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2018年6月26日 火曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2018年6月26日 火曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

【社長】
このたびの大阪府北部での地震に被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
 きょうは私から5件、ご報告申し上げたいと思います。
1 件目ですが、先週の18、19、20 日にございました株主総会について、簡単にご報告申し上げます。18日にかんぽ生命、参加者284名、19日にゆうちょ銀行、664名、20日に私どもの日本郵政、1,382名の株主さまにご来場いただきました。上場後初めて東京、ザ・プリンスパークタワー東京で開催させていただきました。昨年と比べて、かんぽが65名増、ゆうちょが57名増、日本郵政は初めての東京開催というだけではなく、株式の2次売却も昨年ありましたので、これもあってか、544名増えまして、6割増しの1,382名でございました。
 株主さまからのご質問ですけれども、やはり3社とも、この株価の低迷を何とかしてほしいというお言葉が一番多かったと思います。株価は私ども自身がコントロールできるものでもありませんが、もっときちっと選択と集中、効率的な経営をやってほしいというお声だと思って謙虚に受けとめて、私どもの仕事、企業価値の向上をしっかり目指してまいりたいと思いました。
 最近のテーマである同一労働同一賃金等の働き方改革に関しても、日本郵政の総会ではご質問がございました。担当執行役である専務の衣川から、グループの状況、考え方を丁寧に述べさせていただきました。私自身からも、株主さまもとても大事なステークホルダーなのですが、従業員の働きがあって私どものパフォーマンスがあるので、株主さまと同様に重視して、このテーマも真っ正面から取り組みたいと補足して申し上げました。
 今回の株主総会は、若干私見ですが、郵便に関わる質問が非常に多かったと思いました。日本郵政の場合、株主さまからご質問、あるいはご意見が13 問ありましたが、そのうちの6問が郵便に関わる質問で、専ら日本郵便では副社長、日本郵政では常務の諫山が答弁し、大変に多かったと思いました。
 もともと日本郵政は、日本郵便を持っている会社ということで、郵便に思い入れのある株主さまが多かったということだと思います。郵便は自転車で運ぶことが多いようだが、他社が使っている車両と比べると随分古い、電動自転車を導入するなど、ちゃんと設備投資をやってほしい、シール型の切手が便利だから、もっと増やしてほしい等、具体的なご意見もあり、郵便の話が多かったと思っています。郵便のファンが多かったと同時に、おそらく昨年度の決算で日本郵便はかなりの利益を上げたと。主に好調な宅配便によるものですけれども、ここで手応えを感じて、いろいろなご意見が出てきたのではないかと感じました。
 いずれにしましても、株主さまからいただいたご質問、ご意見をきちっと踏まえて、これからも企業価値の向上に努めてまいりたいと決意した次第です。
2件目ですけれども、5月15日に、中期経営計画を発表させていただきました。これを、海外の投資家に説明するため、IR出張に行ってまいりました。アジアは専務の池田がシンガポールと香港、ヨーロッパは専務の市倉、私はアメリカに行ってまいりましたので、簡単なご報告を申し上げます。
 私自身も15社ぐらいの投資家にご説明したのですが、まず第1に、今度の中計が保守的すぎないかというご意見を各投資家から言われました。ほかの企業の中計を見ると、本当にできるのかというような数字も含めて、大きな数字が出てくるものだが、随分地味ではないかという指摘がございました。そうおっしゃる投資家は非常に勉強されています。例えば郵便は、民営化して10年、毎年、年率で2.4%ぐらい落ちているのです。それで、昨年度は2.9%落ちたのですが、これからの3年間、今回中計での前提は、マイナス3.6%という数字を置いて、宅配便でカバーすることになっています。昨年は7億個の宅配便が8.8億個まで増え、1年間で26%増えたのですが、この宅配便がこれから3年間で合計19%しか増えないとか、トールは昨年度業績が営業利益ベースで50億円ぐらい一昨年度よりも好転したのですが、今後3年で、90億円しか戻らないとか、かなり保守的に書いてあるところを1点目に言われたというのが最初の印象です。
 2点目も、株主総会に通じるところがあると思いました。郵便、宅配、物流事業についての質問が、説明会の半分以上の時間を占めたという印象です。投資家の方々に聞いてみると、ゆうちょ、かんぽがこの低金利下でかなり苦戦をするというのは十分想像できる。どのような金利水準になるのか、どんな為替レートになるのか、世界経済をどう考えるのかということについては、そんなに大きな意見の差はないと思う。物流の業務が、初めて大きな利益を上げて、今後も期待しているので、物流関係の質問がかなり多かったという印象でございます。
 おそらく他社も熱心にIRをやっていて、他社からいろいろ話も聞いていて、日本郵便のポテンシャル、潜在的な弱点など、そういうこともきっとお聞きになっているのではないかと思います。物流維新、と私自身が印象を持ったのが2点目です。
 当然ですが、株主さまなので、どのように株主にリターンが上がってくるのかと、仮に、ゆうちょ、かんぽの株を売った場合のお金の使い方とか、そういう質問もあり、株主還元について、アイデアを聞かれたというのが3点目でございます。やはり大変厳しい意見が多く、非常に勉強になりました。これも、株主総会での株主さまからのお声と同様、海外の株主さまのお声も、真摯に聞いて経営にプラスにしていきたいと感じた次第です。
3件目、ゆうパックのサービス改善及びゆうメール基本運賃等の改定についてでございます。本件の詳細はこの会見終了後に日本郵便より改めて説明させていただきますが、私からは、ゆうパックのサービス改善について、少しだけお話をさせていただきます。
 ゆうパックのサービスの改善は、「身近で差し出し、身近で受け取り」を基本コンセプトに、この3月に第一弾として、初回配達前に受取日時の指定、勤務先への無料配送、または全国の郵便局での受け取りができるサービスを開始いたしました。今回はその第二弾として、第一弾で実施した初回受取場所に、新たにコンビニ、はこぽすが加わるもので、お客さまが指定できる受取場所の選択肢が増えることになります。このほか、ゆうパックの現在の6区分の配達希望時間帯に、新たに「19時から21時」という時間帯を追加して7区分にするというものです。今後のゆうパックサービスの改善については、ことし秋ごろにWeb決済型ゆうパックの開始を予定しておりまして、また来年春ごろには配達予告メールの拡充や指定場所配達サービスの実施を開始する予定でございます。日本郵便は今後もきめ細かくサービスを提供させていただくことで、より身近さを感じていただけるよう取り組んでまいります。
4件目です。お中元の業務運行についてお話しいたします。7月1日からお中元期が始まります。この時期は年末のお歳暮時期と並んで最繁忙期の一つであります。歳暮の月、12月は、例月の大体5割増しという感じです。例年であれば、お中元の時期は7月、関西の方は8月になるのでしょうけれども、2割から3割量が増えます。eコマースの活況、宅配他社の影響等もありまして、ゆうパックは依然、昨年の9月頃から好調で、対前年比で2割を超えるような高い伸びを示しております。その傾向は今年度になってもほぼ変わりなく続いております。お中元期ですので、労働需給が逼迫する中での厳しい状況と考えておりまして、処理要員の確保に努めました。ほぼ確保できたと考えております。社員一丸となって気を引き締めて頑張りたいと思っております。荷物のスムーズな配送のために、大口のお客さまには差し出しの時期などについて調整をさせていただく場合もあり、その点、ご理解いただきたいと思っております。
 人員の確保については、やはり昨年と比べても、ちょっと厳し目で、アルバイト等いろいろ手を尽くして、今は確保できたと申し上げられますが、途中でのスピード感は、昨年よりも少し厳しいという印象を持ちましたし、コストベースで少し高くなる派遣社員についても、昨年も一部依頼したのですが、ことしも依頼しておりまして、派遣社員の所要人数は、昨年より結果的には多くなりました。全体的な労働需給は一層逼迫しているという印象を持っています。
5件目は、かんぽ生命の「ご契約のしおり・約款」のWeb閲覧数に応じた環境保護団体への寄付の実施についてです。紙の量が削減できるということから、Web閲覧での確認をご利用いただいたお客さまの数に応じて、森林の育成に取り組む環境保護団体への寄付を行うこととしているものです。昨年もやっておりますが、今回の寄付は2016年10月から2017年9月までの1年間のデータに基づきまして、Web閲覧のご利用件数に応じて、総額で3,300万円の寄付を行うこととなりました。かんぽ生命では、今後も環境保護に貢献する活動を実施してまいりたいと思います。
以上、私からのご報告は5件です。
【記者】
よろしくお願いします。ゆうちょ銀行の限度額のお話なのですが、以前も伺いましたけれども、少し時間が経っていますが、議論の進展とか、スケジュール感とか、あと社長としては、あくまで通常貯金の限度額撤廃が望ましいというお考えでお変わりはないかどうか、教えてください。
【社長】
日本郵政全体の意見としては3月15日の郵政民営化委員会に私自身が呼ばれて、お話をしたとおりです。4月のこの場でも、限度額についてのご質問にお答えしましたが、ゆうちょ銀行も含め日本郵政グループ全体で、意見は変わっておりません。私どもとしては、通常貯金を限度額の対象から除外してほしいというのが希望であります。もちろんほかの方々に違う意見があるというのも伺っており、今、郵政民営化委員会で意見を調整されて、案をつくっていると聞いておりますが、私どもの手を3月15日以降離れたというふうに考えています。
今、郵政民営化委員会がどのような案をつくっているか、もちろん私どもは知らないのですが、以前の郵政民営化委員会で、限度額についてどのような所見があったのかを、せっかくの機会なので、確認したいと思います。きょうはその部分、2015年12月25日の郵政民営化委員会の所見の一部を、そのままご紹介させていただきたいと思います。ちょっと長くなりますが、読ませていただきます。
 「限度額の在り方を議論する場合も、最も重視すべきは利用者利便の視点である。限度額のある預金は、送金決済に制限を設けて、預金者に不便を強いる大きな弱点のあるサービスであり、民間金融機関が提供するサービスとして適切なものとはいえない。」
 「限度額超過の是正に伴う利用者の不便さや郵便局等の事務負担の軽減、資金の自由な流通の基礎となる送金決済機能の整備、投資信託販売等による貯蓄から投資への流れの促進等、様々な課題や社会的要請に対応していく必要性を考慮すると、①通常貯金を限度額管理対象から除外する方法が、最も多くの人々のニーズに適う案であると考えられる。」
 「他の金融機関等との競争関係やゆうちょ銀行の経営状況に与える影響等を見極め、特段の問題が生じないことが確認できれば、必ずしも株式処分のタイミングに捉われることなく、段階的に規制を緩和していくことが考えられる。その際には、単純な限度額の引上げという方法に限らず、あるいはそれとともに、前述のように最も多くの人々のニーズに応えることを主眼に、通常貯金を限度額の管理対象から除外する案や通常貯金と定期性貯金の限度額を別個に設定する案も検討に値すると考える」と。
 これは、以前の民営化委員会の意見ですので、今回の民営化委員会の意見はこれからさらに発展するものと期待しております。
【記者】
総務省の郵便局活性化のための方針案の中に、郵便局と自治体が連携するためにルール改定とかも視野に入れるようなものがありましたけれども、そういうことに対するご見解をお願いします。
【社長】
総務省での情報通信審議会は郵便局ネットワークをもっと有効に使う方法はないのかと、お客さまの利便性、あるいは地方創生、地域の一層の振興のために、郵便局をもっと活性化したいし、地方公共団体と、自治体とも一緒に組んで、何かやれることがあるのではないかという発想で、今いろいろ議論されていらっしゃると伺っております。先般発表された答申案も拝読させていただきました。既に地方公共団体とはいろいろやっており、公的証明書交付事務というのは、ことしの3月末現在、全国168市区町村から受託し、600局で既に実施中です。具体的には戸籍謄本とか、納税証明書、住民票の写し、戸籍の附票の写し、印鑑登録証明書は既にできるのですが、それにとどまらずに、もっといろいろやれるのではないかということを今回、審議会の方でアイデアをたくさん出していただいおります。当然ながら、地方の郵便局を利用して、自治体の仕事がもっとできるのであれば、お客さまの利便性にとてもいいことなので、私どももやれることは今後一緒に検討してやっていきたいと思っています。
 先日の答申案を見ると、やれることがたくさんあると感じています。先ほど申し上げましたような事務の受託もあるのですが、暮らしの安心、安全情報の収集という項目で、郵便ポストへのカメラ、センサー等の設置、道路危険情報や空き家情報等の収集、まだやると決めたわけではないのですが、このようなアイデアもあります。あるいは住民の利便性向上に資する活動への郵便局スペースの提供ということで、保育所の設置、地域金融機関のATM・窓口の設置、郵便局における市販薬の販売、地域の情報発信・交流拠点としての郵便局スペースの提供・活用、観光振興のための機能の充実・高度化として郵便局スペースの提供による地域のイベント・講座・教室等の実施支援、都市部の郵便局における地場産品の販売、これはもう既に始めているのですが、郵便局における手荷物預かり等、郵便局のサービス提供方法の多様化ということで、窓口開設時間の柔軟化、はこぽすの設置拡大、多言語翻訳支援等いろいろなアイデアがあって、そのとおりだと思います。日本郵便も、もちろんそのコストの見合いも考えなければいけないし、労働力が回るのかという議論もあると思いますが、ぜひ、こういうアイデアについて地方公共団体と一緒に相談して、できるものは実現していきたいと思いますし、あわせて、地域振興にお応えしたいと思っています。
【記者】
場合によっては、制度を変えることもありますでしょうか。
【社長】
もしもそれを進める上で必要であれば、そういうことも展望せざるを得ないと思います。可能であれば制度も変えてやっていきたいと思っています。
【記者】
2点あって、1点目は限度額の話、いつも同じで申しわけないのですが、経営に与える影響というか、地銀、地域金融機関との協力、協業を進めてきたわけですけれども、地銀の話を聞いていると、かなり頑なに反対し続けていると思うのですが、今後そういう動きに対して、どのような関係になっていくとお考えなのかというのが1点。
 もう1点は、金融界が反対するときに、これもいつも出てくる話で、完全民営化に向けた道筋をはっきりさせろというのがあるわけですけれども、この間も全銀協で藤原会長に、これって具体的にどういうことなのかというと言っている側も詰め切れていないのではないかなという感じがしないでもないのですが、この点について長門さんはどのように受けとめて、どうお考えになられているのか聞かせてください。
【社長】
1点目ですが、地域金融機関との関係、そもそもですが、限度額は政令マターですので、私どもの監督機関である金融庁と総務省とで合意して、決めるという話になると思います。決まったら、それがルールになりますので、私どもはそれをきちんと守って実行していくということになります。したがいまして、政令で決める際の大きな頼りになるであろう考え方の整理を郵政民営化委員会が今、関係者で議論をしてつくっていらっしゃると理解しています。
 限度額の規制緩和について、地域金融機関は困ると言われます。民業圧迫と必ずおっしゃいます。2点目の質問にもつながりますが、民業の定義は一体何なのか。10年前は100%政府が株を持っていました。今、日本郵政の株は政府が57%持っていますけれども、43%は上場企業として一般株主が持たれているわけです。私どもが持っているゆうちょ銀行の株は74%で、ゆうちょ銀行も上場しています。かんぽ生命の株については、私どもは89%となっていて、少なくとも政府が100%株を持っていたときとは変わっているわけです。これが一つあります。
 二つ目には、預金が集まるとおっしゃるのですが、ゆうちょ銀行の限度額が1,000万円から1,300万円に上がってから2年経過して、少なくともこの2年間私どもは一番預金が集まっていない業態だったと思っています。メガ銀行、地銀、信金、信組、農協系も含め、ゆうちょ銀行より預金が集まっているという状況です。それをもって、永遠にゆうちょ銀行に預金が一番集まらないだろうというのはちょっと口幅ったいのですが、ゆうちょ銀行の限度額が上がったことによって、突然預金が世の中にあらわれてきて、それが全てゆうちょ銀行に集まるということが起こるのであれば、ゆうちょ銀行が原因かもしれませんけれども、ご承知のとおり個人が持っている金融資産1,900兆円、この中の預金である850兆円は、常にどこかの金融機関に入っている。この2年間、ゆうちょ銀行にはあまり集まってきていません。それが、限度額が上がることによって一斉にゆうちょ銀行に流れてくるのかといえば、正直言ってなかなか想像しにくいと思っています。
 もう一つ言うと、ゆうちょ銀行は海外業務を全くしない、証券子会社も持ってない、信託機能も持ってない、海外拠点はゼロ、融資もできないところに本当に優先的に預金が集まってくるのだろうかと感じています。
 1問目に関して、池田社長がゆうちょ銀行に就任されて以来、地域金融機関と一緒に地域活性化ファンドを12案件行っております。ニーズがあったから行えたのです。お互いに地域を活性化しようという意図があって、限度額の問題があるから、躊躇する気持ちもあるかもしれませんけれども、地域に、エクイティを入れることによって活発にしていこうじゃないかという意図があるのであれば、一緒に組むというニーズもあり得ると思っていて、今後とも、ゆうちょ銀行としてはそういうものを続けていきたいと明確に思っています。
 大変僭越ですが、地域金融機関はある地域に強みがあって、ゆうちょ銀行は、2万4,000局の郵便局を含めて、全国津々浦々にネットワークを持ち、全地域にあるというのが特徴ですので、もう既に12案件のファンドに出資していて、相応のノウハウもたまってきていると思います。この地方ではこうだったのだけれどこんな使い方があるではないかというようなアドバイスも、いろんな地域でできるのではないかと思っています。
 JPインベストメントですが、あれはプライマリーではありませんが、セカンダリージェネラルパートナーとして、リミテッドパートナーではなく、ジェネラルパートナーとしてファンドを推進していこうという機能を備えています。そういうノウハウもあるので、地域金融機関から見ても、ゆうちょ銀行と一緒に組むというニーズはあるのではないかと大変僭越ながら思っています。日本郵政グループ、ゆうちょ銀行としてはぜひ引き続きやっていきたいと思っていますし、ニーズがあるのできっとできると今は感じております。これが1点目です。
 2点目の民営化の道筋が見えないとのご質問について、それでは、どこまでいったら民営化の道筋が見えたと言えるのかと。まさかゆうちょ銀行の株を100%売ったら初めて民営化の道筋が見えたと言うのではないのでしょうが、5割まで売ったら、ゆうちょ銀行が新しい業務をやるときには、認可ではなくて届出でできるというルールになっているわけですので、そのレベルになったらかなり民営化が進んだということになります。その時に、ゆうちょ銀行はまだ民営化の方針が見えないから、何をやってもだめだと言うのだろうかというところは、実は私どもも見えていません。ただし、日本郵政は2015年11月4日、東証上場時の1回しかゆうちょ銀行の株を売っていないので、まだ足りないという感じがあるかもしれないし、せめて5割までという感じが、あるのかもしれないので、謙虚に、そういう方向でできる範囲で進んでいきたいと思っておりますけれども、一体どこまで売ったら道筋が見えたということになるのかわからないというのが本音です。日本郵政が5割売るというのがメルクマールになっていますので、仮に政府がもう一回、当社の第3次売り出しをやって、今の57%が5割を切って、3割3分になったとすると、3割3分掛ける当社が保有するゆうちょ銀行の株74%で5割切るじゃないかという計算をして5割と言っても、それがもう民営化の方向が見えたと言われるのかどうかがわからないというのが、今、率直な印象です。ですから、少なくとも今は、他の金融機関にはまだ道筋が見えたと言って頂けないというような印象を持っています。
【記者】
少し話題が変わるのですが、お中元に向けて何とか人手を確保できたということなのですが、ゆうパックは前年同月比で2割を超えるような水準で、かなりタイトになってきていますし、ことしの3月は12%、個人向けには料金を上げましたけれども、法人向けのところの引き上げというのもずっと進めていらっしゃるかと思うんですが、今のトレンドというか、人件費の増であるとか人手不足の中で、一段とさらに法人向けの引き上げを、スピードを上げていく必要があるのかどうか、そういった見解を、まず一つお伺いします。
 もう一つは、人手不足の中で、国が骨太の方針で、農業、介護、観光、造船、建設といった主要5分野で2025年までに50万人強の単純労働者、外国人労働者を受け入れるという方針を明らかにしましたけれども、物流に関しても、やはりもう構造的に非常に労働集約的ですし、人手不足が深刻になっている中で、外国人労働者の受け入れについて、このあたり、長門社長としては、物流の世界においてはどのような可能性があるのか、あるいは、やはり必要性があるのか、そのあたりのご見解をお願いします。
【社長】
おっしゃるとおり、今の日本経済の大きな天井の一つが労働力逼迫ということだと思います。新しく生まれた子どもが100万人を切る時代ですので、ますます労働需給の逼迫は今後、頭の痛い日本経済のテーマになると思っています。
 それを跳ね返す一つの手段として、値上げを今後どういうふうにやるのかというご質問にですが、3月1日から日本郵便が扱っている全体量の1割ですけれども、小口の値段については平均12%上げたばかりですので、ここについては、またすぐに値上げをもう一回するということはないと思っていますが、法人の方は絶えず、見直しをしております。ですから、また来年になれば、これは需給もありますので、独禁法はもちろん気をつけますが、一般的なレートスケジュールがどのようになるのかということもにらみながら、上がっていくのであれば日本郵便も追いかけるかもしれませんけれども、絶えずやっていますので、今やっている最中に、もう一回、次を展望してやっているというところまで逼迫して値段を上げようという行動には、今、走っておりません。
 ただし、一つ、海外のIRでも私どもが言っていたのは、郵便が今度の中計でお示ししたように、今、約2兆円ある物流の年商の売り上げの中の3割ぐらいが宅配便の業務で、7割は郵便事業です。この郵便事業が過去10年間は、年平均2.4%で落ちてきていて、今度は3.6%で落ちることを前提にしているということで、そこに従事している従業員が少し浮いてくると思っています。この人たちを、伸びていくであろう宅配便の方に持っていくということを考えておりますので、多分、同業他社と比べても、人の逼迫度合いの深刻さというのは、日本郵便の方が平均的には少しマイルドなのではないかと思っていて、相対的ですが有利なポジションに、いるのではないかと思っています。もちろん、この労働力逼迫、労働料金の値上げのトレンドを十分注視して、しっかりと人材が確保できるように動いていきますけれども、ほかの業態の方々と比べると、少し恵まれたポジションにいるのではないかというふうに感じています。
 二つ目の、外国人労働者の件ですが、10年かけてやる人間が50万人と理解しています。かなり業態もはっきり特定していますし、有資格者のクオリフィケーションもはっきりしていまして、私どもの業態にそれが入るのかどうかわかりませんけれども、国籍を問わなければならないという局面ではなくなることは十分あり得ると思っています。ただ、今回の50万人の中にいるのかどうかということについては、まだ十分確証がとれていないので。ただし、どこかで足りなくなったときには、外国人の方の力も借りてという局面も、将来はあり得るのではないかと思っています。
【記者】
今回の骨太の方針というのはもう5分野というのは決まっていますけれども、今後、物流業界で人手不足が逼迫してきたときに、まさに、例えば郵便物とか宅配の仕分け業務であるとか、そういった、いわば単純労働の分野に外国人の方を受け入れる余地はあるのか。また、業界として、それを、政府に制度の規制緩和であるとか新設というのを求めていくようなお考えはあるのかというのを伺いたい。
【社長】
まず、高齢者雇用は65歳までで、正社員の定年が60歳ですが、高齢者の方、女性の方、パートタイム、アルバイトとか、まだまだチャンスがあると思いますし、先ほど申し上げた郵便業務の方から一部転任できる従業員もいるでしょうし、当面はこれで回ると思っていますけれども、今、具体的にまだ動いてはいませんが、一般的に当然、そのような時期もやってくる可能性はあるというふうに感じています。
【記者】
先週発令された日本郵便の東海支社と沖縄支社の支社長人事の狙いを教えていただけますでしょうか。
【社長】
いろいろな人を、いろいろ能力がある人を現場で、その力を借りてやっていくというのはいいことなのではないのかと思っています。例えば日本郵便の専務の大澤は全国郵便局長会の元会長でした。今、日本郵便で営業を見てもらっています。そういう、チームJPというのはこの郵便局ネットワークがあって、ゆうちょがあって、かんぽがあって、郵便があって、郵政があって、その中でこういう人事もあって、全部で40万人が総出で動いて回しているビジネスモデルなので、その中にいろいろなキャリアの方々がいるというのは、それはそれで大変にいいことなのではないかと思います。郵便局長のネットワークとも密なコミュニケーションを持ちたいし、実務を知っているし、郵便局にものすごい思い入れがあってやってきている方々がいるわけですから。
 今度の人事、そこだけではなくて、以前発表した人事で、例えば日本郵便でいうと、立林という本社にいた役員が東京支社に行くとか、かんぽ生命でも本社にいた大西という役員が近畿エリア本部に行くとか、いろいろ交流しているのですけれども、そういう種類の人事の一環として考えていただければいいと思います。
限度額の話がたくさん出るのですが、1点だけ。今の金融マーケットで、預金というのは重要なテーマなのかと思っています。マイナス金利で、集めれば集めるほど損するわけです。地域金融機関もメガも預貸率が100%になかなかいかない。集まったお金を十分使い切る運用方法がないというときに、本当にこれが今、金融にとって大事なテーマなのだろうかと感じています。私どもも、コアな業務なので、郵便局長を含めて大事に業務を推進して、日々遂行していますが、全員で貯金を増やそうというようなインセンティブ体系もつくっておりません。それよりは、「貯蓄から資産形成へ」ということで、投資信託等へのインセンティブが圧倒的に厚くなっています。フロントの社員もそれを十分承知して貯金という業務に対峙していますので、たまたま今、限度額がテーマとして非常に議論になっていますが、今の日本の金融のテーマは多分それが主役ではなくて、例えばアマゾンが金融機能を持つのではないかとか、フィンテックになってくると金融機関の機能が落ちてくるのではないかとか、金融機関の役割の重さが、ウエイトが薄くなるのではないかとか、いろいろなテーマが動いていて、多分そちらの方がメインストリームのテーマだと思います。
 という意味でも、大変僭越ですが、限度額の報道は少し熱すぎではないかと、感じていることを一言だけ付言させていただきます。
 どうもありがとうございました。