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2015年2月18日 水曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2015年2月18日 水曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

【社長】
それでは、今朝ほどというよりは昨夜の夜中位から、いろいろ皆さま方にご心配をかけまして、外国の方から何かニュースが入ったようでございましたので、夜中から、それから今朝も何人かの方がお見えいただきました。それで、この寒い中を、本当に、皆さまにご迷惑をかけましたけれども、ようやく、私どもの成長戦略についてお話ができるようになったということでございます。
 私どもの考えている方針・施策につきまして申し上げる前に、重要な人事につきまして申し上げます。
ゆうちょ銀行の井澤社長から辞任の申し出がございまして、これを認めることにいたしました。ご本人は就任以来5年を経過し、やるべきことは全てやれたという達成感もあり、また、社長として、そう長く務めることもできないため、今後の上場を考えると、上場準備中の辞任、あるいは上場直後の辞任、そういうことになった場合には、上場そのもののスケジュール等に支障があるかもしれない。そういうことも配慮して、それで、辞任を申し出たということであります。これまでの業績として、残高の減少からの反転、これはもう、今回の第3四半期の決算発表でもわかったと思いますけれども、それから、低金利の中でも予想利益を上回る業績を上げていることなど、すばらしい成果を上げておられます。ずっと減少してきた預金残高だとか、あるいは利益につきましても、ここで一つの反転の印が出たということで、ご本人の辞意が固いものですから、残念なことではございますけれども、退任をしていただくことになりました。今年度、3月31日付けでの御退任ということになります。なお、井澤さんは、御存じのとおり日本郵政の方の非常勤役員も兼ねていただいておりますので、こちらの方は6月の株主総会まではお務めいただくということになります。
本日、二つばかり大きなニュースがありましたが、私からはまず最初に申し上げたいのは、かんぽ生命のことでございます。日本IBMとワトソンの実用化に向けての共同実験を行うことにしております。これは日本IBMを経由して、IBM本社の全面的なバックアップを得ての計画でございますけれども、ご承知のように、ワトソンというのはコグニティブ・コンピューティングといいますが、いわゆる人工知能、これを備えた新規開発のコンピューターでありまして、これは英語では既に開発がされ、そしてまた、いろいろなアプリケーションその他も搭載されるようになっておりますけれども、人間の頭脳と同じでありまして、今後、勉強していかなければ知能は発達していかないと、当然のことだと思います。保険に関しての知識、それから、ベテランの担当者の経験を学習することによって、生命保険についても実際に使えるものになっていくということであります。皆さま方のお手元に資料はお配りしてございますけれども、これは、もう既に銀行で一部共同実験を始めておられるところもございますが、国内の保険業界では日本郵政グループのかんぽ生命が最初になります。これは、実験というよりはむしろ学習をお手伝いしてもらうというよりは、いろいろな中に集積すべき情報、こういうものを日本語でどのように覚えていくか、あるいはそれを理解するか、そういうことも含めて、私どものかんぽ生命が全面的にIBMの援助を、あるいはお手伝いをしていただいて、これを完成に持っていきたいということです。かんぽ生命の中では、現在のところ、ベテランの社員の仕事が効率的になるだけではなくて、そのレベルまでのいろいろな学習知識の習得に、通常は約10年必要だと言われております。そういうものについて、このワトソンがしっかりと手伝ってくれるということができれば、将来的にはお客さまとの対応に、もっと幅広い、そしてまた的確な対応ができるということであります。
 おわかりのように、通常のコンピューターの導入というのは、企業の製造の現場でよく行われておりますが、これも結局は現場のベテランの社員の、それまでの蓄積による行動、やり方、段取り、そういうものを全て学習した上で、コンピューターを活用していくということが生産性の向上に非常に大きく役に立っております。ワトソンはそれを、もう一歩というよりは抜本的に新しくして、そしてこれから先の保険事業につきまして、日本語がわかって日本語でそれをきちんと評価し、実用化するということになります。これは、ここから先の成長を期待する上では必須のことだと思いますし、同時に、IBMの全面的なバックアップをいただいているということであります。
さて、2番目は日本郵便によるオーストラリアのトール社の買収の件であります。既に現地で発表をされております。これは今朝の日本時間の9時過ぎに、現地で日本郵便の高橋*社長が相手方のトール社の幹部と一緒に記者会見もやらせていただきました。これはトール社側の最終的な意思決定が、昨日の、日本時間でいうと夜中近くまでかかっていたということでありましたので、どうしてもそれまでの間、日本郵政グループとしては、本件について承知はしておりましたけれども、途中の段階で今ネゴ中だとか、どんな状況だとかという話は一切言うべきでもないし、言わないということにさせていただきましたので、皆さま方に夕方から夜中の段階で大変ご迷惑をかけてしまいました。その点についてはおわびを申し上げたいと思います。
 現地の記者発表には、日本からはNHKの記者がお一人ご参加になっておられたということでございましたので、そういう意味では、もう既に具体的な内容についての報告もあったかと思います。
 グローバル市場を考えますと、郵便の世界ではEMSなどの一部を除いて、そう大きく伸びているわけではありません。私どもは、グローバル展開をやりたい、あるいは我々の次はグローバルな事業をどうやっていくかということについての抜本的なやり方、それについて検討中であると。前回の記者会見の時にも、いろいろと新しいことについて検討はしていますので、発表できる段階になったらすぐに発表しますと申し上げましたのが、この件も含む、あるいは先ほどのワトソンの話も含む、いろいろな努力の成果でございます。
 私どもの日本郵便というのは、ご承知のとおり、配送の分野につきましては長年の経験からノウハウがございます。いわゆるサード・パーティー・ロジスティクスという言い方がありますけれども、3PLとか、いろんな運送業界での呼び名がございますが、BtoBの配送業と簡単に言ってもいいかと思います。この分野につきましては、私どもは日本の市場においてすら知識も経験も少ないというのが現状でありまして、ましていわんや、グローバル市場における3PLについてはほとんど経験もございません。そこで、実は全世界の3PLができそうな会社というのを比較・検討をさせていただきました。結論として、トール社が最高の相手であり、かつまた、これ以外にはないということになっております。つまり、実際に実行部隊がいる。そして、その実行部隊が約55カ国にわたって拠点を既に持って活動しているという現実の前に、しかもこの企業は収益がしっかりと上がっていることを続けている会社でありますから、日本郵便の利益の貢献にも役立っていただけるということであります。
 先方の会社につきましての資料はお配りしたとおりでありますが、買収金額は、正確には65億オーストラリアドル、日本円にしますと約6,200億円になります。この金額につきましても、昨晩以来、いろいろなことを言っておられましたが、今朝ほどお集まりの方には約7,000億円というお話をしました。これは、場合によって最終段階でこの金額の積み増しがあったとしても、そしてまた、為替が急激に変化したとしても、許容範囲である数字を申し上げたので、現実の数字は、ここに示しましたように65億オーストラリアドル、日本円にしますと、今の換算レートで約6,200億円ということであります。
 この会社を買収した後、同社の経営につきましては、現経営陣の中から適任者を選んで、引き続き経営に全面的に参加してもらうということで考えております。日本郵便の100%子会社になるわけでありますから、日本郵便の中からも何人かは現地駐在で行ってもらう人もありますでしょうし、直接担当する人も出てくると思います。
 この関係もありまして、日本郵便の経営を強化して、そしてまた、高橋*社長、大変多忙でございます。それを補佐するために、ゆうちょ銀行の副社長である米澤副社長に日本郵便の副社長に移っていただくということにいたしました。その際に、新たに上級副社長という職位を設けまして、そして、社長を全面的に補佐し、業務全般をみていただくということ、特に新しく出ていくこのサード・パーティー・ロジスティクスの国際展開についてもしっかりとみてもらおうということで、これにつきましては、日本郵便の取締役会で了承をいただいております。
3番目は、本日の一部の新聞に、お気付きになったかどうかわからないのですが、人材募集広告を出させていただきました。それの関連の記事も中に入っておりますけれども、ゆうちょ銀行の人材募集という広告でございます。
 ゆうちょ銀行は、現状では貸出業務というのはほとんど行っておりませんし、これからは役務利益の拡大に努めたいと思ってはおりますけれども、今後しばらくは資金利益、つまり機関投資家としての活動による利益が中心とならざるを得ないと思っております。昨年から今年にかけての金利低下の局面におきましても、それなりの利益は確保したという実績はございますけれども、これはあえて言えば特筆すべきことだと思いますけれども、これだけの資金量を持つ機関投資家として、運用の高度化、リスク管理の徹底によって、さらに一層の利益を上げることが可能であると確信をいたしております。
 そこで、日本郵政グループの内外を問わず、内外を問わずというのは、社内の方も含めてという意味でありますが、外部からも積極的に高度運用、リスク管理、この専門家を募集することにいたしました。それが今日の日経の39面でしたか、社会面の一番下にある広告であります。最終的には数十人規模の部隊にしたいと思いますが、有能な方、日本の中でもそんなに多くない。しかし、日本語ができて日本語がわかっているというのは、これは基礎的な条件でございますから、日本語での広告を出させていただきました。それで、急に集めるというのも果たしてどの位可能かというのが、私ども、予測がつきません。それと同時に、実際にどのような、何人位の方が興味を持ち、また、自らクオリファイしているという申し出があるかどうかわからないということで、なるべく早く募集広告はさせていただいて、そして、来年度早々からゆうちょ銀行に移籍していただける方、あるいは、今仕事がおありになる方は移籍になりますけれども、あるいは来年度からすぐに参加するという方はなるべく早く一緒に入っていただいて、それで、制度設計も含めて検討をいただいて仕事を始めていこうと思っております。
 現在の運用チームには、新たな制度に移るまで現行どおりの方法で業務を実施してもらい、順次、新たなチームにその業務を移転していくということになります。この募集広告にもありますように、新しく招聘する方々というのは全員が専門家でありまして、そしてまた、管理職として処遇をすると決めております。成果給を支給することも考えております。成果給の部分につきましては、いろいろ、金融庁の規制というかご指導もあることでございますから、まだ中身についてのスキームは決定をいたしておりません。
 まず、私から冒頭に申し上げたいことは以上でございます。
【記者】
よろしくお願いいたします。
 幹事社から二つお伺いしたいのですが、まず、トール社の買収についてですけれども、上場に向けての成長戦略という意味では、非常に、何だろう、わかりやすいというか、そういうメリットはあると思うのですが、一方で、日本郵政は現状、政府100%出資の会社で、言ってみれば国民の財産で、これだけ大きな投資をするという。それで、将来的に、現状、収益は良くても、もし仮にこの会社の、経営が何か悪くなるようなことがあったら、現状ですら国内需要が厳しいのに、新たなリスクを抱えることにならないのかと、その点に関してどのように考えているのか教えてください。
【社長】
それでは、最初にそれについてお答えをしたいと思います。
 確かに現状で政府100%出資の会社でございますけれども、昨年の12月26日に上場をしますと発表しました。しかも、これは日本国政府の10年間にわたる基本的な方針である郵政の民営化というものの第一歩を踏み出します、ということについては皆さま方に公表をさせていただいております。
 その状況の中で、我々がやらなければいけないことというのは、この新しい事業そのものは、我々が責任を持ってやる事業であるということでございます。当然のことながら、上場を含めて、次の段階に移っても必ず効果が出るような施策というものであります。何が効果の出るような施策かというと、今、日本郵便が持っていない機能を、3PL、先ほど申し上げたサード・パーティー・ロジスティクスも含めて、いろいろな範囲で持っている会社でありますので、それをまず全面的に買収をし、そのままの形で進めていくということで、まず、仕組みと機能の点での努力、あるいは協力というものがカウントできるだろうと思います。
 それともう一つは、現在の経営陣、それを基本的にはそのまま居残りをしてもらうというつもりで考えておりますが、経営陣の資質および業績については、十分私どもとしては直接面談もさせていただきましたし、よくわかったつもりでおります。オーストラリアの大会社というだけあって、しかも55カ国に及ぶグローバル展開をやっている会社だけあって、非常に将来にわたっての考え方もしっかりしているし、現在持っている事業についての経営姿勢もしっかりしているということを確認しておりますので、経営について、経営陣を我々の陣営に加えるということは、大きな力になると思っております。
 それから、もう一つは、買収という形をとった理由は、明らかに我々としては時間を買ったと言った方がいいかと思います。これからこの新しいトール社によってもたらされるようなことを我々の必要な努力をしさえすれば、決して時間をかければ全くできないことではないのかもしれないけれども、それにいたずらに時間を費やすよりは、やはりここで全面的に新しい事業を始めるということが極めて大事だろうと思います。
 ご承知のように、日本郵便という会社は、ドメスティックを中心にしている会社でありますので、それでこの会社は、皆さま方に既に発表したとおり、グローバルに考えると、極めて微々たる存在、海外への進出は上海にしかない、それが1カ所だけ。それから、最近、発表しましたフランスのジオポスト、これはラ・ポストの子会社ですけれども、それが出資している会社、それとレントン、その会社と私どもは提携関係を結んで、出資も一部いたしました。これによって国際的な物流についての一つの道はできたわけですが、これはあくまでも少数株主であり、しかも我々がマネジメントをする会社ではありません。そういう意味で、新しい分野をやる以上は、全面的にそこに参画をして、そしてすべてを吸収しながら進んでいくということがいわば時間を買ったということになると思います。大体そのようなことが基本的なメリットで、もしもこれがうまくいかない場合ということの責任は、うまくいかないということを想定しないわけではありません、当然のことながら。その場合には、潔く私ども経営陣としては、経営陣の失敗を認めて、それなりの対応をさせていただくつもり、覚悟であります。
【記者】
もう一つなのですが、ゆうちょ銀行の運用についてなんですけど、それだけ高度な人材を集めるということは、現在、国債中心の運用を変えるのかというように受けとめるのですけれども、そういうことでよろしいのかということと、あと、先ほど、ポートフォリオのイメージとして例えばある株式等にどれ位比重を置くのかというイメージがあれば教えてください。
【社長】
まず国債についての取り扱いも含めて、全面的に現在のポートフォリオを見直す必要があると思っています。これについては予断を持たず、そして、現在の日本の金融状況を、世界の金融状況も考えた上で、最適な施策をつくり出すのが新しい組織の使命だと思っておりますから、それを実施するということであります。
 したがって、国債の保有の額で、それを最初からたがをはめるみたいな、あるいはここまでは持ってくれというようなことは、指示はしないつもりでおります。結果として、もちろん検討した上でこうやるよという話についての最終的な決断をした場合のその責任は、私ども現経営陣にあります。それは、経営陣としては、責任はとるつもりでありますけれども、これが成功しないようであったならば、日本の金融業界というのはますます成長が難しいなというところまでやることができる。しかも、どの位優秀な方がいらっしゃるかということについてのデータベースも何もない世界なんですね。それで、社内も含めて、今日、募集広告には入れておりますけれども、リスク管理と、それから資産運用についての自分自身でエキスパートだと思っておられる方で経験のある方、そういう方が我々は欲しいんですと。そういう方々を集めて、小さいけれどもチームを作って運用をしていくということが、これから先の我々のゆうちょ銀行の運営には極めて大事な部分だと思っています。
【記者】
2点あるんですけれども、一つはトール社のことで、トール社を見てみると、すごいアジアとかも強いようですけれども、トール社、あるいは先ほどおっしゃっていたレントンとかも絡めてですね、日本郵便としては、グローバルでも特にどういったエリアとかですね、どういった事業というのを注力していきたいかを教えてくださいというのがまず一つです。
【社長】
はい。それでは、その分につきましては、先ほども申し上げたとおり、トール社の全世界展開の中で強いのはアジア地域。このアジア地域というのが、これから当分の間は、成長の一番著しい部分だというのは皆さま方も認識しておられるとおりであります。そこに強いというのは非常に大きな魅力であります。
 それで、それだけにとどまらないで、我々としては、更に広めた形で考えていく、そういうグローバルな考え方を持ちながら、日本郵便の現在持っている力の活用をどうしていくか、それの相談もしながらやっていこうということであります。
【記者】
あと、2点目がですね、この買収費用の6,200億円ですけれども、その調達はどうされるのかということと、以前、1.3兆円をですね、やって、その6,000億円を何か新しいことに使うとおっしゃった、その6,000億円を意味しているのであれば、その6,000億円は、先ほどの質問にもあったんですけど、国民の財産というか、ゆうちょ銀行の利益を、郵便の新規事業に使うということだと思うんですけど、そこは、何ていうか、説明がつくかというか。
【社長】
これは、郵政民営化というのは、郵政事業、その中で非常に非常に大事な郵便局ネットワークをしっかり堅持して、ユニバーサルサービスを続けていけと、これは法律でも決まっていることですから、それを実施するための実際のやり方について、我々は、政府から付託を受けていると思っております。
 したがって、今度、まず差し当たって、この手元資金は、今ご指摘のように、この前手配はしております。全部使って後どうするんだよというご質問かもしれませんけれども、現在の金利状況であれば、借金をしてでも欲しいことがあったならば実現できると思っておりますので、差し当たっては、一番金利が安い手元資金を充当するということであります。持っている財産という意味では、その財産を持っているということに意味があるのではなくて、その財産を有効に活用しているかどうかに意味があるんだと私どもは理解しております。そういう意味で決して矛盾する話ではないと思っております。
【記者】
今のご説明だと、最初におっしゃったユニバーサルサービスを続けていくためにもこういう新しい試みで収益を出していく必要があるという。
【社長】
ええ、そう思います。今度、上場してからですね、法律で決まっている義務を、それを履行していくためには、継続的な成長と継続的な利益、増収というのは不可欠の部分だと思うんですね。それを使うというのは当然のことでもあり、かつ、また我々の付託された義務だと思っています。
 ご承知のように、この前の国会で、みんなの党からのご指摘があって、すぐに上場したら、時価は相当安くなるはずだから、国家の財産を毀損するというお話もございまして、私どもは、全体の中でしっかりとやりますからとお答えしたつもりでありますけれども、具体的に何をやるかということについてのご説明は、何もできませんでした。しかし、今日、三つご紹介しましたような、そういう形で、国家の基本的に私どもがお預かりした財産を毀損しない、それを元にして成長していける、そういう基盤をつくるのが、私どもの一番大事な部分だと思っております。
【記者】
1点、質問がありまして、今回のM&Aの件に関してですね、今の唯一の株主である財務省とか政府関係筋への説明とですね、そちらから、どのような反応をいただいているのか、もし、言える範囲で教えていただきたいんですけれども。
【社長】
M&Aそのものにつきましては、内容についての詳細の説明をしっかりしたのが、日本郵便の取締役会での決議が終わった段階になってからですから昨日です。走り回ったのは。それ以前にオーケーをいただいているわけではありません。
 しかし、具体的に言うと、こういう案件、もう一つの新しい組織をつくると、運用組織をつくるということは、以前から、いろいろな意味でのオーケーはいただいておりますけれども、この買収そのものは、最後に決まるまで、まず、変動要因が幾つもありますね。途中で情報がリークした場合には、必ず、急な株価の高騰が起こる。もう一つは、これで大幅なオーストラリアドルの需要ができるということになると、為替相場も変わってくる。この二つを考えれば、ギリギリのところまで、政府当局も含めて極秘にせざるを得ないというのが、私どもの立場です。
【記者】
2021年が、日本郵政グループにとって、郵便創業150周年ということで、大きなターゲットになると思うんですけれども、こういった今回のような大きな投資だとか、今までのいろいろな投資というのが、いつ位に反転して、どんどん回収できるような状況になっていると想定されていらっしゃるのでしょうか。
 中期経営計画、今後、見直されるところに、どのようにかかわってくるのかというようなお考えがあったら、お願いします。
【社長】
ありがとうございます。ご指摘のとおり、2021年は、1871年の創業ですから、150年の節目の年になりますので、その年をターゲットにして、これから先、永続的に繁栄していく郵政グループという姿をお見せするのが、前島さんに対する最高のはなむけだと思っています。ですから、それに向かって、いろいろなことを、これからやらなければいけない。また、本日の発表のような、非常に根幹にかかわるような部分を、これから2021年まで、毎月、毎年やっていくかというと、とてもとてもできないだろうと思います。しっかり地面を踏みしめながら、我々としては、成長とそれから国民のせっかくの財産を大事にする。そしてまた義務であるユニバーサルサービスをキープしていく、そういう郵便局ネットワーク、非常に大事でありますから、これもしっかりと守り育てていくと、そういうことをしっかりとやり遂げましたという発表をさせていただけるようになりたいと思っています。
【記者】
今回のトール社の件について、この規模のですね、M&Aを手掛けられたのは、西室社長、東芝時代も含めて、初めてのご経験かどうかというところと、また、本日、無事、契約締結を迎えて、今後、グローバルな物流企業を経営していく上で、西室社長の意気込みというのを、改めてお聞かせいただければと思います。
【社長】
わかりました。まず、初めてかどうかの話につきましては、東芝の会長を終わった直後というよりは、終わって半年位のところで、東芝のウェスティングハウスの買収が起こりました。これについては、私自身、社長の頃からウェスティングハウスの買収というのが、正直言うと、宿願でありましたので、それを実現するために、ずっといろいろな形の努力を進めてきて、なかなかうまくいかなくて、このチャンスは絶対に逃せられないということで、これも約6,000億円位ですか、その買収を、しかもアメリカの会社をアメリカで買収するということですから、日本の国内でやるのとは違った、いろんなハードルがありましたけれども、それを克服してやったというのが、一番大きな経験です。これにつきましては、東芝のその時の現職のマネジメントは、当然のこと、先頭に立ったのですけれども、私自身が全面的に過去の経験その他から、バックアップをさせてもらったということであります。
【記者】
今日、無事、契約締結を迎えて、今後、グローバル物流企業を経営していく上での意気込みというのを、改めてお聞かせいただきたい。
【社長】
先ほどから申し上げているとおり、日本郵政グループは、グローバルな物流企業でなければ、それこそ日本だけに閉じこもって物流の企業が成り立つ時代というのが、もう終わりつつあるんだと思っております。
 その中で、やはりグローバルに生きていくという、ようやく第一歩が始まったということで、これを無駄にしないで有効に活用していこうというのが、我々の心からの望みであります。
【記者】
トール社に関して、3点お願いしたいのですが、折からの資源価格の市況悪化で、トール社の資源関連の事業というんですか、物流事業というのが、若干弱含んでいるというような声も聞いたことがありますけれども、それも含めて、てこ入れが、オーストラリアの本業でてこ入れが必要だというような認識がおありかどうかということと、それを踏まえて、今回の6,200億円という買収価格の妥当性ですね、そこをご説明いただきたいのと、あと、トール社の日本事業、これと、日本郵便との連関というか、今後のつながりというのでしょうか、これをどのように構築していくのか。
【社長】
まず、資源、物流、いろいろやっている中で、資源物流というのは、一つの大きなトール社のメリットであると今まで言ってきたのが、ここのところの資源の価格が全世界的に下がったことによって打撃を受けているというのは、明らかに、ご指摘のとおりです。この部分を捨て去るというつもりは、全く私どもは思ってもおりませんし、既に存在し、かつ、これについては、私ども、突っ込んで聞きました。どういう対策をやっているのかという話も含めてですね、もう既に対策は、現在の経営陣が、その部分の人員を減らすとかいろんなこともやりながら、その事業を続けていくことは、社会的には大事だから是非ともやりたいと。そして、そこで損が出るようなことはやらないように、きちんと手は打っていますと、確認もしております。ですから、やめたり、捨てたりするつもりは全くありません。
 それから、もう一つは、その金額の妥当性ですけれども、これについては、実は、評価を2社に鑑定をしてもらって、その中で、その範囲内に十分おさまる数字、それでその範囲内の上限が、実は7,000億円位までという話もあったので、それでつい上限額の話をしてしまった、現実には6,200億円でおさまったと言ってもいいだろうと思います。
 それから、日本の中にトール社というのは、あまり聞いたことおありにならないと思いますけれども、約4,000人位の、昔フットワークと言われた会社をトール社が買収済みであります。この会社は、その少ない範囲ではありますけれども、しっかりとした運営をされている会社ですし、私も実は知らなかったのですが、ついこの間、オーストラリアのアボット首相がお見えになりましたよね。あの時に、わざわざ何かトール社の拠点にアボットさんご自身が激励に行ったというお話でありました。小さいけれども、これはこれで大事にしながら育てていく、これは日本郵便の持っている力、あるいは日本郵政グループの持っている力というのは、それには極めて役に立つのだと思っています。
【記者】
12月に上場計画を発表されたときの社長会見で、エクイティ・ストーリーとしてドイチェポストがIPOの1年前に十何社か買収をされて、国際物流拠点に転身を遂げられましたとお伺いしたところ、社長は、私の受け方だと、あまりそういうことは、というようなニュアンスでおっしゃったと思うのですが、このあたりの、ごめんなさい、どのようなお考えでいらっしゃったのかというのが、まず1点目、先にお伺いしてよろしいでしょうか。
【社長】
はい。あの時にですね、それについて、それと同じようなことをやることは考えていませんと言ったのは、新しい事業の方の話を言ったのではではなくて、それをやるために郵便局を大幅に減らし、そして国民に対するいわば責務のある部分を減らしながらやるというような、そんなことはやるはずがありませんということですので、少し、私の説明が足りなかったのかもしれませんけれども、誤解をされたのではないかと思われます。ロイターが一番最初に、昨日、現地発のニュースを出していただいたので、私は睡眠不足になる位一夜、あちらこちらから問い合わせをいただきましたけども、ありがとうございますと言っていいか。
【記者】
ちなみにあれは、オーストラリアン・ファイナンシャル・レヴュー社が書いたもので、うちは全く何もしてないんですけども。
【社長】
ええ、そうです。そのとおりです。
【記者】
恥ずかしながら。ごめんなさい。
 もう1問ですけども、ゆうちょ銀行の運用の高度化なのですが、これまで、やはりJGBの大きさが大きいので、売った場合、そのマーケットインパクトがあって、自ら首を絞めるということがあったので。
【社長】
そのとおりです。はい。
【記者】
減らすといっても、あくまでも償還で落ちていく分の再投資というような認識だったのですが、今後、これはゼロベースでポートフォリオを見直すので、そういうところも含めて全部見直す……。
【社長】
これはですね、この前までずっとご説明していたように、我々としては自分のピストルで自分の足を撃つみたいなことをする気はありませんと、簡単に言えば。つまり、意識的に日本国債の持ち分を減らすとか、そんなことは考えないけれど、日本国債のバリューがどうなっていくかについてはしっかりと配慮をしていきたいということで、それで、同様の配慮を新しいチームに要求はしません。はっきり申し上げて。そうではなくて、ゼロベースでもう1回、この我々の持っている資産の運用について、これはリスク管理も含めて、その上で答案をしっかり作ってもらいたい、まず、第一段階。ただし、それの結論については、経営陣というのは私も含めて関与はいたしますということです。
【記者】
既に今朝の高橋*社長の会見に出ていたら申しわけないんですけども、買収の経緯なんですが、そのトール社は売りに出ていたのでしょうか。
【社長】
全く売りには出ていません。売りに出ていた会社を買うということではなくて、私どもとしては、サード・パーティー・ロジスティクスという分野というのが、我々の物流には一番欠けている部分ですので、その部分を強化するにはどういう会社があるかというのをリサーチし、これは日本の会社も含めて。それで、日本の会社では1社断られたのがあるんですけど、結論として現状でそういう我々の考えているような世界を築くために、一番最適なのはトール社であるという結論で、私どもの方からアプローチした問題です。売り込みがあったわけでは、全くありません。
【記者】
アプローチはいつだったのでしょう。
【社長】
これは、今申し上げるわけにはいきません。すみません。それをお話しするというのは、経営側の交渉の経過についてのディスクローズになりますので、交渉経過のディスクローズをするのには少し早過ぎると思います。したがって、申し上げられないということです。
【記者】
価格についてなんですけども、先ほど、2社評価をいただいたということだったのですが、これはFAという理解でよろしいですか。
【社長】
そうですね。はい。
【記者】
これは、フィナンシャルアドバイザーどちらなのでしょうか。
【社長】
これも、ディスクローズしません。現状で。全部終わったらディスクローズしますけれども、現状では、サインは終わりましたけれども、それからきちんとオーストラリアの証券投資委員会、そのご意見が出るまでの間は、それに対してカウンターオファーだとか、あるいは他の興味のある方のいろんな提案が出てくる可能性がないわけではない。
【記者】
今現在、カウンターオファーというのは……。
【社長】
現状では、どこからも出ていません。まだちょっと発表してからの日が浅いので、いろいろお考えになっているところがあるのかもしれませんけれども、ございません。今のところ。
【記者】
先ほど、7,000億円まで出せるという……。
【社長】
いや、出せると言うのではなくて、これは我々の方のいろいろな計算をしてみて、サード・パーティー・ロジスティクスという観点を含めて、我々の国際貨物の問題を考えたら、せいぜいそこまでだろうというのが我々として部内での結論です。
【記者】
最後に、IPOに先立ってですね、このトール社の買収が行われて発表されたわけですが、海外の機関投資家が実際にIPOで日本郵政、または子会社の株を買う場合、今回のトール社の買収というものがどのようなアピールになるかという……。
【社長】
どのようなというのは、これから先、皆さま方にも考えていただかないといけないんですけど、ネガティブな話にはならないように、この会社を運営していくというのが、我々のコミットメントということで、そのコミットメントについては、高く評価をいただけると思っています。
【記者】
今回、グローバルトップ5の国際物流という表がありまして、その中では1位、ドイツポスト、2位USPS、3位UPS、4位フェデックスと出るわけですけれども、この4社のうち三つまで、2番目のUSPSを除いては、国際インテグレーターと呼ばれる方々ですが、日本郵便も同じように国際インテグレーター、すなわち飛行機まで持って輸送網を持たれようとしているのかというのが一つ目の質問です。あと、もう一つあります。
【社長】
はい。その部分については、まだ全く何も決めておりません。場合によっては飛行機を買わせていただくかもしれないというのは、せっかくおっしゃっていただいたので、一応将来の計画の中に考慮はいたしますけれども、まだ現状では決めておりません。
【記者】
もう一つは国内のオペレーションですが、トール社は元フットワークエクスプレス、そのフットワークが元九州産交を吸収して、それをトール社が買収したと記憶しているのですが、国内のオペレーションについては、現在の日本郵便のオペレーションとかぶることがあるので、リストラとか何かはあるのでしょうか。
【社長】
全く考えておりません。国内のオペレーションでかぶるとおっしゃられましたけど、私どもはかぶるという意識がない程度の会社だと思っています。
【記者】
それは、重量が違うということ。
【社長】
はい?
【記者】
扱っている重量が違うために……。
【社長】
まだ、実はね、そんなに詳しくこの元フットワークについて私どもが調べたわけではありません。
【記者】
僕が聞いている範囲では、20キロ、30キロというのが……。
【社長】
ええ、大物をやっておられるんですね。
【記者】
はい。
【社長】
ですから、そういう意味では私どもについては新しい重量分野の物流ということについての利点にはなると思います。正直言うとその程度の知識しかないのです。
【記者】
1点だけ伺いたいんですけれど、今回、トール社買収ということによって、国際物流分野に手を打っていくことになる。今回、トール社だけで十分なのかというのと、今後、どういう分野が不足していて、強化していかなければいけないのかというところを含めて、もう少し国際物流の面で。
【社長】
そうですね。正直なところ、まだ私どもの計画の中に、トール社以外の買収だとか、あるいは違った分野ということについてのアイデアもないし、まだ検討もしておりません。しかし、これから先、トール社と一緒になって、物流の世界を見直した時に、必要があれば、更に投資が必要ならば投資はさせていただくということです。
【記者】
少し細かいこと含めて、三つほど確認させていただきたいんですけれども、まず、米澤副社長のご異動の発令日は?
【社長】
3月1日。発表は今日ですけれど、3月1日です。
【記者】
3月1日ですね。それで、ゆうちょ銀行の新しい運用方針の専門部署による運用なんですけども、その方針を、こういうようにしましょうというのが決定して動き出す時期というのはいつ頃を想定されている……。
【社長】
早くわかればいいんですけれど、まず人集めから始めますのでね、それは人を集めたら、すぐにぱっと方針が出るなんて、そんな夢のようなことは考えていません。ということで、それを基にして考えれば、まず一番最初にコアメンバーの方に集まっていただいて、それで更にどのような人を増やしていくのかも含めてやっていきますから、上期の内に大体の方針ができればいい、その位の、これについては変に急いで失敗するよりは、しっかりと検討した上でやるということですから。検討がしっかりできてくれれば、もっと早く始めたいんですけどね。
【記者】
6月に発表されるご予定のエクイティ・ストーリーとの……。
【社長】
公表するものではありませんが、エクイティ・ストーリーの非常に基本的な部分の一つになります。これは、つまり、運用あるいはリスク管理の方針の大変基礎ですから。そういう意味では、エクイティ・ストーリーの中で、この部分は一番投資家が気になさっているゆうちょ銀行の低収益ということに対する答えになるわけです。
【記者】
最後に1点、井澤社長のご後任の方、どういう方がふさわしいと思われておられるでしょうか。
【社長】
今、何しろ選考を始めたばかりなものですから、全く、今、予断をしないで、どういう方がいらっしゃるのかということの大体が頭に入ってきた状況なので、まだ、そうですね、ノーコメントと言わざるを得ませんね。
【記者】
二つご質問で、先ほど物流強化のために、日本の会社に提案をしたお話ありましたけれども、こちらは、具体的にどの会社というのは……。
【社長】
ああ、これは口が滑ったんで、忘れてください。見事に断られました。
【記者】
トール社の買収に絡んでなんですけれども、IPOの主幹事証券会社は、どうやら知らされていなかったようなんですけれど。
【社長】
主幹事証券会社が知らなかった?
【記者】
何か、いわゆる上場に際してですね、エクイティ・ストーリーを描いて、一緒にやっていくということで……。
【社長】
主幹事証券会社の役割と、それから、同じ会社かもしれないけれども、これの買収についての役割が、同じ証券会社の中でも全く違っていて、それで、ファイアウォールがその間になかったら困るんです。そういうファイアウォールがある方が当たり前で、全く知らなかったと文句言っている方が多分いらっしゃるのかもしれないけれど、知らないのが当たり前なんだと言ってやってくださいよ。
【記者】
2点お伺いしたいのですが、先ほど航空機の購入について、考慮はするけれど、決定はしていないというお話ありました……。
【社長】
いやいや、まだ考慮するとも言っていない。まだ何もアジェンダに入っていないけれども、将来検討するかもしれませんと言っただけです。
【記者】
なるほど。じゃ、もう1点。
【社長】
最初から、飛行機を買って頑張りましょうなんて、全然言っていません。
【記者】
以前、anaとかと組んで失敗した例があるもので、また同じ轍を踏むのかなと。
【社長】
なるべく同じ轍は踏まないように注意いたします。
【記者】
例えば、ただ考慮する場合に、これからアジアが成長市場でもあるので、別に日本だけに飛ぶ必要もないと思うのですが、どのように思われますか。
【社長】
いや、全くそれについての制限も感じていませんし、今のおっしゃり方だと、既存の飛行機会社と既存のキャリアとの提携のお話で、それは提携だけの話ですよね。そんなことだったら、レントンを通じてやっている国際宅配便の方はキャセイパシフィックをキャリアに使っていますから。そのような形での提携というのは、自由奔放にやらせていただきます。それで、飛行機を買って一生懸命やるというのは、別の次元の話ですよね。もうご承知のように、DHLにしろ、UPSにしろやっていますね。それは次元の違う話ですから。
【記者】
もう1件、フォワーディングでは、山九との合弁会社でJPサンキュウグローバル ロジスティクスがありますけれども、この会社はどうされるのでしょうか。
【社長】
まだ何も決めていません。コンフリクトがあるのだったら、それを解決するというのは、経営の私どもの責任ですから、何とかいたしますけれども、まだ検討していません。広範囲に、そういう危険性についての検討をすることによって、情報のリークで、このディールが成立しない方がずっと怖かったですから。
【記者】
今の質問とも関連するのですが、先ほど西室社長、国際物流に向けた第一歩が始まるんだというお話だったのですけども、過去10年ですね、振り返れば、TNTに始まって、今お話出た国内航空との合弁もあり、山九のこともあったのですが、この過去の例と、今回のご検討、どこが違うのかということと、過去についてはどういう分析を踏まえて、今回のこの買収という形に至ったのかと。そのあたりの、この第一歩というのが10年かかって第一歩だったという意味なのか、そのあたりをお聞きしたい。
【社長】
過去のいろいろな経験があるからこそ、私どもが今やれる最上の方法は、一つの会社を買収するということであるという結論に達したということで、それで、いろんなケースがありましたよね、ご記憶のとおり。これについて、今ここであげつらっても何の効果もありませんから、ここでの評価は遠慮させていただきたいと思います。
 ただ、そういう成功例と言われないような、失敗例の積み重ねの中で、我々のいろいろな経営判断というのは、成長してきたなと思っております。
【記者】
提携ではなく、やっぱり買収ではないと……。
【社長】
いや、そんなことありませんよ。提携はどんどん続けると、今も申し上げたとおり。それで、買収というのは、もっと次元の違う話だし、ましていわんや、手持ちに自分のところの飛行機飛ばすみたいな話は、また次元の違う話ですよね。次元ごとにしっかりとした検討をして、判断をしていきますけれども、現状では視野に入っておりませんというだけで。
【記者】
2点お願いしたいのですが、まず1点目、今後、トール社を買収されて、国際物流事業を広げていく橋頭堡にされると思うのですけれども、業績的に今日契約されたばっかりなので、まだ詳しい話はあれかもしれませんけれども、どのように、今後、業績的に拡大していかれる目算を立てられているのかということと、あと、拡大する上で御社のリソースを具体的にどのように活用していかれるのかということが1点と、あと、2点目の質問、さっきトップ5に入るというお話があったのですけれども、UPSとか、4社と伍していくために、今後どのように戦略を立てていかれるのか、その2点、お願いします。
【社長】
この2点が、全部ここで回答できれば、わざわざ私どもとしては頭使う必要ないんですよね。全て、今ご指摘のような点というのは、これからの検討課題です。USPSは別として、それ以外の物流を中心にした会社、その会社とどういう形で我々は共存していくのかということも、常に考えなければいけない課題で、それに対してのソリューションが最初からあってどうするということは、全く現状では白紙だと申し上げざるを得ません。それから、買収と提携というのは、明らかに違います。提携は今後も必要があればまたやります。jalと組んで、クールEMSをやるという発表をしましたよね。jalと組んでやるということは、jalと共同開発した冷凍コンテナもありますから、それを使ってやるということも一つの例ですけれど。ですから、キャセイパシフィックとも提携をしている、jalとも提携をしている、そういう状況の提携というのは、これから先もバラエティーが出てくるだろうと思います。その上で買収するのかと言われると、現状では白紙です。その可能性は、あえて否定しません。
【記者】
トール社の買収に当たって、社内の中にM&A、海外M&A担当、専門にやっていらっしゃる方がいたのかということと、あと、将来的に海外投資、必要であれば考えたいというお話だったと思うのですが、社内にそういう専門家のニーズというものはおありだと考えていらっしゃいますでしょうか。
【社長】
そうですね。現状では確かに現在在籍している人の中で、こういうことができる人ということで、郵便の何人かの社員には手伝ってもらいました。現状では恒久的な組織をM&Aという看板を掛けてやるつもりは全くありません。
【記者】
もう1点ちょっと確認ですけれども、先ほど、トール社買収に関しては、手持ち資金を十分用意していたというお話……。
【社長】
差し当たってですね。
【記者】
ですけれども、この手持ち資金ということを、もう少し……。
【社長】
これは、日本郵政グループの話をご存じの方はご記憶にあると思うのですが、日本郵政グループの中で資本の再配分をし、今まで非常に過少資本であった日本郵便に6,000億円の資本をアロケートして、もう既に、手元に現金というか、アロケートされた資本がありますから、この買収について、他に積立金相当が当然ありますので、だからそれほど心配をしないでやれますということです。
【記者】
先ほど、ゆうちょ銀行の新しい運用チームの件で、これから人材を新しく募集するという話だったんですけれども、西室社長の中でどのような人材が欲しいとか、そういった理想像みたいなものが何かおありかということと、あと、差し支えない程度で、その募集から採用までの選考過程について、もう少し教えていただければと思うんですけれども。
【社長】
応募される方の条件というのは、今日の広告、日経新聞の39面に出ていますので、それをご覧いただければ書いてございます。それ以上のことは、現状では何もディスクローズしておりません。それで、これから先、どの人にお願いするかということについては、全部白紙のままで、そのトータルマネジメントをやりたいという人もいるかもしれないし、あるいはその中でこの部分をやりたいという人もいるかもしれないし、これは社内外を問わず、自信のある人が自分で応募してください。そういうことにして、できる限りたくさんの日本の中での埋もれた、隠れた人材を開発するというのが、私どもの今回の公募の最大の目的なので、そういう形でやっていきたいと思います。
【記者】
成長戦略についてですが、今回、郵便におけるM&Aとゆうちょ銀行における運用の見直し、これはやはり両方低収益という問題があって……。
【社長】
ええ、そうですね。
【記者】
一見、何て言うんですかね、表に現れている事象は違うような感じがするんですが、根っこにある部分というのは上場を控えた成長戦略ですと、こう言っていい……。
【社長】
ええ、おっしゃるとおりです。それが根っこにあって、それから、今日一番最初にご説明したIBMとの提携、これは、実は根っこのもっと深いところにあって、日本の会社で、IBMの本社も含めて全面的に提携しながらやっていくというのは、おそらく当社が初めてだと思います。ですから、IBMの現在のCEOとも、私自身が話した結果です。
【記者】
ゆうちょ銀行ですけれども、貸し出しについてですね、認可申請をしている新規業務について、何か進展があるかどうかということなんですが、どうでしょうか。
【社長】
現状では全くありません。全くありませんと私が言ってはいけないんですけれども、現在審議中でございまして、まだいつ審議が終わるというようなインディケーションは何もいただいてないということです。
【記者】
長い目で見た場合に、ゆうちょ銀行の株式が51%以上売却された時点で、そこで届出制に変わって、晴れて自由にできるというお考えもありますでしょうか。
【社長】
ええ。これはもう、最初の上場の説明の時にもしています。金融2社の株を何故しばらく50%持ち続けるのかについて。それは、50%以上を売却すると届出制になりますので、そのポイントで、これから先の日本郵政グループ全体としての運営の仕方も含めて見直しをしっかりやっていきたいとクリアにご説明申し上げたはずです。
【記者】
51%売却が実現するタイミングは、何か今の時点で想定されていますでしょうか。
【社長】
まだまだ、一番最初の売出しも、これから年度内にやるという話ですから、それがどのように進展するかについては、まず市場の状況があり、それから最初の初値がどんな値段になるのか、つまりそれの市場価値がどの位の会社にそれぞれがなるのかということを含めて総合的な判断をしないと全然答えられない話ですよね。ですから、ここから先はそれぞれ三つの会社が、それぞれ別のスケジュールになってやっていくことになるのだろうと。今、まだ決めておりませんけれども、3社揃い踏みでやるのは最初だけ。それで、市場価値をきちんと決めていただいたら、そこからスタートで、それぞれの会社が自分の会社のスケジュールに基づいてやっていくことになると思っています。まだ、これは決めたわけではありません。
【記者】
一つは、ゆうちょ銀行の運用の見直しで、これまでゆうちょ銀行の運用というのは、多分安全とか安定性とかというのを重視してきたと思うのですけれども、これからは収益性も取っていくということで、きっとゼロベースで見直すのでしょうが、その安定性と収益性というものの、ゆうちょ銀行としての立場はどう考えたら良いでしょうか。
【社長】
収益性というのは大事でありますけれども、安定性を犠牲にしてまでの収益性の追求はするつもりありません。ですから、今回の募集でもリスク管理をやりながら運用をやっていく。それぞれのエクスパティーズ(専門技術)を集めたいんだということを、クリアに説明をしております。
【記者】
あともう1点です。ゆうちょ銀行の運用の見直しとか、今回のトール社の買収とかで、3月末までに策定するとしている新中期経営計画の材料が出そろった、これをどう料理していくかという感じなのかどうなのかということを教えてください。
【社長】
出そろったと言ってしまうと、また何か駆け込みで入るかもしれませんので、まだ全部出そろったという段階ではありません。しかし、実際にこれだけ大きな組織ですから、中期経営計画を作っていくというのも大変な作業になりますので、その作業は着実に進めながら、ドアをクローズすることはぎりぎりまでないと。つまり、新しい何かがあれば。
【記者】
この、今日の発表が出たこと、発表の材料が出たことで、中期経営計画というのは、今までよりも、比較的今までの中期経営計画がすごく守りの中期経営計画だったと思うんですけれども、そこからは大分変わる感じですか。
【社長】
コンサバディブだと言われた中期経営計画、第1回目の発表はそうだったんですけれど、あの時に必要だったのは基礎体力を失いつつあった事業の基礎体力をつけるということが一番大事だということを、あれだけの投資をしなければいけないということを説明するための中期経営計画だったとお考えいただいてもいいと思うんですね。
 ただ、今度の中期経営計画は将来に向かっても考えながらの中期経営計画を作ろうよということで、今やっております。ただ、今日発表したような、三つのそれぞれの事業における将来の成長性を支えるような、そういう中身についてはまだほとんど入れ切れないと思います、今度の中期経営計画には。効果が出ない前に、効能の話だけ、これは絵空事ですよね。ですから、効果が出始めたらきちんと入れますけれども、効果が出ると思ってやっていることではありますが、その効果を過大に見積もるようなことはしないようにしたいということです。
【記者】
新しいゆうちょ銀行の運用方針はですね、先ほど上期中位とおっしゃられたんですけれど、上場には間に合わせますよ、という認識でよろしいですか。
【社長】
それはそうです、はい。これはもう上場する前には、きちんとしたものができていなかったらおかしいですから、ただ、全部の陣容がそろうかどうかについて自信は持てません。なるべく質の高い、きちんとした人、しかも私どもの給与体系といっていますから、そんなに高い給与ではありませんから。ですから、それでもいいから、この事業に参画したいという、そういう方を募集しているわけです。
【記者】
もう1点だけ、この運用方針の策定に当たってですね、新規業務の申請していることというのは、どの程度影響してくるのでしょうか。
【社長】
全く、影響というよりは、それをカウントするということについて、我々は自信が持てませんから、これはつまり現状で見込みがついていないことまで入れて、それで水増しをするような中期経営計画は作りたくない。
【記者】
ということは、今、有価証券運用をしている金額をどうしますかという……。
【社長】
そうですね、今やっている金額そのものを対象にしてということではなくて、その金額を幾らにするかということも含めて、これからきちんと検討しますので、今すぐに、そのとおりですというようなご質問ではないと思いますね。
【記者】
3点ほど確認事項がありまして、まず1点目、トール社の買収の件で、この買収資金は全額手持ちの資本再編の時の資金で賄うという理解でいいのかというのが1点目と。
 2点目は、トール社の買収の時、関連で、郵政民営化委員会の場で、今回の買収によって得られたノウハウを国内にも活かしていくみたいな話、ご説明されたと思うんですけれど、そこら辺について具体的にどういうことを考えられているのかというのを伺いたいのと。
 あと、3点目のさっきIBMのワトソンのところで、初めてだということだったのですが、確か、ソフトバンクが提携を先に発表したと思うのですが、その初めてというところを、具体的にもう少しお願いします。
【社長】
はい、わかりました。それでは、一番最初のご質問は、買収資金。差し当たって、目の前に積んであるお金がありますから、それを使いますというご説明が一番わかりやすいからそうしているわけで、それでこれは相手方にも、あるいはオーストラリアの当局にも、買収資金は既に積んでありますよという説明はしていますから、ですから、そういう意味では現状そうです。だから、これから先の資金繰りについては、何とでもなるということで、それだけ日本郵便は懐の深い会社であると思っています。
 2点目のノウハウの活用というのは当然考えますけれども、どのような活用の仕方ができるかというのは、買収作業が終わって、子会社になって、それでその中で利用できるノウハウは十分に貪欲に吸収しながら、日本国内の方にも振り向けていきたいと思います。場合によったら、トール社の日本支社になっているところが、もっと大きくなるというオプションがあるのかもしれないし、あるいは現在の日本郵便の持っているネットワークの中で、欠けている部分はここだからここを補おうよということがあるかもしれない、そういう形です。
 3点目のワトソン。これはね、初めておつき合いして、ワトソンを使ってという程度のお話をしたら、ワトソンを売り込んでおられましたから、IBMは。ですから、それなりのことはあるんでしょうけど、私どもはあえて強調したいのは、IBMの本社までインヴォルブした、ワトソンそのものの性能向上も含めた、そういう計画に私どもはコアメンバーとして参画するようなポジションにあるということで。つまり、あるものを使うということではなくて、既にできたフレームワーク、あるいはコンピューターの新しい活用の仕方について、それの活用の仕方まで踏み込んでの貢献もして、それでその成果をお互いに分かち合おう、そこまで踏み込んだということを自信を持って言えるのは、私どもの会社が初めてだということです。
【社長】
どうもありがとうございました。

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