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2020年1月9日 木曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2020年1月9日 木曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 代表執行役社長 増田 寬也
日本郵便株式会社 代表取締役社長兼執行役員社長 衣川 和秀
株式会社かんぽ生命保険 代表執行役社長 千田 哲也
【日本郵政社長】
1月6日付で日本郵政株式会社社長に就任をいたしました増田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 昨年判明をいたしましたかんぽ商品の募集に係る問題について、契約乗換等により、お客さまの信頼を裏切り、契約者の皆さまに不利益を発生させてしまったことを深くおわびを申し上げます。速やかに調査を進め、不利益を一刻も早く解消することにより、信頼を一歩一歩回復してまいります。
 昨年暮れには、日本郵政、日本郵便、かんぽ生命は、金融庁と総務省から大変重い行政処分を受けました。今回の問題は日本郵政グループ全社にとりまして、創立以来最大の危機であると受けとめております。繰り返しになりますが、一刻も早く全容を解明して、お客さまの不利益を解消し、二度とこのようなことを起こさないような再発防止策を講ずるとともに、一歩一歩信頼を回復していかなければならないと思っております。そのためにも、グループ役員、社員全体できちんと危機感を共有し、緊張感を持ち、やるべきことに取り組む必要がございます。今、我々がうつむいて立ちどまっていてはなりません。愚直にやるべきことに取り組むことが必要であると思います。愚直に、そして誠実に、お客さまの期待に応えていく。謙虚にお客さまの声を聞きながら、やるべきことに取り組む。そして、常に感謝の気持ちを忘れない。
 我々は、郵便局をご利用くださっておられるお客さまの生活全体を支える存在でなければいけないと思っております。愚直に、そして誠実に、謙虚に、感謝の気持ちを忘れずに、常にこれからも進んでいかなければならないと思います。
 先人の言葉でありますが、世阿弥の言葉に、折あるごとに古い自己を断ち切り、新たな自己として生まれ変わらなければならない、というものがあります。これは初心という言葉に彼が思いを込めた言葉でありますが、今まさに新しい日本郵政グループとして、我々は生まれ変わらなければならない時期であると思っております。
 当社にとりましてのニュースには、当社にとってよいニュースと悪いニュースがあると思いますが、悪いニュースこそ、すぐに共有し、それをどうやって克服できるかを考えてまいります。悪いニュースこそアンテナを高くして、皆で解決に取り組む、ぜひそのことに心がけていく所存でございます。
 最後に、当社は上場企業でありますので、当社の評価は大勢の株主が評価をされるわけでございます。したがって、今まで以上に外部の目線を取り入れて成長していかなければならないと考えます。
 なお、総務省の情報漏洩問題につきましては、現在、しかるべき調査を行う準備を進めているところです。
 今申し上げました危機感を共有して、この事態の解決を図ってまいります。
【日本郵便社長】
1月6日付で日本郵便株式会社社長に就任をいたしました衣川でございます。
 昨年、日本郵便はかんぽ商品の募集に係る問題により、お客さまの信頼を大きく損なうことになりました。お客さまをはじめとする関係の皆さまにご迷惑、ご心配をおかけしておりますこと、深くおわび申し上げます。
 年末には、金融庁および総務省から業務改善命令および3か月間の業務停止命令といった厳しい処分をいただきました。まさに増田社長の年頭挨拶にありましたように、創立以来最大の危機と認識しており、私といたしましても、郵便局に対する信頼を一日も早く回復させるために、業務停止命令に確実に対応することはもちろんのこと、再発防止のため実効性のある対策を業務改善計画として策定することを最優先の課題として取り組んでまいります。
 信頼回復に向けて、まず業務停止期間中に再発防止策の徹底を図りたいと考えており、かんぽ生命と協力して、研修や重層的なチェック体制の構築を実施してまいります。
 その上で、営業目標については、2020年度には販売額を重視したものから、保険料の純増額をベースとしたものへの見直し等を実施してまいります。
 また、手当についても契約乗換に係る手当を不支給とし、渉外社員の基本給について手当の割合を見直すといった措置を実施してまいります。
 さらに、お客さま情報の一元管理、お客さまのご意向確認の強化、コンプライアンス、監査部門の機能の充実等を実施した上で、郵便局社員がお客さまの目的に合った商品およびサービスを提供していくといった、お客さま本位のコンサルティングサービスを順次展開してまいります。
 一方、郵便・物流部門では、上半期、最高益を上げることができましたが、郵便の取扱量は年々下がり続けており、決して楽観できるものではありません。取り組むべき課題は山積していると認識しております。これらの課題の改善は一朝一夕で達成できるものではありません。日々の取り組みを積み重ねて、着実に課題の改善を達成してまいりたいと考えております。
 今回の不適正募集の事案に関し、特別調査委員会からリスク感度の低さを指摘されました。本社は指示を出して終わり、それを運用するのは支社、郵便局という意識を払拭していかなければならないと思っています。かんぽ営業の問題に限らず、お客さまに日々接している郵便局の社員の皆さまの声に耳を傾け、グループ各社との連携をとりながら、組織風土を変え、風通しのよい会社をつくっていきたいと考えております。困難な道のりではあると思いますが、まず、お客さまからの信頼回復を目指し、日本郵便が新たに生まれ変わるスタートの年にできるよう、私が先頭に立って、役員、社員の皆さまやグループ各社と力を合わせ、全力で取り組んでまいりたいと考えております。
【かんぽ生命社長】
1月6日付で株式会社かんぽ生命の社長に就任いたしました千田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 重ねてではございますけれども、弊社商品の募集に係る問題に関しまして、今般、行政処分を受けるに至ったことを深く反省するとともに、お客さまをはじめ、多くの関係者の皆さまにご心配とご迷惑をおかけしておりますこと、改めて深くおわび申し上げます。
 引き続き、お客さまからの信頼を回復するための調査と改善策の対応を確実、迅速かつ丁寧に実施し、今後、二度とこのような事態を起こさないよう、再発防止に向けて、内部管理体制のより一層の強化とコンプライアンスの徹底に取り組んでまいります。
 一度失ったお客さまからの信頼の回復は簡単ではなく、長い道のりになると思いますけれども、まずは現在進めている調査やお客さまの不利益解消をやり遂げるとともに、昨年末に受けた行政処分にしっかりと対応し、信頼回復に向けて何が大切かをしっかりと見きわめながら、一歩一歩着実に前に進めてまいりたいと考えております。
 また、当社は今後の再生に向けて、日本郵便と連携をし、郵便局、そしてその先にいるお客さまを何よりも大切にする、真にお客さま本位の組織に変わっていかなければなりません。お客さまとの接点である郵便局をはじめ、日本郵政グループ一体となって、お客さまを何よりも大切にする組織をつくるためにも、増田社長、衣川社長ともしっかりコミュニケーションをとりながら、改革を進めてまいりたいと思います。
 また、当社が新しいかんぽ生命として生まれ変わっていくためには、これまでの問題点にしっかりと目を向け、反省しなければいけないと思っております。これまでのガバナンスの問題、リスク感度の低さ、また、社員、郵便局との情報共有が十分でなかったということをしっかりと反省をし、まずは社員間の情報の目詰まりを解消し、情報共有の基盤づくりを行います。社員全員が同じ問題意識を持ち、同じ方向に向かって努力できるようにすることが、その先にいるお客さまを大切にすることにつながります。これが、我々のよりどころである「お客さまの信頼回復」の第一歩だと思っております。
 本当に厳しい状況ではありますが、我々社員が多くの先輩たちと、これまで必死の思いで築き上げてきたかんぽ生命です。お客さまからの信頼を回復し、かんぽ生命の再生を実現していくことこそ、私に課された使命と考えております。責任の重さに身の引き締まる思いでございますけれども、新しいかんぽ生命をつくり上げていけるよう、全役職員の先頭に立ち、全力を挙げて取り組んでまいります。
【記者】
増田社長にお伺いいたします。本紙の取材において、年齢制限や加入限度額を超えた高齢の顧客に、孫や子供を被保険者にして保険に加入させる事案が相次いでいることがわかりました。孫が死亡した際に、高齢者が保険金を受け取るといった不自然な保険契約となっており、顧客からは、孫が亡くなって多額の保険金を受け取る保険を希望するはずがないとの苦情が出ています。こうした契約は特定事案調査の対象となっておりませんが、今後、重点的に調査をするお考えはありますか。
【日本郵政社長】
特定事案調査の対象とならない問題事案について、全ご契約調査から類型化できるものは別途調査を行ってまいります。具体的な類型については今後検討してまいります。また、特定事案調査以外の調査について、優先度を上げることをこの場でお伝えいたします。
【記者】
再発防止策について、増田社長から「こうしたことに取り組みたい」という具体策について、お話しいただけませんか。
【日本郵政社長】
12月27日に公表いたしました再発防止策は、特別調査委員会からの提言を受けてまとめられたものと理解しておりますので、これは必ず行ってまいります。
 今月末に業務改善計画を金融庁および総務省に提出することになっています。これは、行政処分に対する必要最小限の取り組みで、マイナスからゼロに戻すものと認識しています。さらにプラスに転換できるように、コンプライアンスの確立、ガバナンスの整備に取り組みます。具体的な計画は、外部専門家にもご参加いただき、今後検討してまいります。
 「お客さま本意のサービス提供」や「トータル生活サポート企業グループ」などの理念を、社員一人ひとりに自分事として考えていただくには、さまざまな方法で取り組まなければならないと思っております。
 総体として、外部専門家の知見や信頼失墜から立て直した企業の知見を取り入れる形で取り組んでまいります。
【記者】
郵政民営化委員長をされていた際は、政府の関与を薄めて規制緩和をしていくべきとの所見をお持ちでしたが、今のお話は再発防止などの守りの話が中心でした。ご自身の役目として再発防止までとお考えなのか、持続的な成長路線をつくるところまでとお考えなのか、今のお気持ちをお教えください。
【日本郵政社長】
今は足元をきちんと固めることに専念したいと思っております。その後、成長路線を描くところまで私が担当するかどうかは、取締役会が判断することです。ご指摘の成長路線は2013年~2016年に私が郵政民営化委員長を務めていた際に、株式上場に向けて考えたもので、現在とは状況が違うと認識しています。
【記者】
昨年末に就任が決まって以降、増田社長を中心とした新体制が、新年の走り出しに向けてどのような準備をしてきたのでしょうか。
 また、年頭挨拶で「悪いニュースこそ、すぐに知らせていただきたい」と呼び掛けていますが、その浸透に向けた具体策についてお教えください。
 加えて、今回のかんぽ商品の募集に係る問題において、法令違反・社内ルール違反を犯した現場社員は当然ペナルティーを科せられるべきだと思いますが、そこに追い込んだ管理職に対するペナルティーがないことに対して、現場から不満の声が多く上がっています。その点は、どのように対応するお考えなのでしょうか。
【日本郵政社長】
1点目の質問に回答いたします。走り出しに向けた準備として、社長直下のタスクフォースを立ち上げました。陣容が完全に整った訳ではありませんが、今後外部専門家を入れるなど充実させ、やるべきことを決めてまいります。
 2点目の質問に回答いたします。社員に対して「悪いニュースこそ、すぐに知らせていただきたい」と呼びかけましたが、悪い報告を真っ先に上げてくる社員を私たち幹部が評価していくことで、浸透させたいと思っております。
 3点目の管理職に対する責任について回答いたします。現場の不祥事に関して、管理職がどのような関与をしたのかを明らかにする必要があります。組織の中で不公平感が出ないように考えてまいります。
【記者】
不適切な販売を黙認し、現場の実態が経営層に上がらず、適切な販売方法が徹底されないという組織風土は、3か月で改善することが難しい根深い問題だと思います。販売再開にむけて、どのように改善させるつもりなのかについてお教えください。
【日本郵政社長】
信頼回復には非常に長い月日がかかります。最初からそれを許容するわけにもいきませんので、具体的に実施できる施策を示していきます。タスクフォースやこれまでとは異なる通報窓口の整備など、姿勢と形を整備して柔軟に運用することが、組織風土全体の改革には必要だと思います。また、取締役会を活用するために、執行側がきちんと機能して情報を上げていくことが重要だと考えています。
【記者】
販売を再開できる体制を整えるために、何が必要だと思いますか。
【日本郵政社長】
販売再開のことは、今は考えておりません。今は危機意識を共有して、再発防止策を進めていきたいと考えております。後のことは、その時に考えたいと思います。
【記者】
前任の長門社長がカバナンス問題について、それぞれが指名委員会を持ち、社外取締役が複数いる事業子会社に対して、持株会社としてどこまで関与するのかが課題との発言をされています。増田社長は持株会社としてどこまで踏み込むのか、持株会社の役割についてお考えをお聞かせください。
 また、これまでご経験された行政の世界ではなく、上場企業の執行役社長を担うことに対するご自身の思いをお聞かせください。
【日本郵政社長】
平常時と危機管理時では、持株会社の役割は異なると思います。平常時は、国民にサービスを提供する事業会社3社が自由に創意工夫を行い、適切な対価をいただくことが本来のあり方だと思います。利益相反の調整などを除き、持株会社が口を挟む必要はありません。危機管理時は、グループ全体の企業価値が毀損していますので、持株会社として大きな方向感を考えていくことが重要だと思います。今はその時だと認識しています。
 2点目の質問について回答いたします。ご指摘のとおり、上場企業のマネジメントの経験はございませんが、危機管理という意味では、官民に大きな違いはないと思います。今やるべきことにきちんと取り組むことが重要です。その先については、外部の専門家の知見など足りない部分を補って行かなければならないと考えています。
 与えられた使命ですので、一刻も早くお客さまの不利益を解消すべく、両社長と協力し誠実に取り組んでまいります。
【記者】
最初に増田社長にお伺いいたします。先ほど、「今は危機管理時」であり「足元をきちんと固めることに専念したい」との発言がございました。これは、民営化の推進を止めるとの意味なのでしょうか。
 次に千田社長にお伺いいたします。かつて千田社長は「かんぽ生命の一番の強みは地域の高齢者からの信頼だ」とおっしゃっておりました。高齢者の信頼が根本から崩れた今、営業手法を見直すお考えがありますか。
 最後に衣川社長にお伺いいたします。40万人の組織の中で一番の大所帯の会社で、旧全特といわれる全国郵便局長会や、日本最大の単組であり産別であるJP労組を抱えています。春闘への対応および郵便局長への対応についてお考えをお聞かせください。
【日本郵政社長】
1点目の質問に回答いたします。郵政民営化は確実に推進しなければならないと思います。今は不祥事が発生しておりますので、民営化推進以前に組織形態を整えることが必要となりますが、本来は早く株式を売却し、市場に評価していただくことが国民サービスの改善につながると思います。
【かんぽ生命社長】
2点目のご質問に回答いたします。ご指摘のとおりかんぽ生命の強みは1千9百万人のお客さまにあり、60~70代の女性が多い状況です。大切なお客さまの信頼を失っていることに経営陣一同がしっかりと反省をしなければいけないと思います。今回の問題が起こる以前から、ご高齢の契約者さまにお申し込みいただく際にご家族にご同席いただくなどの営業手法の見直しに取り組んでまいりましたが、十分でなかったと反省しています。私どもとして出来る限りの再発防止策に取り組み、お客さまの不利益を解消することが必要です。それなしに営業手法の話に行き着かないと思っております。時間がかかると思いますが、優先順位を決め、まずはお客さまの信頼回復に努め、その後に営業手法について考えていきたいと思います。
【日本郵便社長】
3点目の質問、大きな会社をどのように運営するのかということについて、お答えいたします。関係者とよく話し合い、問題意識を共有していくことに尽きると思います。一例として、全国郵便局長会とJP労組を挙げていただきましたが、日本郵便を経営していく中で、各支社がエリア特性を持っており、郡部と都市部は経営課題が異なっています。関係者とよく話し合い、社内の風通しを良くして、愚直に一つひとつの問題を解決してまいりたいと思います。
 春闘はこれまでもグループ一体で取り組んでまいりましたので、増田社長のもと、持ち株会社とも相談をして、円滑に交渉を進めてまいりたいと考えております。
【記者】
今回かんぽ商品において不適正契約が大量に発見されたことは、民営化の推進に何らかの影響があると思いますか。保険については多様な商品開発が出来ない中、低金利環境下で商品魅力が低下し、貯蓄性商品が主力である状況は変わっていません。今後どのような販売戦略を立てるのでしょうか。
 また、民営化とユニバーサルサービスという、利益と公共性の両立が求められる難しい経営だと思います。他の金融機関では支店の統廃合を行っていますが、郵便局において、局舎の統廃合やアウトソーシングなどの効率化に踏み込むお考えはないのでしょうか。
【日本郵政社長】
1点目の質問について回答いたします。低金利環境下でかんぽ商品の魅力が薄れているのは事実だと思います。私どもは半官半民の組織で、法律上の上乗せ規制もあります。これは国営から民営に移行する企業が経なければならない移行期間によるものです。私は民営化を推進していくべきだと考えており、今回の問題を民営化そのものの問題に帰着して考えるべきではないと思います。
 2点目の質問である郵便局ネットワークについて回答いたします。日本は2040年を過ぎると驚くほど人口が減少し、自治体が行政サービスを維持することが難しくなる状況に直面します。そうした時間軸で未来永劫ネットワークを維持することはあり得ませんが、農協や地銀が支店を維持することが難しい昨今、私ども郵便局のユニバーサルサービスを充実させることで、役所や郵便局がさまざまなサービスを提供する拠点になれると思います。郵便局は地域を支える存在でなければならないと思っています。よって、今はネットワークの価値を向上させることや、働く人がより質の高いサービスを提供するマインドを持つ取り組みを進めるべきだと考えています。
【記者】
魅力の乏しい商品で今後の経営が成り立つのかという点についてお伺いいたします。加えて、ネットワークの必要な効率化に踏み込まないのかという点についてお伺いいたします。
【日本郵政社長】
今与えられた状況の中で、今ある商品を販売していく以外に方法はありません。民営化が進み金融2社の株式を売却することで、魅力的な商品を持つための自由度を得ることが出来ます。よって今は足元を固めたいと思います。株式を売却して市場の評価にさらされることで、状況も変わると思います。
 ネットワークについては、単にコスト合理性だけではなく、企業価値向上の側面からも考える必要があります。公共性の高いサービスを提供することで、地域から支持されるものは残すべきです。こうした議論は十分に整理されていないため、ビジョンを持たずにネットワークに手をつけることは危険だと感じています。よって、今のネットワークの維持を前提として、それ以外の問題から企業価値向上を考えるべきだと思います。
【かんぽ生命社長】
1点目の質問については、増田社長と同様に感じています。今般のかんぽ商品の募集品質に係る問題と民営化推進は完全に別次元の話だと思います。民営化の推進とは別次元の問題として、お客さまの信頼回復が本当に大事だと思っており、しっかり対応していきたいと思います。
 また、商品の魅力が乏しいとのご指摘がありましたが、お客さまの信頼回復なしに新商品を発売しても、販売成績にはつながらないと思います。よって優先順位を決め、まずは信頼回復に取り組むことが必要です。その上で一番大切な1千9百万人のお客さまと5万7千社の法人のお客さまをどう守るかについて、足元を固めることが重要です。その先に私どもの再生の道が見えてくると思っております。私どもの商品は、現在の低金利環境下においてはお客さまに魅力がないのかもしれません。民営化を推進して経営の自由度を高め、将来的にはさまざまなバリエーションの商品を持ちながら営業していくことが正攻法です。しかし、信頼回復と同時に商品開発を行うことで全てを失うことを危惧します。自戒の気持ちを込めて、社員に「焦るな」と話しております。優先順位を決めて、やるべきことを順番に足元を固めながら進んでいきたいと思っております。
【日本郵便社長】
私から郵便局ネットワークについてご説明いたします。基本的な考え方は、増田社長と同様です。郵便局は、私ども日本郵政グループとお客さまとの大切な接点で、グループ最大の資産だと考えております。したがって郵便局ネットワークの維持を前提に、増収策や経費節減策を考えていく必要があると思っております。
【記者】
千田社長および増田社長にお伺いいたします。去年7月から積極的な営業を自粛し、昨年末に金融庁から行政処分を受けました。このことによる業績への影響についてどうお考えでしょうか。
 続いて増田社長にお伺いいたします。現在の日本郵政グループにおいて、金融2社の収益が多くを占めている状況についてどうお考えでしょうか。仮に見直しが必要との認識であれば、どのような見直しをお考えでしょうか。
【かんぽ生命社長】
新規契約を獲得できないことで、直ちにかんぽ生命の経営が打撃を受けることはありません。新規契約を獲得しないことで、日本郵便に支払う販売手数料も減少します。一方で既存契約からの収益は毀損しているわけではないことから、今すぐに経営に問題が生じる状況ではありません。業績も上振れしていることは以前にご説明したとおりです。
 一方でこの状況が継続すると、保有契約が減少し、コストが占める比率が高くなります。先ほど申し上げたようにV字回復をしようとすると、すべてを失うことになると思いますので、会社の体力を考えながら、どのような時間軸の中で経営を回復させていくのかを考える必要があると思います。
【日本郵政社長】
日本郵政グループにおいて金融2社が経営を支える構造を、今、変えていく考えはありません。金融2社においては、低金利環境下でさまざまな課題があります。それは、他の金融機関や生命保険会社と同様の問題で、運用力を高めることです。日本郵便は、物流分野での成長や、既に取り組みは始まっていますが、地域における信頼を背景とした新たなビジネスを広げることが課題です。これらの課題にきちんと取り組むことで、日本郵政グループを運営していきたいと思います。今回のかんぽ商品の募集に係る問題を終結させることが出来れば、金融2社は株式を売却して自立させることが可能になります。しかし、日本郵政グループにはこれまで一体的に事業を行ってきた長い歴史があり、株式保有に頼らなくても、お互いの信頼感にもとづく強い連携が可能だと思います。それぞれの事業会社が創意工夫をしながら企業価値を高めていくことを考えてほしいと思います。
【記者】
増田社長にお伺いいたします。かんぽ生命のご契約調査において、全ご契約調査の進捗が遅れています。いつ頃までに結論を出すおつもりなのでしょうか。また、遅れを挽回するためのアイディアをお持ちでしたら教えてください。
【日本郵政社長】
全ご契約調査の中で特に急ぐ必要があると思われる領域については、これを定め、追加調査を急ぎたいと思います。調査体制につきましては、今の体制に外部リソースを加えることなどを想定しておりますが、具体論は社内で検討してまいります。
 特定事案調査につきましては、3月までに可能な限りご契約者さまのご意向に沿った形で解決を図りたいと考えております。
【かんぽ生命社長】
全ご契約調査について、「契約を無効にしてほしい」といったものから、一般的なお叱りや「契約内容を教えてほしい」といったものまで、お客さまからさまざまなご回答をいただいております。急ぐ必要があるものは、基本的に1月中にお客さまにご連絡をすることにしています。それ以外のものは、3月をターゲットとしながらしっかりと対応していきたいと思います。ただし、お客さまの不利益解消には相当時間がかかるものも出てくると思います。極力早く実施したいと思っておりますが、丁寧さを欠くことのないようにお客さまに寄り添いながら取り組んでいきたいと思います。
 また、特定事案調査の外側にある問題事案については、先ほど増田社長から説明があったとおりです。金融庁からの行政処分の中に記載されているものやそれ以外のものについても、能動的に調査を行いたいと思っております。具体的な内容は、1月末に行政処分に対して業務改善計画を報告する予定ですので、その中で発表したいと思います。
【記者】
昨年末に発覚した総務省情報漏洩問題についてお伺いいたします。長門前社長は、退任会見の場で、調査はしないとおっしゃっておりましたが、調査を行うとの理解でよろしいのでしょうか。なぜそのように判断されたのでしょうか。また、既に前上級副社長は退任されていますが、調査は具体的にどの範囲まで行うお考えなのかお教えください。
【日本郵政社長】
情報漏洩問題の調査は、当社において官民癒着が起きていることで、本来の民間企業としての企業価値が毀損しているのではないかと考え、実施することにしました。調査の具体策については現在検討しているところです。まとまり次第発表させていただきます。
【記者】
増田新社長を含めて3社長が総務省に関係がある方です。官民癒着という点に関して、国や政府との距離感をどのようにお考えでしょうか。
【日本郵政社長】
法律上は政府から監督を受けており、国は株主という関係です。そうした中で社員は旧郵政省採用者が多くを占めておりますが、仕事は仕事として官民癒着とならないようにしたいと思います。
【記者】
増田社長に就任の経緯についてお伺いいたします。日本郵政の社長人事は年末に一気に決まったようですが、増田社長は、いつ、誰から、どのような打診があったのでしょうか。また打診を受けた際の心境について教えて下さい。一部報道によると一度断られたとのことですが、葛藤や経緯も含めてお教えください。
【日本郵政社長】
人事の話は、「指名委員会で指名されて取締役会で決定した場合、社長を引き受けるおつもりがありますか」とのお話をいただきました。大変難しい会社ですので葛藤もありました。外側からしか見たことがなく、私自身がふさわしいかとの逡巡もありましたが、引き受けた以上は、全力投球をするということで頭を切りかえています。ギリギリのタイミングで話があり、総務省の次官が情報漏洩問題で退任された事件を見て、民間に引き受ける方はいないと思いました。今は40万人の社員の先頭に立って、かんぽ商品の募集に係る問題を克服し、社員に勇気を与える存在としてリーダーシップを発揮し、難局を乗り越える覚悟です。
【記者】
 「外側からしか見たことがない」とのお話でしたが、就任されて数日の間、組織を中から見て、問題と感じることはありましたか。
【日本郵政社長】
社外の方々への挨拶などもあり、やっと就任会見ができる程度に各社の社長とすり合わせをしたところです。今後、多くの人と仕事をこなしていくために人間としての信頼感を築くことが重要です。トップとして丸裸で全員から見られる覚悟を、社員にどのように伝えればよいのだろうかとの思いはあります。私は組織規模5千人程度の岩手県知事および総務大臣を経験しましたが、40万人のグループのトップの経験はありません。就任4日目ですが、そうしたことを感じています。
【記者】
増田社長にお伺いします。人口減少社会の中で、郵便局が地方自治体や地元企業と連携して地域再生の動きを進めていると思いますが、会社からのバックアップが小さいとの意見を耳にします。そうしたことについてお考えをお伺いいたします。
【日本郵政社長】
現時点で実態を詳細に把握できておりませんので、現場を回る中で多くの方から意見を聞きたいと思います。郵便局も簡易局など種類があり、地域連携の形も様々だと思います。衣川社長のお考えもお聞きしながら、どのようなことが必要なのかを検討してまいります。
【記者】
増田社長にお伺いします。日本郵政グループは、不祥事が起こる以前から金融事業においても物流事業においても成長ストーリーが描けていません。先ほど「今は足元をきちんと固めることに専念したい」とのお話がありましたが、時間軸として1~2年程度は、前向きな成長ストーリーが描けない経営が続くのでしょうか。
 また、中期経営計画の見直し等について、お考えをお伺いいたします。
【日本郵政社長】
会社の成長ストーリーは、語るべき時期に公表したいと思います。監督官庁から業務停止命令を受けている今、投資家向けに夢を語っても信頼を失う結果となるだけです。投資家や市場の方も、足元を固めるべきとの声が多数だと認識しています。
 中期経営計画については、グループ各社とよく議論したうえで適切に対応してまいりたいと思います。
【記者】
増田社長にお伺いいたします。特別調査委員会の調査は、日本郵政側から求められていないため個々の経営陣の責任は扱わない、としています。今後、こうしたテーマについて、調査を求めるお考えはありますか。
 関連して、日弁連のガイドラインで定められた第三者委員会は調査の範囲自体を自ら決めることができるとしています。今後、特別調査委員会とは別に第三者委員会を設置するお考えがありますか。
【日本郵政社長】
特別調査委員会とは別に第三者委員会をつくることは考えておりません。前経営陣が調査を依頼した際の経緯は存じませんが、委員会の先生方が、ご経験を踏まえてきっちり調査を行っていたと認識しております。また、調査委員会は継続しており、今後追加調査もされると思います。よって、事業の改善計画は特別調査委員会の調査報告書を前提に作成してまいりたいと考えています。
【記者】
個々の経営陣の責任について調査はされるのでしょうか。
【日本郵政社長】
昨年12月27日、前経営陣が会社としての経営責任を明らかにしたと思っております。
【記者】
スルガ銀行のケースなどは、第三者委員会が個々の経営陣の関与や責任について明らかにしたと思います。それが真の全容解明につながると思いますが、個々の経営陣の関与や責任は問わないというお考えなのでしょうか。
【日本郵政社長】
前経営陣は調査委員会に委ねるのではなく、自ら退陣や減給等を決めることで、昨年末に経営責任の問題を整理していると認識しています。
【記者】
金融庁が命じた3か月の業務停止後、先ほど増田社長からご説明があった、全容解明、お客さまの不利益の解消、再発防止策という3点が道半ばの場合、営業再開を優先するお考えなのでしょうか。あるいは、業務停止期間にこだわらずこれら3点の完了を優先するお考えでしょうか。
【日本郵政社長】
先ほどご説明した3点は、3か月間の業務停止期間とは関係なく、出来るだけ早く進めてまいりたいと思います。
 営業再開時期については、改めて考えてまいります。
【記者】
増田社長と衣川社長にお伺いいたします。投資信託は元本保証がなく、販売も難しいと思います。かんぽ商品にこれだけ多くの不適正募集が発見されている中で、投資信託の販売体制についてどのような認識でいらっしゃるのかについてお伺いいたします。
【日本郵政社長】
投信販売についても、かんぽ商品の募集に係る問題と同様の感度で受け止めて対応してまいります。具体策について議論が出来ておりませんが、同様の問題が起こり得る前提で考えていく必要があると思います。
【日本郵便社長】
増田社長と同様に考えています。現在ご高齢者22万人のお客さまに対してアフターフォローを実施しているところです。今のところ大きな問題はないと認識しています。
【記者】
先ほど、今は成長戦略を提示できないとのご説明がありました。そうした場合、政府が計画している日本郵政株式の売却が出来ないことになると思います。成長戦略を提示して株式売却が可能となる時間軸について教えてください。また、現在の日本郵政の株価は千円強であり、2015年の最高値と比べて半値程度です。約60万人の株主を放置することになる点もあわせてお考えをお聞かせください。
 加えて、増田社長は以前郵政民営化委員会の委員長をされておりましたが、親子上場のリスクについて現時点のお考えをお聞かせください。
【日本郵政社長】
1点目の質問について回答いたします。日本郵政株式の売出しは私どもが決定する事項ではありませんが、今の時点で日本郵政の株式売却が可能となる時間軸を明示することはできないと思っております。ガバナンスやコンプライアンスの確立を急ぐあまり中途半端な結果となることで、かえって株主の皆さまの期待を裏切ることを危惧しています。日本郵政グループの価値をご理解いただいている方だからこそ、期待に応えたい思いが強くありますので、株価はもちろん、配当も確保してまいります。今は業務停止命令を受けておりますので、再発防止策を講じ、第三者にモニタリングしていただくなど、世の中に評価していただくことが大事だと思っております。
 2点目の質問について回答いたします。以前、郵政民営化委員会においても親子上場の問題点の議論があったと記憶しております。現実に親子上場されましたので、市場の評価について私どもが申し上げることはございません。日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命のそれぞれが、市場の評価の中で少しでも投資家の皆さまの期待に沿えるように企業価値向上策を考えていくべきだと思います。
【記者】
衣川社長にお伺いいたします。衣川社長はかんぽ生命で人事畑の経験が長く、郵便・物流事業に携わってこられなかったとのことです。横山前社長にとっての高橋前会長にあたる指南を仰ぐ方がいない中、どのように経営のかじ取りをするおつもりでしょうか。特に業績不振のトール社をはじめとする企業間物流の分野において、どのように経営のかじ取りをするおつもりなのか、お教えください。
【日本郵便社長】
ご指摘のとおり、郵便・物流事業の業務経験はほとんどございません。米澤上級副社長や諫山副社長とよく相談しながら、進めていきたいと思っております。愚直に、誠実にやらせていただきたいと思っております。
【記者】
トール社が業績不振にあり、日本郵便として企業間物流が伸び悩んでいることについて、今後どうしていきたいとお考えですか。
【日本郵便社長】
概略は承知しておりますが、就任数日ということもあり、かんぽ商品の募集に係る問題から取り組んでおります。よってトール社の業績回復についての具体策や、今後の企業間物流の戦略についてお答えできる状況には至っておりません。
【記者】
衣川社長の役割はかんぽ商品の募集に係る問題がメイン業務で、郵便・物流分野は関わらないということでしょうか。
【日本郵便社長】
金融窓口業務、郵便・物流業務、国際物流業務の全てが責任範囲だと思っております。優先順位として、かんぽ商品の募集に係る問題から着手せざるを得なかったということです。郵便・物流業務や国際物流業務についても、早急に現状を把握して、関係者と対応策を練りたいと思います。
【記者】
3か月間の業務停止が終わるまでは、郵便・物流業務に着手されないということでしょうか。
【日本郵便社長】
そうした意味ではありません。郵便・物流事業にせよ国際物流事業にせよ、事業は毎日動いていると認識しています。まもなく来年度の事業計画を作成する必要がありますので、その中で社内議論をすることとしており、3月まで何もしないということはありません。まだ就任数日であり、かんぽ商品の募集に係る問題から着手したため、それら事業について深い議論ができていないということです。早急に着手し、一つひとつ答えを出していきたいと思っております。
【記者】
衣川社長にお伺いします。長期的なスパンにおいて、地方創生ビジネスが三事業に次ぐ第4の柱となる可能性についてどのようにお考えですか。
【日本郵便社長】
先ほど増田社長から、「郵便局がさまざまなサービスを提供する拠点」となり得るとのお話がありました。直ちに第4の事業として柱となり得るかについて確信を持つところまで至っておりませんが、可能性として模索していかなければならないと思っております。規模は小さいものですが、さまざまな取り組みが始まっております。これらの事業拡大の余地や社会的な意義などについて考えてまいりたいと思います。
【記者】
増田社長と衣川社長にお伺いいたします。監督官庁から乗合保険代理店として、「コンプライアンス・顧客保護の意識を欠いた組織風土」や「脆弱な募集管理態勢」との指摘を受けています。そうした代理店がかんぽ商品以外の保険商品の販売を継続していることについて、問題がないとお考えでしょうか。販売を自粛しない理由についてお教えください。
【日本郵便社長】
監督官庁から厳しい指摘をいただいていることはご指摘のとおりです。かんぽ商品の募集管理体制を構築することで他の商品にもよい影響が及ぶと考えており、全体的な底上げを図ってまいります。
 がん保険や自動車保険といった提携金融商品については、委託元との間に不適正募集が発生しない仕組みが構築されている商品は、通常どおり販売を継続させていただいております。それ以外の商品は積極的な営業を自粛しております。委託元とも相談の上、どのような体制をとることが万全なのかを協議してまいりたいと思います。
【日本郵政社長】
衣川から申し上げたとおりです。かんぽ商品の募集に係る問題は、大きな問題の危険サインと受け止めて、かんぽ商品について襟を正すと同時に、その他の商品にも取り組みを広げていくべきものと考えています。
 危険サインについては、今回創設する通報窓口や苦情相談などを通じて把握したいと考えています。かんぽ商品だけの問題と捉えることなく、投資信託など日本郵政グループが提供しているサービス全体について、問題意識をもって取り組みたいと思います。
【記者】
今回のかんぽ商品の募集に係る問題は、日本郵政グループのお客さまの信頼を大きく損ねたと思います。損ねたというより失われたのかもしれません。本当に信頼回復ができるとお考えでしょうか。
【日本郵政社長】
信頼回復ができるかどうかは、経営陣や現場社員を含めた社員全体が危機意識をどこまで共有できるかにかかっていると思います。
【記者】
増田社長ご自身は、今回の不適切販売の根本的な原因がどこにあったとお考えでしょうか。
【日本郵政社長】
特別調査委員会の調査報告書では、さまざまな原因が指摘されていたと思います。私として、解明が必要だと思っている点は、募集人がコンプライアンスや法令違反を犯してまで不適正募集を行うことを思うに至った背景です。それを改善するまでは、企業風土は変わらないと思います。この問題は経営陣全員が再度考える必要があると思います。
【記者】
就任の経緯についてお伺いいたします。社長就任の打診を「一度は断った」のは事実でしょうか。誰が社長となっても難しい状況の中、なぜ引き受けようと思ったのでしょうか。
【日本郵政社長】
一度はお断わりいたしました。それでもお引き受けしたのは、私が置かれた状況からです。誰も引き受けないだろうという気がし、外部からではありますが、これまで日本郵政グループに関わってきた経緯を活かさなければいけないと感じました。
 お引き受けした以上は、与えられた職において皆さんのご期待に応えられるよう、経緯や経歴などはすべて忘れて、一から取り組まなければならないと思っております。
【記者】
長門前社長は外部登用の社長であることを強く意識されていました。増田社長は、その点についてどのような意識をお持ちでしょうか。
【日本郵政社長】
私も長門前社長同様に外部登用です。組織は外部登用の者と内部登用の者が混ざっている状況がよいと思っています。知事を含めてこれまで私が携わった組織のマネジメントは、外部登用によるものです。
【記者】
お客さまの信頼回復のために真っ先にやらなければいけないことは、何だとお考えでしょうか。
【日本郵政社長】
契約乗換等において生じてしまったお客さまの不利益を回復することが最優先です。
 また、全ご契約調査における問題領域の調査に優先的に取り組む必要があると思います。それ以外は、やや抽象的となりますが、謙虚に、誠実に、愚直に、感謝の気持ちを持って一つひとつお客さまに応対していくことが信頼回復につながると思います。
【記者】
総務省と日本郵政の成り立ち上、なれ合い体質となりやすい構造的な問題があります。高市総務大臣は、今後、総務省職員が御社役員に天下りすることに否定的な姿勢を示しています。増田社長は、総務大臣を経験したお立場から、総務省と日本郵政の関係はどのようにあるべきとお考えでしょうか。
【日本郵政社長】
記者会見において、高市総務大臣は総務省職員が天下りとして日本郵政グループの取締役に就任することは相応しくないとのご発言をされております。私は、総務大臣のご指示に従い、天下りや官民癒着と見られることは慎むべきだと思っております。
【記者】
以前、長門前社長から「ゆうちょ銀行は大和証券と提携し、ファンドラップの新商品を共同開発し、2021年頃を目途に販売を開始したい」とのご説明があったと思います。増田社長はこの件について、現在どのようにお考えでしょうか。
【日本郵政社長】
昨年、大和証券との業務提携が進められていたことは承知しています。先方も現在の郵政グループの状況をご覧になり、お考えがあると思います。私どもとしても、新商品を出すことが市場にどう受け止められるかについて、今一度考える必要があります。今は新商品を市場に送り出すことよりも、誠実に感謝の気持ちを持って、地域にお応えしていくことの方が優先すると思っております。具体的に今般の案件をどうするのかについては、先方とよくご相談しながら考えていきたいと思います。
【記者】
検討された結果は、明らかにしていただけるのでしょうか。
【日本郵政社長】
明らかになると思います。
【記者】
増田社長にお伺いいたします。繰り返しとなりますが、いつ、どなたから、どのような形で社長就任の打診があったのかについて教えていただけないでしょうか。
 衣川社長と千田社長にお伺いいたします。いつ、どなたから社長就任の打診があり、どういうお気持ちで社長就任を決めたのかについてお教えください。
【日本郵政社長】
日付は思い出せませんがギリギリのタイミングで、「指名委員会で指名されて取締役会で決定した場合、社長を引き受けるおつもりがありますか」とのお話を指名委員会からいただきました。単身で会社に乗り込むことになるため、私に能力があるのかという問題もあり、社長就任を決心したのはギリギリの最後です。
【記者】
先ほど「一度お断りをした」とのご説明がありました。最後の最後に打診があり、それをお断りした後、再度打診があったということなのでしょうか。
【日本郵政社長】
総務省の次官が辞任するといった話があった頃、社長就任への打診があり、一度お断りしました。私が社長をお引き受けすると決心したのは本当に直前です。
【日本郵便社長】
私は長門前社長から直前にお話をいただきました。これはお受けしないといけないと考え、大役ではございますが、引き受けさせていただきました。
【かんぽ生命社長】
私はかんぽ生命の取締役会の直前に、指名委員会の委員長でいらっしゃいます長門前社長から「あなたが候補者の一人になっている」というお話をいただきました。
【記者】
増田社長に確認いたします。18.3万件の特定事案調査は3月までにある程度終えると理解してよいのでしょうか。また、かんぽ生命の訪問調査の人員を増やすお考えがあると理解してよいのでしょうか。
【日本郵政社長】
特定事案調査は、現在80パーセント強まで進捗しております。お客さまの対応がありますので時間がかかっておりますが、3月末までの営業停止期間とは無関係に、一刻も早く終わらせなければいけないと認識しています。
 訪問調査のスピードを上げるために新たな人員を投入する必要があると考えております。人員はきちんと研修を行った上で増やす必要があるので、詳細を検討しているところです。また1月31日に監督官庁に業務改善計画を提出し、その内容を会見にてご説明させていただきたいと思っておりますので、その際、調査の進捗状況についてもご報告させていただきます。
【かんぽ生命社長】
特定事案調査と並行して募集人調査も鋭意進めております。約半数の募集人のヒアリングが残っている状況です。一刻も早く仕上げて、3月末を目途に判定作業まで終わらせる計画です。新体制においても、増田社長、衣川社長からグループ挙げて取り組むとのお言葉をいただいております。また外部の力も活用して戦力を増強し、調査のスピードを上げたいと考えております。
【記者】
3月末に募集人調査を終えると理解してよろしいのでしょうか。また、18.3万件の特定事案調査については、3月末まで等の区切りはないと理解してよろしいのでしょうか。
【かんぽ生命社長】
ご質問のとおりです。私どもから間口を閉ざすことはなく、ご意向確認を継続的に進めてまいります。
 契約復元については、3月をターゲットにお客さまにご提案をしてまいります。我々からの対応はしっかりやりますが、お客さまのご意向も関係しますので、最終的に決着するのはもう少し時間がかかると思います。
【記者】
特別調査委員会の報告書にある「ヒホガエ」や「料済」など、かんぽ生命が問題と判断した事案については、全ご契約調査で返信はがきによる連絡がなくても、かんぽ生命から能動的にアプローチをして特定事案と同様に該当する契約の全数を調査するとの理解でよろしいのでしょうか。
【かんぽ生命社長】
ご質問のとおりです。現在、そうした調査の詳細について議論をしている最中です。1月末に提出する業務改善計画の中に盛り込み、しっかりと取り組んでまいります。
【記者】
従来の調査方針では、全ご契約調査でお客さまが連絡しなければかんぽ生命からのアプローチはありませんでしたが、今後の調査方針においては、「ヒホガエ」など不審な契約があった場合は、特定事案と同様にかんぽ生命からお客さまにコンタクトをとって事情を聞くと考えてよろしいのでしょうか。
【かんぽ生命社長】
ご質問のとおりです。全ご契約調査に返信をいただいていないお客さまを含めて、どのような範疇の方を能動的な調査の対象とするのかについて現在検討しており、1月末に公表させていただきたいと思っております。
【記者】
特別調査委員会の報告書にある「ヒホガエ」が、そうした範疇に含まれる可能性はあるのでしょうか。
【かんぽ生命社長】
「ヒホガエ」は新規契約と解約を繰り返す多数契約と重複する可能性が高いと思います。そうしたことを含めてどのように能動的な調査を行うかを検討しており、今後公表してまいりたいと思います。
【記者】
衣川社長にお伺いいたします。先ほど風通しのよい組織づくりのお話がありました。私どもの現場取材の中で、内部通報の仕組みを使って訴えたにもかかわらず「もみ消された」、「十分な対応をしなかった」、「匿名の訴えを大勢の前で公表された」などの話を耳にします。従前は、現場の問題を本社が聞く仕組みについて問題があったのでしょうか。また、経営を立て直す上で、このような事柄について今後どのように取り組むべきだとお考えでしょうか。
【日本郵便社長】
「匿名の内部通報、あるいは匿名希望で内部通報を出したにもかかわらず、誰が通報したかわかっている」との批判は聞いたことがあります。その原因分析までは把握できておりません。仕組みに問題があるのかどうかについては、早急に確認してまいります。
 内部通報による調査の難点は、小さな局所の場合、調査をした途端「誰か通報したのではないか」との話が広がりかねないことです。通報者の意向をよく聞き、調査方法を含めて会社と通報者が信頼関係を築き得る内部通報のあり方を検討してまいります。
【記者】
増田社長にお伺いいたします。就任が決まった際、日本郵政グループ3社の経営者が民間出身者から官僚出身者になると報道されました。経営トップが民間の経営者から元官僚に変わることで、経営スタンスや経営方法が大きく変わることがありますか。
【日本郵政社長】
年末の新聞各紙で、日本郵政グループの新社長は3人とも霞が関の官僚出身で、民間企業の経営になじむのかと危惧する報道がありました。これらの報道は、問題を矮小化しうやむやにする官業体質を改め、スピード感を持ち、市場の評価に十分応えられる経営をしなくてはならない、との叱咤激励だと受け止めております。
 民営化を進め、株式売却を進めるとの方針に変更はありません。私は行政や官での経験が長いのですが、そこから得られたものがあると思います。一方で不足する部分は外部の力を借りる等により、民間会社としての企業経営と遜色ない形でのマネジメントができればと思っております。
【記者】
増田社長にお伺いいたします。これまで実務の実権を握っていたとされる上級副社長のポストは不在となっております。今後社内から参謀役を選ぶのか、過去そうであったように外部から人材を集めてチーム増田をつくるのか、前経営陣と比べて改革をどのように進めるのかお伺いいたします。
 衣川社長と千田社長にお伺いいたします。先ほどからお二人の回答を伺っておりますと、増田社長の考えに沿った回答が多いようにお見受けします。今後、上場企業の社長として増田社長に意見をすることが出来るのか疑問に感じます。
 お二人は、社長に就任するに当たり、信頼回復の先の事業の成長について何が求められているとお考えなのでしょうか。
【日本郵政社長】
上級副社長のポジションについて、どなたかを想定しているということはありません。今ある人材を上手に使うことが基本です。一方、外部からさまざまなアドバイスを入れる必要もあります。外部の人たちを中心としたチームが必要だということであれば、そうした人たちの能力が発揮できる形を考えてまいります。以前の日本郵政は、上級副社長の役割が非常に大きかったと思います。特に前上級副社長は旧郵政省出身の方に精通していたと思いますが、人事のことは社長が決めるのが通常のスタイルです。トップ人事は指名委員会や取締役会の客観、公正なご判断をいただくことになりますが、取締役会も成果を求めていると認識しております。成果をあげるチームについて、行政体と民間企業の違いについても考慮し、グループ内の事業会社の幹部の方とも意思疎通を図りながら、考えてまいります。
【日本郵便社長】
先ほど日本郵便という大きな会社をどのように運営するのかとのご質問に、「関係者とよく話し合い問題意識を共有していくことに尽きる」と申し上げました。これは私が以前から思っていることですが、問題意識を共有すれば、おのずと最適な答えは決まってまいります。特に今回のような危機的な状況であれば、取り得る選択肢はそれほど多くないはずです。先ほど増田社長のお考えのとおりですと申し上げたのは、そういうことだと思っております。
 今後、さまざまな考え方を取り得る場合に、増田社長とご意見が違うことがあるかもしれません。その場合も最後は話し合って決めていくということですので、私は私の考えを増田社長に率直に申し上げたいと思います。
【かんぽ生命社長】
私も社内の多くの人たちと話をしながら、自分の考えをもって経営に当たりたいと思います。場合によっては増田社長と議論させていただくこともあると思います。大切なことは信頼関係だと認識しておりますので、誠心誠意で増田社長にぶつかっていきたいと思っております。
(※記者会見における発言及び質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)