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2020年5月25日 月曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2020年5月25日 月曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 代表執行役社長 増田 寬也
三浦法律事務所 弁護士 三浦 亮太
【社長】
日本郵政株式会社代表執行役社長の増田でございます。
 前総務事務次官情報漏洩問題について、かねてから調査を依頼しておりましたが、今日、その調査報告書の提出がございました。この調査を担当されました三浦弁護士にもご同席をいただいておりますので、これからその内容を発表させていただきます。その後、質問を頂戴したいと思います。
 それでは、どうぞよろしくお願いします。
【三浦弁護士】
弁護士の三浦でございます。よろしくお願いいたします。
 本日、調査報告書を提出させていただきました。本日はその調査報告書の中身をご報告させていただきたいと思います。
 まず、第1、調査に至る経緯を記載しております。総務省の鈴木前事務次官が懲戒処分を受け、最終的に辞任するに至った事態を重く受け止め、処分理由である「漏洩」について、可能な限りの調査を尽くしてほしいというご依頼がありました。
 続いて、第2として調査事項を記載しております。前次官から鈴木前上級副社長に対する漏洩の有無及びその内容の確認を調査対象としております。
 続いて、第3として、調査の前提を記載しております。調査に先だって、総務大臣の記者会見の内容、与党の総務部会、財政・金融合同部会、国会の総務委員会の懇談会の内容を全て確認しておりますけれども、与党からの質問であっても、国会からの質問であっても、漏洩の具体的な内容は答えられないというのが総務省のスタンスでした。とするならば、民間企業である日本郵政の今回の調査は任意の調査ですので、私から調査協力要請をしても、おそらく協力は得られないだろうと考え、協力要請は行っていないといったところを記載しております。
 ただし、今年に入ってから総務省の国会等における回答がだいぶ具体的になってきました。その中で、漏洩したのは次の3点だと回答されています。1点目が、日本郵政に対する処分案の検討段階、いま、どんな検討をしているかという具体的な状況。2点目が、大臣の日程。処分に関して大臣がいつ、誰に会うという日程。具体的には、総務大臣と金融庁長官との面談日程が漏洩されたといったことを回答されています。3点目に、日本郵政グループの役員の責任の取り方に関して、大臣室等でいろいろなやりとりをしていた内容。この3点が漏洩内容だと国会等でお答えになっております。
 さらに、総務省において、令和元年12月19日付の監察結果報告書なるものが存在することが分かりましたので、私から総務省に対して情報開示請求を行いました。その中でも漏洩した情報の内容は次のとおりであるという記載がなされておりました。日にちは12月13日と15日と16日。内容は先ほどのとおり、日本郵政グループ役員の責任の取り方に関する関係者間のやりとり、大臣日程、行政処分の方向性、このあたりが13日と15日と16日に漏洩しているといった報告書になっております。
 以上を踏まえますと、令和元年12月13日から16日までの間に、前次官と鈴木前上級副社長の間で、携帯電話を用いて、責任の取り方に関する関係者間のやりとり、関係者しか知り得ない大臣の日程、行政処分の方向性、これらが漏洩していたと総務省としては考えていたことが認められます。
 ですので、私の調査としては、これらが事実であるのか、事実であるとして、どういった内容を前次官から報告を受けたのかについて調査することとしております。
 第4、調査対象資料等には調査した資料を記載しております。携帯電話でのやりとりですので、本人に伺うしかないのですが、経緯を把握してからヒアリングを実施したいと考えましたので、eメール、固定電話の発着信履歴、来訪者の受付表、予定表、運転手の日誌、国会等における質疑応答の内容、総務大臣の記者会見の内容、先ほど述べました総務省に対する情報開示請求の結果得られた内容、会社の現役の役職員、そして既に退職された日本郵政の長門前社長、日本郵便の高橋前会長、横山前社長、かんぽ生命の植平前社長からもヒアリングを実施した上で、鈴木前上級副社長にヒアリングをしております。
 そして、調査結果をまとめております。まずは、12月27日になされた行政処分に至る概要を記載しております。この中で、特に12月の状況を中ほどから記載しております。
 日本郵政では、12月18日に「日本郵政グループにおけるご契約調査の結果及び今後の取組について」という資料を公表されておりますが、これはもともと12月27日に公表が予定されていたものでした。12月4日の段階でも、担当者は12月27日を前提としたスケジュールを総務省に報告しております。
 このような中、12月5日に前次官から前上級副社長に対して、公表の前倒しはできないかという照会がなされています。前倒しの理由については、社内では、年明けの国会に提出する郵便法の改正案に関する総務省内の手続きの観点から、保険の不適正募集の調査結果の公表を早期に行うことが必要であったのではないかといった推測がなされていたことも確認できました。
 さて、公表の前倒しの可否の問い合わせがあったわけですが、これは日本郵政の努力だけではできないことで、当時、並行していた特別調査委員会の了解も必要でしたので、特別調査委員会の委員長と協議の上、結果的に、先ほどご報告したとおり、18日に公表することとなりました。これが行政処分に至る経緯です。
 続いて、役員の責任の取り方です。ヒアリングによりますと、12月に入り、結果的に退任された5氏は、いずれも退任の意向を固められていたようです。本来であれば、12月27日までに後任人事が確定して、その時点で調査結果と辞任と後任人事が発表される想定でしたけれども、先ほど申し上げたとおり、調査結果の公表が前倒しされております。他方で、その段階では後任人事は確定しておりません。ですので、12月18日の記者会見では、責任の取り方には触れられない形での説明になっております。
 日本郵政に対する行政処分については、12月10日前後、日本郵政グループを検査していた金融庁の担当官からは、12月13日には金融庁による検査は終了する旨が伝えられています。それを受けまして、日本郵政では、過去の他社事例に照らして、12月13日には金融庁の検査が終わり、18日には取締役会、特別調査委員会の報告、そして先ほどのとおり記者会見が行われ、12月23日前後には金融庁に対する報告の期限が到来し、27日に行政処分がなされ、この段階で辞任の記者会見が行われるというスケジュールが想定されていました。
 また、日本郵政では、処分の内容については、過去の他社事例等に照らし、総務省は業務改善命令、金融庁は業務改善命令と業務停止命令を行うのではないかと推測されていたようですけども、金融庁がどの程度の期間の業務停止命令を行うかについては確たる情報はなかったようです。
 ここまで、関係者等もしくは客観的な資料を調査の上、分かった背景を踏まえて、鈴木前上級副社長から聞き取り調査を行いました。
 改めて、最初にお伝えしましたけれども、総務省は、日本郵政グループ役員の責任の取り方に関する関係者間のやりとり、関係者しか知り得ない大臣の日程、日本郵政に対する行政処分の方向性の3点が漏洩したと考えておられるのではないかと思います。
 1点目の日本郵政グループ役員の責任の取り方に関する関係者のやりとりについては、報告を受けましたという回答がありました。確かに12月13日から16日にかけて、前次官から情報提供があったとおっしゃいました。具体的には、総務大臣としては、日本郵政の長門社長、鈴木上級副社長、日本郵便の横山社長、かんぽ生命の植平社長の辞任は避けられないと考えており、また、日本郵政の後任社長には金融の知見が必要なのではないかといった考え方を持たれているといった旨の話を聞いたことがあるということでございました。情報提供を受けたことを認められ、その中身についてもご説明を受けました。
 2点目の関係者しか知り得ない大臣日程ですが、こちらも12月13日から16日にかけて、総務大臣が金融庁長官と面談する日にちを確かに聞いた記憶があるとのことでした。
 最後に、3点目の日本郵政に対する行政処分の方向性ですけども、この点も聞いた記憶があるとのことでした。具体的には、総務省として業務改善命令を行う方向であるといった話を聞いた記憶があるとのことでした。
 前上級副社長によりますと、今ご説明した3点以外の情報を聞いた記憶はないとのことです。他方、前上級副社長からは、先ほどのとおり、12月18日にご契約調査の結果等を前倒しで公表する方向であるとお伝えしたといった記憶があるとのことでした。
 調査内容は、今ご説明したとおりですが、最後に私の所見を記載しております。
 前次官が前上級副社長に対して、先ほどの3点の情報を伝えたことは、総務省の内部監察においても、前次官のショートメールの内容が確認されていること、私からの聞き取りでも、前上級副社長も情報の提供を受けたことを認められていますので、客観的事実として、情報の報告はあったことが認められます。
 これらの情報について、前上級副社長が前次官に対して提供を求めたものであるのかについても調査対象としました。さらに、この情報を受けて、前上級副社長が社内で何らかのアクションを取ったのかについても調査内容としました。
 まず、前上級副社長が得た情報を踏まえた指示等の存在は確認できませんでした。具体的なアクションとしても確認できませんでした。ですので、前上級副社長から提供を求めたというよりは、前次官から報告があったものであろうと推測しております。
 内容としましても、総務省としては、総務大臣の意向が漏れていることは重大な問題だと思いますが、日本郵政側の聞き取り調査をすると、12月に入りまして、もう関係者は全員辞任の意向を固めておりましたし、鈴木前上級副社長が関係者に総務大臣の意向を伝えた形跡もありません。
 関係者しか知り得ない大臣日程につきましても、総務大臣のスケジュールが漏れていることは、総務省側では重大な問題だと思います。ですけども、聞き取り側としては、面談日程だけ聞いても何かしらのアクションを取れるものでもありませんし、具体的にその日程を聞いてアクションを取った形跡もございません。
 最後に、日本郵政に対する行政処分の方向性、こちらも繰り返しになりますが、処分前に総務省の処分内容が漏れていることは重大な問題だと思います。
 ただ、聞き取り調査をしますと、社内では、総務省が業務改善命令を行うであろうことは当時の関係者の認識の前提になっています。関心事でした金融庁の業務停止命令の期間については確たる情報はなかったようです。関心事だったとは思いますけども、このあたりの情報提供は受けておりませんし、実際、社内でもそういった情報は共有されておりません。
 以上から、いずれの情報についても、前上級副社長側から求めたというよりは、前次官側から情報提供があったのではないかと推察しているところです。
 以上を踏まえて、前上級副社長側に、法律違反、違法性があるかと言われれば、ないというのが私の結論になります。ただし、総務省として行う行政処分の有無、内容が、現職の総務事務次官から日本郵政の上級副社長に伝わることは、国家公務員としては不適切な行為だと思いますし、恐らく先輩・後輩の関係があったゆえの情報提供であったと思いますが、12月は行政処分がなされるだろうというセンシティブな局面でしたので、コミュニケーションを控えるといった対応がなされるべきであったと思います。
 以上、私から、調査報告書にまとめた内容をご報告させていただきました。
【記者】
総務省前事務次官鈴木茂樹氏へのヒアリングを実施していないのはなぜでしょうか。日本郵政の役員らのみにヒアリングを実施すると、得られる情報や意見に偏りが出てしまうように思えますが、その点について三浦弁護士はまったく問題ないとお考えなのでしょうか。
【三浦弁護士】
このあたり、見解が分かれるところだと思います。私としては、国会における質問でも答えられなかったものについて、私からの質問には答えていただけないだろうという前提を置きましたので、調査はしておりません。ですけども、このあたりは見解が分かれるところだとは思います。
【社長】
私のほうからも申し上げたいと思います。日本郵政として調査をする以上、やはり調査に協力が得られるかどうかということを考えているわけですが、鈴木前上級副社長、長門前社長、横山前社長、植平前社長等々は、かつて当社とも雇用関係がございましたので、当社から協力依頼をした場合には協力が得られやすいと思っておりますが、鈴木前次官とは、当社と雇用関係があるわけでもございませんし、前次官とすれば、在職中のことについてはいろいろ守秘義務等もおありでしょうから、会社としても調査を得られる範囲の中で調査をしていただくことがよろしいのではないかと思いました。
【記者】
前総務事務次官の情報漏洩問題の調査であるのに、前次官や総務省に対し、協力要請をして拒否されたならまだしも、要請すらしなかったのはなぜですか。「任意の調査だから協力が望めない」とのことですが、調査を尽くしたとお考えですか。
【三浦弁護士】
先ほどの質問に対するお答えのとおりです。
【記者】
鈴木前総務事務次官と鈴木前上級副社長との間で起きた情報漏洩問題についての調査は、長門前社長の下に一度調査が行われ、公表されませんでしたが、改めて調査をした理由と目的(明らかにしたかった内容)、前調査と違っている点(内容、目的、調査対象者など)があれば教えてください。
【社長】
長門前社長時代にどういう調査をされたのかについて、長門前社長から聞いておりません。私自身、調査について、公表しないということ、調査をどのようにされたのかについても長門前社長からは聞いておりません。
 今回、私が明らかにすべきだと思いましたのは、情報が漏洩されていることは総務省の調査でもはっきりしていて、それはわが社の前上級副社長も、今回の調査にありますとおり認めているということであります。それで、その経緯と、そのことがわが社の意思形成にどのように影響したのかが、これからのガバナンス改革をしていく上でも重要だろうと思い、調査し、それを公表することが必要ではないかと考えて、今日に至ったということでございます。
 したがいまして、世の中の皆さま方にとってみますと、今回の内容が初めてということになると思いますので、従来の調査と今回の調査の内容の比較はできないと思いますが、今回の調査報告書に書かれていることが我々が尽くした調査で出てきた事実とお考えいただきたいと思います。
【三浦弁護士】
若干補足します。年末になされたという調査は前提にしておりません。ただ、年末の状況と年明けの状況、新たに判明しているところがございます。私がさせていただいた情報開示請求もそうですが、前次官が前上級副社長に情報漏洩した日にちも明らかになっておりますし、内容も明らかになっております。この情報をもとに聞き取り調査をしたという意味では、おそらく年末になされた調査と年明けの調査の具体性はおのずと違うと思っています。
【記者】
今回の事案では、多くの人は前上級副社長のほうが情報を求めたと推測したと思いますが、「前上級副社長が前次官に求める積極的な理由は認められなかった」との認定からは、むしろ前次官のほうが自ら積極的に情報を持ち寄ってきた、と理解すればよいのでしょうか。現役の次官がどのような動機で、一方的に情報を流してくると考えられるのでしょうか。
【三浦弁護士】
前上級副社長に、前上級副社長のほうから情報を求めたのですかという質問はもちろんしております。その点については、求めたものではありません、ショートメールで提供を受けたものです、という回答でした。
 もちろん、本人間のやりとりですので、それ以上の客観的証拠はないわけですが、情報提供を求めたのであれば、その求めた情報に基づいて次のアクションといったものも指示されることも推測されますので、当時、日本郵政の社内の状況、それを踏まえた日本郵政の役職員のその後のアクションについても調査しております。
 おそらく、当時の社内状況からすると、役員責任の取り方についても、大臣の日程についても、行政処分の方向性についても、前上級副社長側から求めた情報ではないだろうと推測されます。もちろん、当時社内で知りたかったであろう金融庁による業務停止命令の期間などについて提供があったのであれば、前上級副社長側から求めたのではないだろうかといった認定もするところですが、内容からすると、前上級副社長側から求めたものではないと認定させていただきました。
【記者】
どちらから情報を求めたのか、提供したのかという点は、前上級副社長に聞き取りはしてないのでしょうか。なぜ、その点は三浦弁護士の推測にとどまるのでしょうか。
【三浦弁護士】
先ほどの回答のとおり、聞き取りはしております。そして、前上級副社長のほうから求めたものではないという回答を得たところでございます。
【記者】
本報告書は全8ページと短いですが、これは要約版なのでしょうか、それとも全文版なのでしょうか。
【三浦弁護士】
本日提出させていただいた報告書が全文でございます。要約版ではございません。
【記者】
行政処分に関する情報の提供を前上級副社長が前次官に求める積極的な理由は認められなかった、前次官と前上級副社長とのやりとりについて、前上級副社長側に違法性は認められなかった、という結論に対する日本郵政としての受け止めについてうかがいます。
【社長】
日本郵政として、今回の報告書を頂きまして、幾つか考えなければいけないと思っているところがございます。それは、いわゆる監督官庁との意思疎通を今後どうしていくのかということを考えなければいけないということです。それから、内部でのさまざまな意思形成過程についても、きちんとした手続きを踏まえながら、意思形成をしていかなければいけない、いわゆるガバナンスの問題について、今回の問題から教訓として得られるところはないかということです。
 総務省との関係でいえば、日頃からの情報交換などは当然、郵政の問題についてあってしかるべきだろうと思いますが、こういう行政処分が下されることが確実に見込まれる状況の中で、どういうふうに情報交換したらいいのかということについては、相当慎重にこれから行動する必要があるということ、それと、ケース・バイ・ケースで慎重にということ以上になかなか申し上げられませんが、総務大臣もおっしゃっていますが、特に最高経営幹部にいわゆる役所の先輩・後輩のような者が就くことが外形的にいろんな問題を惹起するのではないかと、こういうことがございました。こうした今回の問題を一つの大きな教訓にして、今後、疑念を持たれることがないようにしていかなければいけないということが一つ。
 それから、さまざまなアクションを起こすときの意思形成過程はガバナンスの強化の問題として、今、中でも議論しているところですが、いろんな行動を起こすときに、内部的には経営会議、取締役会等々の手続きを経て、第三者的な方から適切な助言等をもらうことが、なお一層必要ではないかなと、思ったところであります。
【記者】
漏洩されたとされる三つの情報について、鈴木前上級副社長に、直接、鈴木前上級副社長側から情報提供を求めたのではないか、という尋ね方はしなかったのでしょうか。
【三浦弁護士】
先ほどのお答えのとおりです。こちらから求めたものではないという回答を得ております。
【記者】
この結果をもって鈴木前上級副社長への処分は何かお考えでしょうか。また、会社側として再発防止策についての考えはありますか。
【社長】
鈴木前上級副社長に対して、新たに処分をするということはございません。退任されたことで、我が社との関係は終了しています。今後については、役所のいわゆる先輩・後輩のような形で、我が社の仕事に疑念を持たれることのないようにしなければいけないと思います。具体的にどのようにするのかということは、これから考えていかなければいけませんが、特に権限を持っている監督官庁とのつき合い方や意思疎通の仕方については、疑念を持たれることのないように、公平なやり方等を考えていかなければいけないと思います。
【記者】
(4)所見で①から③とも「前上級副社長が前次官に求める積極的な理由は認められなかった」ということですが、それではなぜ前次官は前上級副社長に情報を漏洩したのでしょうか。その点が明確にならなければ真相解明とは言えないのではないでしょうか。
【三浦弁護士】
調査報告書に記したとおり、12月に入り、今回辞任された幹部の方は、辞意を固められておりました。ただし、そうしたことが表に出ていたわけではありませんので、総務大臣が辞任をすべきと考えられているという情報は、有用性が認められるのではないかということで提供されたのではないかと思います。前上級副社長の側からすると、関係当事者が全て辞任の意思を固めていましたので、こちらから求めたのではないとの結論を報告書に記載したところであります。
 2点目の大臣の日程につきましても、確かに金融庁が業務停止を何カ月にするのか、もしくは何週間にするのかといった情報は社内にも確たるものはなかったところではありますので、前次官側から、スケジュールに関する情報を提供したのかもしれません。しかし、スケジュールだけをもって何かしらのアクションがとれるものでもありませんし、実際にアクションをとっておりません。よって、前上級副社長側から求めたものではなく、よかれと思って提供された情報ではないかと結論づけているところです。
 もう一つの業務改善命令については、前上級副社長、もしくは社内の当時の認識からすると、総務省が業務改善命令を行う方向性は、そうした情報がなくても推測されており、こちらから求めるまでの情報でもありません。他方、前次官側からすると、よかれと思って先輩に情報を提供したのではないかということを報告書に記したところでございます。
【記者】
当時の次官と上級副社長の間での連絡頻度はどの程度だったのでしょうか。回数などわかれば。また調査してみて、そのやりとりはどの程度、明らかにできたとお考えですか。
【三浦弁護士】
今回問題となりました12月については、面談が1回と、13日から16日の携帯電話のやりとりが明らかになっております。調査の結果、面談と携帯電話での情報提供が確認できたところです。
【記者】
今回の調査報告書は、総務省の発表をただ「追認」するだけで、新しい事実はほとんどありません。今回の事案では、次官経験者が出身官庁への影響力を不当に行使したのではないか、との疑念を持たれたわけですが、そうした疑念を払拭することはできないのではないでしょうか。
【三浦弁護士】
総務省側が認定しているものについて、日本郵政グループ側として確かに聞いたのかどうかという事実、そしてその内容を明らかにすることを調査対象として調査を行い、当社として事実と認められるということでございます。不当な影響力については、調査対象として認識しておりませんので、推測での回答は控えたいと思います。
【社長】
昨年の暮れの経緯を見ておりますと、当社の鈴木前上級副社長は、公の場面でいろいろな問題についてお答えをするという形にはなっておりませんでした。したがって、今回の調査は公表を前提にして行っておりますので、前次官からこういったことについては情報提供を受けたということをお認めになったというところは、今回の報告書が明らかにした点だろうということであります。
 両者の関係については受け取り方がさまざまあると思いますが、両当事者とも次官経験者でもありますし、今回、前次官が情報を外に漏らすという、通常、あってはならない行為、現実には行われない行為について、私どもとしてはやれる範囲で、これまで明らかにされていなかったもう一方の当事者にいろいろ状況をお聞きして、どういうケースであったのか明らかにしたということです。それ以上、両者の間にどういうことが考えられるのかについては、それぞれの受け取り方かと思います。
【記者】
今回、ヒアリングされていらっしゃる日本郵便の髙橋亨前会長にはどのような責任があったのですか。年末の会見でもなぜお辞めになるのかどうしても理解ができなかったのでお教えいただけると幸いです。
【三浦弁護士】
前上級副社長から情報提供を求めたのかどうかという観点は、得た情報をもとに何らかの情報共有や、組織に対する指示があったのかどうかという観点から調査をしております。
 この観点で、長門前社長、植平前社長、横山前社長など、当時辞任された方々に対して、前上級副社長が、前次官からこうした情報があったという情報共有があったのかについて聞き取りをしました。辞任された高橋前会長に限らず、調査報告書に記載した経営層の方々には聞き取りをかけております。結果としては、そうした情報は聞いていないという回答でございました。
【記者】
日本郵便の米澤上級副社長にヒアリングを実施する一方で、同社の執行役員副社長であった大澤誠氏には実施していません。それはなぜでしょうか。ヒアリングの対象となった役員の選定基準はどこにあるのでしょうか。また日本郵政はヒアリングの対象の選定プロセスに関わっているのでしょうか。
【三浦弁護士】
ヒアリング対象者は、私が選定しております。代表権を有する方々を中心に、意思決定過程において、前上級副社長から指揮・命令を受ける可能性がある執行役などの部門長を対象としてヒアリングを行いました。除いた方について他意があるわけではございません。
【記者】
鈴木前上級副社長が、鈴木前総務事務次官から進んで情報提供をしていたと言ったのであれば、それを検証するために前次官へのヒアリングは不可欠です。本調査はこれで幕引きとせず、真相解明のために前次官への追加調査をすべきではないでしょうか。
【社長】
先ほどお答え申し上げましたが、前次官に調査を依頼する根拠を私ども民間会社は持っておりません。
 当社の前上級副社長や長門前社長等は退職しておりますが、以前は雇用関係を持っていたので、調査を依頼すれば協力してもらえるだろうということで調査を行ったわけです。きちんとした根拠がないと、民間企業としては、そういった調査依頼を行うことは難しいと、私は思っています。
 今回、総務省も、総務省として、しっかりとした根拠によって処分をされたということですので、その監察結果報告書を見て、確定された事実を前提に、私どもとしてはやれる内容を今回の調査で三浦弁護士に尽くしていただいたと、受け止めております。
【記者】
「所見」のところで「前上級副社長が前次官との間でこれらの情報を得たことを示唆するような言動や、これらの情報を得たことを踏まえた指示等の存在は確認できなかった」とありますが、調査報告の前倒し調整の指示は、これには該当しないのですか。また、前倒し要請の動機は「推測」の域にとどまっていますが、こちらは検証の必要なしと判断したのでしょうか。
【三浦弁護士】
日本郵政として調査を前倒しできるものであれば前倒しする。これは一般論として、そんなにおかしくない話だと思います。その示唆があったがゆえに、その可否を特別調査委員会や社内に尋ね、その結果、前倒しできるという結論に至り、調査結果を前倒しで公表したところは、特段、私は違和感はなかったので、そこについての深掘りした調査はしておりません。前倒し要請、もしくは前倒しの示唆といったものの理由は、総務省に聞くほかなく、当時、日本郵政としても前倒しできるものであれば前倒しするということで、12月末に予定していた調査結果について、前倒しできる可能性を尽くすというのは特段違和感がなかったことから、深掘りはしておりません。
【記者】
ショートメッセージが残存していなかったのはなぜでしょうか。本人が消去していたのでしょうか。容量の問題で消えていたのでしょうか。この間に、何回のメールのやりとりがあったのでしょうか。
【三浦弁護士】
まず、eメールを調べたと調査報告書にも書きましたが、前次官との間のeメールのやりとりはありませんでした。これは全件調べて、ないことを確認しております。
 そして、ショートメールですが、また違う文脈で日本郵政の関係者にヒアリングをかけておりますが、前上級副社長は、ショートメールは通常用いないということでした。
 そのような中で、今回、前次官から前上級副社長にショートメールでの情報提供があったと総務省の監察結果報告書にも書かれているところですが、内容は確認して消したということで、容量オーバーではなく、通常使わないもののため消したという説明でした。それは私も確認しております。
【記者】
総務省の先輩・後輩にあたる人は、今後、取締役など要職には就けないのでしょうか。
【社長】
その関係については、高市総務大臣が、国会の中でも、局長級以上の方が取締役に就くのは好ましくないということをお考えとして述べておられます。私もこういった大臣の考え方は、国会の中で申し上げましたが、重く受け止めておりまして、それぞれの取締役の適性を考えて、取締役の任命ということを考えていかなければいけないと思いますが、私は今の高市総務大臣のお考えがよろしいのではないかと思っております。
【記者】
今回の調査で、鈴木前上級副社長は、ヒアリングの中で、なぜ前次官が情報提供をしてきたのかという点について言及はありましたか。ないとすると、三浦弁護士が調査した見解として、この問題の根源は何だったと考えますか。報告書の末尾にある先輩・後輩の関係性が「暗黙の了解」として情報を融通する温床になっていたという結論でしょうか。改めてご説明をお願いします。また、鈴木前上級副社長へのヒアリングの実施期間と回数も教えてください。
【三浦弁護士】
まず、情報提供された理由、前上級副社長から見て、なぜ前次官が情報提供してきたのかという理由については分からないということでした。ショートメールで、パンと入ったという説明でした。
 次に、ヒアリング回数、期間ですが、これは2月から3月にかけて、2回実施しております。
【記者】
日本郵政グループと監督官庁との意見交換自体は重要だと思います。今後、どのような距離感を持って、臨んでいくことが望ましいと思いますか。
【社長】
意見交換自体は、常日頃からきちんとした意思疎通を図るため、重要だと思います。今回、問題になったのは、明らかに我々の業務について、金融庁からは業務停止命令が、そして総務省からは業務改善命令が間違いなく出されるであろうとお互いに思っていた、そういう時期に非常に近接したときに、最高幹部同士で行われた問題であるということです。ですので、通常の意見交換とは性格が大分違っているのではないかと思っております。
 したがいまして、一般論で申し上げますと、ご質問者のおっしゃるとおり、きちんとした意思疎通を図って、業務がいい方向に行くようなことを行うと同時に、一方で、やはり微妙な疑念を持たれるような時期に、何か通常の、一般的に行われる以上の機微に触れるものをいろいろとお互いに意見交換をするということは避けなければいけないと思います。これは、何か規則で決めるというよりは、その職に就く者の最終的には仕事に対しての誠意と良心によって、それぞれ判断していくべきものではないかと思います。この報告書の最後で、三浦弁護士からもご指摘をいただいたわけでありますが、やはり前上級副社長から、そういったことは控えるべきではなかったかというようなご指摘もこの報告書の中で書かれているわけですけれども、そうした自らを律するようなことを、会社の役員としては、そういう場面にあれば考えていかなければならないのではないかと思います。
 今回の場合には、かつて事務次官といういわゆる事務方の最高のポストにあった者が今度は監督される対象の会社の上級副社長になったということですので、それほど多くないケースの中で考えていかなければいけないと思いますが、いずれにしても、役所、役人としてのいろいろなビヘイビアの問題だとか、監督官庁とその監督を受ける民間会社の関係のあり方といったものについて、この報告書の意味するところを、よく考え、重く受け止めたいと思います。
【記者】
前次官からのショートメッセージはなぜ残っていなかったのでしょうか。ほかの内容も含め、前次官とのやりとりは削除されていたのでしょうか。具体的な状況を教えてください。もう1点、提供された情報の内容やその影響をもとに「前上級副社長が情報を求めたか」を認定していますが、前次官が前上級副社長から求められた情報は提供できず、かわりに別の情報をもたらしたという可能性は否定できるのでしょうか。
【三浦弁護士】
まず、ショートメールは削除したという回答でございました。別に前次官とのものだけでなく、前上級副社長のショートメールは何も残っておりませんでした。
 その結果の妥当性の検証のために、日本郵政グループ役職員、幹部の中でショートメールでのやりとりすることがあるのかといった観点で尋ねましたけども、一様にそれはないという回答でございました。むしろ、前上級副社長は、ショートメールは使わないのではないか、むしろ、eメールもなかなか使わないのではないかといった回答でございましたので、その情報については削除し、ほかにも何も残ってないといったことについては、一定の妥当性が認められるのではないかといったところでございます。
 次に、情報をこちらから求めたものではないといったところ、求めたのか求めてないのかというのは両当事者間のやりとりでしかありませんので、求めていないと言われてしまうと、それ以上調べようがないことになってしまいかねないですので、客観的な状況から見たその情報の価値、有用性、もしくはそれを受けた指揮命令といったところを調べさせていただいて、確かに情報の価値、もしくは求めたというところに値するものではなかろうという結論を下したところでございます。
 もちろん、さらに推測を重ねて、ほかにもっと提供したのではないかといったところも推測できるのかもしれませんが、関係者からのヒアリング、もしくは客観的なメール等々を調べたところでそのようなものが推測されるものはありませんでした。
【記者】
調査対象者が「前倒し」を調査する者に要請するということ自体、既に異常な状況だと三浦弁護士はお感じになられたでしょうか。
【三浦弁護士】
「要請」といった言葉はもしかしたら強過ぎるかもしれません。打診、可能性の打診だったのかもしれません。日本郵政としても、一般論として調査は可能な限り早くやるべきと考え、可能な限り早くやるつもりで調査していたようでございます。
 ただ、この文脈ですと、特別調査委員会の調査が終わらなければできません。ですので、その可否を含めて特別調査委員会に尋ねられ、年末ぎりぎりまで余裕を持っていたわけですけれども、18日であれば前倒しはできそうだという特別調査委員会の委員長からの回答を得て、前倒ししたといったところでございましたので、私としてはこの文脈、特段、違和感は持たなかったというのが正直なところでございます。
【記者】
衣川社長、千田社長の両人をはじめ、少なくとも旧郵政省出身の郵政グループ各社の役員(執行役員以上)にはヒアリングを実施するべきだったと思いますが、なぜヒアリング対象をここまで絞っているのでしょうか。今回のヒアリング対象者以外で、前上級副社長から情報を得たことを踏まえた指示や情報共有があった人物がいる可能性があると思いますが。
【三浦弁護士】
仮に前次官から得た情報が共有されるとすれば誰に共有されるだろうという文脈で考えております。12月当時、頻繁に社内でいろいろな会議が開催されていたわけですけども、鈴木前上級副社長とワン・オン・ワンでミーティングするとしたらこの人だといったところ、関係者からのヒアリングを含めて挙げたのがまず役員でございます。これ以外の方が鈴木前上級副社長と一対一で会議することはないであろうといった周りの方の説明も踏まえて設定しました。それに加えて、指示がなされるとすれば、経営企画部、広報部を含めた担当の方々、役職員だろうと、この二つの文脈でヒアリング対象者を設定しております。
 もちろん、無限に広がるところは広がりますが、例えば今名前を挙げられた千田社長と鈴木前上級副社長が一対一で会議しているはずとの情報もありませんでしたので、調査報告書に記載した方々をヒアリング対象者として選定させていただきました。
【記者】
先ほどの「総務省の先輩・後輩にあたる人は、今後、取締役など要職には就けないのでしょうか」という質問に対するお答えに関連して、総務省の方が日本郵政の取締役などに就くのではなく、総務省から日本郵政グループに移籍された方が取締役などに就く場合はどうなりますか。士気の問題もあると思います。
【社長】
取締役については、最高経営幹部ということで重要ですので、総務大臣の認可が必要になります。大臣のお考えでもございますが、監督官庁で局長級以上であって、いろいろな影響力を行使する関係にあった者が取締役に就くことは好ましくないといった考え方、私もそのとおりだと思いますし、その点は、少なくとも大臣がご自身の在職中はとおっしゃっておりましたけれども、私も当グループとして、こうしたお考えを守っていきたいということを申し上げました。
 それ以外のいわゆる執行役等については、それぞれの仕事の内容に応じて、高い専門性を持っている者がその執行にふさわしい役職に就くことが基本かと思いますし、バックグラウンドには多様なものがあっていいと思います。
 問題は、いずれにしても、監督官庁から人を迎えるときは、OBの再就職等に関する一定のルールにのっとって、おかしいものでないかどうかということだと思います。一般論として、総務省で、これまでどういう仕事をしてきた方なのか等々の専門性等が問われると思いますので、取締役以外については、ケース・バイ・ケースで考えて、そしてきちんとしたルールにのっとってやっていくことが必要ではないかと思います。
【記者】
前上級副社長が情報提供を受けた後も何も社内でアクションをとっていないことを、前次官側から情報提供があったことの根拠とされています。ただ前上級副社長が情報を基に単独で、政府・処分官庁、郵政に影響のある議員などに働きかけたことはないのでしょうか。
【三浦弁護士】
まず、スケジュールからお答えしますと、今回漏洩されたという情報は12月13日から16日にかけてといったところが認定されております。そして、先ほどご説明したとおり、18日に日本郵政は記者会見をし、他方で並行して前次官の処分の手続きが進み、20日に辞任といったところでございます。
 この短期間内に前上級副社長が単独でアクションを取った可能性まで否定するものではありませんけれども、調査の過程において、それらを推測、推察するようなものがあったかと言われれば、ありませんでした。
【記者】
前次官からのショートメッセージに対し、前上級副社長はどのように返信していたかはヒアリング調査していますか。2点目として、返信があったとすれば、その中で前上級副社長が何か指示や追加の依頼をしていたということはないのでしょうか。
【三浦弁護士】
現物が残っていないわけですが、返信したのかと言われれば「了解」といった単語で回答した記憶はあるといった回答でございました。言い替えれば、そこで追加の情報提供を依頼したとか、そういったものがなされたことはないという説明でございました。
【記者】
調査結果公表の12月18日への前倒しは、日本郵政では最終的にいつ決めたのでしょうか。
【三浦弁護士】
私の手元に資料がありませんが、特別調査委員会からの結果報告、そして、取締役会のセッティング等々が終わったところでの公表だったと記憶しております。

(※記者会見における発言及び質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)