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2018年3月28日 水曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2018年3月28日 水曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

【社長】
本日は3件、お話をさせていただき、そのあとご質問を受けたいと思います。
1件目。日本郵政グループの不動産事業については、民営化以降、郵便局や社宅の跡地を活用した開発を進め、不動産事業の2016年度の営業収益は260億円にまで成長しています。今後は、より効率的に推進し、地域特性を活かした開発を行うことで、地域の発展に貢献するとともに、この事業を将来のグループ収益の柱の一つとして成長させていくため、不動産事業に特化した会社を設立します。
 これまでは人事ローテーション上、不動産事業に特化した人材育成が難しい部分もありましたが、新会社は不動産事業を専門的に行う会社であるため、専門力を有する人材の確保・育成により、人材基盤を強化し、さらなる経営効率の向上を図りたいと考えています。将来的には、他社との共同開発など新たな事業領域にも取り組み、不動産開発によるまちづくりを通して、地域の皆さまへ新たな価値を提供してまいりたいと考えています。
 会社名は「日本郵政不動産株式会社」とします。資本金は15億円で、日本郵政株式会社100%出資の子会社として、4月2日に設立する予定です。新会社の代表取締役社長には、現在、日本郵政の代表執行役副社長として、不動産部門を担当している岩崎芳史が就任します。岩崎は、日本郵政の代表執行役副社長と新会社の社長を兼職することになります。
 設立当初の体制は50名程度。日本郵政グループで不動産事業を実施してきた社員や、民間他社で実務経験を積んだ人材で構成しています。会社の成長に合わせ、専門的知識・経験を持つ人材を追加的に受け入れることにより、新たな事業領域へ取り組める体制をおいおい整えてまいります。
2件目。お手元の報道資料にありますとおり、本日、あおぞら銀行とゆうちょ銀行との間で、あおぞら銀行の全店舗内へ「ゆうちょATM」を設置する契約締結をいたしましたのでご報告します。
 他行での「ゆうちょATM」の設置は、2017年7月に山形県鶴岡市の荘内銀行本店に実施しておりますが、今回のように、全ての店舗へ「ゆうちょATM」を設置するのは、あおぞら銀行が初めてになります。これに伴い、2018年8月27日から、順次、「ゆうちょATM」へ置き替えることになります。
 なお、あおぞら銀行のお客さまは、「ゆうちょATM」を同日から365日、手数料無料でご利用いただけます。
 今回設置する「ゆうちょATM」は、これまでファミリーマート等で設置しております16言語に対応した小型ATMです。この小型ATMは、国内約1,400社の提携金融機関カードが利用可能なほか、海外で発行されたクレジットカード等で日本円を引き出すことが可能で、海外からのお客さまも利用できる大変便利なATMです。
 ゆうちょ銀行としては、あおぞら銀行のお客さまに「ゆうちょATM」をご利用いただくことによるATM提携手数料の増加が見込まれます。また、あおぞら銀行においては、コスト面などを含め、ATMの効率的な運営の実現に寄与すると聞いており、双方にとってメリットのある施策となっております。
3件目は日本郵便に関することを3点、報告します。
 1点目。3月19日に報道発表いたしましたが、東京都板橋区の社宅跡地に保育所を建設しました。ベネッセスタイルケアにお借りいただいて、認可保育所「ベネッセ板橋三丁目保育園」として4月1日より運営を開始します。
 トータル生活サポート企業として、社会的課題の一つである子ども・子育て支援につながればとの思いです。今後とも、社会ニーズを踏まえながら、保育施設や高齢者向け施設をはじめ、グループ所有不動産の有効活用を進めてまいります。
 2点目です。平昌2018オリンピック・パラリンピック冬季競技大会が3月18日に終了しましたが、日本郵便では、メダリスト公式フレーム切手をオリンピックで13種類、パラリンピックで10種類を発行しました。売れ行きも好調で、既に60万シートを超えるお申し込みをいただいております。
 一方、通信販売においては、非常に多くのご注文をいただいたことから、お届けが遅れ、多くのお客さまにご迷惑をおかけしており、誠に申し訳ありません。一日でも早くお届けできるよう、順次、発送の準備を行っておりますので、何とぞご理解をお願いします。
 また、本日、オリンピック・パラリンピック関連のイベントが東京中央郵便局でありました。これは、不要になった携帯電話からメダルをつくろうというもので、環境省や東京2020組織委員会などが積極的に推進しており、日本郵便でもこれに全面的に協力する形で、全国約3,000の郵便局に携帯電話を回収する箱を設置することとしたものです。皆さま方にもぜひご協力をお願いいたします。
 3点目です。郵便局のみまもりサービス用として、直営郵便局約2万局に配備しているタブレット端末に、多言語翻訳用のアプリを4月中に搭載する予定です。近年、訪日外国人数は増加の一途をたどっております。東京オリンピック・パラリンピックに向けて、この傾向はさらに強まると見込まれ、外国人のお客さまにもスムーズに郵便局をご利用いただけるよう、このアプリの導入を決めました。
 今回、郵便局に配備するものは、音声認識11言語および文字入力認識30言語に対応が可能で、観光案内や日常会話等を中心に翻訳するものです。今後も利用状況を踏まえ、用語の追加を予定しており、お客さまとのコミュニケーションが円滑になるよう取り組んでまいります。
 私から申し上げることは以上です。
【記者】
2点質問させていただきます。まず、春季労使交渉、春闘ですね、3年連続ベアの据え置き、あるいは非正規の方々への手当、特別休暇等の発給というものが決められました。そこについての社長のお考えをお願いいたします。JP労組の方の手当の要求水準から比べると、手当は施されたにはせよ、そこには満たなかったのかなというところもあり、そういう点も含めてお考えをお願いいたします。
【社長】
超低金利下の厳しい経営環境のもとでの春闘でございましたが、労働組合からの強い要求に加えて、懸命に働いている社員に、できるだけ還元していきたいと思いを込めて、4カ月から4.3カ月への一時金の大幅増額。一般職6,300円、地域基幹職4,700円の初任給引き上げを行いました。
 今、ご質問のありました期間雇用社員の一層のモチベーションアップ、これを図るために、平均約14%増という一時金の増額、一日4,000円の年始勤務手当の新設、アソシエイト社員、すなわち無期雇用に転換した社員ですが、彼らに対する夏期、冬期休暇の新設等、これまで以上に手厚い処遇改善を図ることといたしました。
 さらに、働きやすい職場環境を推進するため、不妊治療休暇の新設等、病気と仕事の両立支援、育児休業の一部有給化、勤務間インターバル制度の段階的導入等の施策も今後、導入することといたしました。
 以上のように、期間雇用社員の処遇に関しては、昨今の非正規社員をめぐる社会的動向や、グループ各社の事業運営上、非正規社員も不可欠な戦力となっている状況を踏まえ、一層の処遇改善を図る必要があると判断し、先刻申し上げたような労働条件の改善を図ることとした次第です。
 社員一律のベアは、厳しい経営環境を踏まえ見送ったものの、一時金の増額や初任給の引き上げ等を行うことで妥結したものです。
 これにより、定期昇給等による月例賃金の増加分に、今回の一時金や初任給の引き上げによる賃金増加分を加えた上で、組合員の年収ベースで比較すれば、約4.3%の賃上げとなります。会社としては、厳しい経営環境の中でも、社員に最大限配慮した回答を行ったものであり、これを受け、全社員がより高い士気を持って仕事に励んでもらうことを期待しています。組合からいろんな要求はあったのですが、今回、最大限にお応えして、こういうことで妥結したと理解しています。
【記者】
今回の発表でもありました、ゆうちょ銀行とあおぞら銀行の件ですが、これまでゆうちょ銀行はATMについて、言及があったとおり、荘内銀行でのケース、あるいは宮崎銀行とは少し別の形で、ATMで協力していたとか、ATMについて、今後、他の民間金融機関あるいは地域金融機関との連携というか、あるいはこういう形での店舗内へのゆうちょ銀行ATMの設置みたいなのを広げていかれるお考えでいるのかどうか、それに関連して、民間金融機関との関係の議論でいきますと、昨今、郵政民営化委員会などで話されている限度額の議論でも、やはり限度額の規制を撤廃するようなことがあれば、地域との連携に溝ができるといったような指摘もありますが、その点についてどのようにお考えかをお聞かせください。
【社長】
まず、1問目のATMですが、私ども約2万4000局、全国津々浦々に郵便局があって、そこにATMを置いている関係もあって、今、保有ATMの台数は2万8,000台弱です。これから、フィンテック等の影響もあって、過疎地になかなか拠点を設けることを正当化できないというような金融機関も出てこられると思いますので、仮に私どものATMネットワークが、お互いにウィンウィンの関係になって使えるのであれば、あおぞら銀行のケースにとどまらず、引き続きそういう可能性も考えていきたいと思っています。
 昨年度の実績でいうと、ゆうちょ銀行の収益のうち約94%が運用収益です。約6%、約900億円弱が、手数料収益になります。その中の大きな項目の一つが、このATMのビジネスですので、お互いにウィンウィンになるようなアレンジメントが構築できるのであれば、あおぞら銀行と同じようなアレンジメントも、今後、機会があれば、私どもとしても考えていきたいと考えています。
 各銀行のATMの台数を調べてみました。昨年3月末の数字ですので、現在は若干変更があるかもしれませんが、三菱UFJフィナンシャル・グループが約8,300台、三井住友銀行が約6,000台、みずほ銀行が約5,600台となっています。私どもは約2万8,000台ですので、これを一つの武器として使えるのであれば、今後も推進していきたいと思っています。
 そういうウィンウィンのアレンジメントをやろうと思っているときに、限度額の議論があって、障害が起こるのではないかということですが、ゆうちょ銀行の池田社長が、現在一番推進しているのは、地域金融機関あるいは地方公共団体と一緒に、地方でニーズのあるエクイティを投下する共同ファンドをつくろうということで、3月28日現在で、既に11件設立しています。こういうものについては、地域にニーズがあり、お互いにやるメリットもあると思っていますので、私どもとしては、引き続き推進したいと思っております。ATMの問題についても、荘内銀行あるいは宮崎銀行のケースのように、ニーズがあるところもあると思っていますので、限度額の議論にかかわらず、お互いに納得できるのであれば進めていきたいと思っています。
 限度額について、いろんな報道が出ていますので、整理して申し上げたいと思います。大事なのは、これは政令事項ですので、もとより私どもが決められることではないと。
私どもは私どもの考えがあります。反対意見をおっしゃっていらっしゃる方々もいて、それらを踏まえて、現在郵政民営化委員会で広く見解をまとめようとされていらっしゃると理解しています。
 最終的には政府の関連部署で色々検討して決断されると思っていますので、私どもは決める立場ではございませんが、2015年12月25日に、郵政民営化委員会の案が出ており、それを見ると、株式処分のタイミングにとらわれることなく、3案を今後の対応として提示していて、第1案が通常貯金の限度額の撤廃、第2案が限度額を少し増やす、第3案は通常貯金と定期性貯金の限度額を別個に設定すると、こういう案が紹介されていて、今の郵政民営化委員会は、これを踏まえて今後どうしようかと考えていらっしゃると理解しています。
 私どもの意見ですが、ゆうちょ銀行、日本郵便の意向も含め、日本郵政の希望としては、2015年12月の案の第1案、通常貯金の限度額の撤廃を希望しているということを、郵政民営化委員会に申し上げた次第です。私どもにとってのキーワードは、お客さまの利便性向上と思っておりまして、やはり限度額があると、色々な手続きがあって、調べたところ限度額オーバーしたお客さまに毎月平均1万通、この関係だけで、ゆうちょ銀行からお知らせの通知を出して、お客さまとやりとりをして、郵便局の窓口で手続きをするというような非常に事務煩瑣となっています。正直、私どもの中の話ですが、毎月1万通のお知らせの通知を出すわけですから、事務的にも大変手間がかかっているということもありますので、私どもは通常貯金の限度額の撤廃を希望している次第です。
 他の銀行から強く反対であるというご意向ある旨、伺っております。少し整理してみましたが、一つの論拠は民業圧迫であるということがありますが、3、4年前とはだいぶ状況が変わってきて、日本郵政については、2回、株の売り出しをして、現在政府が持っている比率が、もう100%ではなく、57%弱となっています。私どもも1回、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株を売却して、議決権ベースが約89%になっているという状況があり、株式処分のタイミングにとらわれることなくということも踏えると、いつまでも民業圧迫ではないのではないかというのが1点目です。
 資金シフトが起こる。これを懸念されるという声を他の銀行から伺いますが、2年前に限度額を上げて以降、各業態の預金の状況を見ると、ゆうちょ銀行は最も低い方の伸び率だと認識しています。これは、私の印象ですが、どこかに貯金を持っていこう、預金を持っていこうというときに、私どもは融資もできない銀行です。大手の銀行のように、証券子会社を持っているわけでもない、信託子会社を持っているわけでもない、アセットマネジメントカンパニーの子会社を持っているわけでもない、海外に拠点もない、ドルも扱ってないという、そういうところに本当に資金シフトが起こるのかという気もしています。
 もう1点、この資金シフトについて言われたのは、信用不安が仮にあったときに、そういう銀行から流れてくるというお話がありましたが、これは大変僣越ですが、同等の理由で、私どもよりも魅力的に資金を引いているところがあるのではないだろうかという気がしていますし、90年代の後半、非常に混乱して、いろいろな銀行が倒れたり、大統合があったりしたときの金融環境と比べますと、セーフティーネットを含めて、そういう対応も随分できるようになっているので、私どもの限度額の議論が直線的に、そういうところの金融機関から一方的に資金が流れてくる話と結び付くかというと、少し考えがたいと感じております。
 バランスシートコントロールができないのではないか、現在金利がこういう状況ですので、資金が集まると、苦労するのはゆうちょ銀行ではないか。おっしゃるとおりで、現在いたずらに貯金を集めようという環境にはないと思っておりますので、現場への指示も、貯金よりは投資信託等も含めた預り資産を増やしていく体系にしようと、現場のインセンティブ等も見直しております。貯蓄から資産形成へという動きに乗れるように、NISAや投資信託等でお客さまに貢献できるように、それを現場でも頑張ってくれというようなインセンティブ体系もつくっているつもりですので、ものすごくバランスシートコントロールで苦労するとは思っていません。
 大事なところは、お客さまとの面ということで言うと、ゆうちょ銀行のビジネスモデルは2点強調しておりまして、投資信託販売等、コンサルティング事業の充実、強化を頑張りたいと。あるいは、地域金融機関、地方公共団体と一緒にファンドをつくって、エクイティを投下して、お客さまに貢献したいと。ATMについても、今後もそれぞれの地域でニーズがあると思っておりますので、引き続き推進していきたいと考えています。
【記者】
不動産株式会社の設立に関してお伺いしたいのですけれども、現在、グループが保有している不動産の総額、簿価なのか、時価なのか、いろいろ考え方があるかもしれませんが、教えてください。
 基本的にこれは日本郵便の資産と考えていいのか、ほかにも不動産資産をたくさん持っている部門があるのか。また、もう一つ、あえて新しく会社をつくる意味というのを改めて教えてください。ホールディングカンパニーの下に今は二つの上場子会社があるわけですけども、将来的なIPOとか、不動産会社に関してもお考えになっているのか、よろしくお願いします。
【社長】
まず、保有不動産の簿価ベースを申し上げますと、現在、グループ全体で約2.7兆円です。土地が約1.5兆円、建物が約1.2兆円です。日本郵便もたくさん持っていますし、日本郵政も一部持っています。今後、この不動産業務に注力してやっていきたいと思っていて、この100%子会社をビークルにして推進していきたい。
 従来も、東京駅、あるいは名古屋、博多の駅前とか幾つもやっております。約2.7兆円の資産を持っていますけれども、郵便局として使っている分もありますから、全部が全部フリーで使えるという土地ばかりではないのですが、そういうものもスピード感を持って、戦略的に一つの大きな営業の柱にしてやっていこうと思っています。
 今回つくりました会社も、一つはこの不動産業務をやるという経営の意思を内外に示す、決意表明という意味もあります。先ほど申し上げましたように、不動産関係の人材もおり、例えばこのグループに一級建築士が130人強おりますが、そういう人もこの不動産事業に注力してもらうという意味があって、今回、会社をつくったというのが趣旨です。
 日本郵便で持っているものは、引き続き日本郵便で持ってもらいますけれども、今後、日本郵便の資産を使って何か新しくやるときは、この子会社を通じてやることになります。資産を移すと、会計が難しく、そこで税金も発生しますので、ずっと持っていてもらって、収益は日本郵便に計上されます。けれども、それを差配していくのはこの子会社であるというような発想です。
 とりあえず、先ほど申し上げたような資本金が当初の資本勘定。当初、50名ぐらいの社員と思っています。そのうち10名強が他社からスカウトした不動産のプロ。いろいろな分野のプロも入れて50名ぐらいでスタートしようと思っています。来年度中にはさらに20人ぐらい増やし、業容を拡大していきたいと思っております。これをつくることによって、不動産業務を今まで以上に注力してやります。
 将来的には、第三者と組んで共同的なプロジェクトもやろうと思っています。人材をここで集めて、鍛えていきます。そういう趣旨でこの子会社をつくったということです。
【記者】
先ほど貯蓄から投資へということで、ここにも投資信託商品のラインナップ拡充とありますが、これを見るとなかなか難しそうなラインナップだと思うのです。この商品を売るのはなかなか大変だと思うのですが、こういう商品を売るためには、販売した社員とか、郵便局に対してどのようなインセンティブを与えていくのか、そういうものがなければなかなか進まないと思うのですけども、どれぐらいのプッシュをされるのでしょうか。具体的に戦術について教えていただきたいのですが。
【社長】
ビジネスプロモーションの見地からのインセンティブという議論と、お客さまにきちんと仕事を完遂するという見地と二つあると思うのですけれども、後者のほうから申し上げますと、貯金はそうではないのですけれども、ただオープンすればいいという商品とはかなり違い、メンテナンスも必要です。入口だけではなくプロセスも大事です。局面によってはその出口のほうも大事な仕事になります。したがいまして、約2万4,000局全局でできる業務だと思っておりません。ゆうちょ銀行は233の直営店を持っており、そこでノウハウも人材もためておりますが、それと約2万4,000局のうち、そういう人材も置けるようなところを厳選し、1年前まで1,300強の郵便局だけでしたが、今年度は101局増やし投資信託取扱局を1,416局にしました。お客さまに説明不足のため、ニーズに合わない商品を売ることがないようにということで限定してやっております。
 今年度、もう一つ、投資信託紹介局の拡大もやりました。ゆうちょ銀行の直営店233店舗、もしくは投資信託を取り扱う郵便局1,416局にお客さまを紹介することができる郵便局を約1万8,000局に増やしました。紹介はできるようになったのですけれども、責任を持って商品の説明をし、きちんとプロセスを見ていくのは、ゆうちょ銀行の直営店233店舗、もしくは投資信託を取り扱う郵便局1,416局という体制にしております。
 それから、実はもう10年間、投資信託の販売をやっておりまして、既に100商品以上取り扱っています。他社のもありますし、2年前に設立したJP投信という会社で、非常にシンプルな商品ですが、自分でつくっているものもあり、100商品ぐらい取り扱っております。本日発表したのは、新たに加わった新商品とご理解いただきたいと思います。これは他社も同じなのですが、何が一番売れているかというと、海外のリート絡みのものとか、日本人のお客さまで投信好きな方々の好みは結構偏っているのですが、それもJP投信の商品と同じように販売しているというのが実情です。
 それともう一つ、投資信託の残高は全体で100兆円ぐらいありますが、ゆうちょ銀行の残高は10年間で1兆円ぐらいです。そうすると、マーケットシェアが1%ぐらいでした。預金のシェアが2割のゆうちょ銀行で投資信託の残高が1%というのはまだ少ない。2年前に池田社長に就任いただき、かなり力を入れてもらって、1.5兆円強の残高までに増えてきており、今非常に勢いよく伸びているところです。
 最初の質問に戻して、インセンティブですけれども、幾らと申し上げられませんが、おっしゃるとおり、やはりインセンティブがないといけないというので、先ほど少し申し上げましたように、郵便局や店舗、個人に対して、魅力的なレベルの水準のインセンティブを設定し今プロモーションしている最中です。
【記者】
全体の90何%が運用益、手数料が6%だという話でしたよね。そうすると、この投信の手数料というのはどれぐらいのものなのでしょうか。それで、これから増やしていくのでしょうけど、どういうふうに考えていますか。
【社長】
IR等で公表している数字ですので申し上げてもいいと思うのですけれども、公表している数字、2017年3月期、ちょうど1年前の手数料です。先ほど900億円弱と申し上げましたが、昨年度の手数料利益が866億円。このうち投資信託関連が105億円でした。ちなみに、ATMは72億円でした。これが今もうちょっと伸びているという段階です。
【記者】
この105億円をどれぐらいに。
【社長】
今、投資信託残高は伸びているのですが、家計部門の預貯金に占める貯金シェアが2割のゆうちょ銀行が、投資信託残高のシェアでは1%、1.5%というのは少ないと思っていまして、今度発表する中計でも、ここまでやりたいとはっきり数字を出したいと思っています。やはり「貯蓄から資産形成へ」と言っている以上は、そのぐらい本格的にやろうという話をしている最中です。
【記者】
不動産の新会社の件なのですが、将来的なところで少しお話しいただいたのですけれども、展望になるかと思うのですが、切り出されたということで、迅速な意思決定であるとか、業績が見えやすくなるとかあると思うのですけれども、例えばM&Aでほかとくっつくとか、もしくは売却やIPOをされるとか。あと、事業展望ですね。どういったところの不動産開発があるか、少しお話しいただければと思います。
【社長】
将来展望ですけれども、現在、お話しするようなプランは具体的にございません。とりあえず、不動産事業を強化してこれからやっていくという意思表明と、器としてこのほうがスムーズに、スピーディーにできるだろう、人も集めやすいだろうということです。したがって、今の段階でお話しできるような、上場とかM&Aとかというのは現状では考えておりません。ただし、今申し上げましたように、売り上げが260億円という水準ですので、この業界ではたいしたことないんですね。ですから、将来的に手応えを感じてきて、ひとり立ちのできるような、ひとり立ちはするんですけれども、もっとひとり立ちできるような感じになってきて、仮にいいようなお話が飛び込んできたときには、そのM&A等も排除するものではございませんけれども、今見える近い将来を展望すると、お話しできるような具体的な話はございません。
【記者】
ゆうちょ銀行の限度額の件ですが、法人預金に関しては、一般の個人のお客さまよりも、法人の方がむしろゆうちょ銀行の限度額が撤廃されると、中小企業中心にわっと来てしまうのではないかという懸念の声もあると聞いています。個人預金について、いかにお考えかという点と、あと、地域金融機関とのコミュニケーション、今後どのように改めて図っていくか教えてください。
【社長】
前者の法人貯金ですが、融資を全くやらない銀行に貯金をしてくれるのかという気がしています。法人の決済手数料、他行を見ても、決して鞘が厚いものではありません。私どもが安い水準にするのかということかもしれませんが、まずそれも考えがたいと思っています。一部そういう懸念が発信されていると伺っておりますが、私どもは、融資を1円もできない銀行に法人預金が一斉に流れ込んでくるというのは考えがたいと思っています。やはり法人が組むとしたら、融資は当然ですが、証券サービス、信託サービス、何かないのだろうか。海外のお客さまを紹介してくれないのだろうか、そういうニーズがあって、銀行とお付き合いするのだと思います。そのときの大きなライバルが私どもゆうちょ銀行になるとは、正直言って私は感じておりません。
 二つ目の地域金融機関とのコミュニケーションについては、地方創生の一つの有力なプレーヤーがゆうちょ銀行だと思っておりますので、私どもとしては、今までやっているとおり、地域金融機関と例えばファンドをつくって、エクイティのプロバイダーになりたいし、ATMあるいは店舗自体が、地域金融機関のプラスになるような使い方があるのであれば、例えば、新宿郵便局で地域金融機関のいろいろな手続きができる窓口を設置していますが、そのようなことができるのならば引き続きやりたいと思っていますので、私どもは全くスタンスを変えずに、地域金融機関とコミュニケーションを同じように続けていきたいと思っております。
【記者】
具体的な話はありますか。
【社長】
3月28日現在で、11件ファンドをつくりましたが、これで何をやったかというと、まず金融法人セクションをつくりました。もう全ての金融機関を回っています。個別にいろいろお話をしてファンド案件が出てきているというのが実態ですので、そのスタンスを続けていこうと思っています。
 ゆうちょ銀行の池田社長は地銀出身であるということで、非常に気遣って、何かをやるたびに、地方銀行協会や第二地方銀行協会等に事後的に話をしていますが、個別に金融機関とお話をし始めているので、これを引き続きやっていきたいと思っています。
【記者】
日本郵政不動産についてですが、現在不動産事業の収益が約260億円ということで、将来的にいつごろに、どれぐらいの規模まで拡大させていきたいという見通し、目標ありますでしょうか。
【社長】
内部でプランを作成していますが、公表いたしません。なるべく早く大きくしていきたいと思っています。
【記者】
あともう1点。現在保有されている不動産というと、社宅であったり、社宅跡地であったり、郵便局の中にも大都市の大規模なところや、地方の中小規模の局などいろいろあると思うのですが、当面はどういったところを、魅力的な材料と見ていらっしゃるのか。
【社長】
ベネッセのお話も申し上げましたように、小さなところでも保育所とか老人ホームというのを考えていて、たまたま地域との調整の問題がございますので、公表できないのですが、既にオンゴーイングで動いているのが4、5件あります。
 多分おっしゃっていらっしゃるのは、もう少し大きい案件ではないかと思うのですが、例えば、大阪駅前や五反田の大きな土地とか、先日発表された経済特区で進めようと思っている日本郵便東京支社、これは森ビルと一緒にやっていこうというプロジェクトです。そういう具体的に大きな案件は幾つかあります。おそらく期待に背かないような魅力的な案件を今後ご紹介できるのではないかと思っています。
【記者】
ゆうパックでお伺いしたいのですが、3月からゆうパックも値上げをされたということで、約1カ月たって、その荷物の動向がどうなのかというのをお伺いしたいのと、それとあわせて、前回の会見では、宅配市場が広がっていく中で大手3社だけでなく、中小事業者のシェアも増えているというようなお話しをされていたかと思うのですが、そのあたり踏まえてですね、今の宅配業界の勢力図というのをどのようにごらんになっているかお聞かせください。
【社長】
後者の方ですが、昨年の5月からヤマト運輸、佐川急便、そして日本郵便を合計した3社の宅配のシェアを見てみますと、落ちてきています。私どもの推察では、私ども以外のプレーヤーが伸びてきているのではないのかと思っていて、このトレンドはあまり変わっていないと思います。
 それから、3月1日に平均12%の値上げをさせていただきましたが、その対象となるのは、私どもが扱っているゆうパックの1割ぐらいのシェアしかないのです。おっしゃるとおり値上げをして、どうなっているかということなのですが、現状では大きな変化が見えません。まだ始まったばかりなので、結論を出すのは早過ぎると思っています。もう少し様子を見たいと思っています。3月25日現在の取扱量を見ても、今までとあまり変わらないような伸び率ですので、今のところ、明確なサインが見えないと思っています。ただ、これが本当にずっと続いていくのか。やはり、たった1割だけれども、値上げしたというメッセージがマーケットに伝わって、何らかのインパクトが量ベースにはね返ってくるのか、もう少し時間をいただきたいと思っています。現状はまだ明確なサインが見えません。
【記者】
今のゆうパックの配達にかかわるところですが、不在配達になった場合の再配達の依頼方法を、これまでは特にお客さまから依頼がなくても、翌日にまた再配達に伺っていたと思うのですが、先ごろの動きでは、基本的に申し入れがない限りは再配達に行かないというような形に入力方法を変えられたと理解していますが、なぜ変えたのか。それから、その周知の仕方として、まだ十分にされていないのではないかなという懸念もあるのですが、この点いかがでしょうか。
【社長】
労働力の天井というのが相当低くなっているというのが日本の現状の姿で、とりわけこの宅配業務ではかなり逼迫しているということがあって、昨年からそういう動きになってきたと思います。
 そんなことも踏まえて、3月から実施したサービスの中に、荷受人が初回配達前に配達日時を指定できるサービスというのを始めました。また、お届け済み通知の廃止をしました。
 これは昨今の労働力逼迫に対応する一つの手だてとして始めたと私どもは理解しております。
【記者】
ゆうちょ銀行の預入限度額について二つ質問させてください。先ほど社長からは、通常貯金の限度額撤廃要望ということでお伝えしたということでしたが、日本郵政のスタンスとしてはそういうことかもしれませんが、ゆうちょ銀行のスタンスは日本郵政と完全に一致していますか。やはり銀行として日々業務をする中で、もし、可能性ですが、預金が増えてしまった場合にマイナス金利の適用というのもありますし、運用難ということもありまして、現場の意見としては、ゆうちょ銀行としては限度額撤廃即時にというのは非常に困るということもあるのではないか。この辺を伺いたいのが一つ。もう一つは、ゆうちょ銀行の池田社長が非常に細かい心遣いをされて、地域金融機関との連携というか、エクイティ供給に向けた連携を進めているということですが、やはり地域金融機関の中には限度額撤廃に非常に反対しているところもありまして、限度額撤廃された場合、これからいろいろビジネスをやっていきたいという中で、感情的なしこりは残らないのかというところですね。この二つをお願いします。
【社長】
先ほどの質問で一つ欠けていたと思うのは、仮に、どうしてもゆうちょ銀行に資金を送りたいという人がいたとしますね。現在でも、通常貯金の限度額を撤廃しなくても、総合口座には、通常貯金と振替貯金があって、振替貯金の方はもうすでに無制限なのです。ただし、決済性預金ですから利子が付かないのです。ただ、現在、通常貯金も金利が0.001%という水準ですので、ほとんど同じなのです。何らかの理由でどうしてもゆうちょ銀行の総合口座に資金を送りたいとしたら、送られてしまうのです。よって、私どもは、現状でも上限のない振替貯金もあり、総合口座としては既に無制限なのだから、実態的に同じだと。実質同じであるが、他方で、通常貯金の限度額を管理するために、様々な手続でお客さまやフロントラインに負担がかかっているので、通常貯金の限度額撤廃を求めて行きましょうというのが私どもの希望です。
 したがって、振替貯金というのがあるので、通常貯金の限度額撤廃という議論が出てきているのです。ぜひ、ご理解いただきたい。いろいろと報道を見ていて、振替貯金の方は無制限になっているという事実はなかなか書かれていないので、ぜひご理解賜りたいと思います。
 どこかの報道で、日本郵政とゆうちょ銀行の限度額撤廃に対する考え方は全然違うのではないかというお話がありましたが、違いません。郵政グループで意見は一致しています。何回も申し上げますが、決めるのは私どもではないのです。私どもグループとしての希望は、通常貯金の限度額を外すということで一致しております。
 仮に、地域金融機関とせっかくここまでやってきているのに、地域金融機関がものすごく怒って、何かあったら嫌だよねというようなことを発言の言質をとって、ゆうちょ銀行が実は反対だと書いている記事がございましたが、そうではないというのが、現在の郵政グループ全体の意思とご理解いただきたいと思います。
 資金が集まったら困るのではないかという意見もございますが、そうならないよう、先ほど申し上げたように、投資信託等の販売に係るインセンティブを打っていますし、そのつもりで経営をやっています。これは経営の意思です。また、現在の主軸は貯金集めになっていないのです。融資のニーズがないのです。貸したいが、借りる人がいないというので、地方も含めて資金余剰になっているのが今の日本の金融界の姿なのです。預貸率が地銀の一部は5割と言っているわけですから、お金が10集まるのに融資では5しか出ていかない。これが今の日本の問題です。
 もう一つの問題点。いい悪いは別ですが、日銀の金融政策があって、非常に金利が低い。この水準ではなかなかもうからない。この二つがあって、もしかしたら相対的にかなり経営に苦しんでいるところもあるかもしれない。これが問題なのであって、私どもが限度額を上げたら、それが原因ですぐに倒れてしまうというようなことはないのではないかと思っています。
 ですから、そういうことにならないように経営します。やはりマイナス金利ですから、不用意にお金を集めると、大変なことになるので、なるべくお客さまが貯蓄から資産形成に向かっていくような、そういう営業をやっていこうと現在、池田社長は推進しているということです。
【社長】
どうもありがとうございました。