきと申し上げました。二つ目は、お客さまの被害救済を最優先で行うべきだと申し上げました。三つ目は、ドコモ口座だけではなく、類似したキャッシュレスサービス全般について総点検をすべきではないかということを申し上げました。
 ゆうちょ銀行の方も、そうしたことを受けて会見を行い、被害救済を前倒しし、さらにゆうちょ銀行の社長直下で総点検のためのタスクフォースを設置したわけです。いずれにしても、今回の全体を見ますと、公表の関係でも問題がございましたし、ゆうちょ銀行の中での問題だけではなく、グループ全体のガバナンスをさらによくしていかなければいけないという点で、問題を残したと考えております。早急にこれを立て直さなければいけないと、考えております。何か問題があったときに情報が上がってくる一番の端緒は、社員からの内部通報と、お客さまから寄せられる声だと思います。昨年度は約680万件のお客さまの声が寄せられております。1日平均でも2万件までは行きませんが、それに近いぐらいの数のお客さまの声が寄せられており、明らかに苦情と言われるものも七十数万件来ております。そうしたお客さまや社員の声をもっと丁寧に拾っていれば、今回の問題も早く気づく端緒となったのではないかということがありますので、以前、発表させていただきましたが、JP VOICE プロジェクトをスタートさせて、テキストマイニングという手法を使い、何かリスクを探知することができないかということを始めています。この取組をもっと高度化して、機能させていくということも課題になっていると思っています。これは早急に進めてまいります。
 日本郵政グループのガバナンスをもう一度立て直すこと、お客さまの声や社員の声に対して、次の行動を早く取るということを、さらに深掘りしていきたいと思います。
【記者】
続けて2問目です。本日公表されました、日本郵政単体で3兆円の減損処理について伺います。先ほど株価の下落にはさまざまな要因があるというお話があったと思います。金融株を含めて、今、非常に厳しい環境にあり、経営環境の厳しさを映し出した結果となったと思います。改めて減損処理に至ったこと自体の受け止めと、本日時点では、通期の配当予想について変更すべき事象は発生していないということですが、今後の影響について、どうご覧になっているかということを教えてください。
【社長】
株価については、非常に多くの要因が絡んで株価が形成されておりますので、ゆうちょ株の今の水準について、コメントは差し控えたいと思います。今お話がございましたとおり、金融界を全体として見て、今回のコロナ禍が、マイナスの方向で影響を与えていることはそのとおりです。ゆうちょ銀行もそうした影響をこうむっている部分もあると思いますが、それ以上のことは申し上げられない状況です。
 ただ、今の株価水準については、投資家が判断してそうした株価になっているわけですので、現在の株価水準については真摯に受け止めたいと思います。それから、株価をさらに向上させていくための、価値向上のためのさまざまな取組を今後も進めていかなければいけないと思っております。
 日本郵政単体としての配当をどうするかということについて、特に中期経営計画の中に書いております配当政策を変更することはございません。繰り返し申し上げますけれども、日本郵政グループ連結およびゆうちょ銀行の財務状態に影響を与えるものではありません。日本郵政の単体としては、当然のことながらこうした事態を受け止めなければいけませんが、私どもは内部留保も大変多くございますし、今回のことでキャッシュが流出するわけでも全くございません。順調に経営できると思っております。
 その上で、配当の原資等を十分に確認しながら、将来に向けてどのように配当を行うのか、配当政策を維持しつつ、今後、どのように日本郵政単体として成長していくのかを、真摯に社内や取締役の皆さま方と議論してまいりたいと思います。
【記者】
前回のゆうちょ銀行の不正引出の関係についてお伺いいたします。前回の記者会見では、昨年までにお客さまから連絡を受けていた100件程度が、補償されていなかったとのことでした。長いものだと2~3年に及んでいる可能性があるとのことでしたが、長く補償されずにいた人たちというのは、放置されていたのか、無視されていたのか、ここの部分についてどのようなご認識をお持ちでしょうか。
【社長】
少なくとも私が受けている認識では、無視ということではないと思います。時期的にあまりにも長過ぎるので大変な問題だと思いますが、お客さまに損害を与えたことをどのように補償するのかについて、銀行と決済サービスを提供している事業者との間で、補償ルールが定まっていなかったため、そうしたやりとりをしていたと聞いております。
 お客さま視点に全く立たずにサービスを提供した結果、お客さまに大変なご迷惑をおかけしてしまったのではないかと思っております。
【記者】
銀行のお金が勝手に引き出された状態のまま、長い方は2年も3年も補償されずにいたわけです。我々が取材しているのは1件だけですけれども、去年の夏にコールセンターや郵便局では補償に応じてもらえず、決済サービス事業者からは補償できないと、はっきりと通告を受けて諦めていた人もいました。先週のゆうちょ銀行からの説明では調査中というご説明でしたが、お客さまの声と、あるいは2年も3年も補償していなかったことに、ギャップがあるように思います。そこについてお伺いいたします。
【社長】
お客さまから寄せられた声の中には、さまざまな声があります。お客さまの勘違いなのかどうかは分かりませんが、いろいろ調べても、補償までの対応には至らないような案件もあるにはあるようです。
 しかし、一方で、本来補償すべきものが、数年にわたってそのまま置いておかれたということで、大変申し訳ない事態に至っております。補償しませんということを通告するのは、ゆうちょ銀行ではなく決済サービスの事業会社側から通告したようですけれども、そうしたものも含めて、もう1回きちんと調べて補償することにしました。
 今、我々のほうで把握しているものは、約380件になったかと思います。それについては、今週いっぱいで対応を終えます。その後、新たに24日の会見以降申し出てきた方もいらっしゃいますので、そちらにも迅速に対応してまいります。
 繰り返しになりますが、調べてみた結果、補償するものと、補償対象外のものに振り分けることになりますが、ゆうちょ銀行の、あるいは決済サービス事業会社と合わせた両者のお客さま本意でない対応によるものについては、必ずきちんと補償していきたいと思います。
【記者】
100件全部ではないにしても、今回のドコモ口座の問題がなければ、補償すべきなのに補償されずにいた人たちがいたと思います。その状況と、来週からチラシを配布する信頼回復に向けた約束に書かれていることが、ギャップがあるように思います。そこについてコメントをお願いできますか。
【社長】
今度の問題は、ドコモ口座の問題が起きたときに昔にさかのぼるのは当然ですが、その後の展開を見ていると、同じようなサービスを提供しているところに視野を広げることで、もっと早くお客さまを救済できたのではないかと思っています。mijicaは、少し性格は異なりますが、広い意味ではキャッシュレスの範疇に入る話ですので、mijicaについても、送金金額・送金回数の上限を下げるという対応ではなくて、サービスをいったん停止することで、被害者が後で54名まで広がりましたが、そうしたことも防げたのではないかと思っております。
 これは全て本社の問題です。さらに言うと、ゆうちょ銀行だけではなくグループガバナンスの問題です。ですから、本社で反省も含めて対応していかなければいけないと思います。
 ゆうちょ銀行で言えば、来週から投信の販売などに伴い、いわゆる信頼回復のための業務運営再開をしていくということになります。これは本社にいる管理者、あるいは本社の上層部も関係していますが、多くは郵便局で外に出ずに自局研修などで1年以上研修をしてきた募集人が中心になります。この人たちに対しては、自局研修では限界があり、研修の効果もこれ以上は期待できなくなってきています。むしろご迷惑をおかけしたお客さまのところに行き、おわびをしつつお客さまの立場に立って商品をご案内することが大事だと思います。大変厳しい声が寄せられると思いますが、それを乗り越えていくということが、次の段階では必要ではないかと思います。今回のいわゆるキャッシュレスサービス等については、本社で徹底的に問題を整理して、改善をしていきたいと思っておりますが、一方で、今、お話しがあった10月5日からのいわゆる業務運営の再開については、これまで準備をしてきたことをさらにきちんと確認をした上で、一気に営業を再開するわけでは決してなく、まずおわびを中心に現場に出て、お客さまの視線にさらされながら活動していくということが、今の時点では適切ではないかと思っています。よって、そちらは予定どおり進めていきたいと思っております。
【記者】
ゆうちょ銀行の減損についてお伺いいたします。これまで決算説明会などで他社の記者さんがお伺いしたときは、仮定の話には答えられないということで、答えていただけなかったのですが、今回は、洗替ということで、将来、期末の株価によっては減損がなくなるかもしれないという可能性はありつつも、既に顕在化しているリスクなので詳しくお伺いいたします。先ほど社長は内部留保がたくさんあるとのご説明でしたが、配当可能益で計算するときの個別の利益剰余金が9,000億円強なので、これでは足りないため資本勘定で入れ替えをやれば大丈夫という話なのでしょうか。
【社長】
単体の決算は公表しておりませんので内部的なものですが、利益剰余金だけでなく、資本剰余金、その中には資本準備金とその他資本剰余金がございます。それから、資本金があるわけですが、そうしたものに対して、私どもは多くの資産を持っております。実際に配当をどうするかという問題は、そうしたものを考えながら、中期経営計画で既に打ち出している配当政策を勘案しながら、今後、社内でよく議論をしていきたいと思っています。
 中期経営計画で打ち出しております1株当たり50円という配当政策を変更する予定はないということは、今申し上げましたようなことを含めて、こちらも考えているということです。
【記者】
8月下旬で懲戒解雇が15人というご説明でしたけれども、本日、北海道で4人懲戒解雇が出ております。現段階では、懲戒解雇は何人になるのでしょうか。
【社長】
本日時点での懲戒解雇の人数について、私は報告を受けておりません。懲戒解雇事案は必ず公表しますので、いずれ事実があれば日本郵便のほうからご連絡申し上げます。
【記者】
昨日29日に、おわび行脚に上乗せして、今回のゆうちょ銀行の即時振替の不正利用についてもおわびをしてくださいと書かれた文書が、郵便局に配られています。「詳しいことを教えられていないので、おわびするにもおわびできない」「細かいことを聞かれたらどうするんだ」という声が現場の方から出ています。どのようにご対応されるのでしょうか。
【社長】
ゆうちょ銀行の問題は、今月に起きた問題であり、現在進行形でもあるため、現場に情報が届くのにギャップが生じているという指摘は、事実だと思います。
 最先端で頑張っている郵便局の局員のところまで情報を届けるのに多少時間がかかるかもしれませんが、局員たちが状況を把握して、それについて少なくとも理解できるように、早急に対応したいと思います。
 10月5日、いわゆる信頼回復の業務運営を再開する日に、4社長から動画メッセージを流すことにしておりますので、その中でも、今回のゆうちょ銀行の問題についても触れたいと思っております。また、日本郵便から発送する文書などを通し、ゆうちょ銀行の問題について逐次情報をお伝えしていくなど、第一線の局員の皆さん方に、文書と動画で情報をお伝えしていきたいと思っております。
【記者】
かんぽ生命保険の募集人処分の中で、退職者に対し、募集人廃業処罰を進めていらっしゃいますが、これは大きな問題ではないかと思っております。生命保険協会にこういう処罰をした募集人がいますと届け出ると、3年間登録されるというもので、退職者に対して何も調査をしないで、いきなりこの処罰をしているのです。「かんぽ生命のコンプライアンス室の特命調査担当に、退職者が異議申し立てはできないのかと確認したところ、異議申し立ての機会は与えられていないという虚偽の説明をされた」「現役時代に何の処分も受けていないにもかかわらず、いきなりこうした届け出をされるのはたまらない」「転職した先で仕事がしにくい」との声があります。「何も悪いことをしていないということを自分で証明するために、設計書や新旧比較書を出せばわかる」と伝えても、「それは出せない、出してもわからない」とのことです。「これだけでは乗換潜脱なのか、問題がないとされている即時乗換なのかがわからないという説明をされた」との声があり、かなり問題があるのではないかと思います。
 何故このようなことが起きているかというと、ものすごく成績を上げていた募集人が日本郵便を辞めて、代理店を開き、かんぽ生命のお客さまに対して営業しています。そうした状況をとめられないため、保険協会に届け出るということが行われているのです。これは、どのような因果関係なのかわからないのですが、今、直面している問題ではないかと思います。増田社長の受けとめはと言われても困ると思いますが、いかがでしょうか。
【社長】
個別の事案について承知していないところもあり、答えるのは少し限界がありますが、例えば、退職者が退職して何をやられるのかは自由なのですが、その方々が当社在職中に知ったさまざまな情報を、次の自分の業務に使用するのは、明らかにおかしな話です。当社在職中に知った情報については、契約で守秘義務をかけておりますので、そのような形で不正に使われているようなことがないか、厳しく見る必要があると思います。もし、そのような具体的な情報があれば、ぜひ我々に寄せていただきたいところです。
 また、個別の関係について承知している訳ではありませんが、かんぽ生命において、保険業法上の処分をする場合、少なくとも処分をした後、書面等になる場合はありますけれども、必ず何らかの形で不服を申し立てる機会を与えております。それも含めて事実関係を調査することが、本来、筋だと思います。
【記者】
先日、郵政民営化委員会の検証の意見募集で、全国郵便局長会が、郵便局が地域を守るという観点から、日本郵政または日本郵便による一定数のゆうちょ株・かんぽ株の保有と一体経営を要望しております。現行の、郵政民営化法が国民のニーズに合っているのか、このままでいいのかということについて、改正を含めて、増田社長のお考えをお伺いしたいと思います。
【社長】
郵政民営化法については、ご承知のとおり、大変な国民全体の中での大議論の上で成立をして、さらにもう一度、法改正をして今に至っています。私は今年の1月に当社に参りましたが、現行の郵政民営化法の枠組みを前提にして、当社の社長をお引き受けしています。ですから、大変大きな議論を経た郵政民営化法について、その中には金融2社の株式を完全に売却する等々のことが決められているわけですが、それについて私が意見を申し上げるということは控えたいと思います。今の枠組みを前提に就任しましたので、早期に100%売却を目指したいと思います。
 それも併せて郵政民営化法の精神だと思いますが、株式を100%売却した後でもグループとして運営の一体化を図って、お客さま、地域社会に貢献していくことを狙っていきたいと思います。
【記者】
その当時のことは、詳しくは分からないのですが、公務員の削減や行革等、民間でできることは民間でするといった議論しか覚えていないのですが、当時の議論と今の社会環境、過疎化や人口減少など、環境が変わっています。そのときは大議論をして、そのときのところで定着したのかもしれないのですが、法律は変えていくためにある、環境に応じてみんなそれぞれ改正されていると思います。増田社長は、郵政民営化法を前提にというところでなければやらないというような形になるのでしょうか。
【社長】
法律は、使い勝手が悪いところは、いろいろな意見を申し上げるということはあってしかるべきですし、よく行われることです。郵政民営化法では、行革や、利用者サービスという面、ゆうちょ、かんぽの商品を販売することで、国民から大きなお金を集めて、それを財政投融資等の資金にしているという、資金循環の大きな流れを変えていこうということが、あの当時の議論の出発点だったと思います。
 今の郵政民営化法の中で、金融2社の株を100%売却するとする議論に対して、日本郵政が金融2社の株を100%売却せずに、保有部分を残すという意見は、いわゆる法律のマイナーチェンジとは言えず、フルモデルチェンジをするような話です。会社として、あるいは私個人としても、フルモデルチェンジをすべきかどうか、その必要があるかどうかは、国会の判断であり、立法府の判断にほかならないと思います。あるいは、必要であれば政府が提案して、立法府の中で議論をしていただくべきことです。もっと細かな部分でのマイナーチェンジのようなことは、関係のところに意見を申し上げていきたいと思いますが、フルモデルチェンジについては、相当大きな国民的な議論を経る必要があるので、そうした役割を担うところでやるべきで、特に国会において、各政党にも真剣に考えていただくことではないかと思います。
【記者】
コロナウイルスの感染の状況ですが、主に集配業務の担当者や、窓口の担当者が多いと思います。就任された当初、コロナ対策はきちんとやっておられるというお話をされていたと思いますが、世間ではコロナがだんだん収束しつつあるのに、郵政グループだけは全く減っていません。細かいところの感染対策はされているのでしょうか。
【社長】
検査数が大変多くなっている現状から言うと、以前の、2月、3月、4月頃の感染者数と、今の感染者数を単純に比較はできないと思います。検査の母数が圧倒的に違います。今、郵政グループ全体で、郵便物流などの部門を中心に、本当に毎日のように郵便局員が感染したという報告が来ております。これは現場で、日夜大変頑張っている局員の皆さん方が、それだけエッセンシャルワーカーとして、危険の中で仕事をしてくださっているということの表れの一つかもしれません。その一方で、少しでも感染のリスクを減らすために、マスクやアルコール等をきちんと配布するなど、会社として取れる可能な限りのことは、取り組んでいかなければいけませんし、現場の状況を見ながら、会社として最大限取り組んでいるつもりです。
 夏の大変暑い時期にも、マスクを着けて配達をしなければいけませんので、冷感グッズで少しでも作業がしやすいようにするなど、その季節に合った現場からの申し出に、できるだけ対応してきたつもりです。これからも感染リスクを少しでも減らすように、現場の工夫でやれるべきことは取り入れていきたいと思います。
【記者】
特に集配担当と窓口担当については念入りにしていただければと思います。
【社長】
集配担当と窓口担当の人たちが一番リスクが高いところですから、そこは私どもも大変気になっているところであり、そうした人たちの声も十分に聞いていきたいと思います。
【記者】
昨日発表になりました、かんぽ生命の新たな不告知教唆の件でお伺いします。まず自粛期間中であり、かつ10月5日の再開を控えて、8月下旬の段階では、既に7月の改革実行委員会等々で、あるいは記者会見での発言で、まずは信頼回復からという姿勢は増田社長からも示されていた中、かなり重要な時期に新たな法令違反がありました。日本郵政グループ全体として、法令順守の意識というのは本当に徹底されているのかという疑問を惹起させる事案だと思います。これについて、増田社長はどのように受け止めていらっしゃるのか。まだまだ法令順守意識の徹底は不十分だという認識があるのか、それともごく一部で特殊な事例という形で捉えていらっしゃるのか、お伺いいたします。
【社長】
実際に法令違反が起きているわけですから、法令順守の意識が徹底されているとは言えないということは、明らかだと思います。
 私がこの報告を聞いて、組織的に行われているものかどうか、今回の事故者の過去の募集状況がどうであったのか、それをきちんと調べるように指示しました。9月の第1週頃に報告があったと思いますが、共同募集で行われていたため、関係者の調査に時間がかかりましたが、調査が大体まとまりましたので、昨日、公表いたしました。
 事故者の過去の募集状況については、今、さらに遡って調べているということですが、その地域で、組織的にずっと行われているということはないと聞いております。
 かんぽ生命の直営の部署で、しかも法人営業ということで、本来ならかなりのエキスパートが担当していなければいけないところでありますので、極めて残念であり、申し訳ない事案です。
 昨年からのかんぽ商品の不適正事案でも、かんぽ生命の直営店の法人営業は少し外しておりまして、郵便局の事案を中心に取り組んでまいりましたが、9月で早急にまた研修をし直し、録音と複数人で対応する、コールセンターで事後的にもう1度チェックをして確認するということを徹底するようにしております。10月5日以降、きちんと引き締めて臨みたいと思っております。
【記者】
10月5日の再開については、ゆうちょ銀行のキャッシュレスの絡みでは予定どおり進めていきたいというご発言がありました。今回のかんぽの不適切事案に絡めて、そのスケジュールを変更しないのは、組織的な広がりは現時点では確認されていないことから、スケジュールを変えるという判断には至らないという理解でよろしいですか。
【社長】
はい。
 かんぽの直営店でいろいろと調査をしまして、組織的なものではないと、今の段階では判断しております。また、必ずPT4による録音と、複数人で対応することで同席した者がどのような言動をしたのかをお互いに緊張感を持って見ていく、コールセンターから再確認をするなどの対応を徹底することで、このようなことは起こらないと考えております。したがって10月5日は予定どおり実施して大丈夫だろうと、判断いたしました。
【記者】
先ほどのお話の中で、法人営業では、録音や複数名同行という形でモニタリングを実施してこなかったというところが、不可解に感じます。郵便局のほうで募集人が個人に対して不適切な募集を行ったことが原因で、それに対する対策を行う一方で、関連する法人営業では、対策を実施してこなかったということについて、業務改善計画に不十分な点があったのではないかと感じます。その点について、増田社長は、どのように捉えていらっしゃるのか教えていただけますか。不十分な点があったという認識なのか、それとも、今回の事例はかなり特殊な事例で、不十分な点があったということを裏づけるものではないと捉えていらっしゃるのか、教えてください。
【社長】
法人営業の場合、企業側も当然プロですから、中小企業の場合では家族経営の場合もありますが、当社側もきちんとした知識を持っている者が対応しておりますので、録音や複数人対応を必須にしておりませんでした。しかし、営業現場では複数人で対応することが一般的です。今回も3名の共同募集で、対応していたということです。おそらく法人部門については、かんぽ生命のお膝元なので、トレーニングを行った上で現場に行っておりますので、きちんとした手順を踏んでやっているという意識が強かったと思っております。
 しかし、今回の事案が発生しましたので、法人営業も含めて全体として守ることにいたしました。
 また、今回の個別の事案で募集人がなぜそうした不正をおこなったのかは、かんぽ生命で今調べていると思いますので、即断はできませんが、組織としては法人営業に対しての認識が甘過ぎたのではないかと思います。
【記者】
今回、同行者の方がこれはおかしいのではないかと気づいて、それを報告した。その報告がしっかりと上がった結果、発覚に至ったというお話だったのですけれども、お話を伺っていると、事前にそうしたところをチェックする体制というのがまだまだ不十分なのではないかとも感じるのですが、その点についてどう捉えていらっしゃいますか。
【社長】
現場の営業について、細かいところは私には分かっていない部分もあるかもしれませんが、やはり事前チェックもきちんとやらなくてはいけないというのは事実だと思います。今回は同行者があの言動はおかしいのではないかということで、職場に戻って、上司にきちんと報告したので、事案の発覚につながったわけです。もし、そうした行動を取らなかったら、ずっと闇に葬られていたのかもしれません。今回のケースは契約の相手方からは、申告が上がってこない案件だと思いますから、そういう意味では事件は起きてしまいましたが、同行者の行動は本当によかったと思います。事後的にはチェックが働いた部分はあったと思いますが、事前に用意しておくべきところがまだまだ欠けていたのかもしれません。それは、私どもの出来ていなかったところだと思いますので、更にやり方を整備していく必要があると思います。
【記者】
今回の件でこうした事案が発生したわけですけれども、これを受けてかんぽ生命や、日本郵便の業務改善計画の内容に何か追加される、変更されるということはありますか。
【社長】
今回のことを受けて、業務改善計画で追加すべき事項があるかどうかということについては、まだ報告を受けておりません。日々いろいろな問題が出てきていますので、もし業務改善計画の中で変えるなり、追加すべき事項があるとすれば、それはきちんと対応していかなければいけないと思います。
 まだ業務改善計画に直ちに追加しなければいけない事項があるとは聞いておりませんが、担当ベースのところでは何か考えていることがあるかもしれません。
【記者】
増田社長ご自身もそこに関してはそうしたお考えはありませんか。
【社長】
必要であれば、追加しなければいけないと思います。
【記者】
マイナンバーカードの普及に向けて、将来的にカード更新などの一部事務を郵便局に委託すると報じられました。それに向けた日本郵政グループ各社および今日発表された新規ビジネス室やDX推進室との関連性を教えていただきたいと思います。また関連して、日本郵便のマイポストの今後の動き方について、教えてください。
【社長】
マイナンバーカードについては、政府がさらに普及を図ると認識しています。以前、マイナンバーカードに保険証や運転免許証を乗せる方向で検討しているという話をお聞きしました。マイナンバーカードについて、できるだけ早急に普及率を上げていくとのことでした。
 その関係の会議が政府で行われた際の新聞報道では、ほとんどの方が5年以内にマイナンバーカードを取得されるといった記事を拝見した記憶があります。そうした場合、カードを更新する際に、相当多くの事務が発生いたします。郵便局への委託については、政府から我々のほうに要請が来ているわけではないと担当から聞いておりますが、マイナンバーカードの更新などについて、郵便局を使いたいということであれば、事務の量、やり方、コストなどについて詳細に詰める必要がありますが、きちんと考えて対応しなければいけないと思います。そのような仕事に対しては、私どもとしても積極的に対応していく価値はあるのではないかと思います。まだ要請が来ていないので、これは今の段階での考え方ですが、協力できる部分は、非常に多いのではないかと思います。
 また、本日発表させていただいた新規ビジネス室、DX推進室において、マイナンバーカードをビジネスに活用できるようであれば、郵政グループの仕事への活用を考えていきたいと思います。
 例えば、かんぽ生命などでご契約されている方がお亡くなりになった際に、手続きに関してその情報をキャッチするのに、相当手間をかけて調査をしているのではないかと思いますが、マイナンバーカードをうまく活用できると、もっと早くサービスを提供することができ、手続きも簡単になる可能性があります。手続きの簡素化については当社にとってもプラスになる部分があるのではないかと思います。
 マイポストの関係についても、今まで当社でやっていたさまざまなサービスについて、より内容を高度化したり、質の高いものにしてさらにお客さまに喜んでもらえるサービスを提供するために、本日発表させていただいた2つの部署で、よく考えていきたいと思います。私も期待しております。
【記者】
全国各地で自治体事務の郵便局受託が少しずつ広がっているようです。政府の新しい生活様式の地域未来構想などとも連動して動かれていらっしゃるようですけれども、今後の意気込みについてお教えください。
【社長】
包括事務受託が広範囲にできるようになって、今、法律でも二十何業務まで広がっていると思いますが、自治体と地元の郵便局との話し合いで、そのうちの十何業務は郵便局でもできるようにしました。そのかわり、少し、お金も頂戴をいたします。そのほうが郵便局にとってもプラスになりますし、自治体も今はどんどん支所を減らしていく時代ですので、自治体にとってもプラスになるのではないかと思います。地元の住民の方からしてみると、ずっと遠くの本所のほうに移管されるよりは、地元の郵便局でそうしたサービスが受けることができれば、はるかに便利だと思います。これから各地でそのような仕組みが出来上がってくると思いますので、包括事務受託などについては、条件をもっと詰める必要はあると思いますが、郵便局の活用をこちらからも自治体に働きかけたいと思います。自治体からも間違いなく郵便局のほうに、これからさまざまな仕事を頼むという場面が増えてくるのではないかと思っております。
 地方創生について以前も申し上げましたが、政府の総合戦略の中に郵便局ということが入っております。地域のお困りごとだけではなく、さまざまな生産品を販売したり、高齢者のケアなどに郵便局をもっと活用できないかという話が、これからどんどん出てくると思っております。私も地方創生を考えていて感じるのは、東京の本社で考えてもなかなかアイデアが出てこなかったり、空回りをしたりしますので、現場のニーズを拾い集めることで、本当に必要なものにつなげていきたいと思います。新規ビジネス室などで、地方創生で地域にもっと貢献できることは何かということを、支社や郵便局に聞くようにいたしますし、デジタルトランスフォーメーションに絡むものはDX推進室で検討を行い、経営理念に書かれておりますように、地域への貢献が実現できる分野を開拓していきたいと思います。
【記者】
今日、報道向けにCM発表会の案内が流れましたけれども、今後、ゆうパックの利用拡大に勢いを付けていくために、現場の局員や局長の方々に何か期待されることはありますでしょうか。
【社長】
ゆうパック、ゆうパケットは月によって、多少波がありますけれども、非常に伸びております。私どもも大変期待している分野でありますし、新しい生活様式の中で、人が動くというよりは物を動かすという社会に変わっていくだろうと思います。ゆうパックについては、単にそれで収益につなげるということよりも、やはり社会の要請、新しい社会の生活様式に寄与し、新しい日常を支える仕組みではないかと思っています。
 私自身も郵便局に行く際は、必ず物流の部署を見て回り、社員の人たちに声を掛けるようにしています。ゆうパックについては大変期待する部分が多いと思います。それはコロナ禍を経て、新しい日常を支える上でも非常に重要だという認識があります。そうした私の認識は社員にはこれまで以上に伝えていきたいと思います。
【記者】
細かな数字なので、社長というよりも、ゆうちょの事務方の方にお聞きいたします。22日時点の不正引出の被害、380件、6,000万円、これはおそらく、大きく報道されて、申し出自体が増えているかと思うのですけど、現時点で数字のアップデートが可能かどうか、教えてください。
【事務方】
ご質問いただきました、380件以降の不正利用の不服に関するお申し入れ処理件数でございますが、約60件、220万円でございます。
【記者】
それは今年9月以降の被害なのか、それとももっと前の、過去の被害なのか、どちらなのですか。
【事務方】
全て足元というわけではなく、過去の分も含めたものということでご申告をいただいていると理解しております。
【記者】
現在、不正被害が見つかった決済サービスのひもづけと、チャージを止めていると思います。再開時期は、社長直轄のタスクフォースで10月末までに強化策を発表した後になるのか、それともその前に再開することはあり得るのか、考え方を教えてください。
【社長】
ゆうちょ銀行の判断だと思います。ただし、セキュリティの安全性がきちんと確認できませんと、なかなか再開はできないと思います。今、社長直下のタスクフォースで、総点検をするわけですが、その結果がいつ出てくるのかが1つのポイントだと思います。普通に考えれば、セキュリティをきちんと確認し、総点検をした上でサービスを再開するということを考えていく必要があると思います。
【記者】
ゆうちょ銀行の株の売却について、お尋ねいたします。今回の減損が与える影響ですが、今までかんぽ生命に比べてゆうちょ銀行の株式売却が進んでいなかった理由の一つに、時価と簿価の差があるという話を聞いたことがあります。今回減損をすることで株が売りやすくなったと捉えてよろしいのでしょうか。
【社長】
株式の売却については、これから戦略を練らなくてはいけないと思います。要は、株の売却によって、経営の自由度をできるだけ高めていくという必要がありますから、かんぽ生命の商品ラインナップも同様の問題を有しますが、政府が株式の過半数を持っている持ち株会社がゆうちょ銀行株式の9割近くを持っているということについて、いろいろな問題があります。
 簿価が幾らかということも売却の考え方に当然影響を与えてきますが、それだけではなく、社会状況など全体を見ながら考えていきたいと思います。
 簿価だけで何か判断するわけではないということを申し上げておきますが、今、ご質問をいただいたような考え方も一方ではあるとは思います。
【記者】
ゆうちょ銀行の減損の関係で1点お伺いします。日本郵政の株価もこのまま低迷していけば、長期的に見た視点ですけれども、政府の日本郵政株の売却収入で東日本大震災の復興財源を確保するといったところに影響が出てくる可能性もあるかと思います。こうした点について社長のお考えと、株価の向上のための具体策について教えてください。
【社長】
政府のほうで今回の減損をどう捉えているのかは定かではありませんし、日本郵政株式の売却について、政府がどういうスタンスで臨むかは直接聞いておりません。政府のほうでいろいろ判断をされると思います。我々のほうから申し上げる話ではないということをお答えしておきたいと思います。
 復興財源について、日本郵政株式の売却収入を充てるということを聞いておりまして、それが5年先まで延びているということでありますが、政府の立場からすると、財源確保ということもあるかと思いますが、私どもはそれとは別に、当社の成長のストーリーや当社の将来的なきちんとした配当の堅実性などの姿をお見せして、投資家の期待に応え、社会に貢献していくということで、当社の株価についても判断をしていただきたいと思っています。そういう意味からも、結果として株価を高く値付けしていただけるような施策はいろいろ取っていくのは大事ですので、以前から申し上げておりますが、自社株買いなどの考え方というものは、当然我々も持っています。
【記者】
日本郵政のガバナンスという観点で、お聞きしたいのですが、足元のゆうちょ銀行の不正出金に関わる情報開示、被害救済の大幅な遅延、投信と保険の横断販売に伴う問題などで、顧客軽視の体質が改まっていないのではないかという事案が、いまだに次々に出てくることについては、社長ご自身もいろいろご苦労をされているかと思います。なかなかグループ全体で体質改善が進まない、進んでいるように見えないことの組織的な原因、ボトルネックが、一体どこにあるのでしょうか。社長に就任されて約9カ月がたちますが、何か率直にお感じになっているところがあれば教えてください。
【社長】
体質改善は大変時間がかかる問題だと思っています。ご質問の組織としてどう見えているのかということについてお答えします。日本郵政グループは巨大過ぎると言ってもいいぐらいの大きな組織であって、全国に約2万4千の郵便局があり、離島であったり中山間部であったりさまざまなところにあるわけですが、そこで局員が毎日誠実に働いております。いろいろな問題が起こり、本社でいろいろ対策を講じたとしても、わが社の構成員すべてに、そうした問題意識をどう伝えていったらよいのかということは、本当に試行錯誤をしておりなかなか妙案が出てこないということがあります。例えば、県庁でも、知事部局以外に、山間部のダムをつくっている工事現場や福祉の現場でも県庁職員は働いておりますが、そうしたところで同じ職員として問題意識を高めていくというのは大変難しいのですが、日本郵政グループは、その規模感がはるかに違い、トータルでは非正規社員を含めると約40万人もいるわけですから、その皆さま方にどうやっていろいろな問題意識を伝えるのかということに大変苦労しており、問題意識の共有がないとなかなか組織の空気、風土は変わってこないという思いがあります。
 それを乗り越えるためには、例えば日本郵便には非常に多くの人がいますが、支社長なり支社の権限と責任をもっとはっきりさせて、本社の伝達だけではなく、場合によってはおかしなことがあればきちんと支社に責任を取ってもらう等、メリハリをもっと組織につける必要があると考えております。
 先ほど法律の話がありましたけれども、よく暗黙の政府保証というようなことが言われたりします。今の資本構成ではやむを得ないのですが、ゆうちょ銀行やかんぽ生命が新しい商品をお客さまの声に応えて提供しようとしても、法律で上乗せ規制があり、まだまだ十分にそこができません。
 そうしたことがつぶれないという認識につながっていて、変化すること、変えることにまだちゅうちょするところがあるのではないかと思います。本当にお客さま視点で、自分たちがしっかりやらないと、組織が持続していかないという意識が、少し薄くなっている部分があるのではないかと考えます。
 私が申し上げておきたいことは、非常に巨大過ぎる組織であり、一方でさまざまな規制は厳然として残っており、さらに一方では、国営でやっていた時代の名残から、組織はつぶれないという甘えにつながる認識が残っている部分はあるということです。
 多くの社員は、本当に一生懸命やっています。こういうコロナ禍でも誠実に郵便物をお届けしています。そうした皆さま方に対して、方向づけ、将来の希望、意識づけなどをもっともっと経営陣がやっていく必要があると思います。
【記者】
先ほど社長から日本郵政単体決算は開示していないとのご説明がありましたが、有価証券報告書に開示されていませんか。
【事務方】
単体決算につきましては、中間決算と通期決算で開示しております。したがいまして、有価証券報告書等では開示しておりますけれども、社長が申し上げたのは第1四半期決算では開示していないということです。
【記者】
3月末の本決算でしか考えられないのですが、前期並みの50円を配当するには、配当総額2,021億円が必要です。3月末の単体決算の現金は2,949億円しかありませんので、同額を配当しようと思うと、現金的にはタイトではありませんか。
【社長】
1株50円というと大体2,000億というのは間違いありません。ただ、現金的にタイトということではなくて、我々のところではご承知のとおり、十分な資産を持っておりますので、配当政策は配当原資をどのようにするのかを考えていきますが、その中で配当政策は変えておりませんし、経営の健全性は全く揺るがないと思っています。
 配当については、これからきちんと考えていきたいと思います。今は未定ですが、投資家の期待には十分応えていきたいと思います。
【記者】
キャッシュフローの話をすると、2,900億円しかない中で、2,020億円の配当をするのは相当タイトであると普通は見ると思います。一方で、日本郵政は無借金ですから、この財務状態ならいくらでもお金を借りられることは借りられますが、そうしたことも、これから検討されるのでしょうか。
【社長】
無借金は当然のことながら、配当政策や財政の健全性等は、全体でさまざまなことを考えていきます。日本郵政は資産も相当持っていますし、事業子会社からきちんとした配当を毎年いただいておりますから、そうした意味では、今おっしゃったような、キャッシュが非常に窮屈という認識は持っておりません。中間配当を今回はおこないませんので、期末配当で検討したいと思いますが、その際にはきちんとした投資家の期待にもお応えできるだけのものは、企業としては十分持っていると思います。
【記者】
日本郵政は、株主資本の合計は8兆円ですが、利益剰余金が9,600億円ですから、3兆円の減損をすれば、これは利益剰余金がマイナスになるのは見えているわけです。利益剰余金をマイナスのままで配当することは、資本欠損の状態でできませんから、資本剰余金から取り崩さざるを得ないと思います。そこはいかがお考えですか。
【社長】
資本剰余金も、相当の額があります。おそらくおっしゃるのは、その他資本剰余金をどうするかということだと思います。配当原資をどうするのかということは、総合的に考えたいと思います。
【記者】
資本剰余金が4.5兆円あるので、3兆円の減損があっても、まだ十分取り崩せる余裕があるということですか。
【社長】
その前に利益剰余金が1兆円近くあります。それから、資本勘定の中で、資本剰余金も十分あります。もともと資本がかなり大きな企業ですので、資産の状況は先ほどおっしゃったとおりです。今後、企業としてどのような投資をしていくのか。DXなどにも相当な額が必要になるかもしれません。また、株主の皆さまの期待にどう応えるのか。今までの政策を維持していくと、昨年の配当でいうと、期末配当で2,000億円程度、中間配当で1,000億円程度のキャッシュが必要になってきます。一方で、事業子会社から、我々の持っている株式に対してどのような配当がなされるかも重要になってきます。それらを総合的に勘案して、これからきちんとした考え方をまとめていきたいと思います。
【記者】
資本剰余金の取崩にはちゅうちょする経営者もいますが、そうしたお考えはありませんか。
【社長】
例えば子会社からの配当がどうなるかも、少なくともゆうちょ銀行は今未定になっています。かんぽ生命は76円を予定しておりますけれども、規模感がどのくらいになるかも分からない状況です。
 ですから、今おっしゃった資本剰余金についてどうするかは、ほかに要素が多くあるので、そこの部分だけを取り出して、ちゅうちょするかどうかというのは、今のところは答えがありません。それは11月の中間期決算をどうするのか、その後、最終的に期末決算をどうするかという問題ですので、その際には、今申し上げた複数の要素をよく考えたいと思います。
【記者】
先ほど、社長から郵政民営化法の精神にのっとり、金融子会社2社の株式売却を粛々と進めていくとのご説明がありました。持ち株が9割を持っている、ゆうちょ銀行株式からの配当は、去年は約1,800億円であったと思います。株式売却を粛々と進めていくと、今度は子会社からの配当がなくなることになり、これだけの大きな金額を、ほかの郵政事業でカバーするというのは難しいと思います。そうした意味で売りたくても売れない状況が続くのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
【社長】
法律にのっとり金融2社の株式を売却した場合、かなりの売却収入が入ってくるわけですから、売却収入をどう投資するかという判断だと思います。今の時代に必要で、新しい成長につながっていくものに、きちんと売却収入を充てていくという、成長ストーリーをどうつくるかによって、当社の将来が決まってくるだろうと思います。
 既に、郵政民営化法の枠組みで、日本郵政が保有する金融2社の株式は、100%の売却を目指すことになっていますから、こうしたコロナ禍で経済環境はあまり芳しくありませんが、きちんと判断をして株式の売却を進めていかなければいけないと思います。ゆうちょ銀行株式からの配当金は減りますけれども、株式の売却収入をどう投資するのか、経営陣がそこをどう考えるかにかかってくると思います。うまく将来の成長につなげていけば、プラスになると思います。
【記者】
先ほどの配当の質問について、中間決算の発表がある11月中旬ぐらいには、日本郵政と、今、未定とされている、ゆうちょ銀行の配当の方向性について、何らかのアナウンスがあると理解してよろしいのでしょうか。
【社長】
何らかのコミットはしなければいけないと思います。内容は、今のところ全く白紙です。
【記者】
中間決算のタイミングで、何か公表されるのでしょうか。
【社長】
今の段階で申し上げられることは、配当政策は変えていないということです。当然、その配当どう工面するのかということは聞かれると思いますから、そうした声にお答えしなければいけないと思います。今日の段階では、未定ということしか言いようがありません。
【記者】
配当についてお伺いいたします。上場以来、高配当であることが郵政グループ株式の魅力とされてきたと思います。配当の重要性を増田社長がどのように考えているのか、いま一度教えてください。
【社長】
これまで、配当の考え方は配当政策で示されており、民営化するとき、上場するときに、投資家の期待感をどのようにつくっていくかということで、これまでの経営者は配当政策を決めてきたと思います。
 簿価の水準や売出価格は、もう過去の話ですから、私から申し上げるつもりはありませんが、やはり、株価は投資家を中心とした市場のわが社に対する評価、さらに言えば、将来性に対しての評価ということですから、市場のメッセージとして受け止めておかなければいけないと考えています。
 株価を形成する上で、配当期待で長期にわたって当社の株価を保有している方が、ある程度いらっしゃるという話は、かつて聞いたことがあります。民営化委員会の中でもそのような説明を聞いたことがあります。
 現在の株価がどう形成しているかはコメントのしようがありませんが、今のご質問の配当ということについては、当社がこれまで行ってきた配当政策に対して期待をして、評価をいただいて株価が形成されている部分はあると思っております。
(※記者会見における発言及び質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)