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注目選手インタビュー Vol.9 (宮食 行次選手)

注目選手インタビュー
Vol.9 (宮食 行次選手)

東京2020に向けて日本郵便が注目する選手をご紹介します。
9人目は、東京2020パラリンピック ゴールボール男子日本代表に内定している宮食行次選手です。

宮食 行次(みやじき こうじ) ゴールボール(男子)

宮食 行次(みやじき こうじ)
生年月日 1995年3月20日
出身 大阪府
身長 182cm
ポジション レフト
経歴 子供の頃からスポーツが好きで、小学校、中学校では野球、高校ではソフトボールに取り組んでいたが、進行性の網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)により、視力の低下が進んだため、高校卒業後は盲学校に進学。2017年にゴールボール人材発掘イベントに参加して競技に出合い、22歳から本格的に競技を始める。競技を始めてわずか2年で日本代表に選出され、東京2020パラリンピックにも出場が内定している。

Q:ゴールボールを始めたきっかけを教えてください。

A:盲学校在学中に、フロアバレーボールという障がい者スポーツに助っ人として参加したのですが、それがとんとん拍子で全国大会に出場できたんです。その大会会場にたまたま来ていたゴールボール関係者に声をかけられ、ゴールボール人材発掘イベントに誘われて参加したことからゴールボールに出合いました。
そのイベントで素質があると判断されたのか、日本代表の合宿などに参加できるようになり、どんどんゴールボールにのめりこんでいきました。

Q:地元の盲学校を卒業し、現在は東京に来て活動されていますが、どのような経緯があったのでしょうか?

A:実は人材発掘イベントに参加する前から一人でゴールボールの練習をしていたのですが、なぜか「この競技で日本代表になれるのではないか」という自信があったんです。今思えば完全に過信ですね!
なので、まだ発掘イベントに参加する前にも関わらず、就職の面接で「僕は将来ゴールボールでパラリンピックに出るので、配慮をしていただける会社を探しています。」と豪語したところ、現在の就職先の方にぜひ来て欲しいと返事をいただけたので、東京の会社に就職をすることになりました。その時は、あまりお金も持っていなかったので、地元からヒッチハイクして上京したんです(笑)

Q:ヒッチハイク!それはすごいですね。ご家族は心配されなかったのでしょうか?

A:家族には、上京する1週間前くらいに「就職先が決まったから東京に行く」とだけ告げました。反対意見もなく送り出してくれたのですが、実はこの時点ではまだ日本代表選手になるという確信がなかったので、僕がゴールボールをやっていることは家族には秘密にしていたんです。なので、両親は日本代表として活躍している僕のニュースをインターネットなどで見つけると、初めは不思議に感じていたようでした。最近では試合の応援にも来てくれるので嬉しいですね。

Q:現在は日本代表として活躍されていますが、最初にゴールボールに触れたときはどのような感覚だったのでしょうか?

A:なんでみんなこんなに大変な競技やっているんだろうと思いました(笑)
守備の時に硬いボール(公式球は1.25kgある硬いゴム製の鈴の入ったボール)を体で受けるので痛いんですよ。今でも痛いと思うこともあります。なので、競技を始めたときは「怖い、痛い」という感覚しかなかったですね。
ゴールボールは、選手全員がアイシェードをして視界を遮るスポーツなので、それに慣れてボールの鈴の音や選手の足音など、音の感覚がつかめるようになってからは、ようやく怖さが和らいできました。

Q:「音の感覚」というお話がありましたが、その感覚を研ぎ澄ますためには苦労があったのではないでしょうか?

A:そうですね。僕は弱視なので、普段の生活で物を見ることはできるのですが、アイシェードをすると全く見えなくなるので、普段よりも色々な音が聞こえてくるようになるんです。競技に取り組んでいくうちに、集中力を高めることで、色々な音の中から、ボールの鈴の音を聞き分けることができるようになってきました。逆に集中力が散漫になると、観客や審判の声が気になって失点に繋がってしまったりします。やっぱり集中を上手く研ぎ澄ますことができた時に、いいプレーが生まれることが多いですね。

Q:集中力に左右される競技なのですね。試合後は凄く疲れるのではないですか?

A:めちゃくちゃ疲れますね。ルール上、試合時間は、一試合24分(前後半12分)なのですが、タイムやボールアウト時などプレー間の時間を含めると1時間ほどあり、その間アイシェードを着けてずっと集中力を保っていないといけないので、試合後はぐったりしています。

Q:宮食選手にとってゴールボールの魅力とはどんなところでしょうか?

A:僕は視覚障がいがあるので、いつかは大好きなスポーツができなくなってしまうという不安を子どものころから心のどこかに抱えていました。それでもスポーツは何かやりたいという想いがあり、盲学校で様々な障がい者スポーツに触れる中で、ゴールボールは視力がなくてもできるスポーツですし、視力差に左右されず、全員がアイシェードをして平等な条件で戦えるスポーツということが魅力だし、僕が夢中になれた要因だと思います。
もっと競技の魅力や楽しさが広まり、視覚障がいが無い晴眼者の方にもゴールボールに挑戦いただきたいなという想いもあります。競技人口が広がれば、競技レベルも向上するんじゃないかなと思うので。そのためにも、まずは僕ら選手が頑張って、ゴールボールの知名度を上げていきたいです。

Q:宮食選手のプレーの特徴を教えてください。

A:もともと野球をやっていたこともあり、ボールをリリースする指先の感覚を活かした攻撃が得意です。特に「バウンドボール」というショットが強みです。ルール上、指定のエリア内で2回以上ボールをバウンドさせてから相手ゴールを狙う必要があります。ルールに沿った投球をしようとすると、ボウリングのように転がして投げるグラウンダーの投球の方が簡単なのですが、僕はなぜか最初から、あえてボールを弾ませるバウンドボールしか投げられなかったんですよ。
日本代表合宿に参加し、当時は「質の高いバウンドボール」を投げられる選手がいなかったことから、周りの選手やコーチにバウンドボールを極めることを薦められ、技に磨きをかけてきました。

バウンドボールはただ力任せにボールを床に叩きつければ良いというものではなく、しっかりと回転をかけないと、空中でボールの鈴の音が鳴ってしまいます。世界レベルの選手のバウンドボールは、鈴の音はほとんど聞こえず、ボールのバウンド音しか聞こえません。この「質の高いバウンドボール」の習得が難しかったです。試合を見る機会があれば、僕のバウンドボールにぜひ注目して見ていただきたいです。バウンドボールでは日本で一番だと自負しています。

Q:日本代表チームの強みはどのようなものでしょうか?

A:代表選手同士が日ごろからよくコミュニケーションをとっているので、信頼関係が築けていることがまず強みだと思います。ゴールボールは信頼関係が大事なスポーツで、守備の時にチームが3人一体となって動くことが何よりも重要です。そのため、連携を活かした守備面は海外チームに勝っているところだと思います。
また、コート上の3人が全員で足音を立てたり、投球しない人が足音を立てたりなど、攻撃時に相手を音でかく乱する「フェイク」という小技をチームとして磨いています。海外のチームにはどうしても体の大きさやパワーで劣ることが多いので、フェイクなどの技術力があることも日本チームの強みだと思います。

Q:東京2020パラリンピックに向けて、現在どのような心境でしょうか?

A:今はコロナ禍で日本全体が落ち込んでいるという状況ですが、こういう時だからこそ僕は「スポーツの力」を信じています。
過去、東日本大震災があったときに、被災地の野球チームが日本一になって地元の人たちに感動を与えるということがありました。今回も新型コロナウィルスという大きな困難があるからこそ、東京2020大会では世界中の選手たちが自国の人たちを勇気づけたいという想いから、いつも以上に力を出すと思いますし、僕たち日本人選手も開催国としてその想いが強いので、「スポーツの力」を信じて、大会本番ではよりハイレベルな戦いをして、日本を始め世界中の人に感動を与えることができるよう貢献していきたいと考えています。

Q:東京2020パラリンピックの目標を教えてください。

A:もちろん僕たちは東京2020パラリンピックの金メダルを目指して練習に励んでいますが、見ている人たちに何か伝わるものがあればと思っているので、パラリンピックに限らず、どの試合でも「最後まで諦めない姿勢」や、「全力でプレーすること」は意識をして挑んでいます。

Q:最後にファンの皆さんへメッセージをお願いします。

A:東京2020パラリンピックでは、ゴールボールを初めてご覧になる方も多いと思います。アイシェードをしてボールを投げて、相手が投げ返して、という単純なスポーツかもしれませんが、サッカーのPKをずっとやっているような緊張感のあるスポーツですので、ゴール前の攻防をドキドキハラハラしながら楽しんで見ていただけたらと思います。また、ゴールボールは音の駆け引きのスポーツなので、ルール上、観客はあまり声援を送ることができませんが、プレー中に自分のチームへの声援を上手く利用して得点を取ったりしていますので、そこは日本開催の地の利を活かして、会場に来られる方には是非日本チームにたくさんの声援を送っていただけると嬉しいです。これからもゴールボールの応援よろしくお願いします!