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2016年10月20日 木曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2016年10月20日 木曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

【社長】
いつもお忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございます。きょうは、私の方からお知らせを2件と多くの方から昨年11月4日の上場から1年たって、この1年の総括はどうかというご質問を受けているようでございますので、1年経過した私の心境について簡単に追加でご報告させていただきたいと思います。
 1点目は、お手元の資料にございますように、かんぽ生命は第一生命から、第一生命が保有する資産管理サービス信託銀行の株式23%のうちの7%の株式を譲り受けるということを合意いたしまして、本日、株式譲渡が完了いたしました。
 狙いは、資産運用事務基盤の強化でございます。かんぽ生命は第一生命といろいろと連携を図って行きたい、運用の方でもいろいろと協力したいとかねてよりご報告申し上げておりますけれども、本件はその中の一環であるということでございます。
 追加情報でございますけれども、本日、資産管理サービス信託銀行の株主総会におきまして、かんぽ生命から派遣される非常勤取締役1名の選任につきまして決議いただいており、かんぽ生命の方でも誰が兼務になるかという決定をしています。
 本件についての詳細やご質問がございましたら、会見終了後に担当が残りますので、そちらでお聞きいただければと思います。
 2点目ですけれども、11月1日火曜日に郵便局の窓口で2017年(平成29年)の年賀葉書の販売を開始いたします。ことしもいろいろ年賀状の良さを実感していただきたいということで、メニューをそろえております。年賀状にあまりなじみのない若者層にもアピールしたいということで、SNS、ソーシャルネットワークを利用して、住所などがわからない人同士でも年賀状のやりとりができるサービス等いろいろメニューをそろえております。
 年賀特設サイト、「年賀郵便.jp」を開設いたしまして、ここで年賀状の良さをお伝えするべく、コンテンツを準備しておりますので、ご参考までにご覧いただきたいと思っております。テレビコマーシャルも考えており、約400種類の中から選んでいただいたデザインと差出人様の住所、氏名を印刷してお届けする年賀状印刷についても広く宣伝したいということで、10月25日から「嵐」の二宮和也さんと相葉雅紀さんにご登場いただいたテレビコマーシャルのオンエアを予定しております。
上場後1年を迎えるに当たって、少し私の印象を申し上げます。実は、上場後、こういう会見の場ですとか、ロンドン、ニューヨーク、ボストン、一部同僚はシカゴ、西海岸の方も回りましたし、私自身も先般はシンガポール、香港等のアジアも回って、海外の投資家の方々ともIR会議、ワン・オン・ワンのミーティングとか、ラージミーティングを通じていろいろ意見交換をしております。前回の会見、前々回の会見でも申し上げましたけれども、皆様からは同様のご質問を受けております。大変申し訳ないのですが、ご報告できる事実がないものについては「検討中」と、判を押したようにお答えしております。私がここに来たばかりのときに、ゆうちょ銀行の社長としても、日本郵政の社長としても、経営会議等で「検討している」という回答やレポートが多いと「検討しているというのは、やらないということに聞こえる。いつまでに、何をどうするというふうに言ってくれ」と言っている私自身が「検討中」と言っている。例えば、「ゆうちょ銀行。地銀と連携してファンドをつくる」と言って久しいですし、みまもりサービスについても実証実験期間を半年間延ばして9月末で終わりましたけれども、近々発表すると言っていたのになかなか出てこないとかですね。株式の第2次売り出し、アライアンスやM&Aについてご質問されても「検討中」とお答えしておりました。
 せっかく昨年11月4日に3社同時上場しましたが、その後あまり進んでいないのではないかと思われるかもしれませんけれども、私の印象は、上場から1年間、あるいは私が4月1日に日本郵政の社長に就いてから半年間、準備期間というのが正確な風景だったと自分で感じております。日本の剣道ではありませんけれども、全ては構えから。構えで準備ができなければ次の本当のステップに動けないわけで、構えにいろいろ従事していたというのがこの1年、あるいは半年だったと感じております。
 一番端的なのは、私もゆうちょ銀行から日本郵政に来たわけですけれども、私の後任には池田がゆうちょ銀行に来て、日本郵便の方も強化しようと、高橋が社長から会長になり、社長として横山が来る等、経営層の方の人事の強化をしたり、例えばゆうちょ銀行ですけれども、非常に低金利になっている日本の運用環境に対応すべく、一時、私自身で宣伝させていただきました7人の侍も30人弱になっております。フロントだけ強化しても意味がないということで、これだけリスクがはびこっている環境になりましたので、リスク管理部門の方も志々見専務、あるいは他行の現職の執行役員に来てもらってリスク管理統括部長にする等そちらの方も強化するとか、手数料収入も昨年度は約900億円とわずかでしたから、ゆうちょ銀行のレベニューの中の数%にすぎないわけです。これに対応すべく、ATMを利用したゆうちょ銀行口座間送金手数料を3回目までは無料とし、4回目からは手数料をいただくとか、JP投信をことし2月22日にスタートして、アゲインストの環境ですけれども投信業務を始めたりとか、かんぽ生命の方も、システム全面更改というのを来年度に控えて非常にエネルギーかけて準備していたり、8月1日からは現下の金融情勢を踏まえて保険料の見直しとか、かんぽ生命の方のレベニューをご覧になっていただければわかるように、6割以上は保険業務でとっております。ゆうちょ銀行の方は運用のレベニューの貢献度は昨年でいえば93%でしたけれども、かんぽ生命はそのウエートが2割弱ですので、少し運用業務への要請は弱くなりますけれども、ゆうちょ銀行と同じ運用業務の深掘りというのもやりたいということで外部からの人材を登用するとか外債運用の準備を本格的に開始する等をやっております。
 例えば、地銀とのファンドにつきましても、7月に熊本地震からの復興ファンドでは初めて九州の地銀全行とゆうちょ銀行を入れたファンドをつくりました。これもゆうちょ銀行としては、当局から出資についての承認が必要な業務でございますので、承認をいただきました。先月も申し上げましたけれども、近々違う案件もご紹介できるのではないかと思っております。みまもりサービスについても9月末までの実証実験期間が終わりましたので、近々これもご報告できると思いますけれども、意にそぐわず検討中と申し上げているのは、いろいろな準備をしているというふうにご理解いただきたいと思います。
 1年やってみてつくづく感じましたのは、海外にIRに行ってもそうですけれども、海外の投資家、あるいは、昨年11月4日に上場した時の主幹事証券会社の方々や証券会社の社長など複数の方々がおっしゃっていましたけれども、普通、IPOで株を買うときには自分のポートフォリオの変更になるので、特にリテールの投資家の方々は自分が持っている株のどれかを売ってその換金されたお金で新しく株を買うという人が多かったとか、今回こんなに現金で株を買った人はいなかったと言っていただけたように、海外の投資家の方々もなかなかこれからどういう展開になるかわからないけれども、日本郵政グループの良いところは2万4,000局、全国津々浦々のネットワーク、そこに相当数のお客さまがいるということだと必ずおっしゃいます。そこが日本郵政グループのビジネスの原点と感じております。
 ゆうちょ銀行でも口座数1億2,000万口座、1億3,000万人の人口でそれだけ口座を持っている。かんぽ生命も総資産は業界シェア22%、個人保険の保有契約年間換算保険料では業界シェア23%のシェアを持っていて、圧倒的な顧客の数がある。お客さまはこれからの時代に対応するニーズを一生懸命発信されているわけで、ここをどのように拾って具体的なビジネスにしていくのかというのが私どもの原点だと思いますけれども、1年間準備期間をいただきましたので、今後は検討中と言わずに、会見の場で一つ一つご報告できるようにしたいと思っております。
 以上、やや定性論で申し訳ないですが、今月の私の冒頭のご報告でございます。
【記者】
よろしくお願いします。
 まず、ゆうちょ銀行の限度額引き上げについてお尋ねします。先日、自民党の特命委員会が、来年4月にも1,500万円に限度額を引き上げるという案が浮上し検討に入りました。限度額の引き上げについて、日本郵政としてはどのように受けとめてらっしゃるのでしょうか。
【社長】
4点申し上げます。
 1点目。1,500万円のお話。たまたま私ども4社長、特命委員会の場におりました。議員の方がその数字をおっしゃいましたけれども、これが特命委員会全体としてのご意見なのかどうかわからないので、私が言うのも僣越ですけれども、たまたまそういう数字が出てきたとご理解いただいた方がよろしいかと思います。
 2点目。この4月1日から、例えばゆうちょ銀行の限度額が1,000万円から1,300万円に上げられたわけですけれども、その後のゆうちょ銀行の貯金残高の推移を見ますと何か特別にご報告申し上げなければいけないような変化はないと今は感じております。他行の数字はそんなに新しいデータではありませんけれども、それを見ても他行の推移と比べて特にゆうちょ銀行の推移が著しく変わっているという印象を持っていません。
 3点目ですけれども、郵政民営化委員会でいろいろご検討いただいて、これを受けて政府の方で限度額を300万円増やしたという経緯でございましたけれども、郵政民営化委員会の所見というものが昨年12月25日に発表されております。大変僣越ですけれども、一回整理したいので読ませていただきます。「他の金融機関等との間の競争関係やゆうちょ銀行の経営状況に与える影響等を見極め、特段の問題が生じないことが確認できれば、必ずしも株式処分のタイミングに捉われることなく、段階的に規制を緩和していくことが考えられる」と書かれておりまして、同日の郵政民営化委員会委員長の会見で、当時の委員長である増田さんがおっしゃっていました言葉をもう一回引用させていただきます。「次の段階の限度額規制の緩和の検討についても懸念される資金シフト等がないことを確認できれば、その後速やかに実施されることが望ましい」とおっしゃっていたのと、ここは少しサービスがあったのかもしれませんけれども、「1、2年ぐらいのイメージを持っている」とご発言があったということは印象として残っております。
 4点目ですけども、これはやはり政令事項でございますので、政府が決めるということからゆうちょ銀行の貯金の推移等を見て、適切にご判断いただけるというふうに感じております。
【記者】
民業圧迫にはなっていないということなのかなと思いますけれども、自民党内にも民業圧迫にはなっていないので、そもそも限度額を撤廃すべきだという意見もあるようです。仮に引き上げ、もしくは撤廃になった場合に、ゆうちょ銀行が資金運用で困るようなことというのはないのでしょうか。
【社長】
仮のお話に答えるにはあまりにも大きい話なので気をつけて申し上げますけれども、仮に増えた場合に、恐らくご懸念は、日銀の金融政策でマイナス金利。昨年度の平残より増えた部分プラス必要な金額を引いた部分については、マイナス0.1%がチャージされるということがあるので、余計にお金が集まったら困るのではないのかということですけども、一つ、当面あまりお金が集まっていないんですね、そんな増えていないんです。それから仮に、仮にですけれども、増えたとしてもゆうちょ銀行では、今30人弱の侍になって、従来からいる90人の運用部隊と一緒に新しい運用体制を強化していて、いろいろトライをしている。サテライト運用は3年間の目標が60兆円だったのがもう既に62兆円になっている。オルタナティブ運用まで始め出した。プライベート・エクイティ・ファンドはもうスタートしていて、ヘッジファンドと国内不動産ファンドは近々スタートすると思います。海外不動産ファンドの方も準備中でございますので、このように多様な運用の深掘りをしている最中でございますから、仮に増えたとしても、そちらの方で十分、運用できるというふうに感じております。全く仮でございますので、そこは斟酌してお聞きいただきたいのですけれど。
【記者】
日本郵政および金融2社の株式の2次売却の時期について、最終的には政府が決定することではありますけども、どんな見通しをお持ちでしょうか。
【社長】
これは本当に申し訳ないですけれど、具体的にプランが決まれば東京証券取引所にレジスターして、そこで初めて公開できる話になるので、それまでは決して言えないというのは法律で決まっておりますので、全く言えないんです。従来からの繰り返しで本当に申し訳ないですけれども、日本郵政株式会社の株式については、これは財務省、政府のご判断になるので、その判断を粛々と待つしかない。もちろん私どもは早いほうがいいと思っていますけれども、財務省の判断にかかっています。
 日本郵政が持っているゆうちょ銀行とかんぽ生命の金融2社の株式の2次売却のタイミング等の問題についても同様で、本当に申し訳ないですけれども、かねてから申し上げているとおり金融2社の経営の自由度、自主性を広げるという意図から、できるだけ早期に売却を行いたい、当面はその保有シェアが5割になるまでをめどに粛々と早期にやりたいと思っています。ただし、ユニバーサルサービスへの影響がどうだとか、両社の経営状況はどうなっているとか、株式市場の環境はどうなっているのかとか、グループの一体性確保は大丈夫なのか等を勘案して決めるというのが、ずっと言っているルールです。これ以上の原則はないとご理解いただきたいと思います。
【記者】
先ほどの限度額の引き上げについてなんですけれども、今のお話ですと、ほかの金融機関からの資金流入は起きていないし、もし仮に貯金残高が増えたとしても対応できるということはですね、引き上げについて社長としてはネガティブな立場ではなく、歓迎する立場であるというふうに聞こえたんですが、そのような理解でよろしいでしょうか。
【社長】
自然体です。政府のご判断にお任せします。
【記者】
困るということではないという理解でよろしいでしょうか。
【社長】
そういうふうに言うとポジティブだと言われても困るので、そこだけ言うと困っていません。
【記者】
先ほどの株式の追加売却の話ですけれども、上場後1年を経てですね、まだ追加売却が一度も行われていない状況については、長門社長ご自身はどのようにお考えかということをお伺いしたい。
 あともう一点、全く別になりますが、日本郵便で物流ネットワークの再編などを進めていらっしゃると思いますけれども、これについて上場から1年を経て進んだところ、これからさらに続けていかなければならないところを教えてください。
【社長】
1点目。上場して1年たったのに2次売却をやっていないじゃないかと。これも迂闊に申し上げられませんけれども、官から民へという流れで最初に行われたのがJR。その次に恐らくNTTですよね。そしてJTが行われたと思います。彼らも最初に東証に上場をして、2次、3次と売り出したわけですけども、決して1年以内に2次、3次が頻々として行ったというところはそんなにないと思います。一般的な上場企業で、さらに追加売り出しをするという企業は民間でもございますけれども、それもよほどシナリオが変わって全く新しい強い成長戦略が見えたとか、変化があったときに行うと思います。1年以内だけど、もう一度、売り出しというところ、ないこともないですけれども、そういうところは多くはないと思いますので、私どものペースがものすごく例外的に遅いということはないと感じております。先ほど申し上げましたように、私どもだけで決められなくて、いろんな事情で決まりますから、マーケットの環境等もありますので一概に言えませんけれども、1年というタームだけについてはそういうふうに感じております。
 2点目。日本郵便の物流ネットワーク効率化について。日本郵便はトールを除いて3兆円の売り上げ、3兆円の経費という構造の会社でございまして、もともとは政府の官業の仕事で皆さんにユニバーサルサービス、どこの地域でも同じ料金で郵便を届けるということをやっていた会社です。この1年間だけではなくて、以前から絶えずそれ相応に効率化については貪欲にいろいろ試している。地域区分郵便局(区分作業拠点)を集約して、そこに最新鋭の機械を導入して効率的にやるとか、いろいろとそれは絶えずやっております。特にこの1年間で急に上場したから何かが変わったということではなくて、今までと同じ方向性で取り組んでいるというふうにご認識いただきたいと思います。
【記者】
郵便だけではなくて金融を含めた3事業の観点で、今後ユニバーサルサービスにおいては、民営化後、過疎地では直営局が簡易局に変わった事例もあったと思いますが、あくまでも郵便局数等の数の部分でユニバーサルサービスというのを維持していくのか、それとも、それだけではなくて、サービスを高めて行くことによってユニバーサルサービスを維持していく考え方があるかどうかについてお聞かせください。
【社長】
今、総務省でタスクフォースがあってご検討もいただいているものと同じレベルで、私どもも絶えずユニバーサルサービスについては原点に立ち返って考えています。まず数については、数自体を目標として、減らしたりとか増やしたりしようということは考えていません。要するに、きちんとやります。直営局から簡易局になったとかあるかもしれませんけれども、いろいろな事情でやむを得ずということがあり変わっているだけで、特に数については意図があるからやったということではないとご理解いただきたいと思います。
 質については、これは絶えず上げなければいけない。これは海外のIRに行ったときも、私どもが行く直前に同業他社が行っていたりして、海外の投資家等から貴社はどうなっているんだという質問があったりしました。局によっては、地域によっては、あるいは担当によっては、質がきちんとしてないというようなご指摘を受けることもあります。これではいけないということで、事件が起こったら、当然、みんなと連絡をして、もっとしっかりとやりましょうということをリマインドしたりとか、必要とあれば、絶えずそういうのを促して、向上させようと思っています。質がある程度のところで良いんだとは決して思っていません。絶えず良くしたいと努力はしているつもりです。
【記者】
日銀が新しい金融政策の枠組みを導入をしてから1カ月がもうすぐたちますけれども、この新しい枠組みというのがイールドカーブに与えた影響というのをどういうふうに評価をされているかというのと、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、両社にとっての運用環境、この日銀の新しい政策によってどういうふうに変わったと評価されているか、その2点をお聞かせください。
【社長】
先般、世界銀行・IMF総会に行って、国際金融情報センター主催の朝食会で、総会に行った3メガ、3証券、生保、損保も含めて皆、集まりました。黒田総裁は違う会議があって彼だけいらっしゃらなかったんですけれど、日銀の方々、麻生大臣もいらっしゃいました。皆さんの話を聞いて意見交換する場とか、いろんな議論がありました。黒田総裁は必ずインタビューされる輪の中心にいらっしゃいましたけれども、その場を通じてもいろんな意見がございました。
 まず1点目。調べてみると、イールドカーブはほぼ平行移動しているんですけれども、日銀が発表した後ですね、何が起こったかというと、要するに10年のところをゼロにするというのが日銀のポイントで、言っているところは10年以降のイールドカーブは立ってくるということも意図されていると思うんです。10年も含めてどんどんマイナスになることはしたくないと。
 なかなかこれは金融政策では難しい方策ですけれども、QEポリシーで日銀は相当の国債を買って、ビッグプレーヤーになっているので、コントロールできるのではないかという算段をもってやっていると思いますけれども、見てみますと、10年債については9月20日の会合前はマイナスの0.063だったのが、会合後0.027になって、その後いろいろ動いていて、一番直近で10月17日0.052になっているというので、ほとんど動いてないという状況でそんなに変化がないんです。
 ですから、事実として見ると、あの政策の後、ものすごくドラスティックにイールドカーブが変わったかというと、そんなに大きな変化がないと思います。ただ、15年債を見ると、会合前、会合後及び直近についても15年債は全部プラスになっているし、20年債も30年債もそういうふうになっておりますので、そこのところはマイナスではないんです。また10年債、ぴたりとゼロにはできないと思いますけど、そんなことが起こっているという事実、まず一つ目ですね。
 2点目。運用体制にどのように響くかということだと思うんですけれども、まだ9月20日からそんなに時間はたっておりませんので、まだ見ている最中です。この間に、大きな投資方向として変更はありません。私どもの180兆円弱ある貯金の平均デュレーションが大体3年なんです。したがって、ゆうちょ銀行は、適切なリスクアナリシスもした上でのALMの運用としては、資産を意図的に平均3.X年に持っていきたいと思っています。
 そういうことを考え合わせると、10年債のイールドカーブの位置というのは、ちょっとイレレバントになるんですね。もちろん直利を稼ぎたいとか、明らかに短期的にこれは暴騰するというような読みが確実にあった場合に、一部トレーディングアカウントで買うことはあるかもしれませんけれども、基本的にはそういうデュレーションで考えていますが、5年債のイールドカーブについては依然マイナスであり、5年投資してもまだマイナスだという状況にありますので、現状はまだ運用体制を変えるところに至らずと思っています。
 今後ですけれども、大きく変化はないかなと思っていまして、この前の10年債をゼロにするという政策では、ゆうちょ銀行かんぽ生命の運用体制が大きく変わるとは感じていません。
【記者】
上場1年ということで、外部環境の変化もありましたけれども株価についてのご認識についてお願いいたします。
【社長】
株主総会でも、せっかく買ったのに株価が下落して損失がでたというご発言もありましたし、それから、国内の投資家へのIR、投資家説明というものも大手証券会社にアレンジしていただいて参加いたしましたけれども、そこでも株価下落しているという声がありました。せっかく期待して買っていただいたのに申し訳ないと思うのと同時に、株価自体は私ども自身でコントロールできませんので、私どもは一生懸命やるべきことをやって、良いパフォーマンスを上げるように努力するしかないので、それを引き続きやっていきます。
 言い訳になりますけれども、一度申し上げたと思うんですが、昨年11月4日に上場して、その後の株価推移を見ますと、大変僣越ですけれど、全体の株価が落ちてきています。8月にチャイナショックというのがあって、非常にマーケットが荒れた。それが少し落ち着いたときに運よく上場できたんです。アメリカが昨年12月上旬、9年ぶりに金利を25ベーシス上げるということもあってか、ことしの1月、2月また中国発の大混乱があって、非常にマーケットが落ちました。全体のマーケットが落ちているということがあると思うんですけれども、私ども、数字で仮に申し上げますと、昨年11月4日を100とすると、ゆうちょ銀行は、今81.9、すみません、18%ぐらいダウンしているんですけれども、例えばメガ銀行は、他行がどうだということもありますけど、もっと落ちています。
 かんぽ生命は、100から見て今96.8ぐらいです。上場企業はあまりないので、仮に第一生命、東京海上と比べても圧倒的に上のところにいるんですね。ちょっと変なロジックで申し訳ないですけれども、みんな下落しているので、引っ張られて落ちているところもあると。他社よりは少し良いと言いたいですね。
 あえて斟酌しますと、例えばゆうちょ銀行の場合には、融資ができないので運用が中心になっています。この運用で収益の9割以上が出てきます。平均のアセットの格付けは、シングルA以上が9割以上あります。ディフェンシブに運用しているという姿です。株価が落ちて残念ですが、頑張りたいと思っています。
【記者】
ドルの調達コストについてお伺いしたいと思います。アメリカの規制が強化されていまして、海外で業務されている各行はご苦労されていますけれども、ゆうちょ銀行も無縁ではないと思いますけど、一応、対策というんですか、ちょっとご教示ください。
【社長】
日本の金利がこういう状況になっていますので、当然ながらということでサテライト運用を増やしています。ことしの3月末で61兆円になりました。そのうちの約45兆円が外国証券での運用です。
 先ほど申し上げたようにアベレージ9割以上がシングルA以上ということですから、ディフェンシブに運用しておりますけれども、その金利自身がちょっと落ちてきています。加えて、私どもが持っている原資は全部円ですから、ドル円で円投してドルを調達して、あるいはユーロを調達して買ってるわけです。特にドルの調達コストが上がっています。
 おっしゃっていたのは多分、マネー・マーケット・ファンド等の新しいレギュレーション変更だと思います。大変注目していて、今のところそんなに、これ自体による高騰はないと市場の状況を見ております。ただ、その前から十分上がっていて、やはり80ベーシスとか70ベーシスとか、追加的な負担がかかっております。その分だけゆうちょ銀行の収益が落ちるわけで、頭が痛い材料になっています。
 ただし、従来投資した部分については、既にヘッジをかけておりまして、ストックの部分については実現している部分もあるものですから、そこの部分については、影響が小さいということ。
 それから、新しい部分は効いてきますけれども、ここは考え方ですけれども、二つあって、十分なリスク管理をした上で、全部が全部必ずヘッジでいくのかなと。可能性としてあり得ると思っています。
 それから、他行もやっているように、ドルファンディングというものも十分に検討に値するのではないかなと。本当に一部のヘッジにしか過ぎないかもしれませんけれども、先般発表しましたように、ゆうちょ銀行は格付けを取りました。他行並みのいい格付けをいただきましたので、何かそういうような、外貨調達をしようと決断して、やろうと思ったらできなくはない環境に来ましたので、この辺についても手は打てるかもしれないと思っています。現状は、その部分が削られた、これから新しく投資する部分ですね。利益が減ってしまうことが非常に痛いですけれども、それでもマイナス金利よりはプラスですので、そちらももっと目指してまいりますけれども、うまく直利の高いものを探して、それが一つオルタナティブ・インベストメントになるんですけれど、それと同時に、リスク分析で耐えられるものであれば、全てが全部完全ヘッジにしなくてもいいかもしれないというのと、一部、ドルファンディングなんかも将来的には十分検討してもいいと思っていて、新しいチャレンジ、この機会をいかして、もう一段運用の技を深めたいと思っています。
【記者】
先ほどの限度額引き上げときの話に付随してですね、ゆうちょ銀行の残高について伺いたいんですけども、先ほど運用の強化をトライしているので、仮に残高が増えても十分に対応できるというお話だと思うんですけれども、これまでですね、基本的な姿勢として、バランスシートを膨らませることよりもですね、運用を高度化するということを重視されてこられるというふうに感じていたのですが、先ほどのお話からすると、バランスシートの拡大についても対応できる運用の体制ができた、残高の増加も今後は目指していかれるという主旨でしょうか。
【社長】
私どもの貯金残高のピークは99年だったんですね。あの時に、記憶が定かではないのですが、約260兆円あったと思うんです。それがことしの3月末約178兆円になりました。したがって、ずっと資産が減ってきているというプロセスにあったんですね。運用は、最初はJGBばかりだったのですが、高度化をやってきたというので、当然ながら組織のファーストプライオリティーは運用の高度化だったんですね。これと資産の問題。資産が減ってくれば余計にということはあったんですけども、あまり関係なくて、運用の高度化は高度化でやりますということなんですね。
 資産のアップについては、先ほどのお答えどおりで、どうなるかわかりませんから、仮の前提でお答えするのは危ないと思うので、郵政民営化委員会、政府の方々のご検討にお任せしたいと思います。増えたらそのとき考えます。
【社長】
ありがとうございました。