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- 2011年7月26日 火曜日 日本郵政グループ各社CEO(最高経営責任者)合同記者会見内容
2011年7月26日 火曜日 日本郵政グループ各社CEO(最高経営責任者)合同記者会見内容
- [会見者]
- 日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 齋藤 次郎
- 郵便事業株式会社 代表取締役社長 鍋倉 眞一
- 郵便局株式会社 代表取締役会長 古川 洽次
- 株式会社ゆうちょ銀行 取締役兼代表執行役社長 井澤 吉幸*
- 株式会社かんぽ生命保険 取締役兼代表執行役会長 進藤 丈介
*
[資料]
「郵政事業の現況」
- 【齋藤社長】
- 私は、何回か、記者会見で、郵政改革法案の必要性とその速やかな審議をお願いしたいと訴えてきましたけれど、今日は郵政グループの事業を直接担当する会社のトップにそれぞれの会社の事業の展開に即応して、郵政改革法案の成立がいかに必要かと、また、現状がいかに不自由なものであるかということを具体的に説明していただいて、みなさまのご理解を深めたいという趣旨で、この会見を開いた次第です。それぞれのCEOから具体的な説明をしていただきますので、不明な点がありましたら、何ら遠慮なくご質問・ご意見を述べていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
- 【鍋倉社長】
- 郵便事業会社の鍋倉でございます。お手元に資料(「郵政事業の現況」)があると思います。まずその資料をご覧いただきたい。2ページです。「郵便物等引受物数の状況」と書いてありますが、郵便の物数は平成15年度から平成22年度まで平均すると年3.2%減っています。グラフでは、一番下がその郵便物数です。その上がゆうメール、一番上がゆうパックで、トータルの数字で見ますと、平成15年度に256億あったものが、227億8千万まで減ってきているということです。特に一番下の郵便、手紙・はがきと思っていただいたらいいのですが、これの減少が止まらないという状況でございます。これは日本だけではございませんで、次の3ページをご覧いただくと、発展途上国は別なのですが、先進国はいずれもこういう具合に減ってきています。USPSはアメリカですが、アメリカは極端な時、2008年から2009年にかけては240億通くらい減っていますが、これは日本の郵便の総数より多いくらいの物数がガタッと減っています。こういう状況でして、各国とも先進国は郵便物数が減ってきている。これはよく言われるように、インターネットなどに利用が移っていることが大きな原因で、郵便離れが生じているということなのだと思います。ただご承知のとおり、各国ともそうなのですが、郵便はこのように減っている中でもユニバーサルサービスという義務がかかっておりまして、全国津々浦々どこにでも郵便というものを届ける義務がある。物数が減っている中でこの義務を果たさなければならないという役目があるわけですが、現在の法律の体系の下で、郵便局会社と郵便事業会社が分かれておりますと、郵便が減っている中で、より効率的な事業運営をしなければならないのに、会社が分かれていることによって、いろいろな非効率が生じている、あるいはお客さまに非常にご迷惑がかかっているということです。まず、最初に非効率的になっているということについて申し上げます。本来、郵便局会社と郵便事業会社は、一体の郵便局だったわけです。郵便局の中で、一体として機能していた郵便ネットワークを、分社化によって同一の建物の中で、郵便の集配のネットワークと郵便局のネットワークの二つに分けてしまった。そこから生じる非効率が非常に大きいということです。例えば郵便局会社で引き受けた郵便物は、別の会社である郵便事業会社に引き継ぐ場合には授受が必要です。従来であれば一つだったのですが、授受という手続きが必要となります。それから郵便局の郵便の窓口の社員と後方にいて郵便を処理する社員とは、従来は一体でありましたから、相互にマンパワーのやりくりができましたが、郵便局会社と郵便事業会社になったことから、相互のやりくりということができません。という意味で、例えば年賀などの繁忙期には、窓口の社員に余裕があった場合には、後方の社員の年賀の処理を助けるとか、そういったことが自由にできたわけですが、今は会社が別ですから、マンパワーの相互利用はできないということです。
- それから建物一つが二つに切り分けられましたので、それぞれの持分がありますから、何か臨機応変にスペースを借りようと思っても、手続きが煩雑という問題があります。年末繁忙の時のように、ゆうパックや年賀はがきなどが臨時に増えるような場合には、保管スペースなどがいるわけですが、郵便局会社のスペースを借りようと思っても、やはり色々な手続きが必要となる。こういう臨機応変なことができない。あるいは郵便事業会社と郵便局会社とは支社も全部別ですので、指揮命令系統が複線化していますから、両会社で同じ郵便のサービスをやるにしましても、情報伝達の時期がずれてしまうというようなことがよく起こるわけです。そういうようないろいろな不都合が生じている。非効率が生じているということです。非効率が生じているということのほか、お客さま利便も非常に低下しており、ご承知だと思いますが郵便局の窓口に行きますと郵便の窓口が2つあります。一つが郵便局会社の窓口で、一つが郵便事業会社の窓口なのですが、例えば不在で持ち戻って保管している郵便物を受け取ろうとお客さまが来た場合は、郵便局会社の窓口ではなくて、郵便事業会社の窓口に来ていただかなければいけません。ということで、郵便局会社の窓口で切手を買って、ついでに保管されている郵便物を受け取ろうと思っても、受け取ることはできない。というような不都合があります。それから郵便物の不着のお問い合わせで、お客さまから差出の郵便局にお問い合わせをしていただいても、郵便局では送達や配達の状況は、別会社である郵便事業会社がやっているのでわからない、郵便事業会社に聞かないといけないというような問題もございます。
- それから、前に記者会見でも申し上げましたが、震災時にいろいろと不都合が出てきておりまして、それは効率面、サービス面の両方がございます。その時も申し上げましたが、例えば、建物の瓦礫を整理する、後片付けをするにしましても、郵便事業会社のスペースと郵便局会社のスペースとは別の系統になっておりますので、相互に応援して、いろいろ相互に協力、融通はしますが、そこにも限界がありまして、勝手に郵便局会社の物品を触ったり、瓦礫を整理するわけにはいかない。それぞれがそれぞれ日程を決めて、瓦礫の整理を業者に委託するとか、そういう形にしなければならず、非常に非効率になっているのが一つございます。それから郵便局会社の渉外社員の人が避難所を訪れて、被災者の方から郵便物の差出を頼まれても、郵便事業会社の社員ではありませんので、郵便物のお預かりはできないとか、あるいは、郵便事業会社所有の移動郵便車というものがありますが、これは郵便のための移動車ですので、そのままでは金融サービスはできないため、郵便局会社にまず貸与して、金融サービスを提供するということにせざるを得なかったということがあります。それから、先ほど瓦礫の話をしましたが、相互応援については、その都度調整をしなければならないため、緊急事案のときに迅速な対応が困難であるというようなこともございました。郵便事業会社でバイクが相当流されましたが、郵便局会社に残っているバイクをそのまま使うわけにはいかないという問題もございました。
- 郵政改革法案が成立するのかしないのかわからないような状況にあると、郵便事業会社の支店と郵便局は同一の建物にありますので、同一の建物の中で郵便局会社と一体の組織になるのか、あるいは別々の組織になるのかによって、復興する建物のレイアウトも変わってくる。郵政改革法案が成立するのかしないのかはっきりしないとなかなか復興の計画もできないということがございます。郵便局会社と郵便事業会社を一体化しないと効率的ではないし、サービスの低下の面でも、災害時の対応の面でもいろいろな問題があったと申しましたが、冒頭申しましたように、郵便物数は非常に減ってきておりますので、私どもいろいろな新しいサービスを考えなければいけないと思っております。新しいサービスを臨機応変にやっていくためには、現在の法律は認可制でありますので、非常に手続きが煩瑣であって、手間がかかります。臨機応変な対応ができません。郵政改革法案が成立すれば、郵便事業会社の新規業務は届出制になりますので、私どもが新しいサービスを考える上においても早く法律を通していただきたいと考えているわけです。以上です。
- 【古川会長】
- 郵便局会社の古川でございます。郵便局会社のCEOとして郵政改革法案の成立を確信しているということを申し上げる前に、私ども郵便局会社とはどんな会社なのかを簡単にご案内させていただきます。郵便局株式会社は、三事業会社の代理店として全国に2万4千の郵便局、拠点を置きまして、郵便と貯金そして保険の商品を販売、それに伴うサービスを提供しているという会社でありまして、従って委託された委託元から販売手数料をいただいて、それをもって全ての費用を払っている、そういう会社なのです。お手元の資料の4ページ目を開けてください。今現在、営業中の郵便局がいくつあるか書いてあります。一番右の列の合計という欄の一番下を見ていただくと、24,191という数字がありますが、6月末現在で全国で約2万4,200の郵便局が営業しております。この2万4,200局のうち、実際、郵便局員が2名もしくは3名が常駐して仕事をしている郵便局が9,850局もあります。そういう郵便局には、一日の来客数が数名というところがかなりあります。資料の真ん中に書いてありますが、営業中の簡易郵便局が4,058局あります。設置場所は過疎地の山間僻地が主ですから、ここは郵便局員が大体1名しかいない。ここもお客さまが数人。お天気がよければ来ない、農作業で。というように、天候に左右されるところも結構多い。つまり4,058局と9,850局、合計1万3千局くらいはそういうところが多いわけです。その他に4名~10名までの比較的少人数の局が、8,900局あります。そういう構成で2万4千局ができているというふうに理解してください。2万4,191局という数字は、民営化のときが一番上、2万4,116局、よくみなさんから郵便局が減ったのではないかというご質問があるのだけれど、減っていないんです。郵便局は減ったのもあるのだけれども、簡易局を開ける努力をしましたから、トータルとしては75局増えています。資料の左下に「減少した直営局」の欄のちょっと上に、「東日本大震災の影響により営業を休止」が92局とあります。この92局があるまでは、160局くらい増やしたのです。そういうことをよく理解していただきたい。過疎のところでも郵便局に対する地元の期待は大変大きい。小学校がなくなった。JAがいなくなった。商店もなくなった。残ったのは郵便局だけというところも結構あります。私どもとしましては、そういうところにも局舎を置いて、社員を置いて、いわゆるユニバーサルサービスを続けていくということは、民営化の際に、郵便局が大きな資産を承継した、つまり、大きく生んでもらった子どもの恩返しだと私は思っています。
- 一方で会社になったんだから収益は確保しなければならない。両方の両立しがたいテーマを持ちつつ、我々は活動しているということをぜひご理解いただきたい。
- 私はこれまでの民間の経験で経営の本質は現場にあるとずっと思っています。民営化直前の2006年の夏から今日まで各地の郵便局を無通告でずっと回ってきました。717局回っている。そんな経験から私は実感したことがあります。郵便局の窓口を訪問されるお客さまが、確実に減っているという現実です。それはなぜか、私も一生懸命調べたのですが、一つにはATMを利用する人が増えた。ATM、特にコンビニのATMがものすごく増えた。また、コンビニのレジでも容易に振込みができる。そういうことが窓口に来るお客さまが減った大きな理由です。もう一つはネットバンキングが増えたということでしょう。こうしたことがお客さまが減ったことの理由でして、これは私たちだけでなくて、他の金融機関にも共通のベースだと私は思っています。しかしながら、簡易郵便局のように過疎地の郵便局においては、それだけでなくて、絶対的な人口が減ってきたということで、過疎化がどんどん進行したという現実があるということです。郵便局を利用していたお客さまの数が減った。利用されているお客さまから1,000万円という限度額いっぱいに預かっているし、かんぽ生命も限度額いっぱいまで加入しちゃったと、そういう状況にあるということ。私は郵便局会社の責任者として、赤字だから郵便局を減らすということは毛頭考えていません。しかし、業務の効率的な運営はしていきたいというふうには考えています。そうすることでユニバーサルサービスを死守したいと私は思っています。
- 今申し上げたことを前提として、日本全国で構造変化が進んでいる中で、郵便局が企業として活動を進めていくには、もっと郵便局が収益を上げられるような仕事をできるような体制にしていただきたい。私は、前任はゆうちょ銀行でしたが、ゆうちょ銀行の時からそう思っていましたが、それが私の希望でありまして、つまり、委託元の3事業会社がもっと企業としての活動範囲を広げてほしい、自由度を高めてもらってもっともっとたくさんの仕事をできるようにしてほしい。つまり、今のように前にも後にも行けない、ストップモーションがかかった状態から早く開放してほしいというのが、私の切なる願いであります。
- 民営化後、もう4年になりますが、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の新規業務がストップされていますので、したがって、その代理店である私ども、大体、私どもがほとんど売っているのですが、我々郵便局会社が売る商品が一向に増えていないということです。後の5ページ、7ページを見ていただきますと、ゆうちょ銀行の貯金残高が減っている、かんぽ生命の保有残高が減っているという数字がありますが、ひとえにそういうことによるのでありまして、それが一番大きな問題です。結果として、いろいろな商品が出なければ、それを売っている私ども郵便局会社の収入が、じりじりと下がってきている。私どもの費用というのは、固定費用と人件費がほとんどで、98%を占めるわけですから、収入が減れば減るほど私たちは存亡の危機になるというわけです。
- 効率的な運営と申し上げましたが、効率的な運営という点から言えば、郵便物等を配達する社員が集金等できないということが、よく言われますが、例えば同じ建物の中にいても郵便事業会社の支店の社員が貯金や保険の金融業務に携わることができないということは、要するに金融業務の代理店としてのリテラシーが下がってくるわけです。ゆうちょ銀行、かんぽ生命ともに約9割を私どもが集めているわけですから、私ども全体のリテラシーが下がってくる。郵便局のフロントの社員、渉外社員、願わくば郵便事業会社の配達の社員も含めて、全体として金融のリテラシーが上がるように維持されないといけない。
- 私が更に一番言いたいのは、とにかく早くルールを決めてもらわないと、環境が変わっていく中で、少しも変えられないことが一番大きな問題です。なぜかというと中期経営計画を立てられない。設備投資をしようと思ってもグループとして整合性が取れた事業展開の見通しがたてられないから設備投資すらできない。もう一つ最後の点は、先ほど鍋倉CEOが言ったけれども被災地の郵便局、92局が閉まっているが、これをどうやって開けていくかについても、グループ一体となって、郵便事業会社と一緒になって、どこにどういう拠点を復興させるかということは、やはり一本化していただきたいという切なる願いから、郵政改革法案の一刻も早い成立を願っているということです。以上です。
- 【井澤社長】
- ゆうちょ銀行の井澤でございます。私どもゆうちょ銀行は、今回の郵政改革法案が成立していないこと、これによって大変なダメージを受けております。これは経営の自由度がほとんどない、手足を縛られて、海に投げられて、それで泳げと言われているようなものであります。今日、ポイントを2つだけ申し上げます。まず一つは、貯金残高の減少。資料にも記載していますが、平成11年度末には262兆円の貯金残高がありました。それが現在は約90兆円減って、175.3兆になっているわけです。一方、他の金融機関は個人預金残高の合計が年間10兆円ずつ増加しております。過去1年、この3月期も、何とかこの減少に歯止めをかけようとして、あらゆることを私どもゆうちょ銀行はやりました。テレビ、新聞、ネット、BS、あらゆるメディアを駆使して、「ゆうちょ家族」というCMシリーズを作ったり、TOKYO FMで日曜日に番組提供をやったり、あるいは新聞もあらゆる形で出しました。あらゆる営業努力、そして現場でも大変な努力をしてもらいました。古川会長の下、郵便局でも大変な努力をしてもらいました。しかし、昨年これだけ努力したにもかかわらず、1.2兆円の減少に終わったわけであります。私は海外に友人が多いですが、民営化したにもかかわらず限度額規制があるということを海外で紹介すると、どの銀行のトップも驚きます。「限度額規制がある、そんな銀行があるのか。」というふうに。世界に類を見ない限度額規制が今の残高減少の大きな要因であります。もし、このまま減少傾向に歯止めがかからなければ、コスト割れの可能性もあり、非常に深刻な事態になりうるというふうに危惧しております。
- 2番目は、経営の自由度に関して、他の金融機関とのバランスの問題です。まず、民営化により、規制体系や納税義務等、銀行としての義務は他行と完全にイコールになっております。例えば他行と同様に銀行法や預金保険法の適用を受けております。法人税、これはたぶん4年間で5,000億くらい払っております。この3月期は約1,400億円払っております。おそらく他の銀行に比べても、当行が一番法人税を払っているのではないかと思います。また、郵便局会社は別会社でありますので、郵便局会社への委託手数料には消費税5%が毎年かかっております。これも民営化以降大変な金額であります。もっと大きいのは、預金保険料の多額の負担であります。金融誌に出ておりましたが、金額はあえて申しませんが、相当な金額をお支払いしているわけでございます。このように銀行としての義務は、全て果たして、他行と完全にイコールになっております。
- 一方、業務内容の制限は依然として残っており、民営化されたにもかかわらず、業務範囲はほとんど公社時代から変わっておりません。例えば、先ほど言いました貯金の限度額規制が残っているほか、企業への直接貸付は参加型のシンジケートローンに限られ、個人向けでは住宅ローン、その他の個人ローンも媒介業務しかできない。また、子会社設置についても他行より非常に重い規制がありまして、実質できません。もちろんM&Aをやろうと思っても、M&A戦略は一切できない状況であります。
- このように義務は全て負担しながら、権利は認められないという状況は、言わば片肺で経営をしろと、片肺で他行との激しい競争をしろといわれているようなもので、大変おかしな状況であります。我々は電力会社みたいな地域独占ではありません。我々の競合社、銀行そして農協を入れますと1,500社のコンペティターがおります。1,500社のコンペティターの中で、我々は戦って行かなくてはならないわけです。にもかかわらず、こういう片肺飛行でしか経営できない状況に、今、置かれているわけであります。このような状況を解消するためにも、経営の自由度を高め、かつ限度額規制の緩和の前提となる郵政改革法案を早期に成立させていただきたいというのが、私をはじめゆうちょ銀行全員の社員の願いでございます。以上です。
- 【進藤会長】
- かんぽ生命の進藤でございます。郵政改革法案成立への思いは、齋藤社長及び3CEOがお話になった思いと全く一緒でございます。それと始めに、私どもと郵便局会社との関係について申し上げますと、私どもかんぽ生命の売上げの9割を郵便局で売っていただいているということです。直販もありますが、そういう営業形態です。
- 生命保険の性格上、ちょっと細かくなるかもしれませんが、簡単に7ページからご説明いたします。左のグラフを見ていただきたいと思いますが、かんぽ生命が主力としている養老保険の市場は、この10年間で9,000万件から4,000万件と急速に縮小しております。これはご存知のとおり、超低金利が続いておりますので、貯蓄性商品についての魅力がなくなったということもあり、かんぽ生命の養老保険も同じく急速に縮小しております。
- 一方、右のグラフを見ていただきたいのですが、かんぽ生命の参入が認められておりません第三分野の市場でございますが、10年前には2,500万件だったのが、22年度には4,500万件に増えております。これは高齢化社会でお客さまの医療保障のニーズが増大しているからでありますが、私どもは、そのマーケットに参入できないということで、お客さまのニーズに十分応えることができていないということです。
- 8ページをご覧ください。かんぽ生命の事業規模をご覧いただきたいと思いますが、左から中央を見ていただきたいと思います。過去10年間において保有契約件数は5割減っており、新契約件数は6割減少するなど、急激に事業規模が縮小しております。ピーク時との比較においては、右から中央でございますが、保有契約件数では5割、新規契約件数では8割の減少となっておりまして、非常に深刻に受け止めております。その結果、総資産もピーク時の127兆円から30兆円減って、昨年はついに100兆円を割ってしまいました。
- この間、他の生命保険会社は保有契約件数や新規契約件数でほぼ横ばい、総資産は増加傾向にあります。これはどういうことかといいますと、他の生命保険会社は保険業法の規制だけでございますので、お客さまのニーズに応じて新しい商品、新しい料率をある程度自由にできるということでございます。
- かんぽ生命は、先ほどゆうちょ銀行の井澤社長から話がありましたように、これと同様にいろいろ規制がありまして、新規事業が難しいという部分で、迅速に新しい商品が提供できないというところが大きい違いであります。
- 9ページをご覧ください。新契約と保有契約の必要水準についてお話したいと思います。今のままの現状を放置すると、郵便局で9割売っていただいていますから、郵便局ネットワークをメンテするための経費、手数料をお支払できなくなるということと、一番大事なユニバーサルサービスを維持することが厳しくなると思っております。
- ご存知のように、生命保険会社の運営は保険契約でいただく保険料の中で、保険料は純保険料と付加保険料とがありますが、付加保険料部分で経費を賄うというのが基本的な運営となっております。今は保有契約件数が減りまして4,200万件ですが、これから更に減っていき3,000万件を切ると、郵便局のネットワーク、ユニバーサルサービスを維持するための経費を付加保険料で賄うことが苦しくなるのではないかと危惧しているところです。長期的に保有契約件数を今申しました3,000万件以上に安定させるためには、毎年の新規契約を250万件から260万件取らなければいけないのですが、9ページの左の網掛け部分を見ていただきますとわかりますように、民営化後、多少、新規契約件数は戻っておりますが、まだまだ私どもの狙いの件数にはいっていないということでございます。
- 最後にかんぽ生命の事業展開についてお話したいと思いますが、今まで申しましたように、急激な事業規模の縮小に歯止めをかけ、お客さまのニーズに的確に対応して、お客さまの利便を向上させるためには、限度額の引き上げ、がん保険の販売、学資保険の改善が喫緊の課題だと自覚しております。限度額に関しましては、政府から2,500万円に引き上げるという方針が出されておりますが、現在の1,300万円ではまだまだ低いと、平均2,600万円くらいの保険金額がほしいというお客さまのアンケート結果があります。限度額は、昭和61年に1,000万円から1,300万円に上がりました。昭和61年からすでに25年経っておりまして、国民の個人金融資産は倍になっておりますが、かんぽの限度額は据え置きのままという現状にございます。
- がん保険につきましては、がんの患者数が増加しており、市場は拡大傾向にありますが、外資系の保険会社が日本で8割のマーケットシェアを持っており、かんぽ生命は相変わらず新規事業が認められないということで、がん保険には進出できておりません。これはぜひ参入を認めてもらいたいと思っています。
- もう一つ、かんぽ生命の看板商品であります学資保険でございますが、10年くらい前はマーケットシェアが73%くらいありました。それが最近では30数%に減っておりまして、外資系と接戦になっております。これはどういうことかといいますと養老保険と同じでございますが、金利が下がっておりますので、貯蓄的な魅力がなくなっているということでございます。この商品を改善したいと思っても規制で改善ができません。
- ということで、いずれも利用者利便の向上と経営を安定化するために必要な商品でありますが、現行の郵政民営化法では認められないということでございます。
- 先ほど言いましたように、かんぽ生命の売上げの9割は郵便局で売っていただいておりますから、郵便局と緊密に連携して、ネットワークの維持、それからユニバーサルサービスの堅持ということをぜひ追求してまいりたいと思います。そのためにも一日も早い郵政改革法案の成立を望んでいるところであります。以上です。
- 【記者】
- 齋藤社長にうかがいたいのですが、今回、5人のトップの方が集まって会見を行ったという意味合いをもう一度詳しくうかがいたい。また、現在、国会の会期末がかなり差し迫っているという中で、今回の会期中に成立しないという事態も考えられるとは思うのですが、仮定の質問となって申し訳ないのですが、もし、そうなった時に次にどういったアクションを起こすかを今考えていらっしゃるかお聞きしたい。
- 【齋藤社長】
- 集まっていただいたのは、結局、私一人が説明をしても、どうしても細かいところまで説明が行き届かないおそれがあると同時に、日本郵政企業グループ全体として、非常に重要な緊迫した課題であるということをぜひともご理解いただきたいという趣旨でこういう会見を開いたわけでございます。と申しますのは、私がすでに何回か記者会見をしておりますが、そのことが記事でそれほど取り上げられないということになっておりまして、そのため、先日は、JP労組の委員長と郵便局長会の会長と三者で会見を開きましたが、今いかに郵政改革法案の成立が喫緊の課題であるかということをみなさんにご理解いただいて、要は報道していただきたいという心からの願いでこういう会見を開いているわけでございます。
- それから、いろいろなことがございまして、残念なことに、国会での審議は、去年の5月に一度開かれただけで、去年の4月30日に国会に提出されて以来、1年3ヶ月くらい経っておりますけれども、もう何ら審議が行われないという異常な事態が続いております。これをぜひとも打開していただいて、とにかく審議をしていただきたい。国会で審議が始まれば、必ずみなさんにご理解いただいたように、郵政改革法案が必要だということをご理解いただけると私どもは信じておりますので、なるべく早く審議をしていただき、審議をしていただければ、国会の議論が進んで成立するまで漕ぎ着けていただけるのではないかと、今のところ信じておるわけでございます。したがいまして今国会で成立しない場合にどうするかということについては全く考えておりません。
- 【記者】
- かんぽ生命の収益の見通しなのですが、保険契約は減っているのですが、逆ザヤが解消されて、利益としてはプラスになって増加していると思うのですが、ただこれがずっと続くとは思わないのですが、保険契約の減少が続いて、逆ザヤ解消の効果が剥げ落ちて、収益の減少に転じるというような、仮定ですがどういうようなタイミングで想定されるのでしょうか。
- 【進藤会長】
- ご存知のように生命保険は、ストックビジネスと申しますか、契約は長い間続くものですから、今ある利益というのは10年位前から続いているものが今出ているわけですから、短期的な決算という意味では、表面的によく出ているわけですが、このままいきますと先ほど申し上げましたように、保険会社というのは付加保険料の中で経営を維持しますが、その付加保険料が減っていくということでございます。過去の留保が少なくなっていくわけでございますが、それが何年でどうこうというのは今申し上げられるものではないのですが、基本的にどの生命保険会社も費差益を中心に考えて、会社の経営をしているものと考えます。
- 【記者】
- 5社の経営にとってなかなか厳しいというのは、ご説明いただいてよくわかるのですが、特に郵政民営化、国民がかなり小泉政権の時に関心をもって、民営化という方向性を示した、それが逆戻りしているような印象を国民が持っていると、そういう中で、国民生活にとって、郵政民営化という中で、郵政改革法案が通るということが何を意味するのか。国民生活にどういう意味を持つのかを改めてお伺いします。
- 【齋藤社長】
- 郵政改革法案が民営化の方向に逆行するという考えを私どもは持っていないわけです。それは国会でも何回も政府のほうから説明があったと思います。親会社の政府の持株比率が1/3というのは、現在の郵政民営化法でも、今回の郵政改革法案でも同じです。今度の郵政改革法案が違うところは、親会社の金融2社に対する持株比率が、0%が1/3になっているということです。その趣旨はこれも政府から何回も説明があって、法案提案者でない私が言うことは適当でないかもしれませんが、これはどういうことかというと、各地方の郵便局がどの地域でも金融業務をユニバーサルサービスの一環として提供できるようにするというところに基本的な眼目があるわけでございます。100%民営化して、ユニバーサルサービスが金融業務については担保されていないのが現在の法律ですから、そうなると100%民間が保有するようになった金融会社が郵便局で全国あまねく金融サービスを提供することができなくなるおそれがあるということから、郵政改革法案では、新しい提案として、1/3という、これはいわば重要決定事項に関する拒否権があるという意味合いだと思いますが、そういう全国津々浦々の郵便局で、郵便、貯金、保険という基幹的事業を供給できるように担保するという趣旨で1/3が設けられているわけで、それは民営化の趣旨に反しないと私は理解しております。現に1/3となっておりますNTTとかJTとか、そういう会社が国有会社という理解に一般的にはなっていないという意味と同じだと私は思っております。
- 【記者】
- 特に国民生活にとっての利益という点で、古川さんでも結構ですが。
- 【齋藤社長】
- それは、現行の郵政民営化法のままでいくと、例えば、先ほど古川会長から話があったように、郵便局で貯金を提供できなくなってくるおそれがある。それを防ごうと、いわば地域の隅々まで、今、私どもがやっております三事業をあまねく提供していこうと、それがなくなるということは、地域住民にとって非常に不便なことですから、それを何とか担保していこうというところに郵政改革法案の意味があるわけでして、これが通らないと、古川会長がおっしゃったように、いわば郵便局で貯金や保険が提供できなくなるおそれがある。現在の法律はユニバーサルサービスが付加されておりませんから、そういうおそれを防いで地域振興、地域に密着した郵便局を、明治以来の郵便・貯金・保険の三事業を提供するという業務をこれからもずっと続けていこうという趣旨なのです。それがなくなることは郵便局を利用する方にとっても非常に不便なことです。私どももモニター会議を開いて、いろんな意見を聞きますと利用者の方々は一律、三事業は維持してくださいと、参加者全員からの要望ですから、そういう意味でも利用者の要望に適っていると私は思っています。
- 【古川会長】
- 若干補足をします。先ほど717局を回ったと言いましたが、いきなり窓口から入って、窓口の社員と話をしたり、お客さまと話をしたりしたあと、局長さんのところに行って、「あなたのところは一体何軒の家のお財布を預かっていると思いますか」といつも尋ねる。必ず聞くんですよ。少ないところは30軒、50軒ですよ。多いところでも150軒から300軒くらい。少なくとも郵便局としてお預かりできる限度額いっぱいお預かりしている。かんぽ生命も限度額がいっぱいになっている。他に金融機関はどこにもありませんから、やむを得ず他の地域に行って預けるなど、みなさん苦労されているのですよ。全部郵便局でやらせてほしいという声は、結構、過疎地に行けば行くほど多い。それから、がん保険、どうして新しい保険を出さないのですかという声を結構聞きます。それからローンですよ。私はゆうちょ銀行のときに認可さえ取れればすぐにでも住宅ローンが取り扱える体制を作ってから郵便局会社に来たのですよ。そういうニーズは結構ある。認可さえ取れればそういうニーズにお応えできると思う。最近、物販もはじめましたから、きめ細かいサービスがもっともっとできると思います。
- 【記者】
- 先日、岡田幹事長の方にいかれたと思いますが、今後更に政治に対して何らかの働きかけをされるご予定はございますか。
- 【齋藤社長】
- 今のところこれ以上のことは考えておりません。私どもの要望というのは、十分、岡田幹事長もお分かりいただいていますし、JP労組の大会に出てこられて、郵政改革法案を成立させるつもりですとはっきり仰っていますので、私どもの要望は十分お分かりいただいているものと私は思っております。