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2021年4月28日 水曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2021年4月28日 水曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田 寬也
【社長】
日本郵政の増田でございます。本日は、私から3件発表いたします。
 1件目です。現在、次期中期経営計画の策定作業の最終段階にあります。それに先立ちまして、本日、今後5年間の成長を支える戦略的なIT投資の見込額がまとまりましたので公表させていただきます。
 配布しております資料の2ページをご覧ください。2021年度から2025年度の5年間にDX推進等に向けた戦略的なIT投資として4,300億円規模の投資をグループ全体で見込んでおります。内訳として、データドリブンによる郵便・物流事業改革に1,800億円、安全・安心を最優先に質の高い金融デジタルサービスの充実に2,300億円、そして、リアルの郵便局ネットワークと「デジタル郵便局」の融合に100億ずつ計200億という内容です。
 この4,300億円は戦略的投資や経費の額でして、従来の事業の安定的なサービスを継続するためのシステム更改、維持、保守費用についてはこの中には含んでおりません。したがって、広い意味でのIT投資ということになりますと、もっと多くなることになります。
 3ページをご覧ください。昨年11月の中期経営計画の基本的な考え方でもお示ししたとおり、次期中期経営計画では、リアルの郵便局とデジタルの融合が柱となります。このスライドは、グループのDX推進によりお客さま体験の将来像を表現したものです。スライドの図の左がリアルの郵便局でして、デジタル化を進めて、ペーパーレス化などによる利便性を向上していくとともに、デジタルサービスへアクセスできないお客さまの結節点として、リアルの郵便局ネットワークを生かしてまいります。
 そして、右側がデジタル郵便局のイメージです。リアルの郵便局とは違って、スマホやPC上のデジタル郵便局で、24時間365日、郵便局の多様なサービスを提供します。いつでもどこでも、より便利に、身近に多くのお客さまにご利用いただける、そのようなスマホアプリやウェブサイトを構築していきたいと考えています。このリアルとデジタル、2つの郵便局が一体となって、お客さまのライフステージやスタイルに合わせたサービスを提供してまいります。
 次の4ページはお客さまデータの活用です。総務省のデジタル時代における郵政事業の在り方に関する懇談会からも郵政グループのデータの活用についてご提案いただいています。郵政グループは膨大なデータを持っておりますが、事業会社ごとにデータベースが分かれており、十分に活用できていませんでした。個人情報保護に十分配慮しつつ、データを一体的に整備し、全てのお客さまに新たな価値を提供するデータ基盤に発展させていきたいと考えております。
 5ページは、システムの構成イメージです。これまでの専用線から成る基幹ネットワークに加えて、今後はクラウドやモバイル機器を活用していくとともに、インターネット、モバイルネットワークも加えたネットワーク構成にいたします。また、連携パートナーとつながるインターフェースも整備します。
 6ページは、セキュリティ高度化への取り組みを表しておりまして、安心・安全を最優先にセキュリティ水準の向上を図ります。
 次の7ページは、DX実現のための人材育成・体制強化です。外部人材の受け入れとして、まず4月に楽天から完全移籍で執行役に来ていただいているところですが、さらなる外部人材の受け入れ、そして、内部人材の育成によりまして、DX推進体制を強化します。
 8ページ以降は、グループ各社の投資により構築していくシステム基盤のイメージで、各社とも、サービス拡充や生産性向上につながる戦略的IT投資を進めます。
 次に、2件目です。楽天グループ様との業務提携の進捗状況についてご報告します。こちらも、配布資料をご覧ください。
 楽天グループ様とは、3月12日に資本・業務提携について合意した後も、業務提携についてさらに協議、検討を重ねてまいりました。本日は、現在までに両社グループ間で合意をしました内容をご報告します。
 物流分野におきましては、日本郵便が楽天グループ様と共同出資する新会社を設立し、2021年7月をめどに、物流DXプラットフォームの共同事業化を行います。新会社の設立につきましては、私の記者会見終了後に楽天グループ様と日本郵便の担当役員が皆さまに詳細をご説明します。
 モバイル分野におきましては、郵便局内のイベントスペースを活用した楽天モバイル様の申し込みカウンターの設置、日本郵便の配達網や郵便局ネットワークを活用したマーケティング施策の実施、この2つの取り組みを全国的に実施するための実証実験を郵便局10局程度で2021年5月頃をめどに順次開始します。
 金融分野におきましては、ゆうちょ銀行が楽天カード様と、まずは2021年内のゆうちょ銀行デザインの「楽天カード」の取り扱いの開始に向けて準備します。次いで、このデザインカードの状況を踏まえて、楽天カード様の基盤を活用したゆうちょ銀行を発行主体とするクレジットカードについて協議、検討します。
 その他の分野の業務提携の内容につきましては配布資料をご確認ください。
 なお、業務提携のために相手方から受ける情報やデータについては、このたびの合意に際して取り交わしました合意書において、双方が個人情報保護法等に基づいて適切に管理、利用する旨定めています。
 3件目です。先ほど、適時開示にて、2021年3月期の通期連結業績予想の修正をお知らせしました。その内容ですが、中間決算と同じタイミングで、昨年11月に公表しました前回発表予想と比べて、経常利益を46.8%増の9,100億円、親会社株主に帰属する当期純利益を22.1%増の4,150億円に修正しました。適時開示資料に記載しておりますが、このように経常利益が上振れた原因は、かんぽ生命で資産運用が順調に推移したこと、保険金の支払いが想定よりも減少したこと、また、日本郵便において営業関連の経費が想定を下回ったことなどによるものです。
 また、当期純利益に関しては、先週公表しましたトール社のエクスプレス事業の譲渡に係る特別損失の影響を踏まえても、750億円の上方修正となったところです。現在、決算作業中ですので、最終的な決算値や各社の計数、変動要因につきましては、来月中旬の決算開示の際にご説明いたします。
 私からは以上です。
【記者】
今回のトールのエクスプレス事業の売却についての、まず社長の受けとめというのを伺えればと思います。また、残る2つの事業をどのように運営していくか、また、今回の買収についての教訓を今後の買収や提携にどのように生かしていくのか教えていただけますか。
【社長】
まず、エクスプレス事業の売却については、昨年11月に公表しました。その後、さまざまな手続きを経て、今回に至ったものです。赤字事業の売却は一般的になかなか難しいことですが、加えて、コロナ禍という状況で、さらに環境が厳しいという状況の中で売却を進めることができたと考えています。
 まだエクスプレス事業の売却について、大事な作業が残っていますが、気を緩めることなく、しっかりとやっていきたいと思います。
 それから、残る2事業、コントラクト事業とロジスティクス事業ですが、私どものグループの中の主要な関係企業でありますので、収益を最大化することに最大限努力してまいります。
 事業環境は常に大きく変わっており、物流分野はコロナ等もあって、日々よくその状況を注視し、今後の予測をしておかなければなりません。残る2事業は黒字になっておりますが、アジア中心に国際物流事業を展開していくという上で、この2事業がしっかりと収益を上げられるようにしていきます。また、同時に、常に経営判断としてさまざまな可能性には備えておきたいと考えています。
 それから、今後の買収ですが、郵政グループとして、さまざまな場面でM&A等を行うことが考えられます。私も就任してから、トール社の買収のときは一体どうだったのか、日々さまざまな資料を見たり、関係者から、当時どういうことだったのかヒアリング等で聞きました。
 買収当時、私は郵政民営化委員長として、会社からも説明を受けました。トール社の問題は、郵政グループにさまざまな面で負の教訓を残したと思っていますので、その教訓をきちんと今後の買収、提携、経営に反映できるようにしていきたいと思っております。
【記者】
2点伺います。1点目は、DX投資についてです。今回、5年で4,300億円ということで、これは既存事業の保守ではなくて、前向きな投資ということですが、先日、郵政民営化委員会の委員長からもIT投資の額をはっきりするようにとご指摘があったと思うのですが、これまでは、年間どのぐらいだったのか、今後5年間の年間800億円ちょっとと比較するためのイメージ感を教えてください。
 続けて、楽天との提携について、楽天カードの年内の取り扱いに向けた準備とのことですが、もう少し具体的にどういう戦略があって楽天カードを取り扱うことにしたのか、楽天カードは楽天経済圏の入り口になっていると思いますが、ポイント等の扱いはどうなるのか、既存カードとの関係はどうなるのか教えてください。
【社長】
まず、DX投資の関係ですが、いろいろ聞きますと、これまでいわゆるDXというよりさらに広いITについてどの程度投資してきたかについては、会社として、郵政民営化委員会にもそうですが、外にほとんど言ってこなかった、数字も出してこなかったようです。
 そういう意味では、なかなか比較しづらい部分があるかと思いますが、既にそれぞれの事業会社でメインフレームなどの保守管理にも相当なお金を投じています。そういったものは従来と同様にやるのですが、それに加えて、今回のものを新たな投資として5年間で4,300億円必要になってくるというイメージです。
 楽天カードについて、今回取り扱いに向けた準備を行いますのは、ゆうちょ銀行デザインの楽天カードです。ポイント等の扱いなどにつきましても、内容が固まりましたら、誤解のないように発表させていただきたいと思います。まず、ゆうちょ銀行デザインの楽天カードを入り口にして、その先、楽天カードのシステムを改修して、楽天カードではなくゆうちょ銀行が発行主体となるクレジットカードという次の段階に進んでいくための第一歩と考えています。
 JPバンクカードとは訴求しますお客さまの対象が相当異なると考えていますので、私どもとしては、お客さまの多様なニーズに応えていくためには、まずゆうちょ銀行デザインの楽天カードを入り口にして、ポイントの扱いも含めて、次の段階では、どういう形にするとサービスが広がっていくかを考えていきたいと思います。
【記者】
郵便・物流事業のDX推進のための1,800億円の投資について2つ質問があります。1つ目は、資料にデータドリブン、データの活用と書いてありますが、従来のシステムの取り組みと何が違うのか教えてください。例えば、現状でも郵便番号は7桁で、地番や配達先はある程度デジタル化されていて、追跡番号で差出人も受取人も荷物の場所をいつでも確認できる状態になっています。1,800億円投資することでこの状態がどう変わるのか教えてください。
 もう1つ、この物流分野のDXに関して、楽天IDを利用したり、データを活用するなど、楽天と共同で行うことはあり得るのか教えてください。
【社長】
今までとの違いですが、1つは荷物を受け付けた段階で、内部的には全部の情報が、配達先のルーティングや、どういう体制で荷物を届ける体制を取っていけばいいかということがAI等も活用して予め把握できるようにして、お客さまに対しても荷物を差し出したところ、受け付けたところで、いつ何時にどういう形で届くかということが伝わるような形にしていきたいと考えています。内部的に非常に効率化して、全体として経費を抑えることや最適な体制を取ることにもつながりますし、お客さまにとっても情報がいち早く伝わることによって、再配達によらず、一番受け取りやすいところに変更できるようにしていきたいと考えています。今は受け付けた瞬間にはそこまでは難しいですが、全ての荷物について、このようなことを可能にしていきたいということです。
 2つ目のご質問については、この後、日本郵便の担当副社長である諫山にご質問いただければと思います。楽天との物流領域における業務提携において新会社を設立することも効率化、合理化につなげていくことの1つの表れであります。
【記者】
かんぽ営業が再開されましたが、現場では、訪問活動の進捗率が毎週出ています。そればかりか、局長や部長が「進捗率が悪い」と、どなる場面も出てきました。どう思われますか。これが1点目です。
 次、2点目ですが、4月14日より金融営業実績フィードバックのページをポータルサイトに設けられました。そのことを知らせる情報文書に書かれた不適切なマネジメント例には、不適正募集の大量発生前にしていた事柄を書かれています。達成のみを追い求めるマネジメント、営業指導および研修、活動目標の進捗率等による組織、個人の順位づけ、目標未達の理由のみで行う会議、研修などです。現場からは、これらが不適切であるならば、これらを推進してきた役職員をしっかり処罰すべきなのに不十分だとの声が相変わらず上がってきています。どう思われますか。
 続いて、3点目。札幌地裁で多数募集を理由とした懲戒解雇は重過ぎる処分だとして裁判が始まりました。5月には2件提訴される見込みです。処分過大とする法廷闘争はこれが初めてではありません。増田社長は4・28事件をご存じでしょうか。年賀状を人質にストを行った職員の大量処分です。27年かかって懲戒免職は無効という判決が下りました。創業以来の危機にある中、この事件の二の舞いとなってはいけないと思いますが、いかがでしょうか。
【社長】
順次お答えします。局長等が進捗率を見ながら社員をどなったりするというご指摘をいただきました。実際にそういうことが行われているかどうかということの確認はなかなかできませんが、改めて恫喝的なことをしないように注意をするということと、実際にどのように現場で行われているかが分かりませんので一般論になりますが、上司が不当な形で社員に圧力をかけるという具体的な現認行為があれば、処分の対象になるような話ですので、そういった内容についてより具体的にお知らせいただければ対応が可能になると思います。
 一般論としてですが、いずれにしても、一昨年発覚しましたかんぽの問題を契機として、営業体制、考え方を大きく見直ししなければなりませんので、そういう見直しの趣旨がきちんと伝わるように、さらに努力をしていきたいと思います。
 2つ目の関係ですが、これはやはりやってはいけない行為はきちんとお知らせしなければいけませんし、コンプライアンスの関係も時代とともに年々求められるレベルが上がってきていますので、以前はよかったけど今は駄目だということも含め、やってはいけないことの典型的なものは、より詳細にきちんと伝えることが必要だと思います。
 そういう意味で、具体的に上司についての話が出ているということですが、これも具体的な行為が特定できれば処分等を行わなければいけませんが、特定につながらないものは難しい部分があります。いろいろな形で申告してもらえれば、それに対応していくということです。いずれにしても、過去のことであれ、今の段階でやっていけないことをきちんと社員に伝えていくことが大事だと思います。
 それから、3点目の札幌地裁への提訴についてですが、4・28事件は労働組合が全逓の時代の話だと思います。懲戒処分については、当然、裁判になるものも出てきます。裁判に持ち込まれたものは司法の場で誠実に対応していくと同時に、それだけ、懲戒処分については事実が必要になりますので、懲戒処分の事由に当たるものはちゃんと処分する必要があります。また、処分を行うにあたってはちゃんとした事実を固めることが必要だと思います。
 札幌地裁に提訴されたものについては、裁判長の指揮の下で裁判が行われるわけですから、その司法の場できちんと対応、主張をしていきたいと思います。
【記者】
3点質問します。1点目、2点目は楽天との関係です。今日いただいた資料に、モバイルに関しては、2つの施策の実証実験を実施するとありますが、郵便局員が楽天モバイルの契約を受け付けるという理解でよろしいでしょうか。
 2点目は、現時点で、郵政側から楽天側に提供される個人情報にはどういうものがあり、現時点で楽天側がどのように利用することが想定されているのか教えてください。
 3点目は、先日、長崎県で10億円超の旧特定郵便局長による詐欺事案がありました。日本郵便の根岸常務によるご説明では、旧金融渉外社員は10年以内に異動させるのに対して、旧特定郵便局長はほとんど異動がないとのことでした。この点については、地域貢献が目的というご説明でしたが、10年以上いなくてはできない地域貢献が一体どういうものなのか想像できませんでした。なぜ異動させられないのでしょうか。はた目から見ると、長くいるほうが選挙活動に得になるので、長くいたいと考える局長がたくさんいると思われますが、会社として10年以上長く局長を異動させないでおくメリットについて教えてください。
【社長】
まず1点目、楽天モバイルの関係ですが、私どもは郵便局のイベントスペースをお貸しし、楽天様が対応することになります。楽天様の社員の方が私どものお貸ししたスペースで携帯電話の販売、PR活動を行うイメージでございます。
 2点目については、今のところ、楽天様に提供する個人情報はございません。今後、業務提携を進めていく上で出てくることになります。したがいまして、業務提携ごとに変わってくると思います。業務提携を具体的に進めていく中で、個人情報の取り扱いをその都度、楽天様と取り決めしていくことになります。
 いずれにしても、この後、最初に実施されます日本郵便による物流領域における業務提携でどういうものが出るのか、この会見の次に予定しているご説明の場で、担当の副社長にお聞きいただければと思っております。
 長崎県の事案に関係して、局長の異動のお話がございました。再発防止策をどのようにしていくのかについては、今、検討しておりますが、金融の代理店業務を行っている中では、何年かのローテーションで人を替えていくことが当事者に対して抑制機能を果たします。それから、複数の局員がさまざまな業務を相互監視の中で行うことが必要だろうと思います。
 別の観点で言いますと、今後の郵便局、特に過疎地域、地方部に展開する郵便局を地域の一つの拠点にしていきたいと思っておりますので、地域のさまざまな住民の人たちの中で一定の求心力のある地域性を備えた人たちが、単に、今まで提供しているサービスだけではなくて、もっと多様なサービスを住民の信頼感の下で提供でき、行政機関の1つの拠点としてサービスを展開できるような郵便局にしていきたいと思いますので、地域性が必要になってくるとは思いますが、それが一体どういう形でないといけないのかについては、今、今回の犯罪を契機としてよく検討しているところです。
 いわゆるエリアマネジメント局の局長の3分の2以上は防災士の資格を取っていて、地域で災害が起きたときに活動することになっていると思います。具体的にこれから再発防止策を考えていく上で、できるだけ長く勤務させないということと、一方で、郵便局自体、特に一番中心となる局長が地域の1つの取りまとめ役という役割を果たしているという2つの要素をどううまく加味していくか、まだ結論が出ておりませんので、さらに考えていきたいと思います。
【記者】
今の質問とも関連するのですが、福岡県では内部通報者を脅したことで7人の幹部局長が懲戒処分され、1人が在宅起訴されるという事件がありました。この旧特定局長の採用や人事は幹部の局長に大きな権限があって、このパワハラの背景として、局長同士の強い上下関係があるのではないかという指摘もあります。この点についてどのようにお考えになりますか。先ほどの転勤がないということとも関連するかと思いますが、再発防止策はどのように考えていますか。
【社長】
福岡県の事案についてですが、内部通報をうまく働かせることとの関連もあります。内部通報事案に係ることでもありますので、詳細は申し上げられないのですが、今、本社の対応も含めて調査をしています。先日、その時点で分かっている内容で、人事処分を行いましたが、全体の対応がどうだったのかということも含めて、今、調査をしておりますので、その結果を見て、もう二度とこのようなことが起こらないような対策や適切な内部通報制度の構築に充てていきたいと思います。
 組織、地区の部会等が必要な機能を果たしていると思いますが、そうした部会の今後の在り方なども含めて、調査結果を十分に活かして、福岡県のような人事処分や刑事事件になるようなことがないようなものを目指していきたいと考えております。
【記者】
DXの投資の4,300億円という金額の規模感ですが、今後の5年間で必要十分な金額を見積もれたとお考えでしょうか。それとも、もっと必要とお考えでしょうか。評価をお願いします。
 もう一点は、楽天との楽天カードに関する提携についてです。具体的には、楽天カードの申し込みを郵便局でできるようにするということでしょうか。楽天カードは基本ウェブで申し込む仕組みだと思うのですが、ご説明をお願いします。
【社長】
まず、DXの投資についてです。これはかなりきちんとした積み上げでやっております。したがいまして、今回は新たに、従来には行わなかったDXをきちんと進めていくための5年間の投資としては、こういう額でいいのではないかと思っていますが、従来投資額は公表していませんでしたので、あまり詳細には申し上げられませんが、メインフレームの更改や保守管理を含めると、これから5年分で1兆円を超える投資をIT全体としてはやっていかなくてはいけないのですが、そういうボリューム感を考えると、今回、今までにはない新たな分野の投資としては、4,300億円は適正な数字ではないかと思います。そのことによってどういうリターンがあるかについては、来月に公表します次期中期経営計画の中で説明できるところはきちんと説明していきたいと思います。
 2つ目の楽天カードの関係についてですが、秋以降に詳細が決まりましたら公表いたしますが、今の時点ではウェブでお申し込みいただくことを考えております。そのことによって、従来の我々のカードとの差別化も図っていきたいと考えております。今後もさまざまな協議が行われると思いますので、発表の段階でしっかりとご説明申し上げたいと思います。
【記者】
郵政事業創業150年を起点に、他企業との連携により、郵便局という通信インフラの拠点をどのような社会インフラに展開させたいとお考えですか。東京電力との連携は集配局1,000局から始めるとのことですが、将来、エリマネ局にも広げたいとお考えですか。
 佐川急便は2030年までに中国製EVを7,200台、ヤマト運輸は2030年までにドイツ製EVを5,000台導入する予定ですが、日本郵便は海外のEV業者と連携することをお考えですか。
 約2万局の郵便局でも開始されるゆうちょ口座貸越サービスにより、学生や働き始めの若者など、比較的若年層の生活を支えたいというお考えはありますでしょうか。
 郵政民営化委員会による3年ごとの検証の意見書に、日本郵政グループらしさを重視し、公共性に配慮した資金配分について記されましたが、地方創生ビジネス資金をどう次期中期経営計画に反映されるお考えですか。
【社長】
郵便局は全国にある非常に貴重なリアルのネットワークだと思いますので、郵便局でこれまで取り扱ってきたサービス以上にさまざまなサービスを提供できるのであれば、ぜひ提供していきたいと思います。
 東京電力とのEVステーションに関する提携については、まず幾つかの実証実験で、どの程度、地域の周辺の皆様方からご利用いただけるかを考えなければいけません。大きく儲けようとは思っていないものの、赤字が出るのは困ります。EVステーションがあると、急速充電でも15分とか20分、長ければ30分ぐらいお待ちいただく間に地域の方々が郵便局に足を運んでいただけるようにもなりますので、1,000局、東京電力管内だと300局ぐらいなのですが、他の電力会社に協力いただければ、これからも広げていこうと思っています。ビルの中にある郵便局は難しいと思いますが、用地等の関係で設置するスペースがあるところには広げていきたいと考えています。
 全体にモビリティーがEV志向になっていて、ガソリンスタンド以上にEVステーションが全国で必要になります。そういうところに寄与する一方で、環境にもよい成果を出すことは、社会性という意味でグループにとって大事なことだと思います。
 EV車への転換については、これまでも、四輪車は2,000台ぐらい、二輪車も含めて、既に東京を中心に進めておりますが、これからは地方部でもどんどん広げていきます。先般、公表しましたが、四輪車は5年間にさらに2,000台、二輪車についてもかなりの数をEV車に転換します。後ほど、日本郵便の諫山副社長にもお聞きいただきたいと思いますが、今のところ、中国企業と手を組んで中国製のEV車を入れていくことは考えておりません。これまで、軽四輪車は三菱自動車製を、二輪車は本田技研工業製を使っておりますが、今後、どういう車両が出てくるかもよく見ていきたいと思います。
 2つ目の若年層への支援ですが、今回新たにご認可いただいたゆうちょ銀行の貸越サービスはさまざまな多様なニーズに応えていくことになりますので、若い世代の方々のニーズにも対応するサービスとしても考えております。
 それから、郵政民営化委員会の3年ごとの検証の意見書については、来月公表します中期経営計画に取り込めるものは最大限取り込もうと考えて、今作業をしています。地方創生との関係は、次期中期経営計画だけでなく、それから先も非常に大事な視点になりますので、郵政民営化委員会、岩田委員長がおっしゃっている趣旨を郵政グループとして実現していきたいと思います。考え方は、中期経営計画に取り入れて、具体的にどういうことをしていくのかについては、郵便局としての仕事にふさわしいものもいっぱいあると思いますので、個別に、また地域ごとにいろいろ考えていければと思っています。
【記者】
福岡県の案件は、昨年の1月に新聞報道が始まり、3月、4月ぐらいまで随時報じられました。その後、6月、7月あたりに、増田社長が外部有識者委員会に検証をお願いして、今年1月の検証結果に至ったという経緯があったと思うのですが、結果的には外部有識者委員会では、福岡県の事件にはちょっと触れるぐらいで、中身の検証はほとんどされていませんでした。
 組織の対応は今検証中だということですけれども、パワハラなのかどうかという部分については両者の間に争いがありましたが、組織の対応については裁判の中でも特に争いがあったわけではありませんでしたので、昨年4月の時点から、組織として検証してもよかったのではないでしょうか。1年以上過ぎた今になって、まだ組織の対応について検証が続いているというのは、経営陣として対応が遅いのではないかと思うのですが、その点どのようにお考えでしょうか。
【社長】
パワハラ事案については、当事者の意見、それから本社の対応について十分聴取をする必要があると思っていますので、詳細は申し上げられませんが、今、外部の人たちを通じて、そういったところについてきちんとした対応を行うべく作業しています。また、いろいろ、当事者たちから意見を聞いているところです。
 全体として遅いのではないかとのご指摘をいただきましたが、警察等の捜査の動きも見ながらやっていたという部分もあります。また、具体的には処分を行う日本郵便の動きなども見ながら、対応を考えてきているところです。処分すべき者、救済すべき者という当事者をどうしていくか、恒久的な制度としてよりよい内部通報制度をつくるという2つの大きな目的につなげていく必要がありますので、タイミングをきちんと見ながら、それぞれの作業を進めているところだと思います。制度については、もう少し調べるところもありますので、それも踏まえて、構築につなげていきたいと思います。
【記者】
冒頭の質問にあったトール社の教訓は一言で言うと何でしょうか。2015年のタイミングで6,000億円をDXに投資していればよかったのではないかと思うのですが、どう思われますか。
 あと、先ほどの10年以上勤務していないとできない地域貢献に関する質問に対するお答えがよく分からなかったので、もう少し簡単に教えていただけないでしょうか。
 3点目は、多くの渉外社員は、この2年近く一部の渉外社員に重大な責任があったという筋書が長く続いている印象を持っていて、現在、会社に対する不信感、人生に対する絶望感を受けていて、自殺未遂事件も起きており、それに対する増田さんの受け止めを知りたいという声が強いと聞きます。渉外社員に対して、絶望などしないでほしい、希望を持ってほしい、会社を信用してほしいという強いメッセージが必要ではないかと思うのですが、どのようにお考えでしょうか。
【社長】
まず、1つ目のご質問ですが、さまざまな経営判断の中で、国際物流に進出していくという判断があって、トール社に目をつけたということだったと承知しています。デューディリジェンス等も行いましたが、少したってから減損処理を行っていますので、トール社については当時としては甘い部分があって、このような結果につながったのではないかと思います。
 昨年のサイバーアタック、コロナ等のその後の状況もありますし、途中で経営陣を交代させて、経営方針を切り替えようとしたということはあるのですが、スタート時点の経営判断に十分でない部分があったと思っています。
 2つ目について、郵便局長は、これまでの長い歴史を見ると、地域の中で濃密な人間関係をつくって、それで地域の人たちのいわゆるアナログ情報的なものを頭に入れながら活動してきたということがあります。全員を単独マネジメント局の郵便局長のように転勤族にしていくわけにはなかなかいかないと思いますが、一方で金融犯罪などにつながっていく部分もありますので、従来の局長像から大きく、どこまで変えられるのかが今回の大事な部分ではないかと思います。
 地域の将来像はだいぶ変わってきていますので、過去がこうだったから将来もずっとこうあるべきと考える必要はないと思いますし、これまで地域で求心力があり、誰もがよく知っている人たちがずっと局長として、親子等の形で受け継がれていくことと、将来に向けての郵便局長像は、なかなか結びつき難いところがあると思いますが、今までは郵便局長はずっと地域にいる存在だというのが長く続いてきていましたので、そこを変えるときに、どの程度、どういう形で変えるのかというのは、やはり検討のポイントです。順番をどうするのかとか、徐々に変えるのかとか、どういう部分を変えるのか、2万4000局全員を同じような形にするわけにはいかないというところもよく考える必要があるというのが、今の段階の状況です。
 渉外社員の方々に対してなのですが、いろいろ会社に対して不信感があるとのことですが、いろいろなこれまでの社員の声やSNSの声を相当分析しています。そういう不満を持っている人たちには、前を向いて進んでいけるように、生きがいを持って、希望を持って働けるように、会社の環境をよくしていく、制度もよくしていくことが必要だと思います。それから、SNSを使って訴える、マスコミの皆さんに訴えることも、それはそれであっていいというふうに思います。会社の中にも、議論、ディスカッションの場をもっとつくって、会社の中でそれを処理していく、変えていくエネルギーにしていくことが大事だと思います。
 上と下の風通しが悪いとよく言われますが、そういうことが結果として外に向かってのエネルギーにつながっていくと思いますので、風通しをよくしていくことが必要だと思います。口で言うことは簡単ですが、当然のことながら、社風改革の話になりますので、時間がかかると思います。これは愚直に一つひとつ積み上げるしかないと思いますが、時間をかけてもそういう悪いところなどを社内でちゃんと議論できるような場づくりを行って、それで正しい方向に変えていくようなことにつながっていければと思います。
 今まで直接社員に呼びかけるようなツールすらない会社でしたので、今は、簡単なビデオメッセージを送るようにしています。現状は、コロナの影響でなかなかやりにくいのですが、意見交換の場をできるだけ作って、使って、いろいろな皆さん方の意見を吸い上げたり、こちらからのリターンを直接聞いてもらえるような場がもっともっとできればと思っています。
(※記者会見における発言および質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)