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2021年12月24日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2021年12月24日 金曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田 寬也
【社長】
本日は、私から2件発表します。
 まず1件目です。地方自治体向けの新しいサービスとして、来年1月からスマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービスを開始いたします。当グループでは、JPビジョン2025で、お客さまの人生100年時代の一生を支えることとしています。ご高齢単身世帯の増加などによる社会的不安が増大する状況の中で、地方自治体ではご高齢の方を支える担い手が不足しており、ご高齢の方の孤立が進んでいるといった課題を抱えています。そうした課題の解決策の一つとして、日本郵便で従来実施してきた対面型のみまもりサービスに加え、ご高齢の利用者にも使いやすいスマートスピーカーを活用した、新たなみまもりサービスの提供を開始することとしました。今回のみまもりサービスの大きな特徴ですが、従来の個人向けのサービスではなく、地方自治体向けのサービスとして提供を開始するところに大きな特徴があります。このサービスの開始に当たり、これまで準備・試行として、国や地方自治体、民間企業などとも協力して、さまざまなトライアルを行ってきました。具体的には2019年10月からは岩手県の遠野市で、そして昨年2020年10月からは長野県の大鹿村や静岡県の袋井市で、さらに今年の10月からは兵庫県の神河町、11月からは広島県の三次市で試行的に実施してまいりました。その中で、お客さまのニーズを取り入れ、日本郵便が独自に開発したアプリの機能をより使いやすく便利なものに改善いたしました。
 具体的なサービスの概要ですが、ご利用のお客さま宅に設置したスマートスピーカーを通じ、その生活リズムに合わせて、生活状況、服薬状況、そして食事、睡眠を地方自治体やご家族が確認できるようになっています。地方自治体は、お客さまの状況をアプリのサービス管理画面で一覧的に確認をしたり、独自のお知らせなどを一斉配信したりできるようになっています。また、お客さまはスマートスピーカーの音声・ビデオ通話機能を活用して、家族などとオンラインでのコミュニケーションをとることが可能なほか、ニュースやラジオなどのスマートスピーカーのエンターテインメント機能をご利用いただくことも出来ます。こうした機能は、例えば災害発生時の安否確認、災害情報の入手、伝達などにも役立つものと考えています。
 この新しいサービスを通じて、ご高齢の方の生活状況の効率的な確認、非対面、非接触でのコミュニケーションの機会などを提供して、地方自治体が抱える諸課題の解決に貢献していきたいと考えています。
 なお、12月27日月曜日には、今回のサービスの第1号案件として、長野県の大鹿村の熊谷村長にご出席をいただき、現地で締結式を開催します。来年1月からは、大鹿村の皆さまに、スマートスピーカーを利用した郵便局のみまもりサービスをご利用いただきます。
 2件目です。来年1月1日、私たち日本郵政グループにとって新しい試みをスタートします。お客さまの生活に寄り添い、ともに成長してきた当グループならではの価値ある情報を自分たち自身で発掘をして、自分たち自身で皆さまにお届けする、当グループのウェブメディアです。
 私たちは、この新しいメディアを「JP CAST」と名付けました。日本郵政グループを表すJPと、出演者、放送局を意味するCAST、こちらを組み合わせたものです。この名前には、社員自身が出演者となって、私たちの言葉でリアルな私たちの姿を発信していきたいという思いを込めたものです。
 全国約2万4,000の郵便局、そして約40万人の社員がいるからこそ、当グループには彩り豊かな情報がたくさんあります。そのような魅力的でバラエティーに富んだ情報を社員自らが見いだし、全国の皆さまにお届けするという、例のない挑戦をいたします。全国の支社と郵便局員で、仕事を愛し実直に前向きに働いている社員らの想いを汲んで、私たち自身で情報発信の場をつくり、その姿を発信することも、経営として大切だと考えた次第です。
 この「JP CAST」では、郵政事業についての新しいニュースだけではなくて、地域貢献やSDGs、未来の郵便局の姿、さらにはいわゆるすごい能力を持つ社員の紹介など、普段なかなかお伝えし切れない郵便局とそこで働く社員の魅力を発信してまいります。内容についても随時更新をしてフレッシュなニュースを次々に発信していきたいと思っております。
 また、1月1日以降にお客さまのお手元に届く元日の挨拶状にも「JP CAST」のご案内をお付けしますので、ぜひご覧ください。この新しい当グループの挑戦、「JP CAST」にご期待をいただきたいと思います。
 私からは以上です。
【記者】
先日、カレンダーの政治利用問題をめぐる報告結果が公表されました。これについての受け止めと、今後の対応について教えてください。
【社長】
カレンダー問題について、先日、日本郵便社長の衣川から調査結果を公表しました。地方組織、それから本社組織において、人事処分を行わざるを得なかったこと、そういう不適切な行為があったということに対しておわびを申し上げますとともに、この事態を重く受け止めております。
 今後の不祥事対応、再発防止をしっかりと実行していかなければいけないと考えています。今年の年末、年明け正月のカレンダーの配布はやめます。来年以降、会社としてカレンダーを作成するということもやめたいと考えておりますが、いずれにしても現場やさまざまな途中経過を見ても、組織として、上層部からの指示などがこうした事態を招いたということが伺えますので、今後こうしたことを二度と繰り返さないようなしっかりした措置を取っていくことに、全力で取り組んでいきたいと思います。
【記者】
今のカレンダーの件で、先日、日本郵政が依頼した外部弁護士の調査報告書が出ました。その中には書いていませんでしたが、このカレンダーの製作費、3年間で8億円余り出ています。外形的に見ると、全国郵便局長協会に幾らかお金が流れているように見受けられますが、これの有無、あるいは金額を教えていただきたいのと、そのお金が流れていることについて、当時、日本郵便は知っていたのかどうかというところも、報告書には書かれてないので教えてください。
 もう1点、報告書で書かれていないことですが、一般的に物品を購入するときに、もっとほかにいいカレンダーがないのか、金額がこの150円、160円で妥当なのか、幾ら以上だったら入札が必要なのか、という選定の過程というところが、単に要望を受けたから決めたということしか書かれていません。取引の公正さについてあまり検証されていないように見受けられるので、その点について何か考えていること、実際どうだったのか、あるいは前提となる条件など、可能な範囲で教えてください。
【社長】
外部弁護士に依頼した調査について、政治資金規正法21条の寄附行為に該当するのかどうか、会社として日本郵便が同法21条の寄附行為を侵してカレンダーを予算化したのかどうか確認してもらうというのが調査の主眼でした。
 その結果、予算化をした関係者のメールや、関係者へのヒアリングなどによって、そうした事実はないということが確認されましたので、調査チームとしての役割は果たされているものと思っています。
 なお、日本郵便で景品を予算化するに当たり、どのようなルールがあるのかということですが、さまざまな物品を購入するに当たってのルールはあるものと承知していますが、日本郵便の衣川からの報告などでも、購入手続きで何か瑕疵があるということは、聞いておりません。従って、3年間で約8億の予算が計上されていると思いますが、手続きやお金の流れについて、何か不透明なことがあるのかといった端緒はなく、私自身も聞いたことがありません。日本郵便が把握しているのかどうか、現段階では承知していませんが、何か把握していれば、間違いなく私に報告があるはずですので、把握をしていないものだと思います。
 また、カレンダーの製作費は、1部、160円くらいかと思いますが、これがあまりにも法外な額であれば当然、そのカレンダーを購入するということはしないと思います。郵便局長が撮影したというところに郵便局らしさを出しているということだと思いますが、景品としてのカレンダーですので、日本郵便で一定の考え方で購入していると思います。
 世の中に多くのカレンダーがありますが、郵便局らしさを出すということで、こうしたカレンダーになっているものと思います。
【記者】
局長協会の募集要項からもお金はほぼ流れていると見受けられますが、お答えいただけないということでしょうか。東証の上場審査ガイドラインでも、上場企業には企業経営の健全性が求められていて、従業員の関連先にも、取引を通じてお金が流れてないかどうかという注意が必要であり、局舎と似た構図だと思いますが、お金が流れているかどうかは答えていただけないということでしょうか。
【社長】
日本郵便でその点について何か情報をつかんでいる、あるいは端緒を持っているということ言っておりませんし、私も存じておりません。先般、衣川もこの点については調査をしないと申し上げました。何かあれば日本郵便で調査をしますが、今のところは調査しないとご理解をいただいて結構です。
【記者】
おそらくお金を受け取っているのは、日本郵便の社員たちがつくった団体であり、調査というより、ただ、働いている者に一言聞けばいいだけの話でもあると思いますし、同時に、カレンダーの発注先は日本郵便から見たら100%子会社で、子会社が8億円払った製作会社が郵便局長協会に払っていると見られるので、一言聞けばいいだけの話だと思います。質問への回答は拒否するということで理解しましたが、社員に一言聞こうとも思わないということでしょうか。
【社長】
そこは日本郵便の社長の判断に委ねています。日本郵便が予算化したカレンダーについては、日本郵便において調査のとおり措置したということで、私も了としています。
【記者】
そうすると、社員たちが経費を要望して、自分たちの関係先にお金を流したという疑惑が残ったままになると思いますが、それは仕方がないということですか。
【社長】
さまざまな端緒があれば、当然、当社や日本郵便でもそれを共有化し、日本郵便が調査をすると思いますが、現時点で日本郵便では必要ないと判断しているということですので、それを私も了としています。
【記者】
端緒というのは、先ほどの募集要項では足りないということですか。
【社長】
日本郵便としても、調査するにはさまざまな情報が必要なのだと思います。
【記者】
社員に一言聞くためにそれが必要だということですか。
【社長】
そこは日本郵便の判断だと思います。
【記者】
今のお話に関連して、先月の会見で増田社長は今の局長会に写真使用料などの名目でお金が流れた可能性がある件については、当然調査対象になり得るとご回答されました。今、日本郵便の判断で、衣川社長は今月22日に調査しないというふうに述べられましたけれども、判断がお変わりになったのはどのような理由でしょうか。
【社長】
カレンダーの問題全般について、日本郵便に経緯をよく調査するように指示をしていました。日本郵便の本社については、調査の成果を上げるため第三者に調査を頼むということになりましたが、実際に全国的な調査は日本郵便でやらざるを得ません。
 日本郵便では、例えばどのくらいの予算で、どのくらいの量のカレンダーを購入したのかなど、さまざまな調査を行っております。カレンダーの金額が通常考えるよりも極端に乖離していれば、その点についても調査をすると思いますが、日本郵便として、政治資金規正法について、会社としての違反の事実はないと一昨日発表しました。
 従って、日本郵便の調査、事実については、やるべきことはやっていると判断したところです。
【記者】
調査自体は、日本郵政は外部に委託をしているのですか。
【社長】
日本郵便本社の予算化した経緯などの調査について外部に委託しています。
【記者】
会社が従業員の作る団体に対して、不当な利益を与えた可能性があるという事案だと思いますが、改めてそこは調べるべきではないというお考えでしょうか。
【社長】
さまざまなところと日本郵便もお付き合いさせていただいていると思いますが、そこで何か具体的な端緒があれば、また調べるということがあるかもしれません。
 民間会社ですので、公務員と異なり社員の政治活動も許されるところがありますので、就業の際のルールや、法律に抵触しないということが確認できた後は、当グループ、特に日本郵便のガバナンスなどの措置の体制をしっかりと確立するということが、今必要なことだと思います。
【記者】
具体的な端緒というのは、例えばどういうものがあれば調べるのでしょうか。
【社長】
法律に触れるようなことや、内部通報などが考えられます。
【記者】
外部調査チームの報告書について、全特の関係者には聞き取りをしていませんでしたが、聞き取りの必要はないとお考えになりますか。
【社長】
予算化については、経営者の判断になりますので、法律に抵触するリスク、あるいは実際にそうした法律違反があったかどうか、それを確認することが調査の最大の目的だと思います。当時の日本郵便の経営者、あるいは日本郵政の経営者にも、そういった対象者は広がるわけですが、その中で報告書にある通り、全てデジタル・フォレンジックを行い、予算化に関わった人を特定し、狙いつけてヒアリングをしたということですから、調査の目的に照らせば、その範囲で問題なかったと思います。
【記者】
局長会側に聞かなければ、どういう意図で局長会が会社側に経費としてカレンダーを購入するように求めたかが分からないし、日本郵便側が政治利用されると認識していなかったのかについても、局長側に聞かなければ調査が尽くされたとは言えないと思いますが。
【社長】
会社の経営幹部が、カレンダーを政治利用されるかどうかについては、当時はそう思わなかったということのようですが、そうした立場にいる人間は、さまざまな危険性を予知しておくべきだと思います。今の政治資金について厳しく問われる流れの中では、やはり足りなかったのではないかと思いますし、本人もそのように言っているようです。ですから、そこは局長会というより、今の関係者へのヒアリングなどで足りるものと思っています。
 局長は社員でありながら、郵便局を治めている城の主であり、約1万8,000人から1万9,000人近くいるわけです。今回のカレンダーについても、普通に考えればどの企業でも暮れには感謝と翌年のご愛顧のお願いや一部宣伝も兼ねて、お客さまに向けてカレンダーを製作するというのは、通常行われていることであるため、そのこと自体は奇異なことはないと思います。一人一人の局長の能力は当然重要ですが、それを束ねている局長会に、人事などさまざまな評価について、会社がかなり頼っているところがあると思います。そういうところが局長会と支社との関係でいいのかどうかという問題が潜在的にあると思います。
 これまでの経営を見ていると、少なくとも民営化後は、日本郵便でいえば支社の権能を弱めるというか、一部、業務を本社のほうに集約して、支社体制が脆弱なものになってきたところがあるので、そこをどのようにこれから考えていくのか、今の会社の中でどのようにしていったらいいのかが問われていると思います。改めて支社とエリアマネジメント局の体制をどのようにしていくかということを、しっかりとつくり上げていくことが大事ではないかと思います。その中で、局長会のさまざまな活動を考えていく必要があります。
 ただし、局長会や社員、労働組合から提案があるということは、私はいいことだと思いますので、その中で会社としていいことはどんどん取り入れていけばいいと思います。そのときにちゃんとしたやり方で予算化が図れていればいいと思います。
 いずれにしても、局長会とどう向き合うのか、支社をどうしていくか、ここはまだまだ社内での議論が必要です。
【記者】
一昨日出た個人情報の局長アンケートの結果について、報道や取材によると、近畿や中国では、支援者になってくれそうなお客さまの情報を記録せよと。特に近畿では、カレンダーを配ったお客さまも含めて記録して、投票行動を評価するというエクセルファイルを配っていたと。そこに追記しなさいという指示も出ていたと。おそらく何千人かの局長が、そういう指示を受けているところで、アンケートで出てきた申告は、最終的に名簿に記録したという答えは70人程度で実態を表していないと思います。また、今申し上げた顧客を狙った政治活動に関する指示、東北地方も含めてですが、日本郵便から伺っていると、あまり詳しく調べていないし、地区統括局長が実際に指示したかどうか、その指示を受けてどうしたか、といった調査ができてないように思うのですが、この間のアンケート結果が実態を表しているのかどうか、またこの指示に関する調査の十分性についてお願いします。
【社長】
いわゆる局長会活動、主に政治活動にこういう個人情報を実は利用していたということを数字で明らかにしたのは、今回のアンケートが初めてだと思います。どうやってそれを探っていくのか、この個人情報の問題については、私も大変重大な問題だと思っています。特にアンケートの後半、確認内容5、6は大変大きな問題だと思っています。これについては、それぞれの地域でアンケートに答えた方に一つ一つ実態調査をしていかなければいけないと思います。これも大変な作業になると思いますが、年明けから一つ一つ調べていくことになると思います。調査をしていく中で初めて分かってくる部分が多いのではないかと思います。
 例えば、社員がそういった行為を見ており、ルール違反だということであれば、内部通報で上がってくる可能性もありますし、今までは、どの程度の答えが出てくるのか分からなかった部分もあるかと思います。今回はリーニエンシーのようなことも含め、ちゃんと正直にアンケートに答えるよう伝えましたので、それがいわゆる端緒というか手がかりの最初になると思います。そこから物事の系統樹、それがこれから明らかになってくると思います。個別にどうしていくかはその内容に応じてということになります。
 お客さまに対してどのような対応をとるかについては、個別の案件を踏まえて一つ一つ判断していくことになると思います。
【記者】
今回の、「はい」と答えた人たちをベースに、指示も含めて調べていくということだと理解しましたが。
【社長】
個別にはどのようになっているか、私にもよく分かりません。
 ご承知のとおり、いわゆる従来の特定郵便局というのは、地域に本当に密着しているところが多いので、そこにいらっしゃるお客さまは、日常会話でさまざまな話をされていることと思います。地方に行くと都会の郵便局とは違う状況もあり、局長とお客さまが長いお付き合いをしていることから、そこは調べてみないとよく分からないという感じはします。ただ、局長が従来の感覚で行っている場合と、最近受けた指示で行っている場合と、さまざまな態様があると思いますので、そのあたりは日本郵便の調査を見たいと思います。
【記者】
指示の調査に関して、下から調べていくというのも大事だと思うのですが、カレンダーの流用の指示に関しては全地区統括局長に指示を受けてどうしたかというふうに聞いています。少なくともさっき申し上げた3地方に関しては、顧客を狙って政治活動をしなさいという具体的な指示が出ているので、この地方に関しては、地区統括局長なり政治担当の局長に聞いてしかるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
【社長】
日本郵便に、そこは考えさせるようにしたいと思います。その上で、どうするかは、日本郵便の考えがあると思います。
【記者】
日本郵政グループ全体で、日本郵便も含めて、行政サービスの受託の拡大を進めようとしていて、顧客情報の利活用は中期経営計画にも入れているわけですが、今回の個人情報に関する感覚について、かなり局長たちのレベルが低いように見受けられます。ここについて、今の経営の方向と、その資格があるのかというところをお願いします。
【社長】
関係省庁にも今回の関係はご報告をしていて、個人情報保護委員会にも、当然ご報告していますが、総務省からも、この点については、来年の1月21日までにしっかりと対応策を報告するようにと指示をいただいています。地域の実態を見れば、郵便局がさまざまな行政サービスを請け負う拠点になっていく必要があると思っていますし、そのときに、それを取り扱う社員が、個人情報の保護について、ちゃんとした資質を持っている必要があるというのも当然のことです。また、実際にそこで扱われるサービス内容については、個人情報の保護に十分注意したものでなければ、取り扱うことができないような仕組みを作らなければいけないと思います。今回の件はこの流れにはマイナスになりますが、局長、あるいは社員全般に対しての研修などをしっかり行う必要があります。今後、行政情報を取り扱う、これは当然さまざまな前提の下に取り扱うということになりますから、それぞれの社員が個人情報を安易に扱えないような環境をしっかりと作って、サービスを提供するようにしていきたいと思います。現在、包括事務受託などを少しずつ拡大してきていますが、その際にも、取り扱う社員の研修などにおいて、今回の件を反面教師として生かしていかなければいけないと思います。
【記者】
この1年間、目立ったのが局長による不祥事だと思います。集中的に、しかもいろいろなジャンルにわたって、局長による不祥事が多く出てきたことについて、原因も含めて受け止めをお願いします。
【社長】
企業経営の中で、当然のことながら透明性やコンプライアンスに対しての感度も高めてやっていかなければいけません。そのため、さまざまな不祥事に対する事前の防御と不祥事が起きてしまった場合のリカバリーについては、どの企業も社会的責任が問われています。企業がそうしたことをやらないと、お客さまから見放されるということがあると思いますが、昨年から当グループに来てみて、業務のかなりの部分、特に地方の支社の業務、あるいはその支社の下にある県単位の組織について、そこが局長会の組織に非常に依存していると感じています。最終的な決定権は支社や経営陣にありますが、そこが非常に曖昧になっていると思います。局長、あるいは局長会の人たちも、その決定権を自分たちが持ちたいと思っているわけでは決してなく、そこまでの責任は到底果たせないので、それは当然会社側にあるということを理解しているわけですが、それにも関わらず、現実には、支社の体制が脆弱ではっきりしていないがゆえに、一部の局長が問題を起こしたときに、支社の段階でちゃんと止められない、あるいは情報が上がってこない、そういった問題が随所にあるように思います。
 政治活動と業務活動の峻別と言っていますが、それは当然必要ですが、私どもの命である全国約2万4,000の郵便局で、局長や社員がちゃんと前を向いて進んでいけるような、そして何か問題などがあったときにはどの組織がちゃんとした責任を果たすのかという一般的なガバナンス体制を、従前の経営方針とは大きく変え、支社の機能を充実させることによって、そこをはっきりさせていきたいと考えています。
 1年を振り返って、さまざまな不祥事が頻発しました。その一つ一つについて原因は探っていきますが、やはりその背後にあるものを、お互いにとってもっとプラスになるように変えていく必要があると思います。組織的に大きな課題、問題を抱えていると、この1年、あるいは昨年から今年を見ていてそう思いました。
 以前の長崎住吉の事案についても、高額犯罪でありながら見破られなかったことについてさまざまなご指摘をいただきました。局長の異動などが問題となりましたが、やはり支社の影響が薄くて、歯止めがかかっていない部分があります。不祥事が頻発するところでは奥深い構造的な問題があり、そこを変えていく必要があると改めて思った次第です。
 支社を強化して、体制をすっきりさせるということに尽きますが、それをどのような手順で、それから今支社にいる人たちにどのように担ってもらうのか。局長にも当然大きな役割を果たしてもらう必要がありますし、そこをしっかり整理する必要があると思っています。これは来年の課題です。
【記者】
現場が全特に依存しているという話に言及された経営者は、おそらくこの10年間で増田さんが初めてだと思います。社長の考えていらっしゃる問題意識や、改革の方向性が見えたと思っていますが、一方で、来年は全特にとっても大事な年で、参院選があります。今回また全特内部から候補を出すということで、長谷川英晴さんの1回目の得票が、柘植さんの1回目に迫るか、迫らないかということに、非常に関係者の注目が集まっています。こうなってくると、営業体制と政治活動がなかなか厳格に峻別しづらいという構造を抱えたまま、山場に突入していくと、法令違反をダイレクトに犯してくるケースというのはほとんどないとは思いますが、カレンダーだけではなく、違うさまざまな、内規に違反している状態などが露わになるのではないかという懸念があります。そうしたものが万が一出てきた場合、もしくは内部で発見した場合については、厳格に対処していく、今回のカレンダー問題でもかなり処分は出しましたが、こういったことは一切許されない姿勢で臨まれるのかということを教えていただきたいです。
【社長】
ケースはさまざまあると思います。また、得票がどうこうというのも全く分かりませんが、厳格に処分するかどうかは、やはり法律に抵触するようなことは処分せざるを得ないと思いますし、会社の内規については、グレーゾーンがあることは私も認めます。
 政治活動は、基本的に一人一人の非常に重要な権利であり、公務員だった時代とは異なります。ただ、そこには一定のルールを設けて、政治活動はそれに抵触しない形でやっていただく必要があると思います。ただし、安易に政治活動を制限するようなことであれば、これは人権問題にもなります。既に、民営化になったときに投票時間の確保について通知文書を出しており、政治的な意思表明は、一人一人きちっとやっていただく必要があると思いますが、それは個人の内心の意思としてやっていただくということであります。
 ですので、ルール違反はルール違反として見ていく必要があります。ただ、大事なのは、それがルールの中で実施されているものなのか、それ以外なのかということが判断できるようなことが必要だと思います。おそらく当グループ歴代のどの経営者もルール違反については厳格に対応すると異口同音に答えると思います。私も特別なことを言っているつもりはありませんが、大事な郵便局ネットワークや、そこを中心にしたサービスをこれからもしっかりとしていく上で、やはり現場の社員の士気が上がる、それから局長たちも働きやすいようにしていかなければいけないので、そうした意味で、よく局長たちの声に耳を傾けたいと思いますが、地方にいる人たちの人数、リソースというのも限られるため、それをどのようにうまく会社経営に生かせるのかについては、よく支社と調整しなければいけません。それから、支社ではエリアマネジメント局までしっかり見る体制が足りないので、それをどのように変えていくのか。そのことが本当に一人一人の社員の公正な評価にちゃんとつながるかどうか、そのあたりを考えたいと思います。
【記者】
信越でのスマートスピーカーのみまもりサービスが、実証実験でなく実装としてスタートしたということですが、今後、自治体への営業を全国的に展開されていく形になりますでしょうか。みまもりだけでなく、金融営業にもこうしたAIの仕組みを取り入れていく形になっていくのでしょうか。
【社長】
全国展開を今回のサービスによって図っていく、そういうことにつなげていきたいと思います。これまで3年かけて、遠野市を皮切りにやってきて、中身をどんどん使いやすいように変えてきております。特に地方自治体の皆さまは、個々のご高齢の方々の安否を、常に気にしていらっしゃると思いますので、今回のサービスは地方自治体の皆さま方にも使いやすいようなサービスになっておりますので、これがうまくいけば、全国の地方自治体にも導入いただけるように働きかけていき、ゆくゆくは全国展開につなげていきたいと思っています。
 それから、画面を通じた相談などは営業にも展開、応用できると思います。本当は窓口などでいろいろご相談できればいいのですが、それはどこの企業もそういう体制はとれませんので、例えば相続や専門的なことがらについて、専門家をどこかに集中的に集め、遠隔地から画面を通して相談していただくということは、これから営業においても有効だと思います。
 今回のサービスを通じて、お客さまあるいはご家族の方々のニーズを把握し、その経験値を別の商品・サービスの販売につなげていければという期待もこのサービスには込めております。
【記者】
今年度は金融の営業目標はなく、活動目標ということだったと思いますが、今後、物流や物販事業などで活動目標を設けていかれるお考えはありますでしょうか。
【社長】
そこは検討中です。年明け、そう遅くない時期に決めたいと思っています。
【記者】
一部報道で、第一生命がデジタルに絡めて銀行業も取り込むという報道がありましたが、JPデジタルと日本郵便、ゆうちょ銀行やかんぽ生命との連携は今後どのような形で進める方針でしょうか。
【社長】
ゆうちょ銀行が今月お出ししたゆうちょ銀行デザインの楽天カードについては、ポイントの関係で非常に加入率が高いと伺っています。今後、ゆうちょ銀行発行のクレジットカードを第2弾として出せないかJPデジタルとともに今考えているところです。また、かんぽ生命も、いわゆるダイレクト保険のようなものを販売できないかどうか、検討中です。JPデジタルとかんぽ生命でいろいろと検討していくと思います。
【記者】
先ほど支社の体制をつくり上げていくと言われましたが、全体として支社の権限をもっと強めていくという意味に捉えてよろしいでしょうか。
【社長】
支社全体を責任ある仕組みにしていきますので、責任も、それから必要に応じて権限も強化していくことが大事であると考えています。どこまで本社と支社が役割分担するのか、それぞれの地域に13か所ありますが、ちゃんと人員がそれなりにいるのかどうかなども見ていく必要があります。今、日本郵便とそこはいろいろ検討しているところです。
【記者】
先ほど増田社長は局長会への依存が非常に強いと言われました。金融庁の企業内容等開示ガイドラインにおいて、その事業などのリスクというのを有価証券報告書に記載しないといけないのですが、その中で、従業員などに関する重要事象、まさに先ほどおっしゃっていた支社の機能が脆弱であるとか、局長会に非常に依存しているっていうことは、まさにこちらに該当するような内容かと思います。今後こちらに関して投資家への情報提供ということで、今後は記載されるような想定なのでしょうか。
【社長】
まだそういったところまで含めて決めているわけでもありませんし、投資家の皆様へのちゃんとした情報提供については、専門家などの意見などもよく聞いて考えていきたいと思います。
【記者】
欧米企業などですと、そういった事業のリスクを記載した上で、それへの対処法、リスクを軽減する措置というのも記載するのですが、そういったところに関しても、現状まだ記載の方向性というのは定まってないということなのでしょうか。
【社長】
今は事案を調査しているところですので、記載するかも含めて、それはこれからの話になります。
【記者】
先日出された調査報告書について、確認させてください。こちらの中でカレンダーを配布する経緯として、全特、局長会から要望があったかと思います。その経緯について、I執行役員の方が、経営幹部ですとか関係役員への個別説明の際に、全特から要望があったのだということを共有する役員もいれば、共有しない役員もいて、線引きしていたということなのですが、その線引きなぜされたのかという、その基準と理由というのを教えていただけますでしょうか。
【社長】
その役員に直接聞いているわけではないので想像ですが、彼の役割は予算化をしようということですから、その予算化のために必要な人には必要な情報を伝えるし、そうでない人には伝えなかったのではないでしょうか。ただ、そこは本件の調査の目的である政治資金規正法21条に抵触しているかどうかには関わらない部分だろうと思います。
【記者】
増田社長就任以来、情報共有を徹底する、経営陣へのボトムアップもそうですし、経営陣間での情報共有というのも重視されてきたかと思いますが、今回このような経緯、つまり局長会に付随する出来事について、いや、局長からこういうことがあったというのを共有する、しないというのが線引きされておりますと、その情報共有という、経営陣の判断というところでも非常に課題が残るものだったのかと思うのですが、こちらの受け止めと、調査結果を踏まえて、今後の情報共有の在り方をどうお考えなのかというのを教えてください。
【社長】
事案が起こったのは前経営陣のときなので、こちらも想像になりますが、どの企業も同じで、どこにどのような話をしておけば、目的とする予算化が可能かというのは、事務方がいろいろ考えると思います。そういったことがこの場合も恐らく行われたのではないかと思います。
 もちろん全員が同じ情報を持つということはあり得ませんから、それぞれの情報については差があってしかるべきだと思いますが、全部情報を上げると判断するほうも消化し切れませんので、それを踏まえた上で間違いない判断をするようにしていくことが大事だと思います。時と場合によりますが、事務方とすれば、ただ単に目的を実現するということだけではなく、会社全体として、しかるべき相手にどういう情報を伝えておけばいいのか、よくそこは考えてやっていく必要があると思います。
【記者】
去年1月の郵政政策研究会会長の、会員宛ての手紙の中で、前回の選挙を指して、全経営陣ということと思いますが、郵政グループ各社の社長が後援会の参与に就任して初めてオール郵政体制で闘ったという言葉がありました。オール郵政という言葉を、最近局長会幹部の中で選挙を戦う姿勢としてよく聞かれるようになって、2つほどの後援会の参与に増田さん含めて、今の経営陣がなることがあるのかという点と、オール郵政という言葉について感じておられることがあれば教えてください。
【社長】
その組織はどうなっているかは全く承知していません。
【記者】
後援会の参与には。
【社長】
なっていないと思います。それから「オール郵政」については、私も社員の前で「グループ一丸となって」と言ったりしますが、ご質問いただいた郵政政策研究会で使っている「オール郵政」という意味は分かりません。
【記者】
会見の冒頭でカレンダーを作成しないという発言があったように聞こえたのですが、その理由を教えてください。
【社長】
今年は配布を取り止めましたが、フロントラインが配りたいという、あるいはそれがすごくお客さまにとって重要だということであれば変えるかもしれません。
 カレンダーについていろいろとご指摘をいただいておりますので、少し違うものを考えたらいいのではないかと思いましたので、そう申し上げました。
【記者】
基本的に来年分からやめるということですか。
【社長】
まだ日本郵便と話はしておりません。実際に予算措置するのは日本郵便ですので、お客さまに思いが伝わるものを工夫したらいいのではないかと思っています。
【記者】
カレンダーの経費が局長会側に流れていたかどうかについて、先ほど違法行為を疑われればという前提をつけていたかと思いますが、これまで明らかになってきたことを見ていくと、全国郵便局長会が政治活動に使えという指示も出していましたし、要望した段階で局長会としての経費を浮かせようとか、著作権料収入を稼ごうとか、そういう動機があったのではないか、非常に疑わしい状況じゃないかと思います。
 その状況いかんによっては、不法行為が問われる可能性や、企業の健全性が疑われるおそれもあるかと思います。株主や、郵便料金を払っている顧客から見ても、日本郵便が8億円超を局長会の要望で支出して、そのお金がひょっとしたら局長協会に流れていたかもしれませんと外形的に応募要項から見受けられます。
 それは株主にとってもお客さんにとっても、一定程度の関心があるところだと思うのですが、本当に回答しなくていいのですか。
【社長】
個人情報については実際に局長が、それを別の用途に使ったと自認をしているわけで、これは目的外使用ですので、お客さまに対して大変ご迷惑をおかけしている可能性が高く、ちゃんといろいろなケースを調べていかなければいけないと思います。
 それから、お金の関係は日本郵便の衣川も著作権料というのが一般的にあると言っています。日本郵便の子会社は、子会社とはいえ別の一つの会社ですし、あるいはその先の協会もですが、何か疑いがあって調べるといっても、誰がどうやって、どのように帳簿を調べるのかといった話になると思います。そこは、一番現場に近い日本郵便の判断があると思います。もし、いろいろな具体的な端緒、おかしなことや内部通報などがあればまた状況は変わってきますが、今は、日本郵便でそのような判断をしているので、それでいいと思っています。
【記者】
アンケートの中では、カレンダーについても流用したという回答も、百何十人かいらっしゃったように思います。あと、今、おかしなことがあればとおっしゃったのですけれども、例えば私が、写真が趣味でカレンダーをつくっていて、自分の会社にカレンダー調達したらどうかと、目的も伝えずに進めて、そのカレンダーを調達することになって、私があるいは私の関係先が著作権料を得てたらですね、当然私は社員ですから、どういうことだと、まずは一言聞かれると思うのですけれど、そのぐらい何かおかしなことであるような気もするのですが、一言社員である方に聞けばいいだけのことかなと思うのですけど、そこはどうでしょうか。
【社長】
日本郵便では特に社員から言われてはないと思います。
【記者】
聞きもしないということですよね。
【社長】
全体を調べた上で日本郵便がそう判断していますから、それでいいと思っています。個人情報の関係については、これはもうはっきり分かっていますので、さらに具体的なところを調べるということです。
【記者】
前回の会見のとき、増田さんはどういう経緯、積算でやったかというのは当然調べるというふうにおっしゃって、その後、日本郵便からああいう報告を受けたのだと思うのですが、その当時の問題意識について郵便がそう言うから調べなくていいというふうになったのはどういうご心境の変化があったのか。
【社長】
このカレンダー問題について、日本郵便として対応するようにということで、日本郵便に判断を委ねています。一部、日本郵便の本社については当社のほうで外部弁護士に頼みました。その上で、結果として、日本郵便から処分をするなどの話があり、受け入れたということです。
【記者】
前回1カ月前の会見の段階では調査をしたほうがいいのではないかというお考えだったのでは。
【社長】
経緯や積算ということを言いましたが、全体の予算や数量がどの程度かという意味で申し上げました。調査結果を踏まえて日本郵便としてこのカレンダーの問題に対しての対応ができるという判断だと思いますので、しっかり日本郵便として再発防止に努めてほしい、そういうことを申し上げているものです。
(※記者会見における発言および質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)