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2017年7月25日 火曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2017年7月25日 火曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

【社長】
よろしくお願いします。幾つかご報告申し上げます。
まず1点目です。九州北部あるいは秋田県をはじめ、全国で発生している集中豪雨により被災された皆様に謹んでお見舞いを申し上げます。日本郵政グループでは、九州地方北部豪雨により災害救助法が適用された地域の被災された皆様への非常取扱いを8月7日まで実施しています。また、被災された皆様に対する救援活動を支援するため、救援等を行う団体に宛てた災害義援金の現金書留郵便物や口座送金の料金免除も実施しております。
 九州地方北部豪雨においては、大分県内の三つの郵便局、中津郵便局、柿坂郵便局、日田竹田郵便局では、7月8日(土)、9日(日)の土日に窓口営業を実施し、貯金の払戻しの取扱いがございました。
 ご参考までですが、かんぽの宿日田におきましては、被災し避難された方、延べ14名を受け入れたほか、被災者やボランティアの方々に対する温泉施設の無料開放を行い、7月23日までに延べ3,754名の方々が利用されるなど、被災者の方々への支援を実施しております。
 日本郵政グループといたしましては、少しでも被災者の皆様のお役に立てるよう配慮してまいりたいと思います。
2点目です。日本郵便の2016年度の「業務区分別収支」と「郵便事業の収支の状況」を発表いたしました。業務区分別収支につきましては、昨年に続き、全ての業務について2015年度を上回る黒字を確保いたしました。特に、荷物、不動産などに関わる業務については、前年度の64億円から276億円に大きく増加しております。
 郵便事業収支については、内国郵便が二種、三種、四種の赤字を一種や特殊取扱の黒字で補完するという構図は変わっておりませんが、2016年度は物数の減少による収益減と人件費単価の上昇などによる費用増を料金割引の見直しでカバーしたものの、前年の黒字から2年ぶりに15億円の赤字に転換いたしました。
 2017年度は、6月に郵便料金の改定を実施しておりますが、一方で物数減による収益減と人件費アップなどの費用増も見込まれており、厳しい状況は続くと考えております。引き続き、コストコントロールや増収対策などに取り組むことにより、郵便のユニバーサルサービスを維持してまいりたいと考えております。
 なお、荷物の収支ですが、法令上、開示が求められているものではないため、今回の改正に伴って、発表資料には掲載しておりませんけれども、前年度の8億円の黒字から、2016年度は28億円の黒字となっています。
3点目です。先月、この場で申し上げた郵便局のみまもりサービスですが、いよいよ来月から全国で申込受付を開始し、10月からサービス提供を始めます。社内決定をした上で皆様にもご報告申し上げたいということで、今、最終的な詰めの段階ですけれども、今月末までに正式なプレスリリースを行う予定です。
4点目です。中計最終年度となり、もう第1四半期も過ぎたという段階であり、今年度の目標、現在の中計の最終年度の目標をきちんと達成すべく、日々、営業活動に専念するということと同時に、来年度からの中計について本格的に取り組みを開始した段階です。
 背景にある問題意識につきましては、従来からお話をしているとおりですが、念のため、現状、考えている各社の問題意識について少しだけ、それぞれ触れさせていただきます。
 日本郵便ですが、郵便・物流事業につきましては、昨今のeコマースの急速な発展に伴う荷物の拡大へどのように対応していくのか。働き方改革との関係も含めて議論が高まっている中で、料金やサービスの見直し、宅配ロッカーの活用など、収益、コスト両面からの対応をどう考えていくかということが最大の課題になります。
 また、日本郵政グループの財産である約2万4,000の郵便局ネットワークをどう活用していくのかというのも重要な課題です。過疎地の郵便局で、他行の通帳記帳を可能にするATMを設置したり、他金融機関の諸手続きを取り扱う窓口を新宿の郵便局に設置したりといったことを始めておりますが、今後もこうした郵便局の活用をさらに充実させ、地域インフラとしての郵便局ネットワークの価値を高めていくということが必要であると考えております。
 ゆうちょ銀行においては、長期化する低金利環境への対応が最大の課題になります。これまでどおり、サテライトポートフォリオの拡大、さらなる運用の高度化・多様化に取り組む所存です。併せて、手数料ビジネスの強化という見地から、投信利用者の裾野拡大、残高拡大やファミリーマートの小型ATM設置など、手数料収入の増加に向けた取り組みやフィンテックを活用した決済サービス等の顧客利便性向上、地域金融機関との連携促進等にもこれまで以上に力を入れていかなければならないと思っております。
 ゆうちょ銀行では、新たにシステム担当の執行役副社長を採用し、急速に動くフィンテック等への対応についても積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
 かんぽ生命においては、低金利の長期化が展望されている中で、高齢化の進展等、販売環境が激変しており、社会保障制度を補完する民間保険の役割はますます拡大しつつあると考えており、営業商品の面では保障を重視した販売活動を徹底し、商品開発を推進しながら、本格的な成長軌道へ乗せていきたいと思っております。
 資産運用面では、運用収益向上の観点から、オルタナティブ投資の拡大など、さらなる資産運用の多様化を図ってまいりたいと思っております。
 事務・システム面では、先般、IBM Watsonを保険金査定やコールセンターの一部で導入しておりますけれども、活用できる分野はもっと広げられると思っており、こうした新たな技術を積極的に導入、活用して、業務プロセスの高度化および効率化を図る必要があると認識しております。
 次期中期経営計画の策定は、まだ始まったばかりですけれども、本格的に検討を開始して、しかるべきタイミングで発表させていただきたいと思います。
 私からは以上です。
【記者】
2問よろしくお願いします。まず、先ほどもお話ありましたように、地方銀行との連携で、共同出資のファンドが先日、6例目を数えました。ここまでの地域金融機関との連携の強化についての手応えと今後どのような取り組みが考えられるかという点についてお聞かせください。
【社長】
7月18日に6件目、東邦銀行とのファンドを発表しました。2年前に私自身がゆうちょ銀行の社長に就任してから、地方創生という時代のテーマに対応すべく、いろいろ地銀との話を開始させていただいて、まず、金融法人営業室を立ち上げて、昨年の4月、部に格上げしていろいろな地方金融機関との対話をより深く始めていたところです。池田社長が就任してから、九州の金融機関の多くが参加する熊本地震復興支援ファンドが第1号、北洋銀行と続き、6件目の東邦銀行ともファンドの設立をすることができました。従来はゆうちょ対地銀ということで、「民業圧迫」と言う言葉もしばしば使われ、そういう関係にあったのかもしれませんけれども、地方の創生という日本の大事なテーマをともに対応できる可能性があるのではないかと思い、現状、6件のファンドを地域金融機関と組んでおります。数が目的ではございませんけれども、ゆうちょ銀行とも組めるというような印象を多くの地域金融機関に持ってきていただいておりますので、引き続き続けていきたいと思っています。
 ファンドのみならず、7月18日に荘内銀行の本店にゆうちょの小型ATMを置かせていただいたり、新宿郵便局に地銀のいろいろな手続がとれるよう、日本ATM株式会社の窓口を設置したり等、幾つかいろいろ組んでやれる方向感は出てきていると思います。地域金融機関とのファンドはまだ始まったばかりで、総額でも約25億円というまだ小さいものです。加えてかねがね申し上げておりますように、ゆうちょ銀行の今のステータスがリミテッドパートナーシップで、まだジェネラルパートナーをできるところまで来ておりませんので、そんなに目覚ましいレート・オブ・リターンが出てくるようなパフォーマンスは上がっておりませんけれども、着実に地銀と手を組んでやっていきたいと思っています。
 地銀はそれぞれ得意な場所があり、大変、強くやっているのですけれども、ゆうちょ銀行は郵便局ネットワークを通じて全国津々浦々にネットワークを張っておりますので、いろいろな地域でそれぞれ提携してやっていきたいと思っております。パフォーマンスはまだ始まったばかりですので、申し上げられるような水準には至っていないというのが現状です。
【記者】
もう1点お願いします。郵便料金の値上げから約2カ月たちました。足元の引受数などの影響がどの程度あるかということと、減少も予想されると思うのですけれども、何か検討されている対策などありましたら教えてください。
【社長】
6月1日にはがきの値段を52円から62円に10円、23年振りに値上げさせていただきましたが、当初の予測は10円値段が上がったのでその分売上が増える。ただし、当然、上がった分だけはがきの枚数が落ちるであろうと見込んだ上で、先般、今年度の増収分が約300億円プラスと申し上げたと思うのですけれども、今それに沿って動いていると感じております。ただ、値上げしてまだ2カ月ですから、予想していたとおりに落ちているのかは、まだなぞることができない状況ですので、いましばらく予想と比較して、どのようになっているのか。当面、予想どおりだという印象で思ってはいるのですけれども、まだ、ぴったり相似形で動いている、合同形で動いていると申し上げられないので、もうちょっとお時間いただきたいと思いますけれども、当初想定していた範囲の中に収まっていて、サプライズはないという現状です。
 6月1日の値上げ前に若干駆け込みがあって、少しはがきの枚数が増えたりしていることもありますので、ちょっと年間ではどういう数字になるかまだ読みがつけられないという段階です。ただ、これはいい機会なので、IRの資料でもご説明していますが、インターネットの普及率が1997年は9.2%だったのが2016年は83.5%に増えています。スマートフォンの契約比率が2008年度は1.1%だったのが2015年度は46.2%になっています。インターネットなどの普及に逆比例して、郵便の減少、これははがきだけではありませんけれども、郵便が減少してきている。ただ、各国と比べてみると、2008年度をスタートラインにして見てみると、郵便が落ちている数字、2008年度を100とすると日本は92.5%というのが2016年度の数字です。例えばアメリカはどうなっているかというと、スタートラインが2008年にしたこともあると思いますが、71.5%。ヨーロッパではなかなか手紙離れが厳しく一番悪い。主要国G7の中ではイタリアが53.2%、イギリスが54.9%になっているので。そういうところと比べると少し日本の落ち方が少し緩やかなので、私どもとして300億円と見込んでいるのですが、このとおり行くのかどうか、もう少し時間をいただき見極めて、しかるべきタイミングできちんとご報告申し上げたいと思っております。
【記者】
最近は安倍政権の支持率が急に下がっていますが、それは日本経済に、日本のデフレからの脱却にどのような影響を与えるのか、ご見解を教えていただけますでしょうか。
【社長】
経済活動への読みですけれども、短期と長期とあり得ると思うのですが、経済活動そのものは、もちろん官邸の働きかけによって何割かの弾性値で経済へのインパクトはあると思っておりますが、現状は、おそらく昨年の前半を底にして、自立回転としては経済が拡大している方向に日本経済はあると思っておりますので、今の段階ですぐ安倍総理の支持率が落ちたことによってインパクトを受けるということにはならないと思っております。
 日本の経済そのものが相変わらず消費者物価に大きく反映できないような力での自立反転ですので、そんなに大きな力ではないのですが、少し上向きに行っている最中ですので、それが一つ。
 それからもう一つ、日本経済に大きく影響しているものに為替レートがあると思うんです。ちょっと前と比べると、少し円高基調になっていると思うのですけれども、これも難しいのですが、もっと円高に行くという理屈が前にあったわけですよね。
 これは、FRBのイエレン議長がそろそろ、いわゆる米国のQEポリシーのファイナルタッチで金額を落としてくるのではないか。今までは金額をステイブルにして転がしてきて対応していたわけですけれども、どこかで落としてくるのではないかと言われていたり、アメリカの経済もいいので、非常に金利が上げ基調になってきていて、例えば、評論家によっては、年に2回、フェッド・ファンド・レートを上げるのではないかと言っていたら、いや、3回だろう、4回だろうという議論が出てきていて、これを考えて、イールドカーブが立ってくるとロングエンドの方も立ってくるとの予測があったので、もっと円安になるのではないかと言っていた議論があったと思うんですけれども、ロングエンドのところが10年以上のところがそんなに上がらない。少しイエレン議長も迷っているように見えるとか、QEの出口の最初の入り口は何かやるのだろうけれども、そんなに大胆にできないのではないかという意見があった。
 つい先般発表されたアメリカのGDPが、半年前にトランプ大統領になったときには、減税をする、財政支出をする、あるいは金融行政を相当大胆にもう1回見直しと、非常に経済にとってはフォローの風が吹くような政策が次々ととられるという議論があったのですけれども、まだ何もできていないわけです。そういうこともあって、少し米国の経済が思っているほど強くないという数字もちょっと出てきましたので、そんなに円安にはなっていないのですけれども、そうはいっても、111円とか従来よりはちょっと円高になっていて、これは少し輸出オリエンテッドな日本の経済にマイナスに効く要素があるのかもしれないですけれど、当面、まだ日本の企業の業況にはそんなに響いていないですよね。
 それらを考え合わせると、株価もものすごく大きく落ちてはいないという状況ですので、短期的にはそんなに大きな影響はないと思っています。
 アベノミクス、3本の矢が基本だと思うのですけれども、1本目が一番強く効いているというふうに考えますと、この状況は引き続き中央銀行、黒田総裁の方針が変わらない限り変わらないわけですよね。黒田総裁の方針が大きく変わらない限りはですね、長期の影響もそんなにないのではないかというようにも思っていまして、私個人は、あまり関係ないのではないかなと思っています。
 野党が政権をとるというような環境はあまり見えませんし、仮に、安倍総理のかわりに誰かが自民党の総裁になったとしても、経済政策において大きく変わるような政策が紹介されるとも思っていないので、当面、まだどれだけこの支持率が落ちている状況が続くかわかりませんけれども、とりあえずこの1カ月間見ていて、経済へのインパクトは多分そんなにないと個人的には感じております。
【記者】
アナリストの方の中には、株式の2次売却について、むしろ金融2社を急ぐべきで、特にかんぽ生命の場合は50%まで一気に売却することで、単品医療保険を販売できるようになることがグループ全体の収益に大きく影響するということとか、あと、株式の額が少ないために、マーケットへの影響が少なく売却しやすいということを指摘するような声があるんですけれども、ご見解をお願いします。
【社長】
コメントは2つありまして、まず1点目ですけれど、金融2社の2次売却に関して、決して遅らせているわけではありません。かねてから申し上げているように、2次売却についてはいろいろ状況を見て、ゆうちょ銀行、かんぽ生命のパフォーマンスやユニバーサルサービスへの影響、日本郵政グループ全体の営業パフォーマンスへのインパクト、そのときの株価状況、マクロで言えば日経平均の状況や、世界経済等、総合的に含めて考えます。しかるべきタイミングがあったら、金融2社に経営の自由度を与えるべく、速やかにやりたいと申し上げておりましたので、そこは全然変わってないとお考えいただきたいと思っています。
 2点目ですけれども、一部のアナリストの方の意見の趣旨は何かというと、郵政民営化を整々とこなしていくことを態度で示す意味で、早く金融2社の第2次売却をやった方がいいのではないか。ゆうちょ銀行とかんぽ生命を比べると、かんぽ生命の方が時価総額は小さいので、今の時価総額で、仮に5割までやろうとすると、仮に現状の価格をベースに考えてみると、約6,000億円程度ですよね。かんぽ生命の方がマーケットへのインパクトが小さいからやりやすいのではないか、5割まで持っていくのが当面の目標と言っていましたが、すぐ目標を達成できるのではないか、5割まで持っていくと新規業務等について、現状は郵政民営化法上の認可が必要だが、届出制になるんだから、経営の自由度が出てきていいのではないか、そういう議論だと思うのです。ただ、これは、そういう考えもあり得ると思いますけれども、違う考えもあり得ると思うので、よく考えてやっていきたいと思っています。
 ただ、一つだけ、届出と認可。前から何回も申し上げていますけれども、今でも、本当にすごい商品があり、これをやりたいと思ったら、私どもは当局に認可申請して、調査審議のための意見募集の公示期間が必要になってきますので、そこだけちょっとリスクはありますけれども、そういう商品が仮にあって、かんぽ生命へのパフォーマンスにすごい貢献度があると思ったら、50%まで売り込まなくても、今すぐにでも動きたいと思っていますので、50%まで売ったら、初めていろいろな商品が爆発的に出てくるということではないという点をご理解いただきたいと思っています。
 あくまでも一つの考え方で、参考にはしたいと思っているだけです。
【記者】
2点ありまして、政府による2次売却、夏は見送られて、秋ごろ、9月、10月ではないかという報道がありますが、これについて、繰り返しになりますが、現状の見通し、いかがお持ちかということと、あと、10月といいますと民営化から10年という節目になるんですが、政府が株を持っている状態で、そのことについて振り返るというのはちょっと難しいことかもしれないんですが、民営化の効果があったのか、それから最大の効果というか、どういう効果があって、今後どういうふうな効果が出せるのか。なかなか収益が上がらない中だと思うんですが、その点について所見を教えてください。
【社長】
1点目は、2次売却については私どもが決められることではなくて、政府が決めることなので、私どもがとやかく申し上げられることではないということをご理解いただきたいと思います。
 それから、報道で見送りという言葉がありましたけども、これも私ども、決めることではないので難しいのですが、主幹事証券会社を選んで、準備されていて、いつ何時、売り出すかわからない状況です。
 これも何回も申し上げているのですが、株価が悪いということについて、ある新聞に、日本郵政の株価と日経平均との比較が出ていました。ちょっとアンフェアかなと思っているのは、日本郵政の連結利益を上げているのは直接的に8割がゆうちょ銀行、2割かんぽ生命で、株価も8対2か9対1で合成されているんですよね。そうすると、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株価をどのように評価するかということになると思うんです。仮にゆうちょ銀行のライバルがメガバンクとすると、私どもが上場したのは一昨年の11月4日、そこをスタートラインにして見ると、これはきのうの終値の段階ですけれど、ゆうちょ銀行は残念ながら100を割って98.2なんですね。他のメガバンクはそれよりも低い水準となっているので、ゆうちょ銀行の株価は上場した後、よくはないんだけれども銀行業界の中で決して、すごく悪いということではないと思っています。
 かんぽ生命を見ますと、同じように一昨年の11月4日から比べてみると、111.7なんです。生保会社には上場企業はあまりないので難しいんですけれども、上場生保会社や損保会社の中で、かんぽ生命は決して悪くはないんです。一般的に日経平均よりも金融が負けている。それに引っ張られているということはあると思います。だから、日経平均より悪いのではないかという議論はあると思うのですけども、そういう状況がちょっとあると思っています。それじゃ、いつ売却するのかというのは、政府が決めることだと思っています。
 民営化してどうだったかということですが、上場企業になりましたが、まだまだ政府がマジョリティーを持っていますけれども、上場企業としてのディシプリンとか、ガバナンスとか、コンプライアンス体制とか、残念ながら弱いのではないかと言われるかもしれませんが、明確な成長戦略をマーケットに示すとか、そういうディシプリンを求められているので、経営の環境としては厳しくなりましたけれども、とても良かったなと思っています。ただ、日本郵政の株式は政府が8割持っていますし、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式は日本郵政が9割持っていますから、間接的に影響を受けているわけですよね。それは現実として当然あるので、ちょっと難しいんですけれども、上場はとても良かったと思っています。
 2次売却の話で、遅いのではないかとかいう議論がありましたけれども、国営企業の民営化、最初が国鉄でしたよね。国鉄の民営化は、1987年、JR東日本が上場したのは1993年、株式が完全売却されたのが2002年ですから、1993年から9年かかって、JR東日本の場合には完全売却したわけですね。JR西日本も1996年上場で、2004年完全売却。JR東海も1997年上場で、2006年完全売却して9年ぐらいかかっているというプロセスがあります。だから、当社も10年かかっていいわけではないのですけれども、私どもだけが本当に遅いのか。
 例えばNTTの東証一部上場が1987年です。その後、2次売却、3次売却、4次売却、今一番直近は6次売却をやって、政府が33.7%持っているのですけれども、6次売却は2000年の10月なんですね。13年かかってここまできているということなんです。
 同じように、NTTデータとか、ドコモとか、都市開発、上場していますけれども、時間がかかっています。
 JTも、上場は1994年です。最終形の今の形になるのにも、やはりそれぐらいの時間、かかっているんですね。だからといって、私どももゆっくりやると宣言しないし、政府もいろいろ考えて、例の東日本大震災の復興財源4.1兆円というのがあるので、なるべく前倒ししてやりたいと思ってらっしゃると想像するんですけれども、私どもも急ぎながらきちんとやっていきたいと思っています。
【記者】
それについて1点つけ足しで、ユニバーサルサービスの維持という点について、中には民営化じゃなくて公社でやった方がいいのではないかという声が当時からあったかと思いますけれども、こうした再公社化といった議論について、いかがお考えでしょうか。
【社長】
それは、私ども自身で決めることができる問題ではないので、私どもは、郵政民営化法という環境の中でできることを精いっぱいやるということしかないと思います。
 ですから、今は、ゆうちょ銀行とかんぽ生命は最終的には完全民営化で、100%株を売却することと言われています。おっしゃるとおり、ユニバーサルサービスを抱えて、いろいろな問題があるわけですから、日本郵政グループは日本郵便の約2万4,000局の郵便局を持っていて、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式は将来完全売却されるけれども、郵便局に依拠しているビジネスモデルなんですね。ゆうちょ銀行の約180兆円の貯金の93%は、約2万4,000局の郵便局で集めています。かんぽ生命でも、一生懸命保険商品を販売していますけれども、約1,100人のセールスパーソンはいますが、郵便局にいる10倍以上の約1万8,000人のセールスパーソンが支えている会社なので、例え株式を100%売ったとしても、郵便局に依存している、日本郵政グループにとどまる企業体であると思っています。当面、5割まで売っていくという目標をつくったわけですけども、そういう方向に沿って、私どもはきちんとやっていきたいと思っています。
 いろいろな問題が出てきたら、それはきちんとフェアな場で、フェアに声を上げて、決められる人たちと一緒に検討をするという局面が来るかもしれませんけれども、現状は決められた方向に沿って、きちんと上場企業としてやっていきたいと考えております。
【記者】
先ほどの株価のお話は、長門社長の株価に対する、何かこだわりがよく見えたなと思って、興味深く聞いていたのですが、逆に先ほどの話の中で、メガバンクよりも、そんなに株価で負けていないじゃないかということでいうと、ゆうちょ銀行の株価はどこと比較すべきなのか、どういうふうにゆうちょ銀行の株価は決まっているとお考えなのか、聞かせていただきたいと思います。
 つまり、業態を見ても、多分誰もメガバンクと競争している銀行だなんて思ってはいない。どちらかというと、銀行というよりは、資産運用会社ではないのかと思われていると思いますけれども、株価がそんなに割り負けしていないというのは、どういう根拠なのか教えてください。
【社長】
大変に鋭いご指摘で、ゆうちょ銀行、銀行という名前なので、銀行業に上場しているわけですよね。ただ、おっしゃるとおり、業態は全然違って、メガバンクと本当に比べていいのかと感じています。ですから、ゆうちょ銀行の株価をフェアに、相対的に比較して評価をしようと思うと、本当にメガバンクとの比較でいいのかと感じる部分があります。
 おっしゃるとおり、機関投資家的なファンクションが圧倒的に多い。収益の約94%が資金運用益で、約6%が手数料。この手数料においても、メガバンクと比べると、5分の1程度の水準なんですね。
 融資ができないことによって、例えばシンジケートローンの管理手数料が全くないとか、証券子会社を持っていないがゆえに、彼らが引き受けるエクイティとかボンドの引受手数料がゼロだとか、確かに比べて何か意味があるのかという議論もあると思いますけれども、マーケットも、少し迷っていて、こういう株価の連動を見ていると、明らかに、メガバンクとちょっと連動して動いていますよね。だから、実態は違うにもかかわらず、マーケットの多くの方々は、やはり銀行と思っているところもあるのかなと思っています。
 ただし、本当に、株価の推移をメガバンクと比較してちょっといいぐらいで安心していていいのかと、本来は違う業態で、違うところにライバルがいて、違う環境で収益が決まってくる以上は、もうちょっとしっかりと株価面でも評価すべきであるというご指摘かと思いますので、十分真摯に受け止めて、そういう評価もしてみたいと思っています。
 ただ、約200兆円の投資運用機関と考えると、GPIFよりも大きくて相当な機関となるものですから、ちょっとどこと比べるべきなのか、大変ですけれども、真摯にご指摘も踏まえます。
 ただ銀行ですので、自己資本比率規制で4%の国内基準行ではあるんですけれども、やはり、BISの新しいルールとか、ドッド・フランク法をトランプ大統領が見直そうとしているというニュースに、メガバンクの株価が反応すると、その株価に連動して、ゆうちょ銀行も動いていく事実はまだあるんですね。
 ですから、ご指摘の点、真摯に考えたいと思います。ありがとうございました。
【記者】
一番初めに、eコマース対応で、今後、料金サービスの見直しをどう考えていくかみたいな話がございましたけれども、さっき、はがきの値上げの話もありましたが、御社が価格決定力を持っている業種といいますか、サービスといいますか、何かございましたら教えてください。
【社長】
ご指摘の点は、おそらくユニバーサルサービスとか、許認可等が絡んでいて、そんなに自由に、簡単にできないものばかりなのではないかと、そういう厳しい環境があるのではないかということも一部インプライされていらっしゃると思うんですけれども、そのとおりですね。
 ですから、特に郵便ですけれども、郵便・物流事業の売り上げが約2兆円、昨年度はあったわけですけれど、経費もそのぐらいあります。そうすると、約2兆円と丸めて申し上げると、約2兆円の経費をどのように削るのかという議論すら、ユニバーサルサービス絡みのいろいろな問題があるわけですよね。売り上げにも、同じような要素がいっぱいあると思います。したがって、実行するときにはかなり本気で動いていかなければいけないと思います。
 ただし、パフォーマンスを上げるために何ができるのかということを、今度中計の議論を始めますと申し上げましたけども、そういう議論をして、その上で、何ができるのかできないのかという読みを現実的につけていきたいと思っています。
 おっしゃるとおり、ここはグッドクオリティーで、本来対価を求めるべきだから、値段を上げるべきだから上げようといって、右から左に簡単に上げられるような業態ではないというのは十分承知しています。
【社長】
ありがとうございました。