現在位置:
日本郵政ホームの中の1
日本郵政株式会社の社長等会見の中の3
2019年12月27日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2019年12月27日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 長門 正貢
日本郵便株式会社 代表取締役社長兼執行役員社長 横山 邦男
株式会社かんぽ生命保険 取締役兼代表執行役社長 植平 光彦
【日本郵政社長】
私ども日本郵政、日本郵便、およびかんぽ生命の3社は、本日、総務大臣および金融庁より、保険業法等に基づく行政処分を受けました。このような事態を招いたことを深く反省しております。お客さまをはじめ、関係の皆さまに多大なご迷惑をおかけしますこと、深くおわび申し上げます。
 弊社グループの全役職員、今回の行政処分を厳粛に受け止めております。今後、二度とこのような事態を起こさぬよう、再発防止に向けて内部管理体制のより一層の強化とコンプライアンスの徹底に取り組むとともに、一日でも早く皆さまからの信頼を取り戻せるよう、グループ一丸となって全力を尽くしてまいる所存です。
 12月18日の記者会見におきまして、私から責任のとり方について、しかるべきタイミングで報告いたしますと申し上げました。その報告を本日申し上げます。
 2020年1月5日をもちまして、日本郵政株式会社代表執行役社長、長門正貢、日本郵便株式会社執行役員社長、横山邦男、株式会社かんぽ生命保険代表執行役社長、植平光彦、日本郵政株式会社代表執行役上級副社長、鈴木康雄、日本郵便株式会社会長、高橋亨が退任いたします。
 日本郵政、日本郵便およびかんぽ生命の社長につきましては、先ほど各社の取締役会におきまして、それぞれ東京大学公共政策大学院客員教授、増田寛也氏、日本郵政株式会社専務執行役、衣川和秀、株式会社かんぽ生命保険代表執行役副社長、千田哲也が1月6日付で就任することを決定いたしました。
 これに加えまして、3社の関係役員の報酬減額等を実施いたします。
 次に、12月18日に公表いたしました日本郵政グループによる再発防止策について、2点、追加的にご報告申し上げます。別紙をごらんいただきたいと思います。
 まず第1に、(8)にございますように、日本郵政にタスクフォースを立ち上げることといたしました。このタスクフォースのもと、グループ全体として改善の計画を取りまとめ、第三者によるモニタリングを受けつつ、着実に実行し、その進捗状況について定期的に公表することといたします。
 あわせて、2として、日本郵政の取締役会において、持ち株会社として果たすべき役割について、より突っ込んだ本質的議論を行い、もう一段、深掘りしたグループガバナンスのあり方について検討してまいる所存です。
【記者】
辞任を決意された時期についてお伺いいたします。
 また、あの時こうしておけばよかったとの後悔があれば教えてください。
【日本郵政社長】
郵政民営化という国家プロジェクトに貢献できると思いお引き受けした仕事でしたが、ご案内のようなお国やお客さまにご迷惑をおかけするような事態を招来いたしまして、大変断腸の思いです。
 個人的には、8月上旬には責任をとらねばならないと覚悟しており、一部の関係者にはその旨、密かに申し上げておりました。グループの経営を担う責任から、その意向を発表できるタイミングは、①お客さまの不利益を調査し再発防止策を策定すること、②特別調査委員会に根本原因、再発防止策等について打ち出していただくこと、③しっかりとした後継者を選ぶこと、の三つの条件があると感じておりました。
 本日、大変重い行政処分を頂戴し、辞任を発表する時期がきたと思ったことから、発表に至った次第です。
【かんぽ生命社長】
辞任を決意したのは、6月末でございます。退任については、乗換契約等や募集品質の問題が報道されて以降、常に念頭にございました。まずはお客さまの不利益を解消する必要があることから、特定事案調査18.3万件及びお客さま数1,900万人に対する全ご契約調査を仕上げることが、私及び日本郵政グループの責任であると考え、これまで取り組んでまいりました。
 12月半ばにこれら調査に一定の目途が立ったこと、特別調査委員会から報告書をいただいたこと、本日総務省・金融庁の行政処分の内容が明らかになったことで、今般、退任の決断をさせていただきました。
 さまざまな思いや後悔がございますが、総合対策という募集品質を向上するための推進策を強化する流れを作ることができましたので、今後も会社として継続して進めていくことが大変重要だと考えております。
【日本郵便社長】
6月末にこの問題を認識し、まず経営者としてやるべきこととして、不利益を生じさせてしまったお客さまに謝罪し、その解消に努めること、そして再発防止策を講じることに取り組んでまいりました。再発防止策をとりまとめ、特別調査委員会から中間報告等が出され、本日行政処分を受けることになる中で、12月頃から辞任というけじめをつけることを意識しておりました。
 高齢者のお客さまの苦情が増えていたことから、植平と総合対策本部をつくり、さまざまな対策を打ち出してまいりましたが、かんぽ商品の募集問題の全体的な対応としては道半ばだったということについて後悔しているところでございます。
【記者】
日本郵政のトップは、有能といわれる方が民間あるいは官界から起用されているにもかかわらず、長門社長を含め過去のトップが不本意な退場を繰り返しています。うまくいかなかった理由はどこにあると思いますか。
【日本郵政社長】
今回の問題はさまざまな要因があり、12月18日の会見においてご説明させていただきました。また、特別調査委員会から日本郵政グループをめぐる問題点を指摘されました。よって、本日、要因を具体的に列挙することは控えます。いかなる会社にも問題はあり、それを言い訳にしては、経営になりません。
 特別調査委員会、金融庁の調査結果を拝見しますと、戦略的に目指す方向性は大きく違っていないと感じています。ゆうちょ銀行・かんぽ生命は、ビジネスモデル上、郵便局ネットワークなしには決して立ち行かない組織であるため、新商品や新規業務等に取り組むことが必要です。日本郵便の取扱郵便物数は毎年2.5%程度減少し、郵政民営化の進展に伴いグループに反映されるゆうちょ銀行・かんぽ生命の利益が減少するため、新たな収益源を作ることが必要です。そうした課題意識を持って、中期経営計画を作成しました。
 日々全身全霊で尽くしたつもりですが、経営者として欠陥があったとすれば、足元を見ていなかったことです。築城三年落城三日と申しますが、コンプライアンスを疎かにしたことがうまくいかなかった理由です。
 非常に難しい環境にある会社の経営でしたが、やるべきことをきちんとやるという経営の基本路線を踏むことで十分に経営することができたと思います。皆さまにご迷惑をおかけする大事件となったことは、ひとえに私自身の経営力のなさだと深く反省しております。
【日本郵便社長】
経営上何が難しいかとの観点から、ご回答いたします。日本郵便は、全国2万4,000の郵便局においてユニバーサルサービスを提供する責任を負っております。また商品性の問題等ビジネス上の制約もあります。ユニバーサルサービスを提供する責任を負うのであれば、そういった制約を外していただくことが筋ではないかと考えております。
 そうした中、制約がない宅配事業においては、2年くらいのスパンで戦略の再構築、商品性向上など抜本的な強化に取り組みました。その結果、3~4年前と比べて経営全体が奏功し、2,000億円近い営業利益を上げる会社となりました。これは、制約がないビジネスにしっかり取り組んだ成果だと考えています。
【かんぽ生命社長】
特別調査委員会の報告書に、直接的な原因、助長した原因あるいは構造的な要因が取り上げられております。これらが複合的に絡み合い、困難な状況となっていると理解をしています。よって、理由を一つひとつ列挙することは控えます。
 商品供給を行う保険会社の立場としては、一刻も早く、日本郵便の優秀な募集人に限度額の制限がない豊富な商品を提供できる状態にしたいと考えております。今後、そうした時代を迎えるべく頑張っていただきたいと思います。
【記者】
ガバナンスに関し、長門社長にお伺いいたします。特別調査委員会の報告書に「役所文化が色濃かった」との指摘があります。就任以降、そうした企業風土に気づくことができなかったのでしょうか。あるいは、気づいていたにも関わらず改善が困難な状況があったのでしょうか。
 また、政官にまつわる難しさについてお教えください。
【日本郵政社長】
1点目のガバナンスの問題について、ご回答いたします。特別調査委員会の報告書に今回のかんぽ問題のさまざまな原因が挙げられています。原因の中の一つとして、コンプライアンスの問題が捉えられています。また、役所体質といわれる企業風土を見破ることができなかったとは感じておりません。一方で、組織は歴史を背負うものであり、役所文化といえば、そう見える幾つかの違いは感じます。数字に対するこだわりに欠けることや、自らの領域を拡張して仕事をする情熱に欠けることなどの特徴があります。こうした特徴は、本日ご説明しました具体的施策等に取り組む中で、今後、乗り越えていくことができると考えております。
 2点目の政官の問題について、ご回答いたします。政官の難しさは当然ございます。政府が株式の過半を持つ会社であるため、純粋な民間企業ほど自由でないことは事実です。一方で、私どもを応援していただける方も多いというプラス面を上手に使い良いパフォーマンスを上げることが経営課題です。
 特別調査委員会からご指摘いただいた数多くの原因のうち、これら二つが、当社が現在立ち止まっている理由であるとは考えておりません。
【記者】
長門社長にお伺いいたします。留意点として増田新社長にお伝えすることがあれば、教えてください。
 加えて、横山社長にお伺いいたします。横山社長は、西川社長時代も日本郵政グループで働いたご経験をお持ちです。前回のご経験と比べて、今回難しいとお感じになった部分があれば、教えてください。
【日本郵政社長】
増田新社長は、県知事をされるなど豊富なマネジメント経験をお持ちで、総務大臣や郵政民営化委員会の委員長をご経験されるなど、私以上の知見を有する方です。現在考えられる中で、ベストの後継者をお選びいただいたと感じています。
 あえてコメントをするとすれば、日本郵政グループのポテンシャルである全国2万4,000の郵便局ネットワークを活かす方向で頑張っていただきたいと思います。IoT、AI、eコマースなど、音を立てて時代は動いておりますが、これらインターネット世界と現実の郵便局ネットワークの融合を図るなど、日本郵政グループの長所を存分に伸ばしてほしいと思います。
【日本郵便社長】
前回との比較ではなく、今回改めて感じた観点から回答いたします。国営の時代から、縦割りの意識が非常に強かったことに加えて、分社化することで、より各会社の間での縦割りの企業風土が強くなったと感じております。一方、お客さまは、私どもを郵便局としてご覧になっていただいておりますので、グループ全体で郵便局を中心としたビジネスモデルという考え方が必要でしたが、そうした意識が乏しかったと感じております。
 また、150年近い歴史のある会社ですので、人事等には公務員時代からの慣行が残っているように感じました。制度にはまだ改善の余地があると考えています。
【記者】
本日発表された人事について、お伺いいたします。かんぽ生命と日本郵便の次の社長が選ばれた理由について、可能であれば取締役会の議論の過程も含めて教えてください。
 また、鈴木上級副社長がこのタイミングで辞任される理由について教えてください。鈴木上級副社長が関与したとされる情報漏洩問題について、ご本人がおっしゃっている内容も含めてご説明をお願いします。
【日本郵政社長】
1点目の人事について、ご回答いたします。ご案内のとおり、日本郵便横山社長の後任が日本郵政専務執行役の衣川、かんぽ生命植平社長の後任がかんぽ生命副社長の千田です。これらの会社の経営者として、今選び得るベストの人間を選択できたと思っております。旧郵政省からの天下り、内部の人間であるとのご意見もありますが、内部から昇格する郵便局が好きな者が経営を行うという良い側面もあると思っております。また、彼らは天下りではなく、民営化以前の郵政事業庁時代に当グループに来た生え抜きです。
 千田は長らくかんぽ生命に在籍し、若くして専務となった実力者です。2017年10月から2019年3月までは、郵便局の新規業務を発掘することを目的とした日本郵政キャピタルという子会社の社長をしておりました。その後、かんぽ生命に戻り、直近は、大崎の事務センターにて、特定事案調査や全ご契約調査を担当し、今回の問題において前面で奮闘しました。
 衣川はかんぽ生命の経験が長く、直近は、人事・労務を担当しておりました。今般のかんぽ問題については、現場でさまざまな問題が起きていることから、彼の組合との交渉ノウハウなどが活かせると考えています。また、経営会議等において自分の担当を超え経営者の視点から発言をしておりました。
 2点目の上級副社長の辞任について、回答いたします。12月20日、総務大臣から情報漏洩の問題について公表がありました。重要な問題と認識し、第三者の弁護士に調査を依頼する準備を進めておりました。ご案内のとおり総務省の事務次官が辞任され、上級副社長自身が、本日、自ら辞任という道を選びました。これを受けて、当社としての調査は行わないという決断をしました。
【記者】
かんぽ問題の組織的責任についてお伺いいたします。会社は、募集実績が高く募集品質に問題がない社員を優績者として表彰してきました。当社が入手した優績者の成績をリストにした内部資料によると、「二重払いや無保険が生じる乗換潜脱の疑いがあるものが5%以下」、「顧客に大きな不利益を生じさせる疑いのある料済みや減額が12%以下」、「苦情は3件以下」となっており、一定程度の不適正な疑いのある募集を組織として許容してきた実態が窺われます。こうした仕組みが、結果的に不適正を誘引する一つの原因になっていたとは考えられないでしょうか。
【かんぽ生命社長】
私が社長に就任して以降、募集品質の向上を重要な問題と認識し、日本郵便の横山社長と一緒に総合対策に取り組んでまいりました。その中で、表彰制度についても改善を図ってまいりました。特に、募集成績だけが良い募集人を表彰するという仕組みでは不十分であると考え、評価指標に品質指標を加えて、総合的に優秀な募集人を評価する仕組みとする見直しを行いました。最近は、表彰制度も整備されましたので、現時点では品質基準をクリアしなければ評価されない仕組みとなっていると思います。
【日本郵便社長】
この三年間、募集品質に重きを置いた表彰制度に改めてまいりました。よって、社員も表彰される募集人が変わってきたことを認識していると思います。ご指摘の問題は、取り組みが途上であったことによって生じた問題で、忸怩たる思いです。
【日本郵政社長】
ご指摘の問題は、さまざまな原因によって起きていると認識しています。
 特別調査委員会の報告書に、法令違反や社内ルール違反の疑いがある事案のうち、販売実績が優秀とされる募集人が関与した割合が約26%(1,641件)と大きなシェアを占めている旨の記載があったことが、ポイントの一つであると感じております。
 私どもが12月18日に発表した特定事案調査の結果は、3点ございます。1点目は、ご意向確認の結果です。2点目は、契約復元等について詳細説明をご希望されたお客さまの数など、契約復元等の進捗状況です。3点目は、募集人調査です。12月15日時点で、残念ながら、判定完了した2,487件に対して、法令違反が認められた事案は48件、社内ルール違反が認められた事案は622件となりました。
【記者】
優績者を取材すると、「組織の命を受けて高い営業目標を達成してきたが、トカゲの尻尾切りのように、一部の社員による問題行動とされることに危機感や違和感を覚える」との話を聞きます。不正を許容してきた組織に責任があると思いますが、いかがでしょうか。
【かんぽ生命社長】
不正を許容したことはございません。販売マニュアルや各種社内ルールを整備しながら、ルール違反をチェックできなかったことは反省しておりますが、私どもが、不正を助長していたということはありません。
【日本郵便社長】
経営や本社・支社が、不正を許容したということはございません。特別調査委員会の委員の方々からも、会社全体に不適正募集を許容する仕組みが蔓延しているということではない、と伺っております。
【記者】
2017年12月の総合対策の段階で、かんぽ生命・日本郵便の両社は現在問題となっている二重払い、無保険、乗換潜脱を認識していたと思います。そのことは、内部資料である募集品質全国カルテが示しています。隔月毎の件数も把握しており、問題の規模感や詳細な内訳も把握していたことがわかります。
 こうした資料があることを経営トップとして認識していなかったのでしょうか。あるいは、それでも組織的な問題ではないと主張されるのでしょうか。
【日本郵政社長】
募集品質全国カルテは、経営管理のための資料ではありません。募集人個人レベルでの指標管理のための資料です。会社としては、新規契約を獲得し、既存のお客さまには、長く契約を継続していただきたいと願っております。それを実現するため、募集人には、カルテの中に記載の乗換、料済、既存契約の解約、減額により新たな契約を取る営業活動ではなく、新規のお客さまを開拓する営業活動を求めています。そうしたことの指標管理のために使っていたものです。よって、募集品質全国カルテに記された指標が、悪いものとして書かれていた訳ではありません。個々の契約については、全て不利益事項の説明を行い、お客さまの同意がとれたものが記載されていたと理解しておりました。
【記者】
長門社長にお伺いいたします。先ほどのご発言で、自身の力が及ばなかった、経営環境のせいではないといった趣旨のご説明がございました。一方で横山社長と植平社長からは、法制度上の限界があり、制約を外してほしいとの話がありました。国営から民営に変わり、公共性を維持しながら、上場企業として利潤を追求することには矛盾があると思います。さらに大株主の国や政治の影響を受け、半官半民の40万人の組織を一つの方向に向かわせる難しさもあったと思います。半官半民のグループを率いる難しさを感じたことはなかったのでしょうか。
【日本郵政社長】
制約やしがらみのない経営などあり得ないという意味で、「力及ばず」と申し上げました。
 日本郵政グループには、半官半民だけではなく明らかな制約があります。ゆうちょ銀行は融資することができず、子会社として信託銀行や証券会社を持っていません。海外拠点もなく、ドル預金を扱うこともできません。かんぽ生命においては、主力保険商品が二つしかなく、海外の保険会社を買収することができません。半官半民という意味では、国会で叱責を受ける会社はあまりありません。一方で、政治家の方々が応援してくれる会社もあまりないと思います。
 お尋ねの発言は、言い訳はしたくないという趣旨で申し上げました。
【記者】
今回の退任に当たり、退職金を受け取られますか。受け取る場合は金額を教えてください。多くの執行役らの報酬が減額となる中で、ご自身の退職金や報酬の一部を自主返納するお考えについてもあわせてお願いします。
【日本郵政社長】
当社の役員に役員退職慰労金制度はございません。
【記者】
植平社長および横山社長にお伺いいたします。先ほど植平社長から「商品供給を行う保険会社の立場としては、限度額の制限がない豊富な商品を提供できる状態としたい」とのご発言がありました。横山社長からも「ユニバーサルサービスを提供する責任を負うのであれば、そうした制約を外していただくことが筋」とのご発言がありました。仮に限度額や商品上の制限がなければ、かんぽ問題は起きていなかった、とお考えでしょうか。
【かんぽ生命社長】
社内では、どのような魅力を持つ商品をどのようなお客さまに販売するのかについて戦略論議を行っています。しかし、限度額が課せられていることや商品ラインナップが少ないことから、自由な議論につながりづらいと感じております。また、日本郵便の募集人は優秀な者が多いため、魅力ある商品を提供できれば販売しやすい環境が作れるとも感じております。制約がなければ、違った戦略が描けるという意味で、先ほどの発言を申し上げました。
【日本郵便社長】
制約の有無に関わらず、お客さまに不利益をあたえる行為があってはならないことは当然のことです。そうした中、従来のかんぽ商品は貯蓄性商品が主力であり、貯金の代替商品としてお客さまにご案内しておりました。最近の低金利環境下において、市場環境の変化にうまく対応できなかったことが、かんぽ問題の主な要因だと考えておりますが、商品面に制約があったことも一因であったと思います。
【記者】
今回のかんぽ問題は、子会社から日本郵政に情報が上がらなかった、子会社間のコミュニケーションがとれていなかったということが根本的な原因であり、それがガバナンスの問題につながったとのお話があったと思います。
 以前の会社では生え抜きの役員の中で議論をされてきたと思いますが、日本郵政グループではさまざまな会社から取締役会の役員を集めておられます。以前の会社と日本郵政グループの間にコミュニケーション面での違いがあれば教えてください。
【日本郵政社長】
取締役会の議論は、全く遜色ありません。私は幾つかの会社の取締役会に参加しておりますが、一流の経営者が集まり、激論が交わされているとの印象を持っております。
【日本郵便社長】
特段違う意見はございません。
【かんぽ生命社長】
今回の問題については、6月末に特定事案の領域で不利益を生じせしめている可能性がある外形的な領域があることに気づきました。大変忸怩たる思いですが、気が付いてからグループ各社や取締役会にお伝えし、対応に動き出したということなので、コミュニケーション不足が原因とは自覚しておりません。
 主力販売網である日本郵便の横山社長とは、コミュニケーションを図り、情報交換をしながら仕事をしております。日本郵政の長門社長とは、グループ全体の進め方や計画、2社間の諸問題の調整について話をしております。コミュニケーション不足が、今回の原因であるとの指摘はピンときておりません。
【記者】
上級副社長が情報漏洩に関与した問題についてお伺いいたします。一週間にわたり沈黙した後に、本人が辞任するから調査は行わないとする対応は、常識的に考えられないと思います。
 また、NHKの取材手法を「暴力団と一緒」とする上級副社長のご発言について、社長は国会において「上級副社長と意見は全く一致してございます」と発言されています。社長は、この見解のまま辞任されるのでしょうか。
 加えて、上級副社長にまるで腫れ物に触るかのごとく対応しているように見えますが、その理由について教えてください。
【日本郵政社長】
上級副社長が情報漏洩に関与した問題については、先方の次官が辞任され、当方も責任を感じて辞任したと思っております。
 NHK「クローズアップ現代+」について、ご回答いたします。私が9月30日の会見で申し上げたことは、2018年4月24日に放送されたNHK「クローズアップ現代+」の番組を、かんぽ不適正募集の問題発見に至るヒントとして謙虚に受け止めるべきであったとの気持ちです。一方、上級副社長が申し上げたことは、表現が適切であったかどうかはともかく、NHK「クローズアップ現代+」の第2弾の放送に向けた番組公式ツイッターに掲載された動画において、事実の摘示なく「かんぽ詐欺」「押し売り」等の刺激的な文言を使い、当方の削除要請に対して「取材を受けるなら動画を削除する」とした、NHKの取材手法を批判したものです。2人の発言は、それぞれ異なるテーマについて語ったものです。異なった意見に聞こえるのは、その故であり、2人の各テーマに対する意見自体が異なっているものではありません。
 また、上級副社長に、腫れ物に触るかのごとく対応しているということは全くございません。
【記者】
上級副社長の「暴力団と一緒」というご発言は、撤回されないのでしょうか。
【日本郵政社長】
上級副社長の発言を私が撤回するのは、筋が違うと思います。
【記者】
取材をする中で、金融知識の乏しい高齢者が自らの不利益を理解できないまま放置されている、と感じています。また特定事案調査以外にも顧客が不利益を被るケースがみられ、実態解明と救済が重要です。
 長門社長は、本来求められるべき顧客本位をどのようにご認識されていますか。
【日本郵政社長】
当然、お客さま第一は絶対でなければいけないと考えています。かんぽ生命は3,000万件のご契約があり、全ご契約調査を実施しております。真摯にお応えしていきますので時間はかかりますが、一人残らず最後の一円に至るまで対応していく姿勢で取り組んでいきたいと思っております。
【記者】
特定事案18万3,000件以外についても、今後、調査を行うということですか。
【かんぽ生命社長】
既に開始している18.3万件の特定事案調査に加えて、1,900万人の契約について全ご契約調査も実施しております。特定事案以外にも問題のある事案があると認識しておりますので、全ご契約調査の枠組みを使いながら、領域を定めて必要な追加調査を行いたいと思います。例えば、新規契約と解約を繰り返している多数契約など不利益が生じていると疑われる事例について、徹底した調査を行いたいと思います。
【記者】
先ほど、長門社長から日本郵便とかんぽ生命の社長人事に関して、「内部から昇格する郵便局が好きな者が経営を行うという良い側面もある」とのご説明がありました。このお考えはゆうちょ銀行の社長人事にも影響するのでしょうか。
 また、今回、日本郵便とかんぽ生命の社長は内部昇格、日本郵政の社長は元総務大臣の増田寛也氏と、いずれも政治に近い人が選ばれています。国営時代に時計の針を戻すのかとも思われますが、郵政民営化の推進との関係をどのように解釈すればよいのでしょうか。
【日本郵政社長】
社長は選択時点で選択可能な人材の中からベストの人間を選ぶべきだと考えております。今般、たまたま日本郵便社長として衣川、かんぽ生命社長として千田と旧郵政省出身の者を選びましたが、ゆうちょ銀行の社長も同様に選ぶことを今後にも適用する絶対ルールとした訳ではありません。
 2点目の質問について、今般はその人のルーツよりも社長を務めることができる者を選択しました。能力があるのにも関わらず、ルーツが民間企業でなければ社長として選ばないというのはおかしいと思います。
【記者】
先ほど植平社長から「領域を定めて必要な追加調査を行いたい」とのご発言がありましたが、具体的に追加で特定事案調査以外の対象について調査するということでしょうか。また、後任の方にそうした指示をされるのでしょうか。
【かんぽ生命社長】
私どもから公表させていただきました「ご契約調査の結果および今後の取り組み」に記載をさせていただいているとおりでございます。今後、問題領域が見つかれば、例外なく調査を行います。
 後任の体制も含めて、しっかり取り組んでいくことになると思います。
【記者】
長門社長はNHK「クローズアップ現代+」の公式ツイッターに掲載された動画に使用された「かんぽ詐欺」という表現に対して名誉棄損だと抗議されています。代表権を持つ副社長の「暴力団と一緒」との発言は名誉棄損にあたらないのでしょうか。
 また、9月30日の会見における長門社長のご発言を聞いて、メディアは「NHKに対して抗議したことについても反省した」との印象を受けました。翌日何紙もの新聞がそのように書いています。長門社長は、NHKに抗議したことを反省していないのでしょうか。
【日本郵政社長】
NHK「クローズアップ現代+」の公式ツイッターに掲載された動画を拝見した際に、上級副社長のみならずグループ全体が動画の内容は不適切であると感じていました。ただし、上級副社長が「暴力団」という表現を使ったことに関しては、私は極めて不適切で行き過ぎであったと感じております。
 また、9月30日の会見において「反省すべきことが多々ある」と申し上げたのは、放送されたNHK「クローズアップ現代+」の番組を、かんぽ不適正募集の問題発見に至るヒントとして抜本的な調査を行うなどの動きにつなげていれば、より早期に問題を解決することができた、との反省の気持ちからです。
【記者】
先ほどの長門社長のご説明において、「先方の次官が辞任され、当方も責任を感じて辞任した」とありました。日本郵政として説明も判断もなしに、本人が辞任したために調査は行わないのは、ガバナンス上問題ではありませんか。
【日本郵政社長】
総務省の次官が辞任し当社上級副社長も辞任したという意味でイーブンだと思っています。
 また、12月20日の夕方に本件が報道され、当社として上級副社長にヒアリングを行いました。それだけでは不十分であると考え、コンプライアンス担当役員が第三者の弁護士に追加的な調査をお願いする手はずとなっておりましたが、まさに弁護士に依頼訪問することになっていたその日に、上級副社長が辞任することになったため依頼を止めました。
 当社のヒアリングにおいて、上級副社長から「それほどひどいことをしていない」との回答がありました。また、総務省次官から情報を得たので対応を変える必要があるといった趣旨の発言は、鈴木から一度も聞いておらず、私どもも「鈴木が特別な秘密を得ていた」との印象を持っておりません。
(※記者会見における発言及び質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)