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2017年4月25日 火曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2017年4月25日 火曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

発表日:2017年5月25日

*横山邦男日本郵便社長が同席

【社長】
本日はお集まりいただきましてありがとうございます。
 まず、私から報告します。大変に重要なテーマですので、丁寧に説明します。少し長くなりますけれども、ご寛恕ください。
 トール社ののれん減損損失に関わる報告です。後ほど詳細に報告いたしますが、高額な減損損失を計上いたします。結果、今期赤字となる見込みです。この事実を役職員一同、大変重く受けとめておりますが、同時にご理解いただきたいのは、今回の措置は現在の経営陣の意思でもあるということです。これまでのトール社の実績を踏まえ、経営の意思として保守的な損益計画を策定し、その結果、最大限の減損損失を早期に計上することになったということです。この措置を通じて、改めて攻めの経営のスタートラインに立つ。曇天の中、20年間パッとしない緩慢な経営活動に終始するのではなく、ここで思い切って過去のレガシーコストを一気に断ち切って、成長路線へ果断な経営を今後実行できるように、改めてスタートラインに立ったと感じています。減損、赤字、無論大変重く受けとめていますが、この点もご理解賜りたいと思います。
まず、トール社の業況と減損計上について報告します。
 トール社は日本郵便が2015年2月に買収を公表し、同年5月に約6,200億円を投じて買収いたしました。しかしながら、2016年以降、トール社の業績は大きく落ち込んできております。トール社の業績は、買収前の2014年6月期の営業損益は412億円ありましたが、2017年3月期は60億円程度と、2割以下の水準にまで悪化する見込みです。
 この水準をベースに損益見通しを作成すると、トール社の企業価値は減少することになります。会計基準に従い、2017年3月期の決算において、のれんおよび商標権の全額3,923億円、それに有形固定資産の一部80億円も含めまして、合計4,003億円を減損損失として計上することになります。
 2017年3月期の通期決算につきましては、当初の業績予想は、親会社株主に帰属する当期純利益が3,200億円でした。まだ決算発表前であり、最終数字は確定していませんが、速報ベースで申し上げると、3月までの業績として約3,600億円と400億円ほど上振れする見込みでしたが、今回、特別損失が約4,000億円出ることになり、その結果、当期純利益の見通しを400億円の赤字に修正しました。ただし、赤字決算となりますが、キャッシュフローには影響はなく、利益剰余金も3兆1,000億円超、資本剰余金も4兆円、純資産も14兆8,000億円弱と十分にありますし、ゆうちょ銀行、かんぽ生命から日本郵政への配当も予定どおり見込まれることから、期末配当予想につきましては、中期経営計画でコミットした配当性向5割以上を実行し、一株当たり25円に据え置く予定です。
次に、トール社の業績悪化の理由を説明します。
 理由の1点目は、資源価格の低迷に端を発する豪州経済の減速です。豪州経済は、都市部と鉱山地区の二極化が進んでいます。人口の多い都市部、例えばシドニーのあるニューサウスウェールズ州の成長率はプラス3%前後でありますが、都市部以外の鉱山地区、例えばパースのある西オーストラリア州はマイナス3%前後、ケアンズやブリスベンのあるクイーンズランド州はマイナス2%前後と、直近ではマイナス成長が続いております。
 トール社は、豪州・ニュージーランドの業績への貢献度が売り上げベース7割、営業利益ベース8割と非常に高く、鉱山地区を中心とした資源関連セクターに属する顧客およびそのセクターにサービスや部品等を供給している顧客に対する輸送サービス提供により、多くのビジネスを得ており、鉱山地区における景気減速の影響を大きく受けております。
 なお、豪州全体がこのような状況ですので、業況が苦しいのはトール社のみではありません。豪州ロジスティクス業界はおしなべて苦戦しております。
 業績悪化のもう一つの要因、トール社固有の事情ですが、トール社は過去の景気拡大期において、100件以上のM&A案件の積み重ねにより業容を拡大してまいりました。買収した会社同士の間で業務内容もバックオフィスも重複感があったり、各社それぞれで固有のシステムを保有していたり、コスト競争力に弱みがありました。現状のような景気減速局面では、コスト競争力の弱みが一気に顕在化し、経営上、大きな負担になった次第です。
 トール社買収のそもそもの狙いを説明します。第1に郵便事業では、日本では大きな成長が当面見込めないこと。第2にゆうパック等、ロジスティックス業務が日本国内だけではいずれ壁に当たるであろうこと。第3に各国ロジスティクス業界の中で成功例としてよく名前が挙がるのがドイツポストです。ドイツポストは2000年以来、10年にわたり総額2.5兆円を投じて、100を超えるM&Aを実行し、その中にDHLが入っていたこともあり、最も成功した企業に進化したと言われております。
 以上の背景から、日本郵便としてもグローバル展開を意図し、狙ったのがトール社でした。
一つ目、今後成長が期待されるアジア・オセアニアは環太平洋地域にあり、数十カ国でグローバルに活動している。二つ目、英国法が準拠法であり、ルール・オブ・ローが徹底している国である。三つ目、日本と補完しうる資源国である等からトール社を最初のターゲットといたしました。
 当初の意図としては、トール社をグローバル展開のプラットフォーム企業と位置付け、同社の有する知見、経験およびM&Aノウハウの活用により、国際物流事業を拡大し、収益拡大を図っていくということでありました。
 トール社買収は、国際物流戦略に最初の一石を投じたという意義、狙いの方向については正しかったと今でも考えておりますが、買収検討の意思決定の過程において、豪州経済の見通しなどに関する評価やリスクの把握が甘かった、楽観的な見方をし過ぎたのではないかとの批判があることも承知しています。結果からすると、これらを否定することも難しいと思います。また、意思決定のタイミングを振り返ると、上場前に日本郵政グループのエクイティストーリーを示したいという思いもあったのではないかと思料しております。
 人のせいにするわけでありませんが、買収検討当時、当然ながらフィナンシャルアドバイザーを採用し、彼らから種々、検討、査定等していただきましたが、厳しいビジネス環境になる懸念も、買収価格についての問題点もFAから特段の指摘はなく、また、当社自身としても、ここまで説明しましたとおり、全く不本意ながら査定が甘い方向に振れてしまった次第です。結果として大きな損失を招き、グループ連結の決算が赤字に陥ることに対して、重く受けとめているところです。私どもとすれば、強い危機感を持って、今回、負の遺産を根本から一掃し、成長路線へと戻れるよう精進してまいります。
 今後の対応について説明いたします。まず戦略面ですが、当初、買収価格こそ高かったという問題はありましたが、海外展開も展望するという方針はいささかも変わっておりません。今般の減損措置の後、トール社を引き続きグローバル展開のための中核と位置付け、早急に業績を回復し、グループの企業価値向上に資するよう、経営改善策を実行していくとともに、将来的なM&Aについても、価格、タイミングや戦略との整合性を考慮の上、国内外を問わず検討してまいります。
 次に、トール社への具体的対応、アクションです。トール社をメタボ状態から筋肉質への体質改善を目指します。まず第1に、トール社の会長、社長は、既にことし1月に刷新済みです。第2に、彼らの経営の下、5事業部門20以上のビジネスユニットを、3事業部門10程度のビジネスユニットに部門統合いたします。この間、2,000人超の人員削減を計画しており、この1月から3月の間に既に300名の削減を実施済みです。
 経営管理面の対応ですが、日本郵便から派遣している取締役を髙橋会長から小野専務に変更します。小野専務は、元米国の弁護士で、ゴールドマン・サックスではM&A等の投資銀行業務に従事しており、この1月にSMBC日興証券から日本郵便に来ています。また、日本郵政のグリップも強める意図で、日本郵政の市倉専務もボードに加わる方向で考えております。市倉専務は主計のプロでございます。また同時に、業績報告や戦略策定等の重要なテーマに際しては、日本郵便の横山社長とトール社のトップ同士のフェイス・トゥー・フェイスの会議を毎月開催するなど、コミュニケーションの一層の深掘りを図ります。日本郵政としても、リアルタイムでの問題把握、検討を実行することで、日本郵便と一緒になって一層のガバナンス強化にも取り組んでいきたいと思います。
 この1年、売り上げ面の方でも日本郵便は貢献しておりまして、先般、イオンのタスマニアビーフの輸送にトール社を使っていただくという発表しました。その他の企業でも日本郵便、日本郵政からの紹介でトール社に変えていただくなど、いろいろ努力をしている最中です。
 トール社の今後ですが、とりわけアジア、中国、米国案件を深掘りしてまいりたいと思います。
 また、減損後のグループ連結業績への影響として、この新年度からは、年間約200億円生じていたトール社ののれん償却の負担が減ることとなります。今年度は中期経営計画の最終年度です。中計での今年度の目標数字は、市場に対する当社のコミットメントです。何としても、中計の数字を達成したいと思っております。
 今般のトール社の業績回復と合わせ、ゆうちょ銀行については、外国証券の償還益等も実現してくる年度です。この面もあり、グループ連結ベースでも、今期は業績が回復してくるものと考えています。具体的な数字につきましては、業績予想の公表は5月15日に予定している決算公表時となっておりますので、本日はご容赦くださいますようお願いいたします。
 繰り返しになりますが、今回は赤字の業績予想となります。しかしながら、昨年5月に公表した配当予想、期末配当25円につきましては、予定どおり実施する予定です。
 総括しますと、今回の減損処理は、トール社にかかわる負の遺産を一掃するという大きな意味があるものと認識しています。本件が日本郵政グループの再出発に向けたステップとなり、損益好転に向けた転機となるよう、併せて株主、関係者の皆様からの信頼回復を果たせるよう、業績回復に努めてまいる所存です。
最後に、この減損に際し、どのように責任をとるのかという点について説明いたします。今般の多額の減損、また、連結ベースで当期純利益の見通しが赤字となることに関して、経営責任を果たすという観点から、日本郵政および日本郵便の全役員が報酬返上を6カ月間行うこととします。各役員の水準は次のとおりです。長門、横山両社長は20%。日本郵政鈴木上級副社長は15%。その他の副社長、専務は10%。常務、執行役・執行役員は5%。また、トール社買収の意思決定当時の日本郵政および日本郵便の社長のうち、現在、日本郵便の代表取締役会長である髙橋会長については、30%の報酬返上を6カ月間行うこととします。さらに、日本郵便の髙橋会長については、日本郵便の代表権を返上し、トール社の取締役についても辞任することになります。今般、ガバナンス強化の観点から、日本郵政からも1名、先ほど申し上げましたようにトール社の取締役に就任する予定です。さらに、社外取締役につきましても、全員6カ月5%報酬を返上します。
 大変長くなりました。私からは以上です。
【記者】
率直に、今回のトールの買収は失敗だったと思っていますか。
【社長】
1勝1敗。先ほど申し上げましたように、日本だけでやっていくのでは成長が壁に当たることが見えている。もちろん、誤解のないように言うと、日本でのゆうパック等のロジスティクス業務、あるいは、郵便業務はまだまだやれることはあると思いますので、それについても一生懸命いろいろやっていきたいと思います。
 この6月1日から年賀はがきを除くはがきについては、23年ぶりに52円から10円値上げさせていただきますが、はこぽす等を置いて経費を削減するとか、いろいろやっております。これらについて手を緩める気は全くございませんけれども、さらなる成長を狙おうと思うと、やはり海外という方向を目指さざるを得ないと思っています。
 そういう意味では、トール社は、豪州、アジア地域で活躍していて、先ほど申し上げたような理由で非常に良かったと思っており、そういう意味では1勝と。ただし、先ほど申し上げましたように、少し価格が高かったのかもしれないということと、豪州経済が非常に急速に悪くなりましたので、その影響を直に受けて減損になっているわけです。ここについては1敗と。同じ質量ではないかもしれませんけれども、1勝1敗というのが正直な印象です。
 大事なことは、これからも海外についても攻めていかなければいけないと思っておりますので、その大事な一石を打ったという大きな意味は、あると思います。
【日本郵便社長】
補足しますと、やはり国内市場が収縮していく中で、外に向かっていくということは、大変必要なことだと思いますが、そのために時間を買おうということでM&Aがやや目的化、M&Aを重視したというきらいがあったということは否めないと思います。そのために急ぎ過ぎて、高値になったのかなというのがあることと、日本郵便とのシナジーの道筋がやや不明確だったのかなと。日本郵便は、企業物流がそんなに強いわけではありませんから、国内での日本郵便の企業物流を強化しながら、同時に、国際物流を一緒にやっていくという戦略を立てておくということがあるべきなのだろうなと思います。
【記者】
リストラを進める、あとガバナンスを強化するということはわかったのですが、どうやってそのシナジー効果を生み出すというところが、少し具体的なプランがまだ見えてこないと思うのですが、トールとの相乗効果というのをどうやって生み出していくかというところを、具体的なプランがあれば教えていただけますでしょうか。
【社長】
いつもそういう種類の質問が来るんですけれども、日本郵便は、日本が主なテリトリーですから、これから成長するアジア、中国、米国等のマーケットにかかわりが薄いですよね。そういうところもやることによって、日本郵便は日本のみならず、海外の売り上げも持っている、そういう企業になれるわけですよね。日本郵便の日本オリエンテッドだというところについて補完するというシナジー効果は、もうトール自身にあるんだというのをまず一つ目に申し上げたい。二つ目に、トール社は世界のロジスティクス業界の中ではそんなに大きな会社ではありませんから、従来から言っているように、本当に海外業務、もう少しネットワークを密にしようと思うと、これだけで終わらないはずですよね。それが新たなM&Aになるのか提携になるのか、いろんな形はあり得ると思うんですけれども、そういうものもないと、またトール社自身が活きてこないという意味のシナジーもあると思うんですよね。
 三つ目、定義のシナジーです。お尋ねの件は、今の日本郵便とトール自身でどういうシナジーがあるのかということだと思うのですけれども、横山が申し上げたように、当面、パッとわかるシナジーが実はあまりなかったんですね。ですが、お客さまとの関係で公表しているのは、イオンのタスマニアビーフのみで申し訳ないのですけれども、豪州でビジネスをしている会社はいくらでもあって、既に車業界、資源関係、鉄鋼業界、幾つも増えてきているんですよね。こういうことで始まり出したと思っていただきたい。
 もう1点、売り上げベースだけではなく、経費のほうでもシナジーはあります。トール社は借入金がありまして、主に豪州で資金調達していたのですけれども、彼らの信用度では少し貸し出しのスプレッドが高い。私どもの関係会社になったので、私どもの信用力で格段に低い金利に借り換えることができたというのもありまして、経費面のシナジーもあると思っています。
【日本郵便社長】
商売の件ですけれども、本邦企業の日本発着のグローバル物流につきまして、トール社のグローバルネットワークを通じて載せると。この情報を収集することを今やっておりまして、そのために日本郵便の中にトールデスクを設けまして、そこで情報の一括管理をして商売につなげていくということです。
 そして、今お話があったので、リストラについて申し上げますと、先ほど長門社長からトール社は100を超えるM&Aで成長してきた会社で、オーストラリア経済が好調で、業績もそれにつれて良いというときには、M&Aの統合効果というもの、コストシナジーというものがあまり無くても成長できたと思うのですけれども、オーストラリア経済がダウントレンドに入ってきたときに、そのコストシナジーができていなかったということが、非常にマイナスとなって効いてくる。例えば、システムが乱立している、組織が乱立しているということで、一つのお客さまに対して複数のビジネスユニットから提案しに行くというような、非常に非効率なことも起きていたということがあります。そうしたことを今、整理しており、筋肉質化を目指しているところであります。
【記者】
去年の10月に郵政民営化委員会が、トール社についてガバナンスの強化が必要だという指摘をされていたと思うんですが、今現状、こうなってしまったことを受けて、どう思っていますか
【社長】
繰り返しになって申し訳ないのですが、トール社への管理、もちろん従来から幾ら以上の投資は報告するなどルールがあるんですけれども、主にトール社のボードに日本郵便の役員が4名いました。今回は1人増えます。日本郵政からも派遣することになりますが、まだ社内手続きとっていませんので、これからですが、まずはボードのストラクチャーを強化します。
 横山が言ったように、ボードミーティングというのは3カ月に1回ですから、これだけで最低限の責務は果たすんです。しかし、毎月、会長CEOと社長COOが日本に来て、横山社長と私も入りますけれども、いろいろ経営の議論をするということでグリップを固くする。社長だけではなくて、日本郵便の米澤上級副社長とか関係者がみんな入りますけれども、それから日本郵政としてもきちんと同じ質量の情報をリアルタイムで取ったり、意見があればしっかり言う。
 買収するときのスタイルは二つあって、放任主義で買った後は、みんな任せてしまうというオートノミー方式と、買った側が非常に細かく指導するスタイルの両極端があり、それぞれに問題があって正しい回答は多分真ん中にあるのでしょう。私自身、日本興業銀行にいるときに買収した米国のプライマリーディーラーの管理、そこのマネジメントの仕事をしたので思い入れがあります。トール社を買った当初は、彼らの経営に全て任せるオートノミーだと。これを内外に強調されていましたので、少し遠慮していたかもしれません。昨年の年初ぐらいから非常に業況が悪くなってきましたので、日本郵便を通じていろいろ言っていますけれども、コミュニケーションを一層密にこれからやっていこうということで、ガバナンスは十分強化できると思っております。
【日本郵便社長】
業績が下方トレンドに入ってきたと感じたのは、一昨年の秋ぐらいだったはずですけれども、そういう中で、長門社長から話があったとおり、今まで彼らに任せていたわけですけれども、それではいけないということで、米澤以下が商売をどうやって増やすか、あるいは重複したシステム、重複した機能をどう落としていくか、人員はどうやっていくのかというような、向こうに対して強く要求していました。私が最初に取締役会に出たのは昨年7月ですけれども、そういう議論をかなりしておりましたが、旧経営陣から確たる答えは返ってこなかった。その後、私から直接話をし、また、レターで私が考える経営課題について要求したけれども、これに対してもしっかりした答えが返ってこなかったということで、もう秋口から後任を探しに入ったということであります。その後は先ほど申し上げましたとおり、フェイス・トゥー・フェイスで月1日は顔を突き合わせて、全ての案件について打ち合わせをしていったという状況です。
【記者】
かなり無謀なことをやっているという認識はおありですか。郵便の配達と国際物流は、物を運ぶことは同じでしょうけど、全く別物ですよね。それでインベストメントバンクの方が向こうに行って経営するのかもわかりませんが、物流がわかってらっしゃる方っていうのは、どれだけいて、今まで親会社として、子会社をきちんとチェックができていたんでしょうか。それともう一つは、この会社を買うときのデューデリジェンスはどなたがやって、そしてこの買収を斡旋されたインベストメントバンクはどちらで、フィーは幾ら払ったのか、その辺についてお答えいただきたいと思います。
【社長】
ご指摘の件ですけれども、無謀なことの内容が、自分に無いノウハウのものを仮に買ったときに、本当にやれるのかというご指摘かと思うのですけれども、買うものが全く違う、例えば車工場を買うとかであったらそうかもしれませんけれども、日本郵便なり日本郵政グループが、さらに成長をしようと思ったときに、自分たちが今やっている業務に近いところを探す。よく皆さんがおっしゃいますが、M&Aのノウハウはあるのかと。ない会社もあるんですけれども、その会社の成長戦略のために買ったほうがいいのであれば買うんですね。ノウハウは後でついてくると。そこを何とかしようと頑張るのが経営なのであって、M&Aのノウハウが蓄積されるまでずっと待っていて、準備が整ってから買おうかというのは順番が逆ではないのかなと思っています。ちょっとお答えの仕方が悪いかもしれませんけれども、日本郵政、日本郵便から見て、割りと近い業務だと思っていたので買収したというのが1番目の答えです。
 もう1点、ちゃんと今までマネジメントできていたのかは、問題は二つあって、そもそも最初の値段がちょっと高かったんですね。6,200億円で買って、のれん代が初めから5,000億円だったので、ここは少し問題だったと思います。その後については程度の問題で、先ほど申し上げたように、最初は任せ過ぎていて、少し手が優しかったかもしれませんね。ただし、今はそんなことはなく、相当強力にマネジメントができていると評価しています。
 フィナンシャルアドバイザーはみずほ証券です。幾ら払ったかは、個別の話になると思いますので、回答を控えます。
【記者】
ゴールドマン・サックスは関係していなかったんですか。
【社長】
ゴールドマン・サックスは関係してございません。
【日本郵便社長】
追加ではありませんが、素人だからできないということになると、銀行員の横山は、日本郵便を経営できないということになるわけですが、素人だからこそ見えるところもある。さらに言いますと、私どもは宅配事業をやっている。トール社について言えば、国際物流のプラットフォームにしたいけれども、今まで主な稼ぎ頭はオーストラリアの宅配事業だったということもありますから、そこに対して我々がいろいろ指導するということも可能であると考えております。
【社長】
M&Aでは失敗例が多いかもしれないですけれど、例えば、同じ業種で不動産会社がアメリカのマンハッタンの中心地に不動産を買って失敗するケースもあるし、電機メーカーが映画会社を買って、随分時間かかりましたけど成功するケースもあるし、カメラメーカーがメディカルの分野で成功しているケースもあるし、経営の戦略としてそこが必要であると思ったら、むしろどうやって成功させるのかが勝負なのであって、ノウハウがないから恐いからやめると言っているのでは経営にならないと思っています。
【記者】
このタイミングで、今回の処理を公表された理由は何でしょうか。短期的にはまず5月15日の決算を待たずに、このタイミングでやられたというのはどういうお考えなのか、あるいは長期的にはこの17年3月期を締めるタイミングでやるというお考えになった理由というのはあるのかお願いします。
【社長】
例えば、今回ではなくもっと前にできないのかというのは、質問としてあり得ると思います。例えば2016年3月期決算でできなかったのかという議論はあると思います。その当時のトール社の業況を見ますと、今ほど悪くなっておりませんので、あの段階で減損テストをしても、このような減損の数字は出てこないと思います。したがいまして、これより前というのは、かなり難しいなと思っています。
 なぜ今やったかというと、5月15日は最終的な決算発表ですから、その前に決算発表の修正ができるようなことが可能であれば、なるべく前にやったほうがいいと思うのです。今年度のトール社の業況もある程度方向が見えたので、なるべく早くやろうということで今回やったということです。
【記者】
今回一括で処理するということですが、最近その、海外子会社の買収をめぐる話となると、やはり東芝とか、そういうものが、全然御社とは異質なものであることは理解しておりますけれども、やはり名前が出てきてしまう。その中で、監査法人が海外子会社に対して厳しい指摘、あるいは見方をされるようになっているのではないか。その点、何かお感じになられていることはございませんでしょうか。
【社長】
二つ申し上げます。今回の減損の処理につきましては、誤解のないように言いますと、私どもが嫌だと言っているのに、監査法人にやるべきだと説得されてやったという話ではありません。減損査定テストをした結果、やるという判断をしました。査定というのは将来のトールの売上等を予測するわけですよね。従来の予測では4.何%伸びるとかという営業計画だったんですよ。今の豪州の鉱山地区の経済状況を勘案すると、そんなことはできないというので、私どもで現実的な2.数%の数字と予測して、今回の減損テストの結果になっています。監査法人も同じ意見で、やはり減損すべきということでした。監査法人から特別なプレッシャーがあって、嫌々やったという話ではありません。
 2点目に、一般論ですけれども、子会社、特に海外子会社は非常にマネジメントが難しい、把握が難しい、ガバナンス上いろいろリスクがあるということで、一般的に監査法人は、海外の子会社をどのようにマネジメントしているのかということについて、大変強い関心を持っています。私どもはそれほど、海外のオペレーションを持っておりません。基本的にはトール社くらいで、そういうトレンドがわかるのはこれだけなんですけれども、非常に強く関心を持っていて、私どもに対してもトールに対するガバナンスはどうなっているんだろうかということについての議論はしばしばございます。
【記者】
今回のトールの減損も含めて、トールについては、いろんな議論があると思うんですけど、引き続き保有し続けるという理解でいいのかということを再度、確認させていただきたい。
【社長】
トール社を捨てる気は全くありません。引き続き、ここを中核として海外展開を考えたい。大事な拠点であると思っています。先ほど1勝1敗と申し上げましたけど、少し高かったので今回は減損になり大変残念ですけれども、この存在が日本郵政グループで、日本郵便で、とても大事というのは全く変わっておりません。
【記者】
そのことも踏まえて、とはいえ、まだトールの立て直しというところが、差し当たって国際物流事業ではエネルギーをたくさん使うことになるかと思うんですが、一方で、今回少し業績ががたつきましたけども、少し話は離れるんですけど、ユニバーサルサービスの堅持という意味でも資金が必要になっていたりとかですね、いろいろ手間暇かかるところだと思うんですが、今回のことがそこに与える影響はあるのかということと、全て切り離してですね、ユニバーサルサービスの維持のために今、どういうことを考えておられるか、少し地域の方も不安になっていると思いますので。
【社長】
1点目。トール社の立て直しですけれども、中核の拠点ですから、立て直しをしなければならないと思います。業況が悪くなった企業がまずさわるのは、経費の部分なんですね。売上はなかなか自分たちだけではコントロールできない要素がありますので、自分で直にさわれるのは経費の部分です。今回のトール社の新CEOは、事業部門を見直すとか、人員を約2,000人カットする等、まず経費の部分で動いているということです。早期に立て直したいと思っています。
 2点目。ユニバーサルサービスとの矛盾がないかと言うことについては、ありません。私ども、借り入れをしているわけではない。まだ資本勘定は、約14兆8,000億円ありますので、両立できると考えています。
 3点目、ユニバーサルサービスについては、引き続きやらなければならない。これはもう法律で定められていて、私どもはそのためにサービスを提供している会社ですので、これはもちろんやらなければいけないと思っていますし、やっていこうと思っています。ただ、幾つか課題があるということだと思いますけれども、これについては、一つ一つきちんと対応していきたいと思います。例えば、年末から起こっている宅配便の問題というのがありますよね。ちょっとオーバーですけども、今まで日本では、空気と水とおもてなしサービスは無料だった、そういうような文化があったと思うんです。このわずか10年でeコマースの取り扱いが、もう軽く約14兆円になった。これのラストワンマイルが、私どもや物流事業者に課せられていると。また、人件費の部分では、そもそも人が足りない。人件費が上がってきている。かつ、業務が大変だと。特に不在再配達では2回目、3回目ということで人件費がかかっていますけれども、そういうところの問題点というのは、私どもにもいずれ来ると思うのです。そういうときに、ユニバーサルサービスをきちんとやるためには、労働力の確保とかレイバーフィーを払えるような能力というところが問われてくると思うんですけれども、それをどうするのか。あるいは、はこぽすとかコンビニでの受け取りというような利便性も、関係者と工夫をしてやっていかなければいけないとか、いろいろあると思います。
 インターネット、Eメールなんかが増えてくると、郵便事業はどうしても手紙が減ってきますよね。例えばアメリカの一部地域では、もう家まで届けられないということで、近くの集配所に各個人が取りに行くというところもあるし、赤字になっているところは、国から補助金をもらうところもある。いろいろな工夫をしていると思いますが、私どももそれを学習しながら、ユニバーサルサービスをきちんと果たしていきたいと思っています。
【日本郵便社長】
不在時の再配達について申し上げますと、受け取れる拠点を増やしていくということです。郵便局2万局だけではなく、コンビニ、はこぽす等もやっておりますが、それ以外に、先般、楽天と提携をいたしまして、受取場所として、例えば玄関前でもいいとか水道メーターの上でもいいとか、そういうお客さまが指定したところにお届けするというやり方も、既に試行しているところです。ほかの会社ともやっているところですが、盗まれるということは、実はほとんど起きておりません。こういったやり方も、お客さま等の承諾次第でありますが、増やしていきたいと思っています。
 それから、トール社の立て直しについて、私と先方のジョン・マレンやマイケル・バーンとの間で合意しておりますのは、まず筋肉質な体質をつくり上げるということで、リエンジニアリングに向けたことを進めていくということ。
 それと同時に、商売の重点地域というものをはっきりさせて、そうしたものについて経営資源を重点的に投入していくような施策も打っていくということを、今やっている最中です。
【記者】
長門社長にお聞きしたいことが2点ありまして、西室前社長がトールについて、日本会計基準からIFRSへの移行も検討していると発言していましたが、現時点での長門社長の意向と、このトールの損失が、政府の日本郵政株の二次売却に影響すると考えているかをお願いします。
【社長】
IFRSですが、大事なテーマなので、常に研究対象にはなっております。昨年度もどういうようなことが必要なのかとか、いろいろ具体的な検討は絶えずやっております。これがグローバルスタンダードになるというのであれば、私どもも採用しなければならないのですけれども、M&Aをたくさんやっている会社から見ると、何かふさわしいように見えるんですが、本当に環境が変わってくると、突然減損しなければいけない部分もあるので、M&Aをやる会社に本当に向いているのかということもあります。また、金融関係、特にメガ銀行が検討はしていますけども、採用の決断をしていないのはなぜかというと、時価評価のところなんですよね。特に投資部門ですけれども、プロップ勘定で持っている投資勘定が何期までもつのか、あるいはトレーディングベースでいろいろと売買するものについての評価が変わっているわけですよね。それをデリバティブ商品も含めて何もかも、みんな時価評価するということになると、収益が本当に変動するわけですよね。これを懸念していて、メガ銀行もまだ採用の決断をしていないと。
 私どもは、ゆうちょ銀行とかんぽ生命を傘下に持っているグループで、必ずしもぴったりなじむ方式とも言い切れないので、まだ研究の段階を出ておりません。採用の決断はしていないというのが1点目です。
 2点目ですけれども、日本郵政株の第2次株式売り出し。これは政府の判断ですので、私どもがとやかく言うことではないと。私どもは常にいい経営ができるように、きちんと業況が良くなるように経営をしていくというのが責務でありますので、これは政府に任せているということです。
【記者】
横山社長にお聞きします。トールの問題ですが、今回のM&Aはすべきだったのか、すべきではなかったのか、率直にお願いします。
【日本郵便社長】
総合物流企業として成長していくためには必要なことだったと思いますが、値段がやや高かったのかなということ、そして不幸なことに、経済環境が悪化してきている、二極化もしてきていますが、オーストラリアの会社だったということ、この2つが結果的に不幸だったと思っています。
【記者】
先ほどから値段が高かったというお話が繰り返し出ていますけれども、髙橋会長については代表権を返上されるという話がありましたけれども、当時はまだ株式上場前で、いわば日本郵政は国民の共有財産だったわけですけれども、その状況で行われた高過ぎる買い物について、当時の経営陣から、なぜそうなったのかの事情を聞いたり、あるいは責任を追及したりというお考えはないのでしょうか。
【社長】
高過ぎるというのは、今から見るとということなんですね。買おうと思って決断したのが2015年2月、その直前前夜、どういう風景だったのか。もちろん原油価格が落ち出してはいましたけれども、当時のトール社の時価総額は4,100億円だったんですね。M&Aで買おうと思うと、どうしてもプレミアムを乗せないと買えない。これは非常に幅があるので、その時期にもよりますけれども、3割から6割ぐらいの幅でプレミアムが乗って、M&Aができるんですね。4,100億円の時価総額の会社を6,200億円で買いましたから、5割弱ぐらいのプレミアムを乗せて買ったんです。この水準は、決して極めて高額と、途方も無いという水準ではないと思います。しかも当時は、400億円、500億円と売り上げが伸びている時期でしたので、これを買っても何とか戻せるだろうと。それで20年、毎年200億円強ののれん代の償却は十分こなせると思って買ったんだと思います。
 今から見ると、非常に業況が悪くなり、買収価格が高いのではないかと思うんですけれど、当時はきちんとプロセスを踏んで、いろいろなことを考慮して、決定したと思います。
【日本郵便社長】
結局、プレミアムをどう乗せるかというのは、経営の意思だと思います。どれだけ、この企業が当グループにとって必要かということでしたので、そこは経営判断のことだと思っています。
【社長】
追加で申し上げますと、冒頭に申し上げましたが、ちょうど上場前でエクイティストーリーがあったほうがいいとか、閉塞する日本だけではだめだから海外に布石を打ちたいとか、そういうような思いもあって、それが、少しプレミアムの上昇に影響したかもしれませんが、特段ものすごく高額というわけではないと思います。当時は、ライバル企業もたくさんいて、買おうと思った企業は同じようにプレミアムを乗せないと買えないような状況でした。特段、トール社が圧倒的にプレミアムが高かったということでは、なかったと思います。
【記者】
買収によるシナジーのことでお伺いします。西室前社長は、3PLという言葉を出して、これに対して期待を表明しておられました。これが行き詰まってしまったということで、そもそも見込みと違ったのか、あるいはもともと見込めない買収だったのかというところをお伺いさせてください。
【日本郵便社長】
3PLが見込めなかったというよりも、当社にとって経営全体を圧迫したのは、トール社における豪州国内の宅配事業なんです。その一番の収益源が落ちてきて、今では赤字になっているということですので、3PLにつきましては、今後も期待できる分野だと私は認識をしています。
【記者】
そもそも国内の郵便事業は市場の縮小が続いており、郵政グループ全体で見ても、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の利益が多くを占めている状況ですが、今回、トールで行き詰まったことを受けて、グループ全体の経営戦略にはどのような影響があると考えていますか。
【社長】
二つ申し上げます。おっしゃるとおり、一昨年度の決算で申し上げますと、日本郵政グループ連結ベースの売り上げの8割はゆうちょ銀行、2割がかんぽ生命のパフォーマンスです。したがって、収益の貢献度では、ゆうちょ銀行とかんぽ生命で、日本郵便は何をやっているんだということかもしれません。ゆうちょには178兆円の貯金残高がありますが、これの93%を全国津々浦々、2万4,000局の郵便局で集めています。ゆうちょ銀行は直営店233店舗を持っておりますが、そこで集められる貯金は、178兆円全体の7%に過ぎません。したがって、2万4,000局の郵便局を持つ日本郵便なしには成り立たないというビジネスモデルです。
 かんぽ生命も同様で、自身で1,100人のセールスパーソンを持っています。しかし、郵便局は、1万8,000人のセールスパーソンを持っております。ほとんどの保険契約は郵便局で行っているということですので、郵便局、日本郵便なしには生きていけないビジネスモデルです。一見、日本郵便は日本郵政グループの中で一体どういった立ち位置にいるのだろう、収益的に全然貢献していないと思われるかもしれませんが、大事な大事な、むしろコアになっている拠点であると考えています。
 2点目、今回の減損がありましたが、先ほど申し上げたように、日本国内も一生懸命筋肉質にし、儲かるようにしていきたいと思っていますが、やはり海外の展開も大事です。まだ本当に一石打っただけですので、明日、明後日と次々とM&Aをするわけではありませんが、今回のレッスンもあるので、価格やタイミングやポテンシャル、シナジーなどをよく考えて選択し、継続してやっていきたいと思っています。日本郵便の営業戦略として、トール社の立ち位置は、非常に重要なままであり、それは全く変更がないと思っていただいて結構です。
【日本郵便社長】
追加で申し上げます。私は国内マーケットが縮小するとは全く思っておらず、国内マーケットは宝の山だと思っています。郵便物数については、2001年の260億通が直近では180億通まで減っているというところがありますが、やはりこの手紙、はがきについても、私は揺り戻しが絶対あると思っておりまして、心の部分を訴え、心の部分をどうお届けするかということで、郵便、手紙というのはまだ活用の仕方があると。リアルとバーチャルのいい案配のところに落ちつくのではなかろうかと思っています。
 それから、宅配事業につきましては、先ほどから長門社長よりお話があるとおり、eコマースの発達等でどんどん増えていくはずです。私どもとしては、従来から大口のお客さまに対して適正な料金を確保できるような提案をしています。最近も非常に強くやっている最中ですので、こうしたこともやらなければなりません。
 そういう中で、私どもは個人に優しいゆうパックをもっとつくり上げていく必要があると考えておりますので、ここの伸びというのは、さらに力を入れていきます。そして、トール社とのシナジーを出すために、企業物流の強化をやっていかなければいけません。そういう意味において、国内の物流業者との提携が今後考えられるかもしれません。
 それから、大事な郵便局事業について言えば、金融窓口事業というセグメントでやっていますけれども、金融分野、貯蓄から資産形成、NISA、貯蓄NISAというのは、私どもこそやれる分野でございまして、投資信託について言うと、世の中の銀行や証券会社は、平均保有期間は2年程度ですが、郵便局は6年以上あります。これだけお客さまと私どもとの良い信頼関係のベースがあります。長くお持ちいただく、これが長期分散積み立てのようなもので成長していくと思っています。
 それから、物販や不動産について、金融窓口事業での成長性を考えられるので、国内はまだまだ宝の山だと私は思います。
【記者】
先ほどの質問と一部重複しますが、今回、結果として4,000億円の損失と最終赤字になりましたが、責任を分解していったときに、最大の責を負うのは、買収交渉に直接関わって主導した西室前社長と、交渉に直接関わることが出来た数名の首脳職員が最も、比率でいうと重い責がある。そのような認識でよろしいでしょうか。
【社長】
冒頭で説明したつもりですが、今回の責任は二つあります。5月15日に発表する先期の決算ですが、これだけ大きな、日本の歴史の中で4番目か5番目になるような、4,000億円という減損を実行し、結果的に赤字決算になる、この責任を取ろうというのが一つ目です。
二つ目に、ここに至る一番大きな理由は何かというと、マネジメントの問題もありますが、入り口で少し高く買ってしまったということです。その後、このように豪州経済がひどくなってきて、これほど売り上げが落ちたことについて、十分な読みをつけられなかったという入り口の責任、この二つだと思います。
 一つ目の責任については、会社としてこういう減損を実行し、赤字決算をするわけですが、執行役員、執行役以上と社外取締役も含めて、全員でここは責任を持ちましょうと、おっしゃるとおりです。
 二つ目が、入り口の責任で、特にそれに関わった人間について、追加で責任を取るため、こういう比率になった。そういう意味では、おっしゃるとおりです。
 ただ、全員で持ったところについては、今期に減損し赤字になる、これの責任を全員で負担しようという考え方です。
【記者】
長門社長、補足があれば横山社長にもお伺いしたいのですが、発言の中で、今後もM&Aを国内外でおやりになるとおっしゃいました。先ほどからの質問に対する回答の中でも、これからいろいろ精査するとおっしゃったわけですが、具体的にプロセスを変えなければいけないなど、どのように精査してやっていくのかお聞かせください。
 それで、一般論で言うと、日本郵政も今回4,000億円という大きな金額を減損されたわけですが、日本企業が海外買収をする場合に、よく高値づかみをするなど、横山社長の先ほどのお話でもありましたが、ポスト・マージャー戦略が全く描けていないなど、はっきり言って、証券会社のカモにされている部分もあるかと思います。長門社長も海外経験が長いので、よく聞いていらっしゃるかと思いますが、なぜ日本企業はこんなに買い物が下手で、こんなことになってしまうのか、あわせてお聞かせください。
【社長】
M&Aは絶えずウオッチしています。日本郵政グループ、日本郵便、非常に幅広い活動をしておりますので、ロジスティクスだけではなく、ほかのものもあるかもしれません。そういうものを絶えず私どもでショートリストを作って、今、仮に幾らで買えるのか、分析を絶えずしているということです。精査と言ったのは、日本興業銀行が87年に買収したオブリーランストンというプライマリーディーラーに私は行ったのですけれど、あの頃の金融機関は、アメリカやヨーロッパの機関を買っているブームで、負けているものも勝っているものもありました。いろいろあったのですが、失敗する大きな理由は、欲とそろばん。ウォーレン・バフェット、あるいは日本電産の永守さんが名言を吐いていますけれども、M&Aで成功するために一番大事なのは入り口で安い値段で買うことだとおっしゃっております。そろばんだけでやればそうですが、時々、欲があって、こういう事情でこういう戦略で、どうしてもこれが欲しいんだと目が曇ってくると、そろばんが少し甘くなるので、高値づかみをすることがあると思います。失敗した例の多くは、まず入り口にあると思います。おっしゃるとおりで、高値づかみは、欲がそろばんに勝った場合と。
 二つ目に、失敗する場合は、いわゆるポスト・マージャー・インテグレーションという、買った後のマネジメントをどうするのか。大変僣越ですが、M&A、いろんなケースがあったと思いますが、概ね皆さん間違えるのは、どうせ日本人にはできない。100%買ったけれども、アメリカのことはアメリカ人に任せよう。ここはいいと思いますが、彼らに任せきってしまい、気がついたら資本勘定を失われていた。このようなケースはたくさんあると思うのですが、やはり100%買ったオーナーはこちらなので、相当突っ込んで行く覚悟でやっていかないと、ポスト・マージャー・インテグレーションはできないと思います。ここについては、人材もある種の経験も必要だと思いますが、その辺が出来ないと、しっかりとしたM&A成功案件としては立ち上がらないと思います。
 したがって、仮に、2個目のM&Aをするときは、今回こういう経験をしましたので、相当シビアに見てやらないといけないと思っています。入り口では、プレミアムに気をつけたい。あとは、きちんと自分たちでマネージできるのかと、本当に共通のシナジーを発揮できる確信がないと進められないと思っています。
【記者】
今度の場合、欲とは何だったのですか。
【社長】
今度の欲は、横山が言うとおり、国内にはまだまだ掘るところが幾らでもあり、端的に言うと、国内でのシェアをもっと伸ばせる方法があります。国内でもいっぱいあるんですけれども、それに加えて海外も出来るといいね、ぜひやりたい。これが上場時のエクイティストーリーとしてアピールできるかもしれないという気持ちも少しあったのかもしれません。この辺が欲かな、と思っています。
【日本郵便社長】
やはり身の丈。安さであって、高ければ自分の身の丈、そして採算に合うまで待つ、これに尽きるということ。
 そして、二つ目は、統合を確定するまでに、目的とシナジーが何なのかをはっきりさせるということです。私の過去の経験でも、統合を発表した途端にお互いのエゴが出てきて、もともと何となく決めていたことがうやむやになってしまうと。そして、日本のマージャーは特にそればかりで、人事競争になってしまうこともあるわけです。ですから、PMIというのは、もうこれでやるとはっきりさせておかなければいけないということだと思います。その中で、社内の意思決定をしっかりすることだと思います。
【記者】
今後の収益で、ゆうちょ銀行の為替の含み益もあるので、そういうものも実現していくというご発言がありましたが、大きく言えば、ゆうちょ銀行もかんぽ生命も、上場しており一般株主がおります。そういう中で、今回で言えば、巨額の減損のツケの一部をそういったところに押しつけられているようにも見えるのですが、大きく言えば、3社とも上場している中、いわゆる親子上場の利益配分をどうしていくのかについて、今回何か反省や、何か決めたことはあるのでしょうか。今後もM&Aを積極的にやっていきたいということであれば、成功することも失敗することもあると思いますが、その都度、誰が収益で埋めるのかとなったときに、どのように差配して仕分けをするのか、考え方をお聞かせください。
【社長】
どこか誤解がおありかもしれませんが、今回、収益の押しつけ合いは全くなくて、日本郵便がやられたと、そのままですね。大変不謹慎ですが、仮にゆうちょ銀行、かんぽ生命の収益で消そうと思えば、ゆうちょ銀行は今、4.5兆円の含み益がありますからね。400億円くらい、本当に一瞬にしてつくることができるんですね、大変不謹慎ですが。そういうことは今回、一切しなかった。ゆうちょ銀行はゆうちょ銀行の論理で、この4.5兆円をどのように使うか戦略的に考えています。
 かんぽ生命も持っているわけですね。どのように使おうかと考えています。日本郵便がやられたから、こっちで埋め合わせてくれというのは全く考えていません。ただ、宿命的に、日本郵政は3事業子会社を持っていますので、私どもの連結は足し算するしかないわけですね。それでこうなっているだけですので、間違えても、3社同時上場した別々の上場企業ですので、アームズレングスのルールは必要なので、あっちからこっちへ持ってこようという操作を今回は一切しておりませんし、今後もすることはないと思っていただきたい。
 プロセスで、また誤解があるかもしれませんが、4.5兆円ある含み益。これも、いつ実行してもいいのですけれども、銀行によっては、今期の収益をこの辺にしたいので、何としても実行して出す、4.5兆円のうち5,000億円出してしまおうかというところもあると思うのですが、ゆうちょ銀行は今、一切やっておりません。
 来年、満期が来る投資があります。ボンド投資をして、ちょうど満期が来ますと。その投資には、ちょうど円の為替益がついているものがあるので、満期が来るとオートマチックに満期の収益プラス、この為替収益も実現するということです。
 何も操作をしていないゆうちょ銀行にすると、その4.5兆円の実現益のうち、約1兆円が株の益で、その他が為替と金利等によるものですけれどもこれらが実現してくると申し上げました。なぜ言ったかというと、昨年度の実現見込みは連結ベースで3,200億円でした。今年度は4,500億円というのが中計の数字です。それで、去年のままだと3,600億円ですよねと。その巡航速度より、こういうプラスファクターがあるので、ぜひ今年度は4,500億円、中計で言った数字を達成したいと思っていると申し上げました。ちょっと誤解があれば訂正させていただきたいと思います。
【記者】
一つ要望があります。お二人とも非常に雄弁で、お話はわかるのですが、我々が日ごろ取材をして、大事なことを聞いてもきちんとした回答が返ってこないし、説明する人が出てこない。ですから、いつもこういう機会を設けていただければよいのですが、たまたまここしか機会がないので、日ごろから、基本的な経営情報について質問したことを、担当者が出てきて答えられるような体制を作ってください。
【社長】
了解です。ちょっと誤解があると思うのですが、私どもは毎月この会をやっています。基本的には私が主催していますが、きょうのように、この人がいたほうがいいという場合は、同席してもらうようにしたいと思います。通常は、大変申し訳ないのですが、大した話がなく、毎月やることにしているものですから、何もないときは困っているのですが、必ず、テーマがあってもなくても毎月やると、そのためにこの部屋を持っておりますので、その場は必ずあります。取材はいつでも結構です。でも、これは必ず定期的にやります。
【記者】
最後に一言。これだけのことになったのは、長門社長が社長に就任するとき、トールは色々と問題があると聞いていたのですか。それとも、全く聞いていなかったのですか。先ほど、もう既に16年には陰りが出ていたという認識を伝えているわけで、当然そういうことであれば、西室前社長やどなたかから、今度社長になる人に対して、重要事項の説明があると思いますが、どのような説明があったのですか。
【社長】
私は、2年前の5月11日にゆうちょ銀行の社長に就任いたしましたので、トール社の問題について、事前に、西室前社長から丁寧に、「こういうものを買ったのだけれど、こういう問題がある」ということは聞いておりません。ただし、決まった後、新聞の報道を見ていて、「おっと、随分高いもの買ったね。やるじゃないか」という印象を持った程度で、就任当時にそういうお話はありませんでした。
【日本郵便社長】
1年前は、先程お話したとおり、減損テストをやっても対象にはならなかったと思うんですよね。
【社長】
まだ様子見の時期だった。やはり買ったばかりなので、減損損失となるタイミングではなかったと思います。
【社長】
ありがとうございました。
【日本郵便社長】
ありがとうございました。