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2020年7月31日 水曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2020年7月31日 水曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田 寬也
【社長】
日本郵政の増田でございます。
 本日は、私からは4件ご報告させていただき、その後、皆さんからご質問をお受けしたいと思います。
 1点目、かんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売への対応について説明申し上げます。資料をご覧ください。
 本件は、日本郵便において、「かんぽ生命保険商品と投資信託を同一のお客さまに販売した際に、お客さま本位でない営業が行われた可能性のある苦情」が発生していることを受け、日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命のグループ会社各社が連携し、今後のお客さま対応および改善に向けた取組みを行っていることについて報告するものです。
 このたび、お客さまにご迷惑をおかけしたことにつきまして深くお詫び申し上げます。今後、お客さま本位の業務運営を一層推進、実践してまいります。
 まず、項番1「本件の課題認識」について申し上げます。
 当グループでは、お客さまからの苦情につきましては、2019年度までは、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命毎に受け付けた苦情について随時対応してまいりました。その一方、同一のお客さまの苦情であっても、受け付けた会社が異なる場合には、連携が十分に行われないという課題があったところです。
 今般、かんぽ商品の不適正募集問題を契機に、お客さま本位の業務運営ができているかリスク感度を上げて確認するため、2020年4月よりグループ会社各社が連携して複数の商品にまたがるお客さまの苦情を分析することといたしました。
 従来、苦情については、受け付けた会社間での連携を十分していなかったことに加え、同一の会社内でも苦情の名寄せができていなかったため、苦情をいただく都度、単発での対応となっておりました。
 本年4月以降は、グループ会社各社が受けた苦情についてキーワードで関連性のある苦情を抽出し、名寄せを手作業で行うなどして、商品横断的な苦情の分析を行ったところです。
 その結果、2019年度以降、かんぽ商品と投資信託の同一のお客さまに対する販売において、お客さま本位でない営業が行われた可能性のある苦情が複数回発生している状況を把握したところ、79人のお客さまがこれに該当しました。
 1ページ目の最終パラグラフに苦情の内容について、「例えば」ということで、例示を記載しております。この事例を分かりやすく申し上げると、「元々かんぽに加入していたが、投資信託の分配金でかんぽの保険料を賄えるとの誤った説明により、かんぽを解約し、その返戻金をもとに投資信託に乗り換えた。さらに投資信託の分配金を保険料に充当する前提で新たにかんぽに加入したものの、分配金が減少して保険料が賄えなくなった」、といったものです。
 次に、項番2「本件に係るお客さま対応の状況」について申し上げます。
 まず、苦情をお申し出された79人のお客さまにつきましては、改めてお客さまに苦情内容をお伺いするとともに、ご意向確認を実施しております。現在63人の方に連絡がついており、順次ご意向確認を進めているところです。なお、連絡がついていない残りの16人の方には、引き続き対応してまいります。
 また、先ほど例示で申し上げた苦情に係る取引は悪質性が高いことから、苦情の有無にかかわらず、過去5年、2015年度から2019年度に遡って、可及的速やかにご意向を確認する予定です。ご意向を確認するお客さまは765人です。
 更に、先ほどの例示以外の苦情もあることから、お客さまへのアフターフォローを強化することにより、お客さまのご意向や商品へのご理解に対する確認をしっかりと行ってまいります。
 なお、これらの対応において、法令違反等の不適正取引の懸念があると判断した場合は、順次調査を実施し、法令等に従い適正に対応するとともに、当該調査対象社員に対しては営業活動を停止する予定です。
 最後に、項番3「改善に向けた取組み」を申し上げます。
 お客さま本位とはいえない取引に該当する勧奨方法を明示的に禁止するよう営業ルールを明確化します。またモニタリングの強化として、商品横断的なデータモニタリングおよびそれを受けたフォローアップを実施します。
 今後とも、グループ会社間で十分な連携をとり、お客さま本位の業務運営の徹底を図ってまいります。
 2件目、ご契約調査の進捗状況につきまして、ご報告いたします。
 別紙1ページ目の「お客さまの信頼回復に向けたご契約調査の進捗状況」と書かれた資料をご覧ください。記載内容につきましては、大きな変化はなく、前回の公表から数値項目等を更新しております。更新箇所は赤字で表示しておりますので、ご確認いただければと思います。
 ご契約調査につきましては、2ページ目に記載しております「基本方針」に基づき、すべてのお客さまにご加入の契約がご意向の通りになっているかを確認し、お客さまに不利益が生じている場合は利益回復を行うとともに、ご加入の生命保険をお客さまのお役に立てる活動を積極的かつ継続的に実施してまいります。
 3件目、消費生活相談員によるかんぽ生命保険等電話相談窓口の開設について、ご報告いたします。
 既に日本郵政グループでは各種コールセンターを開設しておりますが、日本郵政グループをご利用されるお客さまが、より安心して相談ができるようにするため、8月17日から「消費生活相談員によるかんぽ生命保険等電話相談窓口」を開設することとしました。
 消費生活相談員の方は、国家資格である「消費生活相談員資格」を有しているプロの相談員の方で、普段からお客さまからの金融商品を含む様々な消費生活に関する各種相談の対応をされている方になりますので、相談業務の専門性が高く、また、公正・中立な立場からお客さまの相談に応じていただけることから、今回、全国消費生活相談員協会に業務を委託して、相談窓口を設置することとしたものです。
 このような、より専門性が高く、中立性の高い相談窓口を設けることにより、郵便局をご利用されるお客さまがこれまで以上に相談しやすい環境を整備するとともに、お客さまの声を業務改善につなげていくこととしております。
 なお、相談窓口については、当初3ブースで開始することとしておりますが、今後の相談件数に応じて、拡大を検討してまいります。
 4件目、日本郵政グループの内部通報窓口の運用状況の検証についてご報告させていただきます。この内部通報制度につきましては、職員が職場における不正等を通報したことによって不利益を被らないよう、事業者がしっかりと通報者保護を行うことが求められています。これが基本であると思います。私は、現在の当グループの内部通報窓口の運用について、特にこの通報者保護が徹底されているかどうかについて懸念を抱いております。今般、公益通報者保護法の改正も行われまして、内部調査等に従事する者に対する刑事罰も導入されることになりました。この通報者保護がしっかり行われていないと、結局、通報内容が身元を特定されないように抽象的な通報になってしまいます。その場合、通報された担当部局も具体的に調べるのが難しくなり、うまく機能しないということがこれまでも多々あったのではないかということであります。
 こうしたことを踏まえて、当グループの内部通報窓口が適正に機能しているのかどうかについて、検事、最高裁判事など枢要なポストを長く経験されたJP改革実行委員会の横田委員に当グループの内部通報制度について検証を依頼することといたしました。検証作業は、横田委員および横田委員とともに業務改善計画の進捗状況等の検証を実施している弁護士で構成されました10名程度のチームに実施をしていただく予定です。この検証チームの検証結果を踏まえて、通報者保護に資する内部通報制度の仕組みを検討するとともに、JP改革実行委員会等に内部通報窓口の運用状況のフォローアップを依頼いたします。なお、検証作業は今年度いっぱいを予定しております。
 以上、4件ご説明を申し上げました。私からの説明は以上でございます。
【記者】
内部通報制度の検証は年内めどに行うとのことですが、新しい仕組みが導入される時期について教えてください。営業再開までにその仕組みを整える必要はないとお考えでしょうか。
 一昨日の会見では処分の方向性についてご説明いただきました。顧客の不利益の解消が、営業再開の条件の一つになっていたと思いますが、顧客の不利益の解消の進捗や今後の見通しについてお伺いいたします。
 加えて、営業再開時期の判断についてどのようにお考えかお伺いします。
【社長】
内部通報制度の検証作業は、できるだけ早くやっていただくようにお願いいたしますが、今年度いっぱいを予定しております。ご承知のとおり、現在も制度はあるわけですが、運用が適切に行われていないのではないかという思いがあります。過去のさまざまな事例について当たっていただきながら、制度として今の形で良いのか、運用面でどのような点を改善したらよいのか等について、聞かせていただきたいと考えております。
 検証作業によって制度としての改善点が出てくればさらに新たな制度を加えたり、手直しするということもあります。現場等をご覧いただいた上で、お話をよく聞かせていただいた上で考えたいと思います。いわゆる営業再開との関係については、別に考えていきたいと思います。営業再開については、お客さまをお尋ねし、きちんとおわびをすることを繰り返すことが必要です。そうした中で、過去の反省と信頼回復についての会社の姿勢をお伝えすることが、必要ではないかと思います。
 お客さまの不利益の解消との関係ですが、ご承知のとおり、特定事案調査および全ご契約調査については既に3月末で対応できております。深掘調査についても6月末で契約内容の確認が完了しておりますので、不利益解消について、お客さまお一人おひとりについて作業を進めているところです。その道筋は出来上がっていると考えております。
 大事なことは、こうした調査やお客さまの不利益の解消は、会社の方針として今後もお申出がある限りやらせていただくということです。特定事案、全ご契約調査、深掘調査、昨年発表した多数契約の48事案など、特に急がれる事案を幾つか優先的に対応いたしましたが、今後もお客さまの不利益の解消について、末永く対応していくということが、会社の大方針であります。社員がおわび行脚で出向いたときに、そうした考え方をお客さまにきちんとお伝えし、さらに契約内容をもう一回お客さまの前で確認をすることが大事だと考えております。
【記者】
本日発表された「かんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売への対応」についてお伺いします。
 79人のお客さまが該当されていたとのことですが、いつ発覚したのでしょうか。また、該当事案の契約時期は、いつからいつにまたがるのか事実関係を教えてください。さらに、本日発表された理由を教えてください。加えて、営業再開に向けた5条件をお示しになっていますが、この事案は今後営業再開にどのように影響してくるのかについても教えてください。
【社長】
今年の4月以降、2019年4月から2020年6月に寄せられた苦情を分析しました。これまでは、苦情は各社個別に対応し、同一の会社内でも苦情を寄せられたお客さまの名寄せを行わず、苦情が寄せられるごとに単発で対応しておりました。その場合、今回の例のような複数の商品にまたがる問題点が明らかにならないと思います。苦情についての横断的な取組みは、法令等の制約から日本郵便しか出来ませんので、4月以降、日本郵便が分析をしました。
 私がこの問題について詳しい報告を受けたのは、今月の初めだったと思います。その際分析された苦情の多くは2017年度から2018年度に契約いただいたお客さまからのものでしたので、過去5年間に遡り、全体をきちんと把握するよう指示したところ、今回、苦情の有無にかかわらず、資料の1.で例としてお示しした取引について765人のお客さまが該当することが分かりました。本件は、昨日までに監督省庁にご報告しております。
 79人のお客さまから頂いた苦情に関わった募集人が何人いるかといったことについては、これから調査をする必要があります。お客さまお一人おひとりに当たる段階です。今回、一定程度分析がまとまりましたので、本日の記者会見の場で発表いたしました。
 今回のことは、営業再開等について考えていく上で、一要素にはなり得ると思います。昨年、かんぽ商品のご契約問題が発覚いたしましたが、これまでどのような販売行為が行われてきたのかを把握することなしに、改善につながらないと思います。ほかにも、これまでの販売方法について多角的に分析できる方法があれば、随時取り組んでいきたいと思っております。今回の問題やグループ社員による持続化給付金の申請・受給のような問題など、かんぽ商品の販売の問題だけでなく、そうしたもの全般を見た上で、おわび行脚となる営業再開をいつスタートさせるか判断していきたいと思います。
【記者】
苦情を寄せられた方79人は調査対象の765人に含まれるということでよろしいでしょうか。
【社長】
最初、今年4月以降、かんぽ商品と投資信託の双方をお持ちで私どもに複数回苦情を申し立てられたお客さまを分析したところ、79人いらっしゃることを把握しました。もっと前に遡って、資料に典型的な事例として記載した取引について苦情の有無にかかわらず調べ直したところ、765人のお客さまが該当することが分かった、ということです。
【記者】
こうした事例について、特定の社員や特定の地域への偏りはあるのでしょうか。
【社長】
そこまでの分析はできておりません。社員については、日本郵便の社員が多く、ゆうちょ銀行の社員もいると聞いておりますが、そこまでです。まとまりましたら、公表します。
【記者】
資料に「投資信託の分配金が定額で、かんぽ商品の保険料を支払うことができるという誤った説明」と記載されていますが、万一、募集人がこうした説明をしていた場合、法令違反に当たるとお考えでしょうか。
【社長】
事案ごとに個別に調べる必要がありますが、一般論で申し上げますと、金融商品取引法違反、場合によっては保険業法違反等に当たるのではないかと思います。
【記者】
「79人」ないし「765人」は、あくまでも、複数の苦情を申し立てられたお客さまの数ということでしょうか。
【社長】
「79人」については、そうです。
【記者】
ご紹介いただいた例を見ますと、かんぽ商品の契約があったかどうかに関わらず、投資信託を販売するに当たって、虚偽の説明をしている内容です。グループ会社間の連携や名寄せの問題が関係するのでしょうか。つまり、抗議が日本郵便またはゆうちょ銀行のいずれかに1回来たら、当然調べなければいけない問題であって、名寄せや連携以前の悪質な内容なのではないかと思いますが、その点、どのように整理されているのでしょうか。
【社長】
まず、投資信託の分配金は定額ではありませんので、そこをどのように説明したのかがポイントだと思います。あえてその例を挙げたのは、従来は投資信託の問題として片づけていましたが、元々かんぽ商品の契約がベースにあり、それを解約して、もう一回かんぽ商品を購入していただいているわけです。ですから、かんぽ生命側から見ても、極めて複雑な操作を行い、場合によっては手数料を稼ぐ目的でクロスセルをしていたのではないかと考えたからです。そうすると、投資信託の販売方法の問題というよりも、さらに手の込んだ悪質性の高い問題ではないかと考えています。実際に、そうした可能性が高いものが出てきていますので、あえて申し上げたということです。
 投資信託の苦情について、きちんと対応できているのかという問題は、こうしたことを見て、改めて徹底する必要があります。今年3月にご報告をしたものは、高齢者の皆さん方に、投資信託をどのように販売していたのかを調査したものでしたが、さまざまな角度でいろいろと調べる必要があると思います。
【記者】
今おっしゃった手口は、ほかにもあったのでしょうか。
【社長】
幾つかございます。
 まだきちんとした調査をおこなっていませんので、確定的なことは言えませんが、今申し上げました事例が一番類型としては複雑で、恐らく悪質性が高いのではないかということで、一番極端な例として申し上げました。
【記者】
昨年4月から今年6月の間に寄せられた苦情に対する対応は、終わっていたということなのでしょうか。
【社長】
各社に寄せられた苦情は各社で必ず対応していると思います。対応中、継続中のものが若干あると聞いておりますが、基本的には各社で対応しています。今ご説明したとおり、こうした契約は見つけづらいため、今年の4月以降は、各社が連携する必要があると考え、取組みを始めたということです。
【記者】
先月の社長会見で、3月で更新が止まっているフロントラインセッションのデータを早く更新するとお話されていたと思いますが、今日現在、まだ更新されていないようです。これは今後、どのようにされていくのでしょうか。
【社長】
大変失礼しました。その後、フォロー、確認しておりませんでした。直ちに更新いたします。
【記者】
深掘調査では、多数契約、多額契約の調査をされていますが、1契約当たり、1人当たりの平均の金額が異様に多い募集人が処分の対象者から抜けているのではないかという指摘が現場から来ています。それもぜひ調査をやっていただきたいと思っています。
【社長】
深掘調査については、優先度をつけ、現在、多数契約調査を先に行っていますが、今ご指摘いただいた金額が異様に大きい契約についても、従来の調査の少し後になるかもしれませんが、必ず調査をするようにします。
【記者】
先々日の会見で衣川社長が、個人の言動や不正の関与について、局員らの証言があれば、それを基に調べるとおっしゃっていましたが、現場からどうやって声を吸い上げるのかという意見があるのですが、この辺についてはいかがですか。
【社長】
衣川社長に発言の趣旨、真意を確認します。
【記者】
これも衣川社長にお聞きすべきことかもしれませんが、衣川社長は任用と今回の懲戒は別だというご説明をされていたそうですが、一方で、現場では数字を上げたら出世させるというような状況があるので、任用と懲戒は別ではないのではないかという意見、例えば、成績を上げて課長代理から課長になった人が今回、懲戒解雇になっているが、そもそも課長代理から課長にした人は、今のところ、処分されていないが、これはどういうことだというような意見があります。これについてはいかがでしょうか。
【社長】
降格についてはかなり厳格な手続きがあり、組織の懲戒制度からいえば、相当な不利益処分になります。任用が、明確に不適正な行為により優績者となったことと因果関係があれば別かもしれませんが、考え方としては、任用と懲戒は、本来、一般的には、制度としては別です。ただ、その任用が誤った形での任用だったかどうか、ということかもしれません。今回、懲戒処分を受けた者には優績者も含まれております。懲戒処分は、優績者であるかないかとは関係なく厳格に行うことにしていますが、今、私が申し上げたのは一般論で、これは恐らく日本郵便の現場での話ですので、衣川社長と話をしたいと思います。
【記者】
今回、渉外社員は随分処分されたが、窓口社員は全然処分されていないのではないかという意見があります。渉外社員からは、ライフプラン相談会が、別名「強制乗換相談会」として窓口社員や郵便局長が不適正募集を行う場になっており問題ではないか、これが処分されないのはおかしいのではないかという意見が出ていますが、いかがでしょうか。
【社長】
処分の内容については、私が処分権者ではないので言いづらいところもあるのですが、現場の空気感がどうなっているかということが極めて大事です。支社長や主管局長との会合を持つことにしておりますので、そういう話が出ているということも頭に入れておきたいと思います。処分は公平感が必要になると思いますので、厳格に行う必要があります。今後順次処分が進んでいきますので、支社長や主管局長には、適切な処分を行うよう伝えていきたいと思います。
【記者】
今回、過去にさかのぼっての処分はほぼ初めてではないかと思うのですが、すでに退職した社員や子会社に再就職している幹部、役員はなかなか処分しにくいと思うのですが、どうされるのでしょうか。
【社長】
懲戒処分ですので、あくまでも雇用関係がないと処分行為が及ばないという限界がございます。ただ、今回は、直接の雇用関係がなくても、日本郵政グループ内にいる限りは、処罰は甘んじて受けるべきであるということで、日本郵政グループ内にいる限り、処分を行います。ですから、日本郵政に異動した者については、衣川社長などからの依頼を受けて、私が所属のトップとして、その者たちに処分の伝達をしました。法的にどこまで行うことができるかについてはぎりぎりのところがあると思います。その間の報酬を自主返納させることについても、法的にはおそらく拒否できるのかもしれませんが、自主返納という形ではありますが、できるだけ罰を受けてもらうことで対応いたしました。
 それ以外の、完全に雇用関係、日本郵政グループとの関係が切れた人たちには、残念ながら今回の処分の効力は及びませんが、事柄の性格上、どうしても致し方ないと思います。今後の戒めにはしていただきたいと思っています。
【記者】
郵便局のみまもりサービスについて、現場ではふるさと納税の返礼品にするなどの形で積極的に営業されていますが、契約件数がピーク時の3分の1ほどに減少しています。お客さまのニーズとサービスの内容が必ずしも合っていないのではないかと思います。郵便局にはまだまだたくさんのリソースや郵便配達のネットワークがあります。サービスの内容をブラッシュアップしないと営業をやりづらいのではないかと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
【社長】
ご指摘のとおり、みまもりサービスの内容については、以前から、ブラッシュアップ、見直しを行わないといけないという問題意識を持っております。
 契約件数が減ったのは、おそらく、無理やり自分の親族を対象にして件数を稼ぐといった自爆的な営業や無理が生じていたところがあったためだと思います。もうそれはやってはいけないことです。一方、ニーズがあることは間違いないのですが、この分野にはいろいろな分野の企業が参入しておりますので、そういうところと郵便局の違い、あるいは郵便局が行うサービスが他社のサービスよりも非常に温かいハートのあるものだということを伝える必要があると思いますので、ブラッシュアップ、根っこからの見直しを行わないといけないと思います。
 自治体はそういった分野でかなり郵便局に期待をしている部分が多いと思うのですが、民営化により基本的に行政連絡会から郵便局が抜けたため、自治体との意思疎通が十分ではないと思います。そこはもう一度つながないといけません。また、郵便局員一人ひとりがサービスを受ける方、あるいはそのご家族の期待に応える考えを持っていると思いますので、支社ごとにそのやり方が違っても構わないと思うのですが、支社で現場の声をよく聞いてほしいと思っています。
 これは前から問題意識を持っているところですので、少し時間をいただき、考え直したいと思います。
【記者】
もう1年以上積極的な営業をされていないことがもとで、どのくらいの方が会社を辞められているか分かりますでしょうか。
【社長】
その関係でどのくらいの方が退職されたかは把握しておりません。把握できるかどうか日本郵便に聞きたいと思います。
 長期に渡って営業を控えていますが、問題を繰り返さないという大前提で、もう一回、本当に心底生まれ変わらないといけません。今こういう状況なものですからなかなかそうはいかないのですが、それぞれのブロックの最高責任者の支社長、局長、特に支社長に今どうなっているのか話したいと思います。現場、お客さまの前できちんとおわびすることがまずスタートなのではないかと思いますので、会社としては重い十字架を背負ったわけですから、スタートラインに立てるかどうか支社長によく聞いて、判断したいと思います。
【記者】
今、新型コロナウイルス感染症の影響により、数か月間営業できなくなり、事業者が廃業になったり、大手でも夏のボーナスが出なかったり、また雇い止めに遭った方も出ています。郵政は1年以上営業していませんが、給料やボーナスが普通に出ています。一部の人からはこのことについて好感を持たれていないのではないかと思うのですが、どのようにお考えでしょうか。
【社長】
賞与については、労使間の協定をきちんと順守することが雇用関係の上では大事だと思います。
 長く積極的な営業を控えていることによって決算等に影響が出ています。これは経営にとっては大変でボディーブローとして効いてきていますので、今回のことは会社の将来にとって大変マイナスの影響があることだと思います。それを一刻も早く解消していく必要がございますが、だからこそ、ここで生まれ変わった姿をきちんと見せて、行動するかが特に大事ではないかと思います。
【記者】
かんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売への対応について、一つの案件に複数の社員、例えばゆうちょ銀行と日本郵便の両方の社員がかかわった案件も認められているのでしょうか。
【社長】
現在、全体としては調査中という段階です。それから、関わっている募集人がどういう形で行っているのかもすべて確認中だと聞いていますので、個別には少しずつ分かりかけていますが、ある程度まとまった段階で公表したいと思います。
【記者】
手口の一つとして、投資信託の分配金を保険金の支払いに充てるというのがあると思うのですが、これはそういった提案自体がそもそも問題として捉えているのか、それとも、その提案自体は問題ないが、説明不足やご意向確認が不十分だったという点が問題だと捉えているのか、どちらでしょうか。
【社長】
使用された話法によっては金融商品取引法違反になる可能性がありますが、今のこういう低金利下で少しでもリスクをとって将来に向けて運用したいというご意向のお客さまもいらっしゃるかもしれません。今、抽出しているものは悪質性がかなり高いと考えているのですが、両面ありますので、一つひとつ確認しないと白黒の判定はつかないと考えています。
 元本割れもなく分配金がずっと定額で払われるようなことをお客さまに認識させるように説明している場合もあるでしょうし、さまざまな手口の可能性を考えておかなくてはいけないと思いますので、お客さまにお会いして、どのようなご認識だったのか、それから、その購入を促した募集人がどういう説明をしたので契約を結んだのか確認して、その点について公表したいと思います。
【記者】
現在、新型コロナウイルスの感染者が全国で増加し、日本郵政グループ内の感染者もここ最近増加していると思いますが、感染防止策として一段と踏み込んだ対応はご検討されていますでしょうか。
【社長】
日本郵政では3名、日本郵便では56名、ゆうちょ銀行では3名、かんぽ生命ではまだ出ておりませんので、グループ会社主要4社で62名の感染者が出ています。その他の子会社でも感染者が出ています。当グループは社員数も多いため、感染者数がどうということはないと思いますが、いずれも、お客さまに大変ご迷惑をおかけし、家族を含め当該社員はもちろんのこと、会社としても打撃が大きいことですので、現在、考えられるさまざまな感染予防策を行っております。この建物については、3階の総合受付の前に、体温が高い方をチェックできるよう、センサーで出入りする方の体温を自動的に表示することができる機器を2つ設置しております。
 それから、社内のあちこちにアルコール消毒液を置くなど、考えられる対策を行っております。感染自体をできるだけ止めたいと思いますが、どれだけ対策を講じても、本日も東京都で400名以上の方の感染が判明しているということですから、どうしても感染するリスクがあります。社員の感染が判明した場合は、感染が拡大しないよう、直ちに消毒をして、周辺の接触した可能性がある社員を自宅待機させております。また、日本郵政では、テレワークができる社員にはもっとテレワークすることができるよう、さまざまな機器を調達、配布しています。時差出勤も行っています。
 郵便局についても、こういった状況下、狭い局舎にたくさんのお客さまがいらっしゃることもありますので、4月、5月にとったように、今まで以上に営業時間などをもう一回調整し直すことも必要になってくると思います。
 いずれにしても、ここ1、2週間で感染者が急激に増加しつつあり、当グループでも4連休明けの今週、多くの感染者が出ましたので、状況に応じて、必要な対策をもう一回強化することも考えたいと思います。
【記者】
衣川社長と千田社長についてお伺いします。先日の記者会見でお二人に対する処分についても発表されましたが、今年2月に行ったグループインタビューで、衣川社長は今回の一連のかんぽの不正問題について、当時、2014年と2015年に募集管理統括を担当されていたことについて言及し、ご自身の責任についてどう思われるかお聞きした際、募集管理統括を担当していましたが、今回の問題とは直接結びつかないとおっしゃり、責任論について否定されました。千田社長についてもそうですが、今回、社員等を処分する中、自らの責任についてはそういう認識しかなく、かつ、懲戒処分を受けた方がトップとして、今後、これから営業再開に向かう中、本当にその求心力を保って、ガバナンスを利かせて、お客さまの信頼を回復することはできるのでしょうか。増田社長のお考えをお聞かせください。
【社長】
二人が今のまま処分されることなく職務を続けることの方が、より納得感がいかないと受け取る方が多いのではないかと思います。ですから、むしろ今回処分を受けたことを重く受け止めて、今後、2倍にも3倍にも、とにかく挽回するつもりで、責任感ある対応をしていただきたいと思います。事案が解明され、2月、3月、4月、4月以降、新たな分析手法をとり入れ、昨年以前の販売方法の問題を今出している段階です。今、二人は、処罰を受けて、反省をして、今後、会社の立て直しに全力を挙げようとしていると思いますので、さらに日本郵便とかんぽ生命の立て直しに身を粉にしてやっていただきたいと思います。
【記者】
新型コロナウイルス感染症との関連で、今、生命保険業界は対面営業が難しい中、オンラインで顧客と接して、手続きができる部分はないかといろいろ創意工夫をしています。おわび行脚をオンラインで行うわけにはいかないと思いますので、どのように工夫されているのか教えてください。
【社長】
非常に苦慮するところでありますが、おわびを申し上げますので、なおさらお客さまのご意向を最優先して考えなければいけません。いきなりお伺いすることは当然考えられませんし、非対面、非接触が原則の中で、本当にお伺いしてよいのかどうかを丁寧にお聞きした上で始めることになります。
 おわび行脚、営業再開のスタートラインに立っていいかどうかという判断は最終的に我々が経営判断するわけですが、そのように判断したとしても、今後のコロナの状況によっては、当分お客さまのところにお伺いできない状況が続く可能性があると思います。これは、保険業界のみならず、様々な訪問活動を主体にしている企業が受け止めなければいけないところですが、会社の事情で現在のコロナの一般的な状況を打ち破るようなことはしたくありませんので、コロナの感染拡大を防ぐ中で可能なことのみを考えていきたいと思っております。
 ここ1、2週間、コロナに感染された方が本当に増え、今後もどんどん増えそうなことから、私も大変危機意識を持っております。次期中期経営計画で、コロナとは関係なく、デジタル化の時代にダイレクトバンキングやオンラインによる営業をもっと追求しようと思っていたのですが、そのスピードの切迫感がものすごく早まったような気がします。
 繰り返しになりますが、お客さまにおわびを申し上げに行く際、コロナに対する一般的な不安な状況を破るわけにいきませんので、そのときにはおわびも控えることが十分あり得ると考えています。
【記者】
全ご契約調査において103.1万人のお客さまからご回答を頂いたとのことですが、先日のJP改革実行委員会の委員の方から、ご返信がないということについて、ご契約に問題がないということではなく、返信することを躊躇しているケースもあるとのご発言がありました。おかしいと思っても、申し出るには高いハードルがあるというご発言がありましたけれども、そうなると返信がない人の中にも不利益を被った方がまだまだ埋もれている可能性があると思うのですが、そういったお客さまの把握について、どのようにお考えでしょうか。
【社長】
おそらく103.1万人以外の方に埋もれている不利益を被ったお客さまがいらっしゃると思います。全ご契約調査においてご回答がなかったお客さまについては、不利益を被った方を掘り起こすことができないか考えたいと思います。毎年秋、ご契約者さまに出しておりますご契約をご確認いただくご通知「ご契約内容のお知らせ」に、ご疑問がありましたら申し出ていただきたいといったフレーズを入れ、お申出に誠実に対応することとしています。
 具体的にどのようにするかは、かんぽ生命で考えておりますが、お客さまが気づきを得られるような形にしていきたい、不利益を被ったお客さまを掘り起こしていきたいと思います。
【記者】
今日の一つ目の公表事項についてお尋ねします。調査手法を変えたことでこういったことも新たに浮かび上がったということでしょうか。逆に言うと、これまで社員の調査等をしてきた中で、こういった横断的な名寄せをしないとこういう事案が明らかにならない点に、組織がまだ変わり切れていないという印象を受けるのですが、この点へのご見解、営業再開への影響の度合いを、どのように考えているのかという点を改めてお聞かせください。
【社長】
これまで考えてきた調査では拾い切れていませんでしたので、やはり、調査自体が不十分、リスク感度が低かったと思います。1月の就任以来、いろいろやってきましたが、その頃は、各社が苦情についていろいろ取り組んで、拾い切れている部分もあるのではないかと思っていました。こういう類型があることは意識していませんでした。これまでの調査に対してまだまだ意識が不十分であったと外から見ておっしゃっていただいたことについては、反論の余地がなく、まさにそのとおりだと思います。
 このことは営業再開、おわび行脚に大きく影響してきます。ほかにまだ違う類型があるかもしれませんので、これからも探り続けていかなければならないと思います。営業再開については、現場の実際の状況がどうなのか、機械的ではなく総合的に判断して、次にどうしていくかを考えたいと思います。
【記者】
おわび行脚の開始に向けて、新しく強い郵便局となるよう、全体的にレベルアップするために、これまでのご発言では、FP資格などをご推奨されていらっしゃったと思います。渉外社員の方々だけではなく、窓口社員や、ひいては郵便局長にもそうした資格を持ってほしいという思いはございますか。
【社長】
窓口社員、それからもちろん管理者としての郵便局長も、全体に金融商品についての知識のレベルアップを図ることは必要だと思います。したがって、特に渉外社員に対しては、FPについて、少なくとも2級までの取得を目指して頂いておりますが、そこで終わるのではなく金融商品の知識について、一般の金融機関と同じぐらいのレベルに達するようにしていくことが必要と思います。
 総合コンサルティングサービスを目指しておりますが、どういう形で金融知識の向上を図るかは、渉外社員だけを対象にした話ではありません。現場での取組み等を含め、日本郵便の特に支社等で、支社長を中心によく考えてほしいと思います。今のご指摘については窓口社員にも資格を取得していただきたいし、資格を取得した社員については、またいろいろな意味で評価が上がる仕組みを作りたいと思います。今後検討して参ります。
【記者】
3年ごとの民営化の検証に向けた準備が本格化するようですが、以前、民営化委員長を務められていた増田社長は、さらにそれ以前は消滅自治体のレポートをまとめられて、地方創生にも熱い思いを持っていらっしゃると思います。
 民営化と地方創生の接点、それに絡む郵便局、ゆうちょ銀行、かんぽ生命のビジネスなどについてどのようなお考えをお持ちでいらっしゃいますでしょうか。
【社長】
おそらく来年3月になると思いますが、郵政民営化委員会としての意見がまとめられるのではないかと思います。何回か公式、非公式でヒアリングを受けておりますが、新しいビジネス、あるいは新しい役割を展開していく上で、特に郵便局の地方創生の拠点としての役割が非常に重要だと思っております。また政府においても、「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」にはっきり「郵便局」という言葉が書かれておりました。先ほどご質問がありましたが、自治体と郵便局はいろいろなところでつながって取組をしていますが、地方創生という観点は、今のところ、少し薄いと感じています。郵便局の行う事業に地方創生の交付金が入っておりますが、郵便局側であまりそれを意識していなかったり、自治体においても郵便局との本当の話合いができていなかったこともあります。昨年12月下旬にとりまとめられた総合戦略に「郵便局」という文言が入り、今年7月にとりまとめられた基本方針にも、はっきり「郵便局」と書かれております。私としては、日本郵政グループ、特に郵便局において、地方創生の観点を持ち、地方創生のパターンは多岐にわたり、地元の自治体ごとに違ってくると思いますので、自治体とよく話をしていく必要があると考えます。
 それから政府において「郵便局」という文言を入れたことを自治体にも伝えていただき、成果を出し、郵政民営化委員会にアピールしたいと考えております。郵政民営化についていろいろな議論があることは承知していますが、法律、今の郵政民営化の路線の中で、金融商品やはがき・切手を売るだけではなく、みまもりサービスや地方創生の関係で郵便局がお手伝いできることはまだまだたくさんあると思います。加えて、物販事業については、例えば地元の名産品の販売に多くのノウハウを持っています。意見書に郵便局の良さや役割が盛り込まれるよう、郵政民営化委員会に以上のことをアピールしていきたいと思います。
【記者】
今日発表された「消費生活相談員によるかんぽ生命保険等電話相談窓口の開設」についてお尋ねします。他の生保会社では、こういう消費生活相談員による窓口を開設していますか。
【社長】
全国消費生活相談員協会は、個別の民間企業とは契約しないと思いますので、おそらく初めての事例だと思います。同協会は、相当レベルが高い消費生活相談員の方たちです。一方、日本郵政グループは、お客さまから見るといろいろな問題を起こしておりますので、分からないことを聞くためにかんぽ生命のコールセンターにかけることには不安があると思います。第三者の公正な立場のところにお願いしたほうが、客観的な取扱いになるのではないかと思い、今回新たに開設いたしましたが、おそらく同業他社では同じようなことはやっていないと思います。国民生活センターや全国消費生活相談員協会の皆さま方には、そうした問い合わせは多く寄せられていますので、非常にきちんとお答えいただけるのではないかと思います。
(※記者会見における発言及び質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)