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2012年10月1日 月曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2012年10月1日 月曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

【社長】
まず、最初に、本日、朝8時から東京中央郵便局で、新「日本郵政グループ」誕生の様々な行事を行い、郵便事業株式会社と郵便局株式会社の統合が無事スタートいたしました。
昨日から、準備もいろいろ遺漏なくやってきたつもりですけれども、2社の統合に伴うシステム等のトラブルもなく、極めて順調に統合の作業が行われております。
次に、この10月1日というのは、統合が行われたことのほかに、いわば今度の新法の施行日ということであり、会社の統合が行われると同時に、経営ビジョンにも書きましたけれども、金融ユニバーサルサービスの法定化ということで、金融2社の業務を全国津々浦々の郵便局での業務として義務づけられたという意味で、非常に大きな意味があると思っています。
それから、3番目には、何よりも、日本郵政の株をなるべく早く高く売って、震災復興の財源に充てていただくという義務が、私どもには発生したということでございます。そのためにも、今、全ての面でベクトルがあまり上向きとは言えない状況から一刻も早く脱し、ベクトルが少なくとも平行か上向きになるように、いろんな意味で経営の立て直しをして、郵政の株をなるべく高値で売却できるような状況へ持っていき、震災復興の財源に充てるためのお役に立ちたいと、私は考えております。
また、10月1日から、いよいよ新しい日本郵政グループがスタートするわけですが、今朝も皆さんの前で、宣言させていただいたとおり、「総合生活支援企業グループ」として人生のいろんなライフサイクルでお役に立っていきたいと考えております。特に、各地方の郵便局に行っていただけると大体用が足りるという具合にできれば、一番これが理想の姿ですが、できるだけそういう姿に一歩でも近づけるように、これからいろんな仕事、新規事業を含めて、挑戦していきたいと考えております。
そういうこともあり、本日、「郵政グループビジョン2021」(概要版詳細版)というのを発表いたしましたが、これは、2021年というのは、ちょうど創業150周年ですから、それに向けて、今後約10年間にどういう事業を展開していくか、どういう経営理念でやっていくかというようなことを1つにまとめたものです。
この中に、私どもが考えているあらゆることが、網羅されております。今後、この中期ビジョンに基づいて、あるいは新規事業の認可の様子などを見極め、この中期ビジョンに数字的な裏づけを与えて、中期経営計画というものをなるべく早く策定することが、私どもの責務であると思っております。
株式の上場のためにも、中期経営計画というのは最低限必要なものでございますので、なるべく早く、この中期経営計画が策定できるような状態になるといいなというのが、私の目下の希望であります。
私から申し上げることは大体以上でございます。何かご質問がありましたら、何でもお答えしますので、どうぞご質問なさってください。
【記者】
本日施行の改正郵政民営化法は、小泉政権のもとで決められた民営化を見直すものであり、その象徴的な人事は、日本郵便の副会長に就任した稲村公望氏の人事だと思うのですが、稲村氏が取締役についていないのは、なぜでしょうか。
【社長】
これから国際業務を展開するに当たり、やはり経験があり、英語ができる方が必要です。それで、聞くところによりますと、稲村さんは、英語の名手だそうです。そういうことで、郵便会社の鍋倉社長が、自分の2年後輩ということもあって、よく存じ上げておられて、この方を国際業務にぜひ活用したいということがあって、採用したわけでございまして、郵政民営化に反対したとか、そういうことの趣旨は全く関係ございません。これから私どもが重要だと考える、国際事業を展開するに当たって、非常に重要な役割を果たしていただきたいということです。それから副会長という職は、これも郵便会社のアイデアですが、やはり外交交渉をするには、ポジションがなければ有効な交渉ができませんから、そういう意味で、副会長の職をお願いしたということでございます。
【記者】
彼に取締役権限を与えることについて、反対とか、グループ内にあったんでしょうか。
【社長】
それは、全く聞いておりません。これは、むしろ、私の人事というよりは、新しくこれからいろんな事業を展開するに当たって、日本郵便株式会社のアイデアだとご理解いただきたいと思います。
【記者】
まず、エリアマネジメントの深化というのが事業計画の中でも最初の方に入っていますが、それについて、郵便局長会と話し合いをされていると伺っていますが、今、話し合いの状況としては、どういう状況なのか。また、実際にこういうことがスタートされるとしたら、いつぐらいになるのかということが、まず1つと、あと、株式上場に向けた戦略の一番の肝となる部分が、ビジョンの中に入っているのかということ。とりあえず、その2点について教えてください。
【社長】
エリアマネジメントの深化というのは、これは理屈としては、非常にわかりやすい話だと思います。やはり個々の郵便局というよりは、地区をまとめて、郵便局を一体的に運営するというのは、これは理念としては、そちらの方がいいと皆さんもご理解いただけると思うのです。
ただ、新聞で報道された隔日営業などの施策が、具体的にどういう内容になるのかというのは、当然のことながら、その地区・エリアの統括局長とか、あるいはそれを総括するところとのいろいろな意味での交渉ごともあります。それから労働組合との折衝もあるでしょうし、まだ具体的に何か決まったわけでは全くありません。
したがって、このビジョンに書いてあるのは、アイデアであることがほとんどで、まだ何も決まってないというのが、正直なところでございます。
それから、株式上場に際して何が一番重要かというのは、例えば、郵便事業が赤字から黒字化するとか、また、預金の総量とか、保険の契約量とか、今、すべてのベクトルが下を向いていますので、そのベクトルが上向くとか、更には、新規事業を認めていただいて、将来への希望が持てるとか、いろいろなことが総合的に、いわば重要な観点になると思います。どれが一番重要かということを言うのは、なかなか難しいと思います。
【記者】
ユニバーサルサービスを担保するために一番大事なことは、どういうことだと、お考えですか。
【社長】
それはですね、今までユニバーサルサービスを義務付けられていたのは、郵便事業だけだったのですが、今度は貯金も保険も法定されたわけですから、これからは、その3事業を一体として、郵便局で運営していくということが非常に重要になるということです。
従来は、郵便事業だけが義務付けられていたわけですが、今後は、3事業が義務付けられるわけですから、当然のことながらマネジメントその他について、いろいろやり方が変わってくると思います。
【記者】
「総合生活支援企業グループ」を目指すということで、特に地域、過疎地とか、地方でのお年寄りの方を含めた住民の方への生活支援というようなことも掲げていらっしゃいますけれど、そういうきめ細かいサービスをすると、他方でさまざまなコスト等もかさんでしまうと思うのですが、そこをどううまく両立させて、企業として全体を業務効率化し、さらに収益を上げていくのか、難しい課題だと思うのですが、そこはどうやってクリアしていかれるのでしょうか。
【社長】
大変難しい課題だということは認識しております。先ほどご質問がありましたエリアマネジメントというのも、そのための一環ということもございまして、いわば地区全体としていかに効率的に運用しつつ、そういう地域に密着したサービスを展開するかというのが、これからの私どものグループの1つの大きな命題だと思っています。
それを具体的にどうやるか、確かにおっしゃるように、非常にコストがかかります。したがって、そのコストをいかに効率よく吸収して、そういう地域に貢献した、密着したサービスを郵便局として提供していくかということが、これからの私どもが抱えている非常に大きな、難しい課題だと思っています。
具体的に何をどうするかということは、それこそ先ほど申しましたように、エリアマネジメントの問題も含めて、これからの課題だろうと思います。今までそういうことができていないのは、要はコスト的にもいろいろなことが難しいからできないのだと思います。
【記者】
そういう意味では、やはり、今、申請しているような金融2社の新規事業で、もうかる部分でどんどん稼いでいくという、そういうようなことも重要になるのでしょうか。
【社長】
当然、それは必要になると思いますし、また、郵便局は、委託手数料のかなりの部分が、金融2社からの委託業務で賄っているわけですから、その事業が伸びることは、当然必要なことだと考えております。
【記者】
すみません、あと1点。今日、野田改造内閣が発足する運びになっています。郵政担当大臣には、金融と切り離した上で、下地幹郎さんを充てるという報道になっていますが、この新内閣、あるいは新大臣への期待は、いかがでしょうか。
【社長】
私どもに直接関係があるのは、郵政民営化担当大臣の下地さんと、総務大臣の樽床さんですが、このお2人は、実は今度の改正法成立の過程で、ずっと私どもと一緒になって、いろいろご心配いただいたり、ご尽力いただいた方々ですので、我々日本郵政グループが抱えている課題については、十分に認識していただいている、要はプロでございますので、私どもはこれから大いに頼りにしていきたいと思っております。
【記者】
今日、郵便事業会社と郵便局会社が統合し日本郵便が発足したわけですが、過去の質問にもあったと思うのですが、この統合によるコスト削減の効果、これが幾らぐらいなのかということと、それをいつごろまでに生み出せるのかということについて教えてください。
【社長】
これについては、総務省が、520億円という見積もりを出されていますけれども、これはいわば管理部門以外の一般社員のスリム化ということも、総合的に勘案されているのだと思いますが、その積算根拠の詳細を私どもは伺っておりません。
私どもが確実に申し上げられるのは、今度、郵便局会社と郵便事業会社の管理職が一緒になりますから、その統合効果で約200億円のコスト削減は確実に見込めます。これについては、ただ、いきなり強制的に退職というわけにはいきませんので、その効果が現れるのは、相当な期間が掛かると思いますが、この200億円は確実に削減できると思っております。
ただ、その他の統合効果については、仕事のスリム化をこれからやっていかなければいけませんが、これは当然のことながら労働組合とか、その他の組織との交渉もありますし、それはすべて今後の展開にかかっているのだと思います。
したがって、その金額については、まだ確定的に積算できておりません。そういうのが、いわば中期経営計画の基礎になるわけでございます。
【記者】
新規業務について、お聞きします。日本郵政グループでは、新規業務の申請の中で、来年4月には新規業務を始めたいということですが、金融庁が審査の過程で難色というか、例えば、その審査能力とか、リスク管理能力はどうなのかとか、慎重な意見があるのですが、今回、野田新内閣では金融と郵政民営化担当大臣が切り離され、金融庁のほうが、より厳格な審査をする可能性もあるのですが、その点については、どう思われているでしょうか。
【社長】
金融当局について、私どもが云々言うことは非常に難しいのですが、今度の新規業務について言えば、私自身は、節度ある申請をしたと思っております。これは事実、ある新聞記事の中で、こんな中途半端な申請で本当に経営が成り立つのかと書かれたぐらい、実は非常に遠慮した申請だと私自身は思っております。したがいまして、これについては、金融当局のご理解を十分いただけるものと思っております。
【記者】
そうすると、郵政民営化委員会の西室委員長は、新規業務について業務ごとに意見を述べていきたいと言ったのですが、基本的に日本郵政グループとしては、4月までに全ての業務を認めて欲しい、また、認められると確信しているということでしょうか。
【社長】
それは全て、今後のお願いの交渉事であり、私自身が決めるわけではございませんので、何も申し上げられませんが、そういうことを実現するために、精いっぱいの努力をするということであろうと思うのです。
【記者】
中期経営計画について、具体的な数字を盛り込んだものを、具体的にいつぐらいまでに出されたいと思っていらっしゃいますか。
【社長】
なるべく早くとしか申し上げられないのは残念ですが、今申し上げたように、新規業務の申請の結果がどうなるのかとか、それから、一般社員のスリム化計画についても労働組合との交渉がありますし、そういうことがどういう具合に具体化していくかというのは全てこれからです。しかし、中期経営計画ができなければ株の売却はできませんので、株の売却を早期にしなければいけないというのは、私どもの負っている義務だと思います。もちろん、売却時期を決定するのは政府自身ですが、そのための下地をつくっていくのは、私どもの義務でございます。なるべく早く経営計画を策定したいと思っているのですが、私一人でつくるわけにもいきませんので、いろいろなことを勘案して、なるべく早く策定したいとしか申し上げられないのは大変残念なことでございます。
【記者】
年度内には?
【社長】
そうですね。できれば年度内ぐらいにつくりたいのですが、今、例えば、年度内につくるなんて申し上げて、できないと責任問題になりますし、そこまで申し上げられないのが大変残念です。
【記者】
上場の件ですが、社長自身の中では、例えば、遅くとも何年以内とか、そういった心積もりはお持ちなのかということを、まず先にお聞かせください。
【社長】
これは、私が申し上げるべきことではないと思います。政府による株式売却の話ですから、これは政府自身が決められることであって、私どもが申し上げることではないと思います。
【記者】
もう一つ、確認なのですが、先ほどお話しのあった中期経営計画の中に、上場に向けたストーリーといいましょうか、そういったものがちゃんと盛り込まれるということでよろしいでしょうか。
【社長】
当然のことながら、中期経営計画というのは、上場するための前提でございますから、そのためにいろんな具体的な数値を盛り込んできちんとしたものをつくらなくてはいけないということだと思います。
【記者】
西室委員長が求められた経営の全体像というのが、その中期経営計画だとしたら、今回の中期経営ビジョンというのは、大体、何割ぐらいが示されているとお考えでしょうか。また、地域金融機関と、どうしても商品とかが競合する部分があると思うのですが、それをうまく役割分担というか、そういうことが可能なのかということについてお聞かせください。
【社長】
地域金融機関との協調問題については、私ども、常に念頭に置いていかなければならないと思っておりまして、これからも、地域の金融機関といろいろ密に連絡をとりつつ、新規業務の展開もしていかなければいけないと考えております。いたずらに摩擦を起こすことが目的ではございませんので、その意味で、新規業務をかなり抑制して申請しているということでございます。
また、中期経営ビジョンというのは、やはり、私どもが目指すこれからの姿、ビジネスのあり方を示しているわけですから、これが一番重要な核になることは間違いないと思います。中期経営計画は、これに数字的な裏づけを与えるということだろうと思います。この中期ビジョンは、当然のことながら、いろんな新規の抱負を持っているわけですが、これが全て具体化できるかどうかというのは、今後のことでございますので、それを見極めた上で、数字を入れ、これからどれだけ具体化していくかということにかかっているのだと思います。
【記者】
日本郵便の件ですが、配達員による通帳預かりサービスが復活しましたが、極めて高度なコンプライアンスというか、そういう意識が必要になってくると思うのですが、その一方で、最近、9月26日、27日と連続して、郵便事業会社で郵便物の廃棄というような問題が発生していますが、その辺の内部管理体制の強化に向けて、今後、どのように進めていくお考えでしょうか。
【社長】
それは、私どもにとっては非常に困難で、しかし、非常に重要な課題だと思っています。何しろ、郵便局が2万4000局ありますので、なかなか全部根絶というわけにいかないのですが、傾向としては、徐々に減ってきています。やはり、これについては人事と研修が基本的に必要だと思っていますので、今度の貯金の預かり業務についても、何人かを選んで、徹底的に研修を行っています。それと同時に、やはり管理体制を徹底する必要があると思います。例えば、現金を預かるのではなく、なるべく機械で処理できるようにするのが一番だと思います。いわばIT面で、改革もやっていかなければいけません。これは、古川会長、鍋倉社長も言っておられましたが、これから最大の課題の1つになるだろうということで、その点は、まさにおっしゃるとおり、非常に重要なポイントだと思っています。
【記者】
今、世界の郵政事業体の経営が厳しいと思っているのですが、その中で、日本郵便が国際事業を展開していく上で、海外の郵政事業体との提携だとか、一時期はいろいろやっていましたけれども、最近は非常に静かだと認識しているのですが、今後の国際事業の展開について、改めてお伺いします。
【社長】
実は、私どもは、中国郵政と提携しておりまして、私も中国に行って、向こうのトップとお会いしたこともあるのですが、海外展開について具体的な成果が上がるところまでは、まだ至っておりません。せいぜい協定みたいな話です。ただ、ドイツポストが、国際物流事業を展開し、大成功を収めています。私どもも、それをいい例として、これから海外事業への展開を積極的にやらなければならないと思っています。その意味で、おそらく鍋倉さんが、先ほどご質問がありました稲村さんを、特にスカウトされたのだろうと思います。
【記者】
すみません。郵便の減少を物流分野で補うということで、ゆうパックを強化し、平成27年度の黒字化を目指しているとのことですが、この宅配分野の、いわゆる上位2社は、かなり強いですし、少し離されている感はあるのですが、この2社に対して、ゆうパックとか、郵政としての強みというものがありましたらお聞かせいただきたいのですが。
【社長】
率直に申し上げて、今のところ、特にヤマト運輸には、水をあけられている状況だと思います。ただ、私どもが強みだと感じている点は、やはり2万4000という郵便局を日本の隅々まで持っているということだと思います。
したがいまして、郵便事業では、2万4000の郵便局網を生かして、特に、郵便を毎日配達しているわけですから、その、いわば全国に張りめぐらされたネットワークと、ゆうパックのネットワークが一体となって、郵便配達をする人がゆうパックも配達できないかとか、いろいろなことを今模索している段階でございます。 したがって、私どもが持っている独自のツールがそういうものですから、それを核にして、これからどうやって平成27年度の黒字化を目指してやっていくかということで、全てこれからにかかっていますが、全く絶望的な状況ではないと思っていますけれども、具体的にこれをどうやったらヒットしてうまくいくかという話を、直ちに申し上げられないのが残念です。今のところ、明らかに水を開けられていると思います。
【記者】
すみません。上場を目指すに当たって、全特との関係をどう整理されるのかというところで、現状ですと、全特と郵政の経営陣との2つの意思決定機関があるように見受けられるのですが、その辺、上場に当たって、そういう形態で問題ないのか。もし問題があるとご認識されているならば、今後どのように整理されていくのかという点を伺いたいのですが。
【社長】
私どもは、今度の改正郵政民営化法の成立に至るまで、労働組合とも、郵便局長会とも、非常に、いわば腹を割った関係で、一緒になってやってきましたので、関係は非常にうまくいっていると思います。日本郵政グループ全体の企業価値が向上するということは、いわば労働組合にとっても、郵便局長会にとってもプラスになることですから、それはお互いにいろいろなことで折衝は必要であると思いますが、基本的には、経営陣の私どもの描くビジョンが第一であって、労働組合とか、郵便局長会とは、そのビジョンについて、これから折衝していくということになるだろうと思いますので、どちらに経営決定権があるとかは自明であり、問題ではないと思っています。
【社長】
どうもありがとうございました。