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2018年11月28日 水曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2018年11月28日 水曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

【社長】
本日、私からは4件お話しさせていただき、後ほど皆さんからご質問を受けてまいりたいと思います。
はじめに、去る11月16日金曜日に総務省の情報通信審議会郵便局活性化委員会において私どもから説明を行った件についてのご報告です。
 日本郵便から郵便物の配達頻度の見直し、土曜配達の休止、送達日数の見直し、送達日数原則3日以内の繰下げ、について説明させていただきました。郵便物は年々減少しており、2001年度に約262億通あったものが、2017年度には約172億通となっています。昨今の電子メールやSNSなどの通信手段の多様化などにより、この減少傾向は今後も継続していく可能性が高いと考えています。こうした状況にあっては、郵便に求められているニーズも変化が生じており、そのニーズに即した郵便サービスの提供を行っていく必要があると考えています。
 一方、郵便事業は、週末や深夜の労働に依存している労働環境であり、また、近年は労働力不足による長時間労働も問題となっており、働き方改革への対応が求められている中、これらの状況を改善することが喫緊の課題となっています。
 こうした環境下で、今後とも安定的な郵便サービスを提供していくためには、現在の労働環境の改善を図って働き方改革を進めるとともに、郵便のユニバーサルサービスの内容にも踏み込んだ抜本的な業務の見直しが必要と考え、今回の要望に至ったものです。
 また、これにより、郵便から荷物分野への経営資源のシフトも進めたいと考えております。今回の要望事項については、委員会でご議論いただいた上で、郵便法の改正が必要となるものです。日本郵便の今後を見据えれば是非とも実現したい見直しであり、闊達にご議論いただきたいと思っています。
2件目は、中間期決算についてです。
 今回の決算についてですが、郵便・物流事業、とりわけゆうパックの収益拡大により日本郵便が発足した2012年10月以来、日本郵便として初めて中間期で黒字となったことや、かんぽ生命における資産運用収益が堅調に推移したことから、中間純利益は、前年を435億円上回る2,237億円となりました。
 去る5月に公表させていただきました通期の業績予想3,300億円に対する進捗率は67.8%となりましたので、第3四半期以降の見通しを考慮した上で、業績予想を500億円増加させ3,800億円に上方修正させていただきました。
 中間期までの6カ月間は、本年5月に発表させていただきました「中期経営計画2020」のスタートとしては、概ね順調なスタートだったと考えているところです。アナリストの皆さまのレポートを拝見させていただきましたところ、中間の業績に対して「ポジティブ」との評価を多くいただいた一方、業績予想の修正については、「まだまだ保守的」とのコメントも複数あったと認識しております。
 下期については、郵便・物流分野では、ゆうパックの収益は堅調と見込む一方で、料金改定に伴う年賀はがきの販売減少といったリスクも想定されます。また、金融分野においては、引き続き金利が低位で推移するなど厳しい環境が続いていることから、決して楽観できないと思っております。
 日本郵便については、ゆうパックの利益確保と年賀の確実な販売、ゆうちょ銀行は、運用の一層の高度化・多様化や手数料などの非金利収益の拡大、かんぽ生命は、新たな顧客層の開拓や運用の多様化等にしっかりと取り組み、実績を積み上げていきたいと思います。
3件目は、年末の郵便局の繁忙についてです。
 今年も残すところあと1カ月。12月からはお歳暮の配送が本格化することで、ゆうパックなどの荷物の増加が見込まれております。足元の荷物の引受状況は、一時期に比べると一段落したとはいえ、12月期は例年平常月の5割増しの取扱量になることから、これにしっかりと対応すべく、荷物の区分け、配達などについて万全の体制で臨むこととしています。具体的には、昨年同様、業務の平準化に向けて、大口のお客さまには差出日、差出時間、配達の猶予などの要請をさせていただいております。
 また、全体数は控えさせていただきますが、アルバイト等は11月19日現在、9割程度確保できています。引き続き100%確保に向けて努力していくとともに、不足する場合には、社員の応援などにより対応してまいります。
 このほか、施設の借入、小包区分機の増配備、運送便の確保、本社・支社社員の応援体制の準備等を行っています。
 次に、平成31年用年賀はがきは、11月1日から全券種の販売を窓口で開始しており、11月27日現在、収入ベースでは対前年101.0%で前年並みの販売状況で推移しています。今年も人気アイドルグループの嵐をコミュニケーションパートナーに起用し、あらゆる世代の方々に日本の文化ともいえる年賀状を楽しんでいただこうと趣向を凝らしています。「ミライトワ、ソメイティをデザインした東京2020大会寄附金付年賀はがき」「各地のご当地キャラ等を題材にした寄附金付年賀はがき地方版」など、いろいろ取り揃えておりますので、是非ご愛顧賜りたいと思います。
4件目は、配送ロボットの実証実験についてです。
 日本郵便では来たるべき将来の物流の形を見据え、新しい技術と物流の融合に向けた取組みを行っています。先月の会見ではドローンの実用飛行についてお話しいたしましたが、本日は、配送ロボットによる実証実験について少しお話し申し上げます。
 配送ロボットによる実験は、昨年12月に福島県南相馬市スポーツセンターで第1回目を行いました。このときは、センター内の外周コースに簡易テント等で仮想郵便局や仮想個人宅を設置して実施しましたが、今回、第2回目として、自動車教習所のように実際の道路に近い環境での走行や、集合住宅等をお借りした配送など、よりリアルな環境での実証実験ができないか検討しているところです。今回も福島県での実施を検討中で、現在、自治体などの関係者と調整中です。
 詳細については、決まり次第、日本郵便からお知らせします。
私からのご報告は以上です。
【記者】
今月幹事社です。よろしくお願いいたします。社長の冒頭のお話に絡めて2問質問をお伺いしたいのですけれども、まず1問目は、最初にお話しいただいた総務省の活性化委員会で、申し入れになった配達の送達日の緩和、土曜配達の休止の件です。本当に実現すれば、コスト削減につながって、リソースも回せると思うのですが、一方で、郵便がずっと減り続ける中で、こういったコスト削減効果というのは、いずれ消えてしまうというか、郵便物の減少によって今後どんどん効果が薄れていくという面もあると思います。その中で、サービスのレベルをあえて落とすというのは、最終手段に近い、かなり思い切った手だと思うのですが、それを今ここであえてやらなければいけないほど、やはり危機感が強いというようなご認識なのでしょうか。そのあたり少しお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
【社長】
冒頭の発言で申し上げましたように、こういう世の中ですので、郵便はどんどん減ってきています。先ほど申し上げた2001年度に262億通、2017年度で172億通、このペースというのは年率マイナス2.2%で落ちていっているという状況です。これに対して、どのように対応するかですが、マクロの環境の事実として起こっていることは、郵便がこのようなペースで落ちてきているということのほかに、幾つかあります。例えば、配達先の数は実は増えてきています。大家族から核家族というトレンドがあって配達先は増えていまして、数字で申し上げると、1996年には約4,990万箇所だった配達先が、2017年度は1,000万箇所以上増えて、約6,240万箇所になっています。そうすると、この1996年から2017年の間に郵便の数も減っていますから、配達先1箇所あたりの郵便物数は1.39通から0.92通になっており、1通を下回っているという事実があります。
 どのぐらい経営へのインパクトがあるのかブレーンストーミングすると、仮に昨年の数字が172億通で、毎年2.2%減るとした場合、単純計算で3.78億通減ることになります。これが全部はがきの場合、62円ですから年商ベースで235億円減ります。全部封書の場合は82円なので310億円減ることになります。割合を半々にした場合、272億円ぐらいが毎年減っていくことになります。毎年このレベルで売り上げが減少していくビジネスは大変で、その危機意識は非常に強く持っています。
 そこで、どのように対応するかというときに、最終手段としてはいろいろな手段があり得ると思うのですが、各国の例を見ると、配達日数を減らすほかに、値段を上げる、国から補助金をもらう、それぞれの国で、それぞれの対応方法があります。私どもの対応としては、ちょうど働き方改革が問題となっており、労働力逼迫問題もテーマになっているので、これを捉えたというのが私どもの今回の意思決定につながっている背景です。
 例えば、数字が古いですが、ことしの4月の職業別の有効求人倍率を見ると、職業全体での倍率が1.45倍の一方で、運搬一般、運搬業務というのは2.57倍です。そして、運輸の中で郵便事務という項目があり、これは6.05倍になっています。1966年に人口が1億人になって、そのとき65歳以上の人は7%しかいませんでした。今、人口はどんどん減少していて、2050年頃には、1億人を下回って、65歳以上は37%になるという試算があるように、ただでさえマクロが減ってきている中で、郵便事業には影響が大きいと思っています。
 加えて私どもの場合には、毎土曜日に配達のために出勤している社員が5万5,000人います。また、郵便の区分業務棟を担当する内務深夜帯勤務の社員数は8,700人です。働き方改革が大きなテーマでもあり、よりよいサービスで、今後も配達業務を続けるという手段として、土曜配達の休止、送達日数の緩和を選んだということです。
 私どもで、アンケート調査もさせていただいて、現状を打破するためには、例えば「値上げして土曜配達する」か、それとも「土曜配達を休止する」か、と聞いたところ、圧倒的に「土曜配達休止」と回答をいただきました。先ほど申し上げましたように、ただでさえ配達箇所1箇所あたりの配達郵便物数は0.93通で1通を下回る時代になって、アンケート調査の結果もありましたので、私どもは土曜配達の休止、送達日数の緩和の決断をした次第です。
 ご質問の趣旨は、それだけ売り上げが落ちるかもしれないときに、今回、土曜配達の休止、送達日数の緩和をすれば経済効果もあるだろうが、一体何年もつのかというご指摘だと思います。土曜配達の休止、送達日数の緩和は、法律におけるユニバーサルサービスの定義を変えるという、大きな作業です。これをしっかりとやった上で、その次の段階で様々な課題が出てきたら、また対策をとっていきたいと考えています。
【記者】
決算に関しての質問です。今回、郵便のゆうパックが非常によくて、上方修正にもつながっているということですけれども、足元で今までの大幅な増加の状況が一段落してきて、今後のてこ入れ策等、何か考えていらっしゃるのか。現状は、もうこのまま、むしろ人手不足対応ということで、この水準でよしと見ていらっしゃるのか、そのあたりも少し伺えればと思います。
【社長】
既に公表させていただいているゆうパケットを含むゆうパックの、それぞれの毎月の対前年同月比との伸び率で申し上げると、昨年下半期から非常に増えていました。昨年10月からの伸び率を申し上げると、プラス22.1、25.9、22.1、28.8、27.2、26.7と増えてきました。今年度の数字を申し上げると、4月から29.3、26.5、6月から落ちてきて18.8、15.5、15.5、9月に申し上げたのは5.8でまだプラスです。ただし、これはゆうパケットを含んでいるので、ゆうパックだけの伸び率で申し上げると、昨年はずっと3割弱、2割強、増えていたのですけれども、ことしになって、4月から申し上げると、21.2、18.0、8.5、6.0、8月がプラス2.7、9月はマイナス7.2でした。10月は今月末公表しますので、まだ申し上げられないのですが、やはり少し下げてきているという事実はあります。
 この要因は、昨年の下半期から毎月約2割から3割増えていましたが、やはりさすがにそれは永久に続かないということと、個人向けは全体の量の中では1割程度ですが、3月1日から平均12%ほどの値上げをさせていただいています。同じように、対大口の法人のお客さまには絶えず見直しを行い、かなりの伸び率で価格を上げさせていただいたこともあり、お客さまもいろいろ検討されて、少し量を抑えたのかもしれないと思っています。おっしゃるとおり、量ベースの伸び率は落ちてきていますが、単価の値上げをさせていただいたこともあり、売り上げベースで考えると、当初考えていた計画をまだ上回るレベルで推移しています。
 当然、量は増えたほうがいいので、何とかこの量を大きく落とすことなく、キープしていきたいと思っております。一番大事なのは、量をとるために単価をまた少し下げるというような施策は絶対にとらないということです。この価格折衝というのは常時やるのですが、労働対価にふさわしい価格でしっかりとるという方法は変えません。その上でできることは、やはり、いろいろな意味でのクオリティー、サービスをきちんとやって、差別化を図っていくことだと思います。それらをしっかりとやった上で、でき得れば量についても増やしていけるようにしたいと思っています。
 先ほどの1問目で、大事なことをお話しするのを忘れてしまいました。郵便物は減少していますが、黙って看過しているわけではなく、コストカットも含めていろいろ対応しています。区分作業の機械化等、仕事の効率化を図り、売り上げが伸びるようにダイレクトメール振興や手紙文化の振興につながる機会をつくって需要喚起を図っています。実現してくるのはずっと先になると思いますが、本日申し上げたドローンや自動配送ロボット等私どもも懸命に、コストカットできるところについてはやっていきます。おっしゃるとおり、最後の手段の一つとして、今回、土曜配達休止等を考えたということです。
【記者】
土曜日配達休止、配達日数の緩和の点で、要望されてから、反響などはどのように受け取っていますか。
【社長】
様々なご意見が寄せられているので、しっかりと整理分析したいと思っております。また、審議会で有識者の方々がご議論されていますので、そのご意見等を十分見きわめて、しっかりと判断していきたいと思っています。
【記者】
2点あります。まずLINEとみずほ銀行が、昨日、新しい銀行をつくるというような発表をしましたけれども、特にLINEとか、IT系が新しい銀行をつくるような動きについてのお考えを、まず1点お願いします。
【社長】
LINEとみずほ銀行が銀行をつくる話については、私自身は新聞報道以上のことは存じ上げないので、直接的なコメントを言える立場にないのですが、例えば日本で時価総額が一番高いトヨタが20兆円程度ですが、GAFAと呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンが、80兆円、100兆円と、一時トヨタの4倍、5倍になるような、IoTの時代になっています。様々なところで、新しく生活に入り込んできていて、お客さま個人の、あるいは社会や国の利便性を高めているという事実があります。
 車も、先般、ソフトバンクとトヨタが協力すると公表されたように、移動するためだけの機械が、IT、AIの塊になっていく時代です。決済等の金融サービスについても、肩代わりして、より便利になるという方向観は十分あると思います。ですから、自身で金融業を行いたいとか、あるいは決済については銀行のほうに一日の長がありますので、銀行と組んで何かを行うということは、これからも起こると思います。
 決済機能などはスマホでやればできるようなことですから、銀行決済よりも便利になって、よりシェアが高まってくることもあるかもしれません。
 ただ、決定的に違うのは、本当の銀行という認可をもらわないと、例えばセーフティーネット、預金保険の問題等幾つかありますので、テクノロジーだけで銀行機能が全部肩代わりされるというほど単純なものではないと思いますが、金融にはなじんでいる分野も多いので、これから多く出てくると思います。
 私どもには、ゆうちょ銀行、かんぽ生命がありますけれども、そういうトレンドに遅れないように、しっかりと目配りしながらやっていきたいと思っています。
 ゆうちょ銀行においても、5月に発表をしたのですが、来春からGMOペイメントゲートウェイ株式会社や、横浜銀行・福岡FGと連携して導入する、スマホを活用したQR決済サービス「ゆうちょPay」や、mijica、デビットカード等このトレンドに遅れないように十分目配りしてやっていきたいと考えています。
【記者】
外国人労働者を郵便の配達に使うといったことは、可能なのでしょうか。
【社長】
可能だと思います。現状、私どもは応募に来られる外国人の方を拒否してはいません。条件が合えば採用しています。もちろん、そこにはダイバーシティの推進といった積極的な意思もあり、ハンディキャップを持っている方々も同様です。
 そういうことで、今後も自然に増えてくると思います。ただし、仕事の内容は日本語の問題などもあることから、外回りで配達をしてもらうより、内務での単純作業等、語学のハンディキャップがあまり影響しない作業を中心に配置しています。
 昨日、衆議院を通った入管法ですが、一般論で言えば、労働力逼迫というのが日本のマクロ経済の大きな問題の一つなので、これを解決する手だてがとれるのであれば、是非やっていただきたいと思っています。大きな方向性としては賛成なのですが、今回、指定されている14業種に現状、物流業界は入っていません。したがって、私どもがどうするかということについては、まだ業界としての方向性が決定していないので、しばらく状況を見守っていきたいと思っています。個別で採用できるところはしていますが、業界としてのコンセンサスは、まだできていないという段階です。
【記者】
少し先の話になるのですが、来年、退位、改元と、それに伴う10連休があるのですが、いろいろな対応が必要になってくるかとも思うのですけれども、現時点での準備状況や考え方を教えてください。
【社長】
10連休の間も、書留、速達、ゆうパックは毎日配達します。普通郵便は、日曜・祝日・休日は配達しないこととなっています。したがって、10連休の初日が土曜日なので、4月28日以降、5月6日まで日曜・祝日もしくは休日ということで、理論的には9日間、配達しないことになってしまいます。
 しかし、やはりこれだと、明らかにお客さまに大変不便をかけるのではないのかと、今から想像できますので、まだ決定していませんが、前向きに何らかの対応をとるよう検討したいと思っています。
 また、金融窓口を含めた郵便局の窓口も同様に、サービス提供のあり方として検討していきたいと思っています。
 それから、ATMについては、引き出し、あるいは預け入れ、これは現金でいつでもできる対応で臨もうと現状は考えています。ただ、最終決定には至っておりませんので決まり次第お知らせいたします。
【記者】
お話しくださった中間決算の件ですが、金融2社の数字を踏まえて、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の評価できる部分と、課題と感じられている部分について、それぞれ教えてください。
【社長】
まず、私ども郵政グループとして当期純利益を500億円上方修正させていただきました。かんぽ生命もご承知のとおり上方修正いたしました。その主な理由は、運用収益がよかったというものです。私どもは半期の数字目標を発表していないのですが、年間の数字目標と比べても非常に高い数字だったため、年度を通しても、修正義務が発生するような数字になるかもしれないと思いましたので、上方修正をさせていただきました。日本郵政の場合は、義務になるほどの数字ではないのですが、なるべくマーケットに現状の姿をお見せしたいということで、発表させていただいたというのが実情です。
 かんぽ生命は引き続き苦戦しています。かんぽ生命のレベニューベースの約9割は保険業務です。保険商品は貯蓄型と保障型の二つあるのですが、3年前、1月29日に日銀の黒田総裁がマイナス金利を発表して以降、貯蓄型は商品の魅力が低下しております。私どもだけではなく、同業他社も同様であり、もう一方の保障型商品でやっているということもあって、少し苦戦しております。
 金融財政事情の分析記事を拝読しました。記事のとおりで、他社のどこがいいかというと、外貨のところがいいのです。外国の保険会社を買った、そこの連結ベースの収益、配当収入を含めてです。外貨建て商品がいいということで、かんぽ生命より少しいいところがあると思うのですが、それ以外はほとんど他社と同様と思っています。
 したがって、下半期を展望すると、ここは引き続き苦戦すると思っています。もちろん、クオリティーやサービスをいろいろ上げて頑張っていこうと思っていますが、環境は引き続き厳しいと思っています。
 売り上げの約1割が資産運用収益なのですが、日本の保険業界ルールはユニークだと思うのです。ここでカウントしている資産運用の収益というのは、ゆうちょ銀行と全く違っていて、ゆうちょ銀行の場合には、キャピタルロス、キャピタルゲインも入ってくるのですが、かんぽ生命の場合にはインカム収益の部分だけが利益に影響するのです。保険業法に基づくリザーブを積み立てていて、キャピタルゲインが出ると、リザーブを積み増し、逆にキャピタルロスが出ると、リザーブから補填し、キャピタルロス、キャピタルゲインが当期の純利益に影響しない形にしています。良い悪いの話ではありませんが、そういう会計になっていることもあります。
 かんぽ生命は、当初見込んでいたよりも資産運用がもうかったということが大きな要因としてあります。これがあって、上方修正のプラス230億円(当期純利益)の数字が出てきたということですので、これが下期にまたすぐ来るかはわからないのです。ですから、かんぽ生命はほぼ、上期で出した増加数字がそのまま年次見込みの数字に乗る形で推移するのではないかと思っています。
 したがって、かんぽ生命は、本業は引き続き大変ではありますが、何とか特約のところを工夫してやっていくことと運用を引き続き頑張る必要があると思います。
 ゆうちょ銀行は平均デュレーション3年でかんぽ生命は約13.5年です。したがって、かんぽ生命はもう少し金利が上がってきたりすると、プラスアルファがあるかと思います。
 ゆうちょ銀行は引き続き大変です。収益の約93%が運用収益で、約7%が手数料収益です。昨年度の手数料収益964億円でした。今年度中間期で、111億円が投資信託関連手数料、また、ATM関連手数料は69億円です。両方とも好調で増えています。しかし、大部分を占めるのは運用収益です。ご承知のとおり、日本の金利が非常に低いという状況ですので、引き続き、日本での運用は大変苦労するだろうと思っています。
 それから、以前からリスク性資産への投資として、外貨運用を始めています。中間期決算で見ると、国債のシェアが3割を切りました。同じような規模で3割ぐらいのシェアで外債運用をしています。ここは引き続き積み増ししているのですが、米国金利が上がっているゆえに、為替ヘッジコストが上がってきていて、昨年度と比べると利幅が落ちてきており、やはり逆風と言えます。また、3月末に1.6兆円であったオルタナティブ等の戦略投資領域資産を今、2兆円を超えた水準に増やしています。ただ、これは果実が出てくるにはもう少し時間がかかると思いますので、ゆうちょ銀行は油断できないと思っています。下期にそんなに大きく収益の上振れが金融2社から出てくるとは思ってはいません。
【記者】
決算についてですが、国際物流をやっているトールについての評価と、エクスプレスに関して、リストラ効果が上がって、利益が若干増えているとは思うのですけれども、まだまだ厳しい環境に変わりないということで、来年に向けてどういうことをやられるのかというのが1点目です。JPトールロジスティクスが発足しましたけれども、現状何をやっているのかというのが2点目。3点目に、冒頭の郵便の配達日の議論について、今後のスケジュール感と法制度の議論がどうなるかを伺いたいです。実際、我々も商売として、第三種郵便でお客さまに送らせていただいているところもあるので、お伺いできればと思います。
【社長】
トール全体の業況ですが、一昨年度4,000億円の減損をして、トールを再生するといって、2017年度は対前期で比べると46億円の営業利益を増やしました。5月には中計を発表しましたが、そのときの数字を申し上げると2018年度、2019年度、2020年度の3年間でプラス90億円と発表しています。数字だけを見ると、1年間で46億円改善しながら、3年間で90億円では保守的過ぎるのではないかという評価もあると思うのですが、実際、保守的な数字になっています。現状はこれに沿った形で推移しているとご理解いただいて結構です。
 ただし、中計を発表したときにも申し上げたとおり、昨年度に46億円を改善した主な理由は、売り上げが増えたというよりは、経費の削減で増えたという状況です。CEOである会長と社長の2人を代えてまず行ったことは、4万4,000人の従業員のうち、約2,000人強を削減しました。トールは100年かけて100件以上のM&Aをして大きくなってきた会社で、管理、人事、総務、企画、調達部門の人員が重複していました。五つあったビジネスユニットを三つに統合して、経費を削ったことによって改善しました。
 ことしから、でき得れば、経費削減ではなく売上げを上げていくと言って動いているのですけれども、正直に申し上げて悪くはありませんが、大きな改善をまだ実感しておりません。したがいまして、引き続き手を緩めずに経費コントロールを継続し、売り上げも伸ばそうという経営方針でやっている最中です。
 経費については先般、オーストラリアで発表させていただいたように、M&Aした100社全てではありませんが、主計関係のシステムがばらばらだったので、全世界で使えるシステムにして、経理部門の人員を削減する方針です。
 正論は、売り上げを増やすことです。減損する前の好調なときのトールを見ると、オーストラリアにおけるエネルギー関係が、売り上げへの貢献度が一番大きい分野でした。エネルギーそのものに加え、ウラン、LNG、一般炭、原料炭、鉄鉱石等の採掘場で働いている人に、鉄道でお弁当を運ぶことも含めると、この関係が7割ぐらい収益ベースでありました。1バレル当たり145ドルつけた2008年の石油価格が一時28ドルまで下がって、現状また55ドルぐらいになっていますけれども、この貢献度が一番大きかったわけです。残念ながら、石油価格は145ドルと比べるとまだ低く、あまり期待できないということで、医薬品関係や水、ワインのような高級飲料に注力して頑張っていますが、まだ十分な手応えは感じておりません。したがって、トールの業況が中計を大きく上回ってすばらしくなるとはまだ申し上げられない段階です。
 JPトールロジスティクスについては、トールを買収して、私どもが持っていない高性能な倉庫や、物流ソリューションをお客さまに提案し、それをパッケージで提供するコントラクトビジネスの強みを利用して、Win-Winな形にしたいと思っていました。大きな意味でのシナジーは、日本だけの郵便ではなく、海外にも出ていくためであり、その第1弾が、トールの買収でした。業務そのものの狭い意味でのシナジーのためにつくったのがJPトールロジスティクスです。トールの持っているノウハウで我が国でのコントラクトビジネス等を伸ばしたいと思っています。
 このようなことが始まった背景を申し上げると、トールのグローバルなお客さまが我が国にもいて、オーストラリアなどの海外で取扱いがあり、トールを大変評価してくれています。そのお客さまから、トールの得意なコントラクトビジネスを日本でもやってほしいというご要請をいただきました。最初は、そのようなお客さまをターゲットにしています。
 まだできたばかりで業績をご報告できるような状況ではありませんが、ゆくゆくは売り上げ1,000億円にして、日本で大きな一つのコントラクトビジネスのプレーヤーになっていきたいというのがJPトールロジスティクスの思想です。次の決算期で数字が出たらご報告申し上げたいと思います。
 3点目の土曜配達休止等については、法律を変える必要がありますので、こればかりは私どもが決めるわけにはいきません。
 私どもの要望としては、次期通常国会で通してほしいと思っています。ただ、これは政治家の先生方がご対応されるので、私どもが直接コントロールできないことですが、働き方改革が差し迫った状況にあるので、なるべく早く実施したいと思っています。法律については次期通常国会で通していただきたいという要望はしております。ただし、通ったとしても、その後に政省令案を作成して、パブリックコメントをもらうと、最低でも半年以上かかると思います。仮の話になりますが、早くても2020年度の早い段階で実施できるかと勝手に私どもで考えているという状況です。
【記者】
来年10月に消費増税が予定されていますけれども、郵便料金について、前回の消費増税のときも上がっていると思うのですが、このあたり、現時点で会社の考え方を教えてください。
【社長】
まだ決まっていません。ただ、常識的には、私どもが負担するコストではないと思っています。既に議論は始めておりますが、今後しっかりと経営会議、そして取締役会で決めていきたいと思います。
【社長】
ありがとうございました。