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2018年9月28日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2018年9月28日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

【社長】
私から4件、お話をさせていただき、後ほど、皆さまからご質問を受けてまいりたいと思います。
1点目です。6月から9月にかけて、地震、台風、大雨災害により多くの尊い人命が失われ、広範囲にわたって甚大な被害となりました。まだ、多くの方がいまなお仮設住宅での不便な生活を余儀なくされております。被災された方々に心からお見舞い申し上げます。
 日本郵政グループでは、災害救助法適用地域で被災された皆さまへの非常取扱いや義援金の無料送金サービス、契約者貸付および入院保険金の特別取扱いを実施しております。また、特に被害の大きかった一部の地域には、車両型郵便局を派遣して、窓口サービスを実施しております。日本郵政グループは、引き続き被災された地域に寄り添った取り組みを行ってまいる所存です。
2点目、今回の会見は、大手町社屋へ移転後、初めての会見となります。「前島ホール」は、「日本近代郵便の父」、前島密に由来しております。これまでの霞が関の本社には郵政省時代を含めて49年間おりました。官庁街の霞が関からビジネス街の大手町に移転してまいりました。民営化して11年、上場して3年、次の50年、100年を展望して、上場企業としてさらに飛躍してまいりたいと思っております。
3点目は、JPトールロジスティクス株式会社の発足についてです。ご承知のとおり、2017年4月25日にトール社の減損損失について公表し、併せてトール社全体の経営の改善に向けた取り組みを本格化させる旨、公表しておりました。それに基づき、2017年のトール社の経営陣の交代以降、2,000人規模の大幅なリストラ、部門の削減を伴う組織再編などの効率化施策を行った結果、収益面、営業利益ベース、EBITベースですが、2017年3月期では56億円であったものが、2018年3月期では102億円へと徐々に効果が見え始めてきているところです。先般、5月15日に中期経営計画を発表させていただいたときに、私からこのように申し上げました。
 加えて、取り組みが遅れていた日本国内のBtoB市場における将来の収益拡大に向け、トール社のノウハウを用いて、日本国内のコントラクト事業を立ち上げる計画であり、これにより海外発、日本発ともに、お客さまに一貫したソリューションを提供する総合物流事業の展開を目指しますとも申し上げました。すぐ具体的に発表させていただくと申し上げていましたが、その件が、本日ようやく発表できることとなりました。会社名は「JPトールロジスティクス株式会社」です。10月1日に発足いたします。所在地は、大手町プレイスウエストタワーとなります。社長は、日本郵便で国際物流を担当する専務執行役員の小野種紀が兼務で就任いたしまして、常勤の副社長に、6月まで日本郵便で常務執行役員として郵便・物流事業の営業を担当していた津山克彦が就任いたします。
 出資比率は、日本郵便株式会社とトールグループ、それぞれ50対50で、日本郵便が出資する金額は86億5,000万円です。今回は、海外のBtoBを中心に事業展開するトール社と日本国内に顧客基盤を有する日本郵便が共同で、主にコントラクトロジスティクス、すなわち倉庫を使った倉庫業と考えていただいていいと思いますけれども、それを中心に、日本のBtoB市場における収益拡大を目指すものです。これにより、総合物流事業の展開による一貫したソリューションの提供を行う事業をさらに成長させたいと考えております。
 現在、国内の物流企業の売上状況を見ると、売上高が年間1,000億円超、年商1,000億円超で一定の存在感を示すことができ、さらに5,000億円超でメジャープレイヤーとみなされると判断しております。JPトールは10年後を目途に、1,000億円、将来的には5,000億円の売上高を目指して事業を展開してまいります。併せて、さらにシナジー効果を上げるべく、日本国内におけるサービスも充実させていきたいと考えております。
4点目のご報告です。スルガ銀行問題についてお話をさせていただきます。去る9月7日、スルガ銀行第三者委員会の調査報告書が公表されました。スルガ銀行とゆうちょ銀行は、ゆうちょ銀行が民営化以来、住宅ローン等個人ローンを媒介する提携関係にあります。今般、調査報告書に示されているような実態が判明したことは大変残念に思います。
 他山の石として、ゆうちょ銀行をはじめ日本郵政グループとしても、法令順守の徹底、顧客本位の業務運営、内部管理の強化、健全な企業文化の醸成に、改めて一層注力して取り組んでまいる所存です。
 ゆうちょ銀行の住宅ローン媒介業務については、ゆうちょ銀行がこれまで、適切な営業目標設定と適切な運営をしてきていると考えておりますが、スルガ銀行問題がこれだけ社会的に注目を浴びてきていることでもあり、ゆうちょ銀行においても、自身の媒介業務について自主的な点検に着手してきております。スルガ銀行問題が不正融資問題であるという報道が日々高まってきていたことも受けて、従来から点検活動をしておりましたが、8月30日のゆうちょ銀行取締役会で調査委員会設置について、多くの取締役から提案があったことを受けて、8月31日、正式に委員会を格上げ設置し、現在、鋭意調査中です。
 調査は、最終的に完了しておりませんが、調査の進捗状況、その時点で把握している事実等、詳細にゆうちょ銀行取締役会と共有しており、また、概況について、日本郵政の取締役会にも報告しております。
 9月6日、共同通信社の記事で、「ゆうちょ銀との提携融資でも不正か」との報道がありましたが、現時点でゆうちょ銀行の社員が不正に関与したとの事実は出てきておりません。念のため、申し添えます。
 今後の対応については、現在の調査の完了、スルガ銀行新経営陣による今後の経営の方向性、その他もろもろの状況をしっかりと見定めて、適切に判断してまいりたいと思っております。
 私からの報告は以上です。
【記者】
1点だけ、毎日、報道等出ているのですが、土曜日含めた週6日の手紙等の郵便配達について、法律でそう決まっているものですが、この仕組みについても、事業者として、何か負担が生じてきているというような現状認識のようなものがあるのかどうか。その場合、土曜日なり、やめるということで、何か改善していくというお考えになっているのでしょうか。
【社長】
既に報道されているとおり、ことしの8月30日から、総務省の情報通信審議会の郵便局活性化委員会で、日本郵便の経営資源が限られている中で、利用者ニーズに対応しつつ、郵便サービスを安定的に提供するためには、どのような取り組みが考えられるかという議論が始まったばかりのところですけれども、それをしっかりと注視してまいりたいと思っています。
 会社としてどう考えるかという見解につきましては、本件は国民生活にも密接に関連する内容でもあり、その場を通じて、広く議論を承った上で、きちっと考えていきたいと思っています。
 一部報道にもありましたけれども、そんなデータがあるのかという話ですが、週6日配達のために土曜日に就業している従業員の数は14万6,000人であり、多くの人たちが働いているという事実はあります。働き方改革ということに対応して考えてもいいテーマだと認識しております。どのように考えて、結論をどうするかというのは、もう少し皆さまの議論を見きわめて考えたいと思っています。
【記者】
いまの点で、もちろんこれからの議論ということなのですけれども、事業者として、審議会の場で、やはりそういうお考えをなんとか言いたいということはないのですか。
【社長】
従業員が、随分たくさん絡んでいるという事実については、いろいろなデータも一緒にディスクローズしておりますけれども、日本郵便としてこうしたいという意見は、まだ、この審議会でも、ストレートには開陳していません。もう少し見きわめて、自分たちでも議論した上で、そのような結論が出れば、ストレートに申し上げる機会が来るかもしれませんが、現状では、まだそういう方向で、はっきりと発言はしておりません。
【記者】
冒頭、スルガ銀行の件でご発言がありましたけれども、今、調査されているということなのですが、具体的にどのように調査されているのか、どういった部分を調べているのかという点と、もし仮に何か不正が確認された場合は、スルガ銀行との提携の見直し等も考えられるかという点。その2点、お願いします。
【社長】
まず1点目でございますけれども、ゆうちょ銀行は媒介ですので、カードローンなどの個人ローンもあるのですが、住宅ローンをやりたいと、お客さまのニーズがある場合にスルガ銀行に媒介して、スルガ銀行で審査等をして、承認されれば融資するという内容です。
 残高の大体のイメージを申し上げますと、毎年、住宅ローンの新規取組額はラフに申し上げて350億円ぐらいです。ただし、残高は絶えず回収も来ますので、わりと一定で、2,000億円を超えないようなレベルで来ています。そうすると、スルガ銀行から見て、金利収入が計上され、ゆうちょ銀行は媒介手数料をほんの少しいただくのですが、このベースは非常にマイルドです。
 したがって、ゆうちょ銀行は媒介ですので、スルガ銀行のような事件はないと思っています。しかし、いろいろとお客さまの資料を改ざんしたとか、スルガ銀行ではそのような事件もあると承りましたので、ゆうちょ銀行として、きちんと見ていくべきだと思っていたので、そういうところがないかどうかということを中心にチェックをしようと思っております。
 ただし、もともとは自分の住む家を買うための住宅ローンの媒介というのが主体なのです。したがって、自分も住んで、一部人に賃貸するというような物件の数は、いま言った件数よりもぐっと減ります。ぐっと減りますので、そこを中心にしっかりチェックをしようと調査を行っている最中です。8月の取締役会で、取締役の方々からアドバイスがありましたので、きっちり見ようということで、弁護士を入れて、法的にもきちんとチェックをするつもりです。ただ、少し手がかかっていて、まだ作業が完了してない点もあるのですが、きちっとプロセスを踏んでいるというのを見ようとしているのが調査の内容です。
 2点目、スルガ銀行との提携をどうするかと。先ほどの説明の最後の部分で、今後の対応について申し上げたのですが、私どもは住宅ローン、個人ローンの媒介で、提携しているのはスルガ銀行だけです。スルガ銀行と今後どうするかというのは、これからいろいろじっくり見て決めたい、検討したいと思っておりますけれども、仮に、スルガ銀行と提携をやめるといった途端に、お客さまに住宅ローン等を提供できなくなる。それで、どうするのか。次の銀行を探すのか、いろいろあると思うのですが、そういうことを踏まえて考えたいと思います。スルガ銀行はこの前、社長以下全取締役がかわって、新体制でやっていくことを発表されていますので、彼らがどんな銀行になるのか、そういうことも見きわめて、しっかりと決めたいと思っています。現状では全く決定しておりません。
【記者】
1点確認させてください。その調査は、スルガ銀行の審査がどうだったかというよりも、ゆうちょ銀行の媒介業務が適切に行われていたかどうかという点を調べるという理解でよろしいですか。
【社長】
そうです。ゆうちょ銀行が担当している、この業務について、きっちりと精査するということです。
【記者】
スルガ銀行側に何か問い合わせたりとかはあるか。
【社長】
具体的にどういうケースかわかりませんけれども、プロセスの段階で、どうしてもスルガ銀行に聞かないとわからない事実があったときには、聞く可能性はあると思います。しかし、スルガ銀行の貸出業務について、彼らにも第三者委員会もあるので、そこはゆうちょ銀行のテリトリーではないと理解しています。
【記者】
2点お願いします。一つは、いまのスルガ銀行の調査ですけれども、調査のスケジュールはいつごろまでにという目途があれば教えていただきたいのと、もう一つ、JPトールのほうで、出資比率をフィフティ・フィフティとした理由、背景と、役職員でトール側からの受け入れはあるのか、その体制を教えてください。
【社長】
1点目ですけれども、鋭意、スピーディーにやっているつもりです。ただ、現場に行って、どういう状況かというのを確認しておりますので、たまたま、住んでいらっしゃる方がお留守だとか、いろいろなこともございます。少し時間がかかっておりますけれども、フルエナジーで迅速にやって、なるべく早く全てを明確にしたいと思っております。
 具体的に、いつ、終わり得るのかというのは、この段階では確約できないのですが、気合いを入れてやっておりますので、そんなに時間はかからずに、全貌がわかると思っております。そもそもターゲットのある案件はそれほど多い件数ではないものですから、それほど時間はかからないと思っていただいて結構です。残念ながら、いつまでに終わらせるかというターゲットがあるわけではありません。わかるまでやるということでやっております。
 それから、JPトールの出資比率を、フィフティ・フィフティにしたのは、新しい会社をつくるときや新業務を始めるときなど、どこの会社でも稟議があると思います。このような売り上げになるから、これだけ投資してもこれだけ儲かるはずだから、IRR(内部収益率)が何%でもいいじゃないか、やろうじゃないかというプロセスを踏むのですが、なかなか計り知れないところがあって、一応数字は置くのですが、確からしさというのは必ずしもはっきりしないのです。
 肝は何かというと、トールを買収したが、シナジーがないのではないかという声が出ておりましたけれども、私どもから見ると、シナジーの定義にもよるのですが、日本だけでいると、日本全体の伸び率が落ちてくる中、他方で、海外にすばらしい勢いで成長がある。この成長に参加できないのは口惜しい、だから何か手がかりがあったらやろうじゃないかというので、たまたまそれの最初のターゲットカンパニーがトールだと。これ自体はシナジーがあると思っておりますけれども、業務自体でもう少しシナジーがないのかというお声があったのですが、まさにこれは一つのシナジーなのです。コントラクト・ビジネスが非常に強くて、今回の立ち上げの数年は、主に非日系の会社ですけれども、トールがオーストラリアその他の海外で取引している会社が、既に日本にたくさんあるのです。その方々から、せっかくJPとトールがこのような関係になったのだから、ぜひ、面倒見てよという具体的なお客さまもあったので、これこそシナジーだなと。日本郵便がコントラクト・ビジネスはそんなに強くない、BtoBはそんなに強くない。トールはここが一番強いところで、かつ、お客さまがいるので、シナジーを体現化するためには、JPとトールのシナジーアクションというものを体現化したいというのが一つです。
 それから、新たにコントラクト・ビジネスをやるに際しては、倉庫とか何とか、いろいろなことでお金が必要になってきます。設備投資というイニシャルマネーも必要ということで、トールは既にオペレーションをやっておりますので、彼らの価値を、現在価値に引き直して、5割は幾らかという計算をして、きちんと第三者の目でも見てもらって、その金額、86億5,000万円を日本郵便のほうが出すと。これで50対50になる、こういう50対50なのです。このお金は設備投資に使おうという意味なのです。50対50にした理由というのは、やはり、新たなシナジー行為であるコントラクト事業を本気でやると、JPとトールグループとのまさに半々の業務なのだという趣旨を込めて、50対50にしたということです。
 取締役のお話がありました。これについては、当然ながら、ノウハウはトールのほうがあるので、トールの人材を使います。具体的に、役員も彼らから出してもらうことになっております。10月1日にスタートするわけですけれども、当初は20名ぐらいの規模でスタートを考えています。この中の中心人物ですけれども、いままでいるトールエクスプレスから11名、日本郵便から7名、トールからは、直にこのノウハウのある人を引っ張ってきまして、2名、このようなメンバーでやります。その他、一部、アウトソースする人材を3名入れて、20名ぐらいでスタートしたいと思っています。
【記者】
2点ございまして、1点目が、いまのJPトールの件ですけれども、具体的にどういったビジネスというか、どういったものを運ぶことを想定されているのかと思いまして、当然トールの顧客基盤ということなので、海外から日本に物を送るのだと思うのですけれど、現時点である程度もくろみというか、目途がついているのかというところ。既にこの分野というのはかなり国内でも強い企業もあるので、本当に太刀打ちができるのか、先ほど1,000億円をまず目指していくということでしたが、今後の展開というのが、どういったことを考えているのかというのをまず一つ伺います。
 それからもう1点は、郵便の土曜日のとりやめの検討が始まっていますけれども、日本国内の郵便業務というのは非常に収益性が厳しい状況でして、先般、値上げもしていますが、やはり収益性改善というのが今後、郵政の民営化というか、日本郵便が独り立ちをある程度していく中では欠かせないと思うのです。そういった収益性の観点から見て、働き方改革という議論があるのですけれど、どのような形についてどのようなお考えを持っていらっしゃるか、その点をお願いします。
【社長】
1点目ですけれども、申しわけありませんが、何を運ぶと言った途端に、どこかわかってしまいそうな業態ですので企業秘密とさせてください。10年間で、オーガニックグロースで1,000億円を目指したいと申し上げていますけれども、最初の3~4年は、既にトールが豪州やアジア等で取引している企業があって、我々はその日本法人が全く手つかずですので、ここのところをまず取り込みます。具体的に彼らからは、ぜひJPトールとやりたいというようなレスポンスもいただいているので、最初の3~4年は1,000億円を展望したシナリオの中ではあまり困ることはないと思います。
 むしろ後半戦が少し大変で、おっしゃるとおり、なかなかの激戦区で、先ほど申し上げましたように、5,000億円を超えている会社が10社ぐらいとか、1,000億円を超えている会社が20社、30社とあるわけです。彼らは既にやっているわけですから、ここと競って、そこにJPトールは、トールのノウハウもあって、非常に進んでいて、グローバルにも競争力があることが証明されていて、すごいのだということをセールストークに使いながら、望むらくは3~4年の間に、そういう方々の商売をとってきて、このような実績もあってと言いながら、セールス、ビジネスデベロップメントをしてまいります。おっしゃるとおり、生半可なことではいかないと思いますが、ここはまさにビジネスになるので、ここがこの会社のパフォーマンス上の勝負になると思います。
 土曜日のほうは、正直なところ、働き方改革ということをテーマで考えたいと思っています。絶対もう土曜日はやめようとか私どもが言うというのは、少し時期尚早で、もう少し内部でも外部でも議論した上で、方向感を出したいと思っています。ただ、郵便自体はおっしゃるとおり、なかなか収益性の高い業務ではありません。私どものビジネスモデルは、中計で申し上げたように、物流で2兆円年商売り上げがあって、3割がゆうパック、7割ぐらいが郵便です。これをゆくゆくは、3年以上かかりますが、半々にしたいというビジョンがあり、人的資源は郵便から物流に移しながらというシナリオで来ているのです。収益性は、このようなことも踏まえて、あるいはゆうパックのほうでeコマースがどんどん伸びています。ラストワンマイルはやはり私どもがやらなければいけないというので、こちらのほうでも頑張る余地はあると思っていますが、おっしゃるとおり、郵便は厳しいです。厳しいから、少し手を抜いて、ここで楽をして収益性を上げて、ここを狙うというよりは、やはり働き方改革をやらないと。いまはなんとか現有戦力で回しているのですけれども、日本郵政グループは非正規を加えると40万人が働いています。
 ものすごい試算ですけれども、仮に20歳から60歳まで働いたとすると、40年間働くことになります。40万人、40年間ということで、本当にラフな試算で、ブレーンストーミングなのですけれども、現状は1年間に1万人、人の新陳代謝がないと回っていかない業態になっているということです。いま、日本の労働市場は何万人の供給能力があるのだというと、100万人を切りつつあるわけです。去年の新生児が100万人いないと言われている。そういう時代になってきているときに、1社だけで40万人という業態が本当に長期的にもつのだろうかという問題意識があります。そういう意味でも、広く、働き方改革というものを捉えて考えたいというのが第一義的な問題認識です。
 ただし、申し上げたように、まだ我々は、土曜日の配達をやめたいとは一言も申し上げておりませんので、そのところはぜひ注意していただきたいと思います。いまの40万人、40年も、大変なラフな試算なので、少し言い過ぎな感じはあるのですが、そのようなイメージで働き方改革については思い入れがあるというふうにお考えいただきたいと思います。
【記者】
金融庁が先日、金融行政方針、今事務年度の監督の方針を出しましたが、その中に、去年までは多分、入っていなかったと思うのですが、持株会社である日本郵政のガバナンスをモニタリングするという言葉が入っています。もう一つ、ゆうちょ銀行に対しては、通年検査をすることになりました。金融庁からの監督の目が、目線が厳しくなっているようにも見えますが、長門さんは率直にどういうふうに受けとめていらっしゃるのかというのを伺わせてください。
【社長】
大歓迎です。私個人の印象で申し上げると、2003年、みずほの米州代表としてニューヨークに行ったときに、当時、常時、検査対象銀行になっている日本の銀行は2行しかなかったのです。マーケットに大きなインパクトのある銀行は、監視するとか、チェックするというよりも、しっかり当局とコミュニケーションを持ってやっていこうと、このような位置付けだったと思うのです。当時、入れてもらってよかったという議論がかつてあって、その後、私は赴任するのですけれども、銀行は部屋を貸与して、地区がニューヨークなので、常時、フェデラル・リザーブ・バンク・オブ・ニューヨークがいて、加えて、私たちのもう一つの監督当局であるステイト・オブ・ニューヨークのバンキングコミッティーの人間も来ていて、絶えずコミュニケーションをして、リスクはないのか、ちゃんとうまくコントロールできているのか、他行でこのようないい例があったが、おまえたちは採用しないのかというようなやりとりがありました。
 日本の仕組みでは常駐していませんから、そういうのはないのですけれども、やはり総資産210兆円のゆうちょ銀行、80兆円のかんぽ生命というのは、日本の中で大きな組織なので、メガのみならず、他の銀行と同じように、金融庁がしっかり、常時、コミュニケーションする対象にしたということだと思うのです。そういう意味では、ぜひ密にコミュニケーションをとっていきたいと思っています。
 持株会社のほうですけれども、ガバナンスが強化されるのも、大歓迎です。例えば、みずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グル―プは、明確に金融だけやっているような金融持株会社なので、わかりやすいとは思うのですけれども、私どもも金融持株会社の側面をはっきり持っておりますので、金融庁が持株会社も一緒に見てやっていきたいというのは、言ってみれば当然ではないかと思っています。今後、しっかりと、彼らと対話を行い、きっちりとした強いガバナンスも、コンプライアンスも、パフォーマンス的にも、強い銀行に、あるいは持株会社になっていきたいと思っています。
 昨日だったか、一部報道で、持株会社と金融子会社に少しギャップがある、という記事があったのですが、限度額のことをおっしゃっているのであれば、ゆうちょ銀行も日本郵政も同じ意見でやっておりますので、そのようなギャップは大きくないとご理解いただきたいと思います。しっかり見ていただく、しっかりいろいろアドバイスいただく。私どもも、困ったらすぐ金融庁とコミュニケーションして、ご相談申し上げたいという意味では、この体制はよかったと思っていますし、大変僣越ですけれども、日本を主に考えると、総資産210兆円のゆうちょ銀行、80兆円のかんぽ生命がいままで入っていなかったというほうが、むしろ少しおかしかったかなというふうに感じています。
【記者】
スルガ銀行の調査は、買った人が後に延滞するケースだけに絞って調査をされているということでしょうか。
【社長】
調査内容を、いまディスクローズするタイミングにないと思いますので、お答えは控えさせていただきますが、あえて申し上げると、そのように狭いところだけではなくて、もう少し広くやっております。いまはまだ発表するタイミングではないので、何を具体的にやっているか、申し上げるには、少し早いと思いますので。逃げるつもりは全くありませんが、ただ、おっしゃっていらっしゃるのは、少し我々の視点よりは狭過ぎるなと感じています。
【記者】
いまのところ、問題は見つかっていないのか。
【社長】
見つかっておりません。
【記者】
確認なのですけど、社内調査が始まった時期をはっきり教えていただきたいのと、弁護士を入れてやっていらっしゃると思うのですけれど、どのような態勢でやられているのかというのを、もし出せるのであれば教えていただきたいです。
【社長】
いわゆるスルガ銀行問題が発生する前から、通常のコンプライアンスとか、業務チェックは、常時、ゆうちょ銀行はやっております。ですから、この媒介ローンであろうが、何であろうが、きちんとやっておりますので、そういう意味ではずっと前からということになります。
 そうはいっても、スルガ銀行の問題は、正直言って、銀行のプロから見ても、結構、根が深そうだと感じるような報道が日々されるようになってきました。早期の段階で、媒介業務をそういう視点でしっかり見る必要があるということで、始まったのは、具体的にいつかと正確に申し上げられないのですけれども、報道が盛り上がった7月には、もう完全にそういうモードでチェックしていたという感じです。
 正確に申し上げることはできませんが、ただ、委員会設置にした経緯は、8月30日がゆうちょ銀行の8月の取締役会でしたけれども、そこでかなりきっちりと、このようにやっていますということを、大事なテーマなので、執行側から報告申し上げたのです。そこで、多くの取締役から、それでは、そのとおりなので、しっかりやったほうがいい、正式に調査委員会を立ち上げて、きっちりやろうということで、こういう形式にしようと決まったのが翌日の8月31日なので、正式な調査委員会発足は8月31日です。ですが、そういう意味で、前からいろいろ動いていたというようにご理解いただきたいと思っています。かなり前からと思っていただいて結構です。
【記者】
先ほどの持株会社へのガバナンス、金融庁の話なのですけども、さらに追加で質問したいのですが、この問題は多分、ガバナンスというと親子上場の問題も入ってくると思うのです。いわゆる子会社の少数株主の利益と相反してないかというような、持株の日本郵政とゆうちょ銀行、かんぽ生命といった場合に、具体的に言うと、例えば委託手数料の問題、業務粗利益が落ちている中でOHRがどんどん上がっている中、普通の銀行だったら、そこの経費に手を入れるのだけれども、そこが本当に日本郵便と委託手数料の仕切りというのが、本当にアームズ・レングスで決まっているのかというところが、議論されているのかが問われると思うのですけど、そのあたりのお考えをお聞かせください。
【社長】
ご質問は2点からなっていると思うのですけれども、1点目の親子上場のほうは、具体的に、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株を売るというプランがあって、申しわけないですが、東証にレジスターするまでは言えません。毎回申し上げているのは、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の経営の自由度を与えたいので、金融2社の株式をずっと持っていようとは、少しも思っていません。郵政民営化のときに決まっているわけですから。
 ただし、100%売るとなっているけれども、彼らにもユニバーサルサービスを課されている側面もあるし、ビジネスモデル上、ゆうちょ銀行もかんぽ生命も郵便局ネットワーク無しにはやっていけないビジネスモデルになっているので、全体のビジネスがどういうふうになるのか、彼らも、ユニバーサルサービス履行度はどうなのか、もちろん彼らのそのときの業況や日本全体の株式市場の状況等も見きわめて、当面、5割になるところまでやりますと申し上げているのは全然変わっていないのです。
 2点目の委託手数料ですが、アームズ・レングスに関して、他行は経費をカットして、例えば支店等も減っていって、従業員の数が減っていっているのに、日本郵政グループはどうなのというお話があったのですが、二つ申し上げますけれども、現状のビジネスモデル上、ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、2万4,000局の郵便局ネットワーク無しにやっていけない業態になっています。ゆうちょ銀行210兆円の総資産のうち、貯金が180兆円、そのうちの93%は2万4,000局で集めたお金です。直営店を233店舗持っているけれども、そこで集まるお金は7%です。ゆうちょ銀行の収益の約93%は運用収益で、約7%が手数料収益です。その半分が、1億2,000万口座から上がってくる決済手数料となっていますので、郵便局無しにやっていけません。
 かんぽ生命も、レベニューの約8割が保険業務の売り上げで、保険業務の売り上げは1万8,000人のセールスパーソンで稼いでいます。直営のセールスパーソンは1,000人です。1万7,000人は郵便局にいるということなので、彼らもネットワークが無いとやっていけないモデルになっているのです。
 幾ら手数料を払うのか。いま、大まかにいうとゆうちょ銀行が約6,000億円、かんぽ生命が約3,700億円です。例えばゆうちょ銀行であれば、新規に口座が開かれた場合、何分何秒かかって、何人の従業員が絡んだのか。これは、ゆうちょ銀行の直営店では、これだけの経費がかかっているのだと。一方で、郵便局のほうで何件できたのだと。それを掛け合わせて、若干の収益は乗っているのですが、そのような手順で、約6,000億円と決まるのです。客観的に第三者から見ても、このように計算しているということを証明できる構造でやっていますので、アームズ・レングス・ルールはクリアできるということを、2015年11月に、上場するときも東証の方に説明をして、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、日本郵政はアームズ・レングスで独立しているのだと理解してもらって上場しています。おっしゃるとおり、経費を節減したほうがいいいわけですから、そのためには、ゆうちょ銀行のほうで頑張る、あるいは日本郵便のほうで頑張るというようにやるしかないのです。
 問題は、そのスピード感でいいのかという議論があると思うのですけれども、二つあって、なるべく早くやりたいと思っているのと同時に、アプローチがメガバンクとは少し違うかもしれない。最後に残る拠点がひょっとすると郵便局になるかもしれない。特に離島離村については、なかなかクローズなんて局面はあり得ないと思うのです。そこをどういうふうに有効活用するのという議論もあわせて考えないといけない。それが上椎葉郵便局に宮崎銀行のATMを置くとか、日本生命の保険契約者が郵便局に来て、スクリーンを見ながら住所変更等の保全手続きを行えるとか、みまもりサービスとかをやっているわけです。そういう側面はいい方向にはあると思っています。
 したがって、それ以外の方法論で、先ほどの話になりますけど、ドローンや自動運転とか、そういうことも工夫して、拠点網を維持しつつ、経費削減の方法を少し本気になって考えなければならないと思っています。この点は二つテーマがあると感じています。
【記者】
郵便物の配達の関連で1点お伺いしたいのですが、一部報道で郵便物を配達する期限が、原則3日以内となっているのですけれども、これを夜勤の従業員の負担を軽減するために、3日という規定を緩和してもらいたいという要望を、近く総務省に日本郵便が出すという報道がありましたが、これについても働き方改革の観点から検討されているのかどうかというところをお伺いできますでしょうか。
【社長】
私どものほうで、それをいまやっている総務省の情報通信審議会等で明確にストレートに申し上げたという事実はありません。おっしゃるとおり、働き方改革の見地で、いろいろ審議会で議論されると思いますので、その議論を踏まえ、やはりこれも広くお客さまに影響を及ぼす問題だと思いますので、慎重に議論の行方を踏まえながら私どものほうで議論していきたいと思っています。いまの段階でこうしてほしい、これで決まりだと、私どもの方針は決めておりません。
【記者】
トールに関して二つ簡単にお伺いしたいのですけれども、トール本体、黒字基調になってきているわけですけども、今後の改革の道筋というか、それをどう描いていらっしゃるかをちょっと伺えればというのが1点と、あと、トールエクスプレスジャパンの取り扱いというのは、これは引き続き現状のままということでよろしいのでしょうか。以上、2点お願いいたします。
【社長】
トールですけれども、きょう発表申し上げた中で、少し慎重に申し上げたのは、もちろんEBITは昨年度102億円に増えているのですけれども、いま、リアルタイムでトールの業況を見ていると、正直言って、去年よりいいのです。いいのですけれども、勢いがもう少しという感じはあります。なぜかというと、昨年度一年間、2,000人ぐらいリストラをしたり、5部門あったのを3部門にしたり、いろいろ主に経費コントロールの面で業績を上げたという側面があります。要は、経費のコントロールというのは永遠の課題です。
 乾いたタオルを絞るという言葉がありますが、まだトールが乾いたタオルにもなってないと思いますので、頑張っているところで引き続き継続してやらなければいけないテーマと思ってやっておりますが、やはり王道は売り上げを、大きく伸ばすということをやらなければいけないと思うのです。回復を祈るだけでは足りないので、伸びているところ、主に医療関係や、薬関係、あるいは高級な衣料、ワインや、高級な水。そういうものが、全世界的に伸びているので、そういうところにもっと注力してやる等を王道でこつこつやるしかないと思います。
 それから、国ベースで見ると、やっぱり濃淡があって、豪州は自分たちの拠点なので、それなりに頑張っています。シンガポールも、トールシティは本当にいい施設です。相当ハイテクの、最先端の部分があり、シンガポールもいいのですが、正直言って北米等、いまひとつ売り上げが、トータルで苦戦している地域もあるので、地域的にはそういうところも、マイナスの部分をもう少し強くする必要があります。マイナスといっても、もの凄い赤字ではないのですけれども、そういうところをやっていきたいというのが売り上げ面の話です。
 経費のほうは4万人の会社でしたから、人員カット2,000人は相当な数字で、これがまた2,000人というわけにはいかないのですけれども、まだまだ経費面で対応できることもあるのでやっていきたいと思っています。
 一方で、タスマニアに行くビーフの船が、老朽化して、1船大きい船を買わざるを得ないとか、トラックが老朽化して、何百台更新しなければいけないとか、設備投資のほうもあるので、なかなか3年目以降厳しいのですが、いま、既にEBITは102億円になって、昨年よりもいい水準できているので、これを何とか伸ばしていきたいと思っています。ただ、主にレベニュー面でまだまだ満足いく段階に、なっていないというのが1点目の回答です。2点目のトールエクスプレスジャパンはもちろん、これは活かしていきます。
 今度つくるJPトールも、10年かかって1,000億円というレベルですけれども、既に彼らのほうの売り上げも圧倒的に多いのです。これはこれで活かしていき、連結ベースで見て、トールエクスプレスジャパン、JPトール、日本における物流事業をやっている日本郵便による宅配事業に加えて、宅配事業のほうは物流事業2兆円の中の3割だから売り上げベースで6,000億円ぐらいです。これはもう既にあるのですけど、これ以外のところもしっかり伸ばしていきたいと思っていますので、トールエクスプレスジャパンも、大事なエンティティで育てていきたいと思っております。
【記者】
日銀の金融政策が若干、柔軟化してきているというふうに理解しておりますが、受けとめと、御社への影響、また、今後さらにその国債の金利の上昇が見られた場合に、グループとして何か備えていることがございましたら教えてください。
【社長】
日銀政策については、1点目は、やはり20年来の日本マクロ経済の大きな課題の一つがデフレだったので、これに対してチャレンジしようという、黒田総裁の日銀政策の姿勢については、大変真摯なものを感じるので、頑張ってほしいと思っています。
 それから、2点目に、海外で米国の金利が今回もまた上がったわけですけれども、年内に利上げがあと2回ある等言われています。ヨーロッパのほうもQEポリシー、量自体は変えないけれども、買い増すのはやめようというようなことになりそうと言われている中で、日本の金利も、10年のところを、幅をつけて、ゼロからプラスマイナス10ベーシス調整できる政策を発動されたわけです。この動きは、マーケット状況を踏まえて、現状を踏まえて少し動こうというようにやられたのだと思っているので、そこについても黒田日銀政策については、僭越ですけれども、評価したいと思っています。
 私どもにとってどうかということについては難しいのですが、直後、金利が少し動きましたけれども、その後、10年債前後を見るとほとんど何もなかったかのような風情です。なぜかというと、あの発表をしたときにもう一つ条件があって、フォワードルッキングがかなり強調されました。セットになっているわけです。10年債のところをいじる一方で、フォワードルッキングが非常に強力で、これに引っ張られて、ほぼ10ベーシス上げてもいいというところが、相殺されている状況になっていると思います。
 したがって、10年債ぐらいまでのところを見ると、実はほとんどマーケットにインパクトがない状況です。私どもの日本の金融に対する投資対応というのは変わっておりません。ただし、20年債、30年債のほとんど流動性がないところは、一部はねたりしています。ここについての、お小遣い稼ぎのアクションというのはあり得ると思っています。私どもがどうしたのか、どうするのかということは申し上げませんけれども、一般的に、あのような金利のはね方をしているのは、そういう投資活動が有るからだな、と思っています。これが現状の、私どもの印象です。
 今後どうなるかというのは、状況が変わってくるタイミングというのはあり得ると思っています。ただし、黒田総裁は何回も、金融政策は全然変わっていない、引き続き、このポリシーでいくと、このイールドカーブ・コントロールが引き続き変わらないとおっしゃっていますので、大きく変わることはないと思っています。大きな方向転換はないと思っていますので、今年度から始まった中計の3年間、国内での投資方針についての変更は、現状しなくていいと、残念ながらできないと思っている、というのが現状、私の印象です。
【社長】
どうもありがとうございました。