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2021年1月28日 木曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

2021年1月28日 木曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

[会見者]
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田 寬也
【社長】
日本郵政の増田でございます。本日は私から3件、ご報告をさせていただき、その後、皆さんからご質問をお受けしたいと思います。
 まず1点目。新型コロナウイルス感染症問題について、日本郵政グループ4社におきましても、1月26日までに915名の社員の感染が確認されております。全国の感染者の増加に比例して、グループ社員の感染者も増加している状況でございます。
 グループとしては、昨年から、お客さまが郵便局等を安心してご利用いただけるように、窓口へのビニールカーテンの取り付け、ご訪問等の自粛、非対面配達の実施などの対策を徹底し、感染防止・感染拡大防止に努めております。
 さらに、今回の緊急事態宣言を受けて、新たに追加した主な対策を5点申し上げます。
 一つ目。前回の緊急事態宣言期間中も実施しておりましたが、郵便局等の混雑緩和のため、大量硬貨による預入や書損はがきの交換など、時間を要する取扱いについては、時間変更をお願いするポスターを郵便局前に掲載したり、ホームページに掲載するなどして、ご協力を求めております。
 二つ目。会議、研修後において会社が主催をする意見交換会、懇親会は禁止しております。また、緊急事態宣言が発令された地域、これは自治体独自の緊急事態宣言も含めて、こうした地域についてはプライベートの懇親会も原則禁止、その他の地域は自粛としております。
 三つ目。本社社員はテレワークの積極的な推進により、出勤抑制7割以上を目標としております。
 四つ目。出張など、他県にまたがる移動は自粛。特に緊急事態宣言が発令された地域への移動は、プライベートも含め原則禁止としております。
 五つ目。最後ですが、集合を伴う研修、イベント、セミナー、講演会等は禁止。そして、可能なものはオンライン等で実施しております。やむを得ず会議を開催する際は、適切な感染防止対策を講じることを前提に、必要最低限の人数・時間とした上で開催することとしています。
 以上ですが、新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中、社員の安全とユニバーサルサービスの業務継続に全力で取り組み、この難局を乗り越えていく所存です。
 また、新型コロナウイルス感染症のセルフPCR検査検体の郵送について、先週発表いたしましたが、2月1日から取扱いを厳格化させていただきます。これは、新型コロナウイルスの検体輸送の増加に伴い、その社会的な要請に応えることを念頭に、現在、個別に検査キットの販売事業者の方々に要請してきた内容について広く周知し、安全に輸送することに最大限に注力する形で、厳格に取り扱うこととしたものです。
 具体的には、検体の不活化、不活化とはウイルスなどに関して使う専門用語で、微生物などの病原体を熱、紫外線、薬剤などで死滅させ、感染性を失わせることですが、検体の不活化と医療機関と同水準の厳重な三重包装を満たしていないものについては取り扱わないこととしました。
 詳しくは、日本郵便のホームページをご覧いただきたいと思います。現在、セルフPCR検査を実施している事業者のほか、今後も多くの事業者の方々が参入する可能性もあります。今日、このルールの遵守を広く周知をさせていただきますとともに、ぜひ皆さま方のお力もお借りいたしたいと存じます。
 2件目です。日本郵便のキャラクターであるぽすくまをデザインした1円切手を発行することといたしました。お手元のプレスリリース資料をご覧いただきたいと思います。これまでぽすくまの切手は84円や63円といった手紙やはがきの郵便料金に対応した料額のものだけでしたが、今回は料額を1円としているものです。これが切手1枚のぽすくまのデザインでございます。こちらがその同じデザインを50枚連ねたシートでございます。
 この1円切手は、消費税率改定などに伴い発生する、新旧の郵便料金の差額の埋合せ用の切手として、旧料額の切手をお持ちの方にご利用いただきたいと考えているものでございます。
 1シート50枚のシール式で、50円で販売いたします。明るい色彩のデザインとなっておりますので、小さなお子さまにも喜んでいただけるものと考えております。ぜひ皆さまにもご利用いただければ幸いでございます。
 なお、現在、1円切手として発行しております郵便創業の父である前島密の肖像を題材としているものは、引き続き発行を継続してまいります。
 3件目、最後でございますが、郵政創業150年の関係でご報告をいたします。お手元のプレスリリース資料をご覧いただきたいと思います。日本郵政グループは明治4年、西暦1871年の創業以来、多くのお客さまにご支援、ご愛顧いただきました。おかげさまで本年4月20日に創業150年の節目の日を迎えます。
 そこで、日本郵政グループでは、郵便事業創業から150年となるこの節目の年を「郵政創業150年」の年とし、そのシンボルとして、今回のロゴマークを作成いたしました。こちらが、そのロゴマークでございます。
 このロゴマークですが、花をデザインしたものでございます。それにおなじみの郵便のマークを組み合わせて作成しております。郵政事業そのものや社員の多様性、商品・サービスをご利用いただくお客さまの多様性を、地域にそっと咲く花で表現しました。このロゴは、これからの郵政グループを担う若手社員によるプロジェクトチームで検討を行い、全国のフロントライン社員を含めたアンケートを実施した上で、決定いたしました。
 郵政創業150年の節目に、いま一度、原点に立ち返り、皆さまの生活全体を支える存在であり続けるために、グループ社員の気持ちを一つにして、お客さま一人ひとりに寄り添っていきたい、そんな想いをロゴマークにより表現しております。
 このロゴマークを全国の郵便局、郵便ポストなどの装飾に使用するほか、お客さま向けのノベルティーのデザインにも活用するなど、あらゆるものに展開していきます。お客さまに寄り添うあらゆる場面に、このマークをあしらっていくことで、お客さまへの感謝の気持ちをお伝えしていきます。
 ちなみに、本日のプレスリリース資料をご覧いただきますと、一番下にロゴマークを入れてございます。今日から、こうしたロゴマークを入れているところでございます。
 また、併せまして、先週、1月22日の閣議決定を経て、財務省から発表がございましたが、郵便制度150周年記念貨幣が発行される運びとなりました。私どもといたしましても、大変光栄に感じているところでございます。貨幣の種類は、金貨、こちらは額面が1万円、そして銀貨、こちらは額面が1,000円、この2種類でございまして、独立行政法人造幣局からの通信販売となります。
 なお、郵便局では、貨幣発行に関するポスターの掲示を行うよう、現在、造幣局と調整・検討を行っております。
 私からは、以上3点でございます。
【記者】
今年最初の記者会見ということで、社長就任2年目の抱負と、現状の課題をお聞きします。去年1年は、かんぽの不正販売の信頼回復とガバナンス強化に取り組まれた1年だったと思います。一方で今年、中期経営計画を出される年でもあり、成長に向けた取り組みも必要かと思います。現時点で社長が考える、ガバナンス問題も含め、グループ傘下企業の3社も含め、経営課題をどのように認識されているか教えてください。
【社長】
昨年は、不祥事対応に相当なウエイトを割きました。引き続きこの問題が続いておりますが、お客さまへの対応は山を越しつつあると考えております。依然として、グループガバナンスの問題、いわゆるリスク感度の問題等、改善すべき点は山積していると思っております。
 こうした不祥事をきっかけとして経営のやり方を改善していくことと同時に、次の中期経営計画に向けて、成長を見据えて取り組む必要がございます。一番力を入れなければいけないものは、リアルのネットワークである郵便局と、デジタルデータをどのように融合させるかということです。これに最も力を入れて取り組み、完成形をつくっていかなければいけないと思っております。
 また、業務分野では、コアビジネスの分野と、新たに今後の収益の柱としてつくり上げていくものがございます。郵便物流と金融、大きく二つのコアビジネスがありますが、特に物流については、コロナ禍の影響もあり、物の動きはかなり増えてきています。当面、人は動かない代わりに、物と情報が動くということだと思いますので、そうした社会的要請にも対応しつつ、物流分野をさらに磨き上げて、収益の柱としていきます。以前申し上げましたDXなどを使うということが必須になってくると思います。
 また、金融2社についても、低金利の厳しい環境は変わらないと思いますので、その中で、リスクを消去しながらきちんと運用をしてまいります。また、地銀さんとは、競合することで、反目する関係に見られていましたが、お互いに補完し合うところ、協調し合うところを見つけて、地域経済に貢献していく関係をつくり上げていきたいと思います。メガバンク等も同じでございます。
 また、不動産事業は新規事業ではありませんが、それ以外の純粋な新規事業も含めて、経営内容を多角化していきたいと思っております。いずれにしても現在検討の最終盤にかかってきております次期中期経営計画の中で、より具体的な姿を明らかにしていきたいと思っております。
【記者】
今日発表されたぽすくまの切手ですが、1円切手の発行というのはかなり久しぶりだと思います。今まで長く新しい切手が出なかった中で、今回、こうしたかわいらしいデザインの切手を、どのような議論を経て発行することになったのかを少しご紹介いただけないでしょうか。
【社長】
昨年、新聞のいわゆる「声」欄で、私が確認できただけでも3件ほど、新しいデザインの1円切手を出してほしいという投書を目にいたしました。従前から、前島密の茶色いデザインのものが流通しており、不足分の料金を埋め合わせる切手についてはご不便をおかけしていないと思っておりましたが、郵便物数が減少していく中で、はがきや封書を大事にされて、表面の色合いやデザインを本当に大事にしておられる方からの声として、違うデザインの切手も望みますという声を目にいたしました。やはりそのような潜在的なニーズが非常に高いのではないかと思いまして、私から日本郵便に話しをした経緯がございます。
 日本郵便は日本郵便で、検討をしていたと思いますし、その詳細を把握しているわけではございませんが、私の頭の中では、できるだけお客さまの声にお応えしたいということで、今回の切手の発行につながったと思っております。今回のことについては、デザインを含めて、さまざまなご意見が頂戴できるのではないかと思っております。
【記者】
念のための確認ですが、増田さんがその投書をご覧になったことが一つのきっかけだったという理解でよろしかったでしょうか。
【社長】
日本郵便で、それ以前から発行の計画があったとは聞いておりません。私が確認した「声」欄の記事は三つございましたが、二つ目を目にした際に、日本郵便に切手の発行を提案したと思います。三つ目を目にした際にも、再度、提案をいたしました。日本郵便でも、当然、目にしていると思いますので、何らかの思いはあったと思います。ご利用される方の声が今回の発行につながったのは間違いないと思います。
【記者】
僣越ですが、その読者投稿欄は、朝日新聞の「声」欄も含まれるのでしょうか。
【社長】
朝日新聞の「声」欄の投稿も入っております。
 私は、3件とも直接目にいたしましたが、あのような形で切手に関心を持っていただけることはありがたいと思いながら見ておりました。
【記者】
ゆうちょ銀行の不正引き出し問題について、今月8日にゆうちょ銀行が、ガバナンスを含む原因分析について公表しました。今回の問題では、被害者が長い方では3年以上も放置され、補償されずに放っておかれた例があったわけです。その原因の分析について、新しい事象で補償が規定されていなかったということと、網羅的に全体像を把握できていなかったという点を挙げています。一方で、被害が起きていたこと自体は、経営陣にその都度報告されていたことも紹介されています。
 ただ、原因を聞いておりますと、こうした不祥事につながる新しい事象は、そもそも網羅的に全体像を把握するということが、普通はあまりないのではないかということです。少なくとも今回の事象は、顧客の預金が他人に奪われるという事態ですので、1件や2件でも対応するのが常識なのではないかと思われます。そうした原因分析の部分を、増田社長はどのように受け止めているのか、お考えがあれば教えてもらえますでしょうか。
【社長】
今、ご指摘をいただいた点について、お客さまからクレームがあったときに、それがゆうちょ銀行の担当のセクションに入ってきて、途中までは上がってきていました。最初の頃は、個別ではなく、おそらくまとめてだと思いますが、取締役会の中で報告がなされていた形跡があります。問題の核心は、時間経過とともにそのままとなり、結局、気が付いてみると、2017年7月から3年間、放置されていたことです。
 そうしたことになっても、なぜ、社内的に問題がないことになっていたのかというところは、一言で言うとリスク感度が十分でなかった等の言葉に代表されると思います。さらに、なぜ、リスク感度が低いままになってしまったのか。お客さまサービス推進部(2021年1月から「お客さまサービス統括部」)等が、継続的に追跡していかなかったことを、ゆうちょ銀行の中で、きちんと受け止める必要があると思います。
 昨年の秋から冬にかけて、取締役会等で、社外の皆さま方から、そうしたことに関する指摘がありました。それらを受けて、ゆうちょ銀行の監査委員会で対応策を報告書にまとめました。ゆうちょ銀行の中で、きちんと問題意識が共有されているのかが問題です。報告書は、全体的にさまざまな論点に触れていると思います。これを、どれだけ実のある形とすることができるかという点において、ゆうちょ銀行のこの問題の解決は、まさにこれからの部分が大きいと思います。明日のJP改革実行委員会等で、そうしたことについて議論を行うことになっておりますが、今後、繰り返し、なぜ、ゆうちょ銀行でリスク感度が低いことが行われてきたのかを問いかけていかなければいけないと思います。
 また、これはゆうちょ銀行の問題だと捉えるのではなく、グループガバナンスの問題だと捉えるべきです。グループ全体で同じことが起きていないかを見ていくことが必要です。少し長く申し上げましたが、私自身は、ゆうちょ銀行のさまざまな改革は、第一歩を踏み出したにすぎない、やっと第一歩に立てたというような受け止めで、その掘り下げをしていかなければいけないと思います。
【記者】
3点お聞きします。1点目は、就任時にバッドニュースこそ上げてくれと、全社員に訴えられたと思います。それから1年たって、バッドニュースは上がってきているというご認識でしょうか。
 2点目は、ガバナンスについてです。社外取締役、個人株主、労働組合による経営監視機能が、普通の民間企業に比べると弱いように見えます。一方で、郵便局長会や、政治家の関与が、普通の民間企業にしては強すぎるのではないかと思います。このアンバランスな力関係が、不祥事が絶えない温床ではないかと思いますが、増田社長はいかがお考えでしょうか。
 3点目は、去年1年間で数十件、数億円の横領、窃取が郵便局で確認されています。特に、部長、局長も数件あり、そのことに金融関係者が驚いています。なぜ、これほど多いと思われますか。
【社長】
まずバッドニュースの件です。バッドニュースが上がってきているかどうかということですが、直接、社員から上げるルートとしては、従前からございました内部通報のルートを使ってくるものと、去年の7月に立ち上げて、実際には8月、9月に本格的に稼働しました、日本郵政グループ社長直通ご意見箱の両方があります。それぞれ3点目のご質問にあるような不祥事案につながりかねない内部のバッドニュースが多数書き込まれております。社長直通のご意見箱には、毎週200件ぐらいずつ社員の声が集まっています。今、トータルで積算すると5,000件ぐらい、集まってきていると思います。
 私は、時間的に一つひとつに目を通すことが出来ませんので、担当部署で、極力手を加えず、最低限に趣旨が読めるぐらいの量にまとめる作業をしてもらっています。その束をもらって、週末に全部目を通すということを繰り返しやっています。パターンが、大体同じになっているものもありますし、最近は処分に関することが言われるなど、その時々の傾向が出てきます。内部通報の方にも、具体的に名前を書いているもの、そうでないものの両方がありますが、バッドニュース自体は上がってきています。これが、全体の中のどれだけなのかという判断はできかねますが、かなりの声が届いています。
 それから、ご意見箱には、社用のパソコンからだけではなく、自身でお持ちのスマートフォンなどからも書き込めるようにしています。そうした意味で、より声は出しやすい状況になっていると思います。日々、そうした声を目にすることが、社員の感情を把握する上で、非常に有益であると思っています。
 こうしたものは、一度制度をつくっても、徐々に陳腐化をするものです。これも明日のJP改革実行委員会で、内部通報制度について議論をしたいと思っております。制度が適切に運用するように、要すれば、途中で詰まらないように気をつけて、中の情報をきちんと見ておきたいと思います。
 2点目のガバナンスの関係です。私自身は、社外取締役がいることで、執行側に十分な牽制効果があると思っております。労働組合は、勤務条件等について相当厳しいことを言ってきております。よって、そうしたことが、経営をしていく上で、ほかの企業と比べて決して弱いとは思っておりません。
 先ほどご指摘がありましたように、いろいろなステークホルダーがいることは、確かでございます。郵便事業をはじめとして、150年におよび地域に根づいた大きな事業で、社会のインフラ的な事業であるため、いろいろなご意見があり、監督官庁からもさまざまなご指摘をいただくことがございます。
 自ら不祥事を起こしてしまうと、外部からの声がたくさん出てまいります。これは自らまいた種のようなところがあります。そうした声は、むしろ経営をよくしていく方向につなげていくことが大事だと思います。制度的には、社外取締役、労働組合等には法律に基づいて与えられた権限がありますので、大事にしていきたいと思いますが、それ以外の人たちのご意見にも、きちんと耳を傾けていきたいと思います。日本郵政グループは、それだけの社会的な役割があるので当然の使命だという覚悟で、職務に当たっております。
 3点目は、金融機関として、また、民間企業でありますが社会的な役割を果たす企業として、このような不祥事があることは、全くお恥ずかしく、お粗末な限りです。関係の皆さま方に大変申し訳なく思っております。特に、局長や部長などの管理職の立場にある人間が、平然とそうした犯罪に手を染めることがございます。決して額の多寡の問題ではございませんが、大型の犯罪が、この時点でもあるということは、大変お恥ずかしく問題であると思います。厳格に対処するということは当然のことです。昨年、長野の佐久郵便局でも大型の被害が出る事件がございました。既に公表されているとおりでございますが、なぜ犯罪を起こした人間以外のチェックが効かなかったのか。一つひとつの犯罪を見ると、必ずそれに至る思いがございますし、犯罪に手を染めた人間が管理職の立場に就けてしまうということについて猛省をしなければいけないと思います。
 ご指摘のとおり、昨年管理職が関与した経済的な被害が発生している犯罪に、2億円を超えるものが出ています。これはそもそも犯罪であるため、言語道断です。そうしたことが今後起こらないような社員教育、仕組みとしての抑止の方策を考えたいと思います。
【記者】
日本共創プラットフォームについて質問がございます。ゆうちょ銀行が出資することを既に発表されていると思いますが、ゆうちょ銀行はどのようにこの日本共創プラットフォームに対して関わっていくことを想定しているのでしょうか。また、日本共創プラットフォームが投資する投資先に関して、ゆうちょ銀行がどのように議論に関わり、どのような役割を果たすことを想定しているのか、お教えください。
【社長】
日本共創プラットフォーム、略称JPiXについては、ゆうちょ銀行が他の出資者の出資額を合わせた額と同額を出資する予定で立ち上げから参画をしています。現在、どこまで検討が進捗しているのか、詳細は聞いておりませんが、ゆうちょ銀行としては、広く国民の皆さまからお預かりしているお金を、地方経済を活性化する案件に投じることで、各企業の再生に寄与していくということで、日本共創プラットフォームに参画することを決めたということです。
 ゆうちょ銀行は海外の運用で収益を上げておりますが、日本国内においても、特に地方の再生案件に深くコミットして、地方創生の役割を果たしていこうと考えております。当然のことながら、ゆうちょ銀行として、ただ単に地方創生だけではなく、収益を上げることが目的の一つになりますので、ファンドのように短期ではなく、長期にわたって企業に投資をすることで収益を上げて、ゆうちょ銀行の経営に寄与するものとしたいと思います。
 具体的には、昨年の暮れに、ゆうちょ銀行において関係者と細部を詰めていると報告を受けております。その後の進捗状況は、逐一フォローをしていませんが、ゆうちょ銀行の取締役会等でも、細部について今まさに検討しているところです。案件の選定については、ゆうちょ銀行として、JPiXの判断のプロセスの中でいろいろと意見は申し上げていくという関わり方になると思います。
 また、ゆうちょ銀行の社外取締役が、日本共創プラットフォームの社外取締役として経営に参画しております。これは、ゆうちょ銀行とは独立して参画されているものですから、ゆうちょ銀行の意向を反映させるということではありませんが、両社を兼ねている経済界の識者が、高い立場から、日本共創プラットフォームの今後の運営を見ていく体制を整えていると理解しています。
 今、ご質問があった点の細部は、検討中の部分と、今後決まる部分があると思います。私が聞いている限りでは、昨年12月の末に冨山和彦氏が記者会見をして、その翌日に最初の取締役会を開き、細部を詰めるとしていた予定は、今月に持ち越しているようです。詳細は承知しておりませんので、私からは、今申し上げた程度にさせていただければと思います。
【記者】
先日、ある郵便局で推進されている農業ビジネスについて取材をしてきました。地元の農家の方や農業関係者の方と郵便局との強い関係性を感じまして、深く感銘いたしました。今後の中期経営計画に向けて、農業団体や農協との連携等、農業ビジネスについてどのように考えていらっしゃるのか、伺えればと思います。
【社長】
農業といっても稲作中心のところ、果樹中心のところ、野菜、酪農、畜産など、地域によって形態が相当違います。今、各郵便局長の努力で郵便局単位でいろいろな取り組みを行っているところや、規模、範囲を広げて支社単位で農業団体と物販などを中心に連携をしているところがあると思います。
 私は、新しいビジネスを進めていく上で、農業との連携は、一つの材料になり得る、しかもかなり有力なものに育てられるだろうと思っています。今、農業については、分野にもよりますが、酪農、乳製品なども含めて、1戸当たりの所得が相当上がってきております。稲作はまだ難しい状況ですが、それ以外は、付加価値の高い果樹をはじめ、施設園芸、花、乳製品等、農業というものが非常に変わってきております。さらに連携し多様なビジネスができないのかという意識を持つことで、次期中期経営計画の新規ビジネスや、物流の強化に取り組みたいと考えております。きちんと形になれば発表させていただきます。私も農業団体の方とお会いして、勉強会をすることについて、今動いているところです。
 今のご質問ですが、今既に行われているものをより広げて、日本郵政グループ、農業者双方にメリットがあるものをきちんと仕掛けていきたいと思います。詳細は、今後、決まり次第随時発表していきたいと思います。
【記者】
先ほど物販の話がありましたのでお伺いいたします。物販事業について、中期経営計画の基本的な考え方には特に触れられていませんでした。この点について、現時点でどのような展開をお考えなのか教えてください。年々営業収益が下がってきている現状で、現場の社員の方からも、実需のない販売実績も上がっているとの声もあります。日本郵便としても、2020年度から21年度にかけて、いったん販売目標を設定していない状況だと思いますが、今後の物販事業について、どのような展開を考えていらっしゃるのか教えてください。
【社長】
物販については、営業目標をつくり、数字だけで現場を駆り立て、お客さまにそれほど喜ばれないものを無理に販売することはしたくありません。さまざまな不祥事があり、販売目標を設定しないことになりました。物販についても、もう一度考え直してスタートをしなければいけない部分があると思います。これまでの営業の中で供給者目線のような形で行われている部分がなかったか、事業者や最終消費者のニーズに基づいたものが物販のルートに乗ってきているのかどうかということを考えて、物販の展開をしていかなければいけないと思います。そうした意味で、変えるべきところは大いに変えて、取り組むということが必要だと思います。
 世の中の全体を見ると、特に今回のコロナ禍においては、各地にある名産品など、あまり知られていないものを、もう一回発掘したいと思います。そうしたものを手にしたいというニーズは、むしろ広がってきていると思います。日本郵便としてどのようにコミットしていくのか、そのために、そうしたものをお作りになっている団体にどれだけ入っていけるか等にもよると思いますが、販売目標で現場が疲弊することのない、正常な形で営業が行われる物販を展開していく必要があると思います。
 次期中期経営計画の中で、どの程度記載するかについては、今後の検討ということになります。
【記者】
物販事業に関して、現状、子会社である郵便局物販サービスが担っていると伺っています。社員数も約600名とあります。こちらに関して、いま一度スリム化をすることや、日本郵便で内製化するなど、体制の転換を検討されているのでしょうか。
【社長】
その点について日本郵便から報告を聞いたことはございません。
【事務方】
今のところ、ご質問をいただいたような形で、物販ビジネスを見直すことは検討しておりませんが、全般的な見直しは不断に行っているものです。引き続き検討してまいりたいと考えております。
【記者】
最後に、物流事業との関連について、先ほど増田社長がお話ししていらっしゃいましたが、その点について、現状考えていらっしゃること等を、もう少し具体的に教えていただけると幸いです。
【社長】
今、この段階で具体的に申し上げるものを持っておりません。新たに取り組むようなものについては、次期中期経営計画に委ねておりますし、中期経営計画の前に実現できるものがあれば、随時発表してまいりますけれども、今、この段階で具体的に公表できるものはございません。
【記者】
確認ですが、先ほど、日本共創プラットフォームの話で、投資先の選定にゆうちょ銀行として携わるというご回答があったと思います。ゆうちょ銀行は、出資はされますが、種類株主ということで議決権比率はゼロ%だったと思いますが、投資先の選定には積極的に携わっていくという理解で間違いなかったでしょうか。
【社長】
投資先の選定への関わり方について、ゆうちょ銀行は、さまざまな地域についての知見を持っていますので、議論の場に入って、きちんと意見を申し上げるということは、当然ながらしていきます。誰かが全て決めた投資案件を丸のみするということではなく、ゆうちょ銀行としてもきちんと意見を言うことになります。それがどのように取り扱われるかは、まさにそうした場での議論次第だと思います。
 恐らく、意思決定は取締役会で行うことになり、執行側の社長が最終的に執行していくものと思います。通常の場合、委員会など検討する場が多くあり、その中でどのような案件に投資をするのか、実務者同士でいろいろと議論をすることになると思います。ゆうちょ銀行はそうした場に入り、ゆうちょ銀行の持つ知見を申し上げることになると思います。
【記者】
先ほど、回答がありました社内犯罪の件です。最近の手口を見ていますと、例えば、窓口営業部長さんが防犯カメラに明らかに映っていながら金庫破りをしたり、顧客から預かったわずか2,400円の預金を懐に入れるなど、贅沢をするために大金を欲したというよりは、せっぱ詰まった生活の事情があるのではないかと勘ぐってしまうケースがあります。直接取材をしているわけではないので、想像なのですが、犯罪自体が絶対にいけないことは間違いないのですが、そもそも、なぜ社員が会社や顧客のお金に手をつけてしまうのかということについて、会社としての見解や要因分析があれば教えてください。
【社長】
ご指摘いただいた点について、個々に事情は異なると思います。これまでも重大犯罪は公表してきたかと思いますが、今は全ての不祥事について、原則、警察の捜査に支障ない限りは公表するようにしておりますので、公表件数は数年前に比べると随分多くなっていると思います。
 事情については多様だと思いますので、一つにまとめて、どういうことかということは申し上げにくい状況です。いずれにしても、あってはならないことですし、お客さまのお金をお預かりして、きちんと運用するということが、ゆうちょ銀行の、あるいは郵便局の役割ですので、本当に申し訳なく思います。再度きちんと教育をして、しっかりと出直しをするとしか申し上げられません。
【記者】
かんぽ生命の件で、各社員の収入が変化していると思いますが、そうしたことが一つの動機になる可能性はないのでしょうか。
【社長】
いわゆる営業手当が入らないから、犯罪に手を染めるという案件は、私のところには1件も報告がございません。恐らく、そうしたことで起きた犯罪ではないのではないかと思います。犯行に至った社員の部署を見ていると、今ご指摘があったようなケースで犯罪に手を染めたというものではないと考えております。
【記者】
中計とも関連してくると思いますが、郵便局やゆうちょ銀行直営店で長期積立投資の浸透を見据えた現場再生の取り組みに向けて、日本郵便が40%出資されているセゾン投信の活用をどのように考えていらっしゃいますか。
【事務方】
具体的な活用について新たに検討しているということは聞いておりません。担当部署に確認し、お話しできることがあれば回答したいと思います。
【記者】
中計の議論の中で、郵便局ネットワークの将来像に関して、新たな方針はありますでしょうか。
【社長】
大変大きな観点からのご質問です。郵便局ネットワークを活かして、新たなサービスをその中に取り込んでまいります。DXを本格的に展開していくことで、より多くの人たちをその中に入れ、リアルのネットワークで深掘りをしていきます。郵便局ネットワークを今ご利用いただいている方は、少しずつ高齢層にシフトしていますが、若い人にもご利用いただけるようにしたいと思います。物流でいうと、郵便局ネットワークは、ラストワンマイルをお届けすることで大きな役割を果たしています。これはどれだけデジタル化が進んでも、ロボットなどのテクノロジーでは代替できないので、人間が丁寧にお届けすることになります。日本郵便や郵便局ネットワークが持っているこれまで培った価値と、デジタル技術を使うことで、新しいお客さまをどんどん取り込んでいくことが、今回の中計において、ある種の肝となります。
【記者】
今回、郵政創業150年のロゴがつくられたということですが、郵便は150年でも、貯金や保険はそうではないと思います。郵便ではなく郵政創業とされた意義を教えてください。
【社長】
おっしゃるとおり、150年前に郵便事業が始まったものですが、郵便事業が、グループの中ではやはり一番の中核であり、それに必要なものとして郵便局ができ上がり、遅れて郵便貯金や簡易保険というものができ上がってきました。
 グループができ上がった、その一番原点である1871年を捉えて、日本郵政グループの創業とさせていただきました。グループ全体で150年の重みをかみしめていきたいと思っています。
 日本郵政グループ全体の150年の姿を外に伝えていく、そして社員もその意義をきちんと考えていく上で、郵便事業がスタートした1871年からの150年の重みを考えていただくことが一番ふさわしいのではないかということで、郵政創業150年と呼んでいるものです。
【記者】
郵政民営化委員会の岩田委員長は、ネットビジネスで成功している企業を事例に挙げ、金融2社の株式を売ることは必ずしもよいとは言えないと提言しています。民営化委員からは、金融2社の株式を50%以下にする場合のビジネスモデルを考えてもらいたいという要望もあります。民営化して10年以上がたち、難しい課題と言って、いつまでも後ろ延ばしにすることはできない時期に来ていると思います。金融株を売却するならば、配当の減少による収益減を補完するための実効性あるビジネスモデルが求められます。難しいのであれば、それを前提に今後を考えるべきだと思います。
 日本郵政グループの過去と現在の実態を踏まえ、岩田委員長の提言を増田社長はどのように受け止めていますか。
【社長】
間もなくになるのではないかと思いますが、3年ごとに民営化の進展について検証して、郵政民営化委員会としての意見を表明することになっています。もし岩田委員長が今ご指摘いただいたようなことについてのご意見を強くお持ちということであれば、郵政民営化委員会の中でそうした意見が反映されることになるのかもしれません。私どもとしては、郵政民営化委員会としての意見をきちんと受け止めて、経営を行っていきたいと思います。
 また、岩田委員長個人としてそうしたお考えをお持ちなのかどうかということですが、私が委員長から直接お聞きしているものではございません。
 以前は、100%まですぐに売却するようにということもお聞きしたことがございます。最近のさまざまな諸外国の事業をご覧になって、また深くお考えになっている部分があるかと思いますが、現在の法律では、できるだけ早く金融2社の株式を売却することになっておりますので、私どもは法律に則り、できるだけ早く金融2社の株式の保有割合を50%程度まで下げたいと思います。その後も株式の売却に向けて条件を整え、売却を進めることが必要だと思っております。そうした考え方の下で、これからの経営を進めていきたいと思います。
【記者】
1円切手の新規の発行は、いつ以来になるのでしょうか。前島さん以外では、初めてなのでしょうか。
【事務方】
今の前島密の切手は1951年発行でございます。それ以後、ずっとこの肖像画の1円切手を販売し続けているという状況です。
【記者】
1円切手以外、84円切手やグリーティング切手も含めて、ほかの切手はいろいろと出ていると思いますが、1円切手に関しては、本当に初めてという理解で良いのでしょうか。
【事務方】
それ以前も1円切手は発行されておりますが、1951年以降は初めてということになります。
(※記者会見における発言及び質疑応答をとりまとめたものです。その際、一部、正しい表現・情報に改めました。)