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2019年3月28日 木曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2019年3月28日 木曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

【社長】
本日は私から6件お話をさせていただきまして、後ほど皆さまからご質問を受けてまいりたいと思います。
1件目として、社宅跡地の開発についてお話しいたします。東京都内の3カ所の社宅跡地を利用して、日本郵便が不動産開発事業として建物を建設し、このたび竣工いたしました。
 まず、「グランダ目白弐番館」は、高齢者施設と保育所の複合施設です。株式会社ベネッセスタイルケアにお借りいただき、高齢者施設は3月1日から運営を開始しており、保育所は4月1日から運営を開始するもので、日本郵便が建設した高齢者施設としては初めてとなります。
 次に、「ニチイキッズかみいけぶくろ保育園」は、株式会社ニチイ学館にお借りいただき、保育所として4月1日から運営を開始するものです。
 最後に、「JP noie 三田」は賃貸住宅であり、「JP noie」ブランドによる賃貸住宅としては6棟目です。このほかにも、社宅跡地を活用し、高齢者住宅、保育所および賃貸住宅において合計7件の竣工を予定しております。今後とも、社宅跡地などの有効活用を通じて、地域社会にも貢献できるよう取組みを進めてまいります。
2件目として、地域ファンドへの出資についてです。本日、青森銀行と「あおぎん地域貢献ファンド」に参加させていただくこととなりました。2016年7月から、全国各地の地域ファンドに参加させていただき、2018年度の6案件も含め、本件で18案件、総額約52億円となりました。ゆうちょ銀行としては、今後とも地域金融機関と協力した、地域企業への新たな資金循環の創出、地域経済の活性化に貢献してまいる所存です。
3件目として、先日3月14日に妥結した春闘についてです。
 初めに、経済関連要求ですが、今春闘では厳しい経営環境を考慮しまして、正社員の一時金は昨年同様の4.3月としました。また、「全社員一律のベア」は実施しておりませんが、優秀な新卒者確保等の観点から、一般職1人当たり3,500円の基本給改善および、それとの関係で給与逆転が起こらないようにするために、地域基幹職の一部について基本給改善を行うこととしました。これに必要なコストは、グループ合計で約32億円でございます。ちなみに、この原資を全社員で頭割りすると、定昇込みで2.58%の賃金改善、定昇プラス700円弱となります。
 次に、組合から要求のあった同一労働同一賃金の関係では、扶養手当の制度見直しを実施いたしました。そもそも扶養手当を期間雇用社員に適用しないことについては、労働契約法第20条に照らし不合理とは考えておりませんが、期間雇用社員等のモチベーションアップの観点から、無期雇用に転換した非正規社員(アソシエイト社員)に対し、正社員の8割ベースの扶養手当を支給することといたしました。これについては、会社財源の持出しで対応することとしており、正社員の処遇を下げた分を非正規社員に充てるということはしておりません。
 なお、扶養手当の支給対象を無期雇用のアソシエイト社員に限った理由は、無期雇用となったアソシエイト社員については、正社員同様、長期雇用に向けたインセンティブという観点で手当を支給することについて、一定の合理性があると考えたためです。ただし、正社員とアソシエイト社員では、職務内容、期待役割等に違いがあるため、支給水準については労使で協議し、8割水準で妥結いたしました。
 あわせて、現行の扶養手当について、働き方に中立的な制度の実現および子育て世代への経済支援の観点から、段階的に現行1万2,000円ある配偶者に係る手当を半減させ、子供に係る手当を倍増させる制度改正を行うことといたしました。扶養手当制度の改善に係るコストは、グループ合計で約27億円となります。
 次に、65歳定年制については、現行の高齢再雇用制度をベースに、労使で協議を重ね、2020年度に満60歳に到達する社員から導入することで、今回、一定整理を行いました。65歳定年制については、60歳以下の給与をどうするかという問題がございますが、労使で協議した結果、50代で生計費がピークに達することを考慮して、60歳以下の給与体系は現状を維持することとし、61歳以降については、現行の高齢再雇用制度の改善をベースに対応することとしたものです。その結果、61歳以降の給与は60歳以下の正社員の給与体系から、年功要素と生活関連手当を除いた職務給として設計しております。
 また、役職については、60歳で原則役職定年とし、退職金については60歳では支給せず、61歳以降も退職手当ポイントを一定付与した上で、65歳の定年退職時に支給することといたしました。
 このほか、育児、介護、病気と仕事の両立に向けた諸制度の改善をはじめ、多様な働き方に関する社員のニーズへの対応、さらには、性の多様性等の視点からも、かなり踏み込んだ整理をいたしました。
 具体的な施策の一部を紹介しますと、これまでであれば、育児・介護休業等を取得すると、その期間に応じて定期昇給に遅れが生じ、休業復帰後4年間はその影響が残っていましたが、復帰後最初の昇給日である4月1日にその遅れを完全に解消できるよう、昇給復帰の時期を早める見直しを行いました。この点は、女性社員のみならず、育児休業を短期間取得することの多い男性社員においても、制度上、1つのハードルとなっていたので、この見直しにより、今後一層、育児休業の取得促進につながるのではないかと考えております。
 また、性の多様性への対応も昨今、注目が高まっておりますが、会社として取り組むべき課題であると認識しており、同性パートナーとの共同生活の開始に際し、結婚休暇を適用することといたしました。これは、社員が結婚し、挙式等を行う場合に有給を5日取得可とするものです。働き方の見直しは社会の大きな流れとなっており、会社としても引き続き不断の検討を重ねてまいりたいと考えております。
4件目です。ダブル連結トラックの導入についてお話し申し上げます。労働力、ドライバー不足といった問題を踏まえ、また、CO2削減などの環境対策の観点から、特殊車両通行許可基準が緩和されました。具体的には、車両の最長制限を21メートルから25メートルに緩和し、新東名高速道路を中心にダブル連結トラックの運行を可能にしたものです。
 日本郵便では、4月1日から新東京郵便局-新大阪郵便局間で月曜日から金曜日までの毎日1往復、ダブル連結トラックを運行いたします。
5件目として、「平成30年度東京都スポーツ推進モデル企業」に選定されたことについてです。東京都では、平成27年度から、従業員のスポーツ活動の促進に向けて優れた取組みやスポーツ分野における支援を実施している企業等を、「東京都スポーツ推進企業」として認定しており、その中でも特に社会的な影響や波及効果の大きい取組みを行っている企業等をモデル企業として選定しております。
 このたび、かんぽ生命は「平成30年度東京都スポーツ推進モデル企業」に選ばれ、3月22日(金曜日)、東京都庁にて小池都知事より表彰を受けました。
 かんぽ生命はラジオ体操の普及推進や日本車いすテニス協会のトップパートナーとしての支援等に取り組んでおり、今後も健康づくりへの貢献やダイバーシティ社会の形成に積極的に取り組んでまいります。
最後に、オリンピック・パラリンピック採用競技種目への協賛についてお話しさせていただきます。日本で開催される「ラグビーワールドカップ2019日本大会」の盛上げに寄与するため、昨年度よりラグビー日本代表のオフィシャルサポーターとして協賛を行っておりますが、2019年度も協賛を継続することといたしました。
 また、パラリンピック競技への支援として、一般社団法人日本ゴールボール協会とオフィシャルパートナー契約を締結いたしました。
 そのほか、オリンピック競技への支援として、3人制バスケットボール日本代表および日本バスケットボール協会が主催する大会へ協賛することを決定いたしました。
 これまでもグループとしては「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」のオフィシャルパートナーとしての支援や女子陸上部の運営をはじめとして、スポーツ振興にかかわってきたところですが、今回の協賛を加え、「ラグビーワールドカップ2019日本大会」や「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の成功に貢献するとともに、スポーツを通じた社会貢献に努めてまいります。
 私から申し上げることは以上です。
【記者】
ゆうちょ銀行とスルガ銀行との提携についてお伺いします。金融庁が昨年の10月に、不動産投資向け融資で問題があったということで、スルガ銀行に行政処分を行い、居住面積が2分の1を下回る住宅ローン融資について、今年の4月12日までの業務停止命令を出しました。これを受けて、ゆうちょ銀行も、取扱いを停止しており、また、それ以外のローンについても積極的な営業を控えていらっしゃいます。業務停止命令の期間が終わった後に、これらの取扱いの再開について、どう対応されるのでしょうか。また、スルガ銀行との提携全体について、今後どう対応されていくかお伺いできますでしょうか。
【社長】
2月1日の記者会見の場で私どもの社内調査委員会による調査結果についてご報告を申し上げました。それ以降、状況は変わっておりません。おっしゃったとおり、4月12日までの業務停止命令ですが、ゆうちょ銀行が今後どのようにスルガ銀行の住宅ローン等に対応していくのかについては業務改善に向けた体制の対応をしっかり見きわめた上で、スルガ銀行とも十分相談をして対応を決めたいと思っております。一昨年の6月に口座貸越サービスについて、新規業務に関する認可を取得した際に、できれば今年の4月1日から業務を開始したいと申し上げましたけれども、スルガ銀行の対応を見きわめるまでは、口座貸越サービスの業務開始の目途もたてられないと思っております。
【記者】
クレジットリスクについてお伺いしたいと思います。マーケットの一部ではクレジットリスクが意識されているように思われます。ゆうちょ銀行、かんぽ生命でCLOの保有状況がどうなっているのか、そのリスクについて、現時点で長門社長がどのように見ていらっしゃるのかお聞かせください。
【社長】
一部報道で、ゆうちょ銀行が保有するCLOが多いという記事がございました。ゆうちょ銀行の総資産210兆円と比べるとわずかですけれども、CLOは一部保有しております。ただし、その記事に他の金融機関についても記載がありましたが、比較するとエクスポージャーは圧倒的に少ないとご理解いただいていいと思います。
 おっしゃるとおり、この年末年始に、マーケットが少し荒れました。様々な事情はあると思います。地政学的にブレグジットの問題の方向が見えず、ハードランディングする懸念があるのではないかということや、米中の貿易戦争のことなどが挙げられるかと思います。米国でFRBも金融政策について変更があるなどもあって、少しマーケットが荒れました。クレジットについての懸念がマーケットに参加している人々の問題意識だと思います。私どももそのリスクを勘案して、運用ポートフォリオを以前から十分注意して考えているつもりですが、より注意して対応していきたいと思っております。
 来年度の計画については、今年度の期末決算発表の際に改めて正式にご報告しますが、ゆうちょ銀行では注意して運用ポートフォリオを考える方向で来年度の計画を検討している段階です。例えば、ご承知のとおり金利が非常に低迷していることから、3年前にオルタナティブ投資をスタートしました。日本のみならず、少し上がってきたアメリカでも金利上昇打ちどめという対応を、先般、FRBのパウエル議長が発表しておりますので、ヘッジコスト等を勘案すると、通常の投資では、利益があまり上がらない環境になっております。そういうこともあり、オルタナティブ投資への重要性は増しています。ご質問いただいたクレジットの懸念点についてマーケットが非常に敏感になっていることも踏まえて、中期経営計画では戦略的投資領域の残高を8.5兆円程度までにするとしたのですが、引き続き慎重に対応していきたいと考えております。
 私どもは本来コンサバティブに投資をしようという姿勢でおりますので、資産側のほうの運用の85%以上は最低シングルA以上の格付けのものに絞っております。一部ハイイールドなものやエマージングマーケットのものがありますが、そういったものは非常に少ない状況です。
 マーケットは非常に危険な香りがしてきましたので、引き続き慎重に対応していきたいと思っております。
【記者】
先ほどの質問の更問になりますが、そういうわけで、市場環境が大きく変わったので、中計で積み上げようとしたオルタナのアセットの積み上げ幅を大幅に見直すということは、すなわち、運用による収益を当初見込みに比べて下げてでも安全サイドに変更するということなのでしょうか。その場合収益は下がると思うのですが、何かほかの方策で確保するというお考えでしょうか。
【社長】
2点申し上げます。来年度の計画になるので、5月中旬の期末決算をご報告する際に申し上げたいと思います。これが1点目です。
 2点目です。このような脆いマーケット状況なので、オルタナティブ投資等も注意しようと思っておりますが、大幅に見直すことは多分ないと思います。中計3年間で戦略的投資領域の残高8.5兆円をやるということにはならないかもしれないとご理解いただきたいと思います。
 余談ですが、本日の日経新聞の記事で、ヘッジコストが上がってきていて米国債に投資してもなかなか儲からないというものがありました。そのとおりなのですが、ヘッジコストは米国金利が上がってくると上がります。しかし、FRBのパウエル議長が金利上昇打ちどめと、少なくとも現状はそういう方向で考えているという話がございましたので、通常、金利は下がってくるわけです。そういう意味では、ヘッジコストはこれから下がってくると思います。ですので、実はそちらのほうはチャンスが少し広がるかもしれないと考えております。
 いずれにしても、5月中旬の期末決算発表でご報告させていただく予定です。
【記者】
来週からゆうちょ銀行の限度額が増額しますが、お客さまにとってのメリットと、窓口業務等におけるメリットやデメリットを教えていただけますか。
【社長】
限度額の増額を要望させていただいた理由については、ひとえにお客さまの利便性ということをかねてより申し上げてまいりました。
 今般、通常貯金と定期・定額貯金の枠が分かれることになりましたので、お客さまにとって非常にわかりやすくなったと思っております。また、限度額超過への対応のために、ひと月平均約1万通のご案内通知がゆうちょ銀行からお客さまに送付されています。それを受け取ったお客さまが、窓口にお越しになって事務手続きをされるということがありました。今回の措置は、お客さまにとってもゆうちょ銀行にとっても、その対応への負担が格段に減少することになりますので、大変歓迎しております。
 近隣に郵便局しか金融機関がないような地域があると思います。2,600万円という金額は、多くの方々の退職金の金額より少し多い額ですが、従来は郵便局には貯金できずにたんす預金にしたり、遠方の銀行に行って預けたりということで大変ご面倒をおかけしていました。今般の増額でそのような問題も大きく改善されると思いますので、お客さまにとって、利便性が格段に改善されると思っております。
 他の銀行から預金が流れるのではないかということを強くご懸念されておりますが、私どもは、これを機会に他行から預金を取るような営業活動は一切しないということとしており、先般、当社、日本郵便、ゆうちょ銀行の3社長連名のトップメッセージを社員に対して発出したところです。
 また、郵政民営化委員会からは2点の取組みを求められております。1点目は、貯金獲得に係るインセンティブを他の評価項目への振替等により、撤廃すること、2点目は将来の見直しについては、当社が保有するゆうちょ銀行株を3分の2未満となるまで売却することを条件に、通常貯金の限度額について検討することです。
 前者については、ゆうちょ銀行、日本郵便が意思決定できる事柄については4月1日から対応済みです。ただ、一部労働協約が絡んでいるものがございまして、これについては、既にいろいろな案を検討しており、労働組合との会話を始めているところです。可及的速やかにできることはすぐやるという方向で対応してまいりたいと思っております。
【記者】
改めて、キャッシュレスについて伺います。間もなくゆうちょPayが始まります。これは銀行Payの仕組みですが、これが始まることによってゆうちょ銀行を取り巻く世界が変わっていくのか。それから、J-Coinではなくて、銀行Payにした理由をお聞かせいただきたいです。
【社長】
キャッシュレスの世界、あるいはフィンテックの世界というのは、日本ではまだ始まったばかりだと思います。これから様々なことが起こってくると思いますが、絶対にそのトレンドに遅れてはいけないと思っています。180兆円の貯金を預かっていて、日本の中でのシェアが2割もあるような銀行が、キャッシュレスやフィンテックが音を立てて動いているときに、何も対応していなかったということは避けなければなりません。まだ発表できないことも幾つかトライしていますが、こうした取組みの第一歩として、スマホ決済サービスゆうちょPayの提供を開始するものです。
 当初、お客さまに一日でも早く提供する方法を検討し、検討時点で既に稼働中の「銀行Pay」の仕組みを利用するのが、最速コースと判断し、準備を進めてきました。そして、5月にゆうちょPayのリリースが控えていることから、ゆうちょPayを優先的に対応しておりますが、一般論として、金融機関等が相互に連携しながらキャッシュレスを広めていくという点については、社会的意義が大きいことから、協力し合える部分があれば、協力していきたいと思っております。
 キャッシュレスと逆の対応になるかもしれませんが、東急電鉄の駅の券売機から現金を引き出せるサービス(キャッシュアウト・サービス)は、おもしろいサービスだと思いましたので、参加しました。是々非々で考えて、商業性も勘案して、一つ一つ対応していきたいと思っております。
【記者】
スーパーフルトレーラSF25の共同幹線輸送については、業界団体を介しての大手陸運会社同士の取組みだと思いますが、この取組みの意義と、今後の人手不足を背景にした、物流の効率化、省力化に対する企業の壁をまたいだ協力の取組みについての見方を教えてください。
【社長】
本件は、やはり日本経済が直面している大きな問題の一つである労働力不足が根底にあります。当グループは全体で約43万人もの従業員がおり、そのうち、ゆうちょ銀行は約1万8,000人、かんぽ生命は約1万1,000人、日本郵政は約6,000人なので、日本郵便には約40万人の従業員がいます。
 ロジスティクス業務は労働集約型の業界なので、少しでも改善できることがあればトライしたいと思っております。その一環として、自動運転やドローン等の実験をやっており、本件もその一つとして始めたものです。必要なドライバーの数が5割で済むことや排出されるCO2が4割減るといった当面の実験結果も出ているということで、大変効果的な方法の一つと思っております。
 本件は協会ベースの施策ですので、お配りした資料にもあるように、私どもはヤマト運輸のトラックと協働します。これはラストワンマイルデリバリーを担っている業界全体のテーマだと思いますので、一緒にできることは是非一緒にやっていきたいと思っております。
 ご質問にあった他社との協力については、きのうの夕刊の1面に、宅配ロッカーの相乗りに日本郵便が参加を検討しているという記事がありました。将来的にはあり得るかもしれませんが、この施策については検討中ですので現段階でお話しできるような決断はしておりません。念のため申し添えます。
【社長】
どうもありがとうございました。