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日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 長門真貢

皆さまには、平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

2017年度においては、親会社株主に帰属する当期純利益は、4,606億円と前・中期経営計画の最終年度の目標4,000億円を上回るものとなりました。

本年5月に、新グループ中期経営計画「日本郵政グループ中期経営計画2020」を発表しました。歴史的低金利、逼迫する労働需給という厳しい経営環境のもと、以下の方針を掲げています。

郵便・物流事業においてはeコマース市場の成長に伴い、今後も拡大が見込まれる荷物分野への経営資源のシフトを進めてまいります。ゆうちょ銀行では、投資信託販売の拡大やATMネットワークの拡充などによる役務収支増を目指しつつ、運用の高度化・多様化に取り組み、厳しい環境を打ち返していきます。かんぽ生命では、保障重視の販売強化、募集品質の向上により、保有契約年換算保険料の反転・成長に取り組みます。また、不動産事業での共同事業参画、収益物件取得などの新たな収益源の開拓、既存事業にとらわれない幅広い分野での資本提携やM&Aの検討も行ってまいります。

2018年度からの3年間を、厳しい経営環境のなかでの安定的利益の確保と、持続的成長に向けたスタートを図る期間と位置づけ、「チームJP」として全社員一丸となり、これまで以上に、お客さま・社員・株主の皆さまなど、すべての方に選ばれる会社へと発展をしていきたいと考えております。

そして、厳しい経営環境下での減収・コスト増を、各種施策により跳ね返し、2020年度のグループ連結当期純利益は、2017年度の実質的な利益を上回る利益水準を確保することとし、4,100億円+αを目指します。

2021年に迎える郵政事業創業150周年に向けて、「そばにいるから、できることがある。」のスローガンのもと、お客さまのご期待に応えられる「トータル生活サポート企業グループ」への成長・発展を遂げるよう、挑戦を続けていきます。

皆さまにおかれましても、引き続き、変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申しあげます。

日本郵政グループの存在意義

日本郵政グループがどういうグループであるか、なぜ長きにわたり存続できたのか。そこに我々の存在意義があると考えています。

日本の一人当たりGDPは、20年前は世界3位だったのが、今は25位くらいになっていますが、豊かさを示す指標は一人当たりGDPだけではありません。例えば、ブータン王国のように、国民が享受している幸福度が高ければ、心豊かに人生を送ることができると考えています。日本郵政グループは、そういうところに貢献できるポテンシャルを持っています。我々は147年前に郵便を配達し始め、4年後に貯金を開始し、その後、保険を売り出しています。これらはユニバーサルサービスとしての基本部分ですけれど、それ以外にも心の豊かさに貢献できることがあると考えています。企業は福祉活動ではありませんから、相応のコストをかけたらリターンがないと、継続的に業務を続けられませんが、お客さまに身近で寄り添い、何よりお客さまと対面にいることこそが重要だと考えています。

現在の社会に対しても、お客さまに密着した郵便局という強みを生かしていくことで、いろいろな「機会」が見えてきます。

例えば近年、Fintechが盛り上がりを見せていますが、我々はFintechに加え全国に郵便局という窓口があります。最新テクノロジーと地域密着の窓口の融合により様々なアレンジメントが考えられるわけです。我々は非常に恵まれた環境にあると考えています。

他にも、「貯蓄から資産形成」へ向かう流れがあります。個人の金融資産は約1,830兆円ありますが、投資を始めている人はまだ少なく、投信残高は約70兆円しかありません。まだ圧倒的に少ない。投資信託をご紹介できる郵便局窓口は全国津々浦々約1万8千局あり、お客さまの身近な金融機関としてこの流れに貢献できるグループだと考えます。

昨今の他社の経営層や機関投資家との話題はESGが中心ですが、そもそも、日本郵政グループは、ソーシャルカンパニーとして、以前よりESGに取り組んでまいりました。ESGの取組み自体は、本来は社会の中の企業として使命を果たすための大事な行動なのです。企業も頑張って社会に貢献して、評価していただく。もちろん収益を上げながらですけれど、社会に対してきちんと留意できない会社はアウトになってしまいます。日本郵政グループは、今後もソーシャルカンパニーとして、何をやるのかと問われています。その問いに答えるために、努力し続けていかなければなりません。

日本郵政グループを取り巻く課題

一方で、今後起こりうる「脅威」にも立ち向かわなければなりません。

グループの事業はまだまだ人が担っている部分が多くあります。持続可能なパフォーマンスを上げていこうとする際に、大きなテーマとなってくるのは、人口の減少です。かつて明治維新の頃には人口は約3,300万人でした。150年かけて、約1億人増加しました。そしてこれからは増えた時と同じスピードで減っていくと言われています。昨年生まれた赤ちゃんの数が100万人を切ったわけです。日本郵政グループには、約40万人の社員が働いています。勤続年数を40年と仮定すると、ラフに考えて毎年1万人が辞める。その分を補うには、毎年1万人を採用しなければならない。今後、労働供給力が低下していく中で、今までの水準で雇用し続けることは大変なことです。また、これから人手不足で人件費は上がってくるわけです。相当真剣に取組み方を考えないと長期的に厳しい局面に追い込まれてくると感じています。

もう1つ、日本郵政グループがおかれている長期の課題は、郵政民営化法が定めるように、最終的に収益貢献度が高いゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式を全部売却することになり、今後連結ベースで両社の収益を反映できなくなることです。何らかの新しい収益源を作っていかなければなりません。その方法は、M&Aかもしれないし、出資かもしれないし、業務提携かもしれません。その一つの取組みとして、2018年4月に新しく日本郵政不動産を立ち上げました。同社のパフォーマンスが上がってきて、成果が出るのは10年ぐらいかかります。今から準備していかないとだめなのです。不動産という業務をコアに据えて、これを大事な仕事にするという経営メッセージです。何が成功するか分かりませんがこのような動きをたくさん行う必要があると考えています。

日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 長門真貢

前中期経営計画の振り返りと2020年度に向けて

日本郵政グループは、2018年5月15日に、新中期経営計画(2018~2020年度)を発表しました。

まず、前中期経営計画(2015〜2017年度)の振り返りを行いたいと思います。前中期経営計画では、事業の「成長・発展を遂げる」ため、次の5つの事業戦略を掲げていました。

1つ目は、「郵便・物流事業の反転攻勢」。eコマース市場の拡大による荷物量の増加基調や、ゆうパックなどのコンビニ受取サービスや「はこぽす」の設置拡大などの受取利便性向上施策により、2017年度でゆうパック個数は8億個を超え、目標としていた6.8億個を達成しました。

2つ目は、「郵便局ネットワークの活性化」。主要三事業以外での郵便局ネットワークの活用に関して、提携金融サービスではがん保険の取扱局を約2万局に拡大、また、物販事業では商品ラインナップを拡充させ、順調に収益を拡大させました。

3つ目は、「ゆうちょの収益増強」。投資信託等の資産運用商品の商品・サービスの充実により、販売額及び残高を拡大させるとともに、ATM設置を拡大したことにより、役務取引等収支が拡大しました。

4つ目は、「かんぽの保有契約底打ち・反転」。新契約月額保険料500億円という目標を2015年度に前倒しで達成し、2016年度は更に拡大しました。2017年度は、保険料改定の影響により、新契約月額保険料は減少しましたが、保障重視の販売強化の取り組みにより、保障性商品の販売が増加しました。

5つ目は、「収益拡大を目指した資金運用の高度化」。金融2社において、資産運用の高度化・多様化を推進し、ゆうちょ銀行においてはサテライトポートフォリオ(SP)残高60兆円を2015年度に前倒しで達成しました。加えて、国際分散投資を推進し、更にSP残高を拡大させました。

こうした取り組みの結果、2017年度の親会社株主に帰属する当期純利益は4,606億円と、前中期経営計画の最終年度の目標4,000億円を大きく上回ることができました。

しかしながら、歴史的な超低金利環境の長期化など、日本郵政グループを取り巻く環境は非常に厳しく、おそらく、これからの3年間が最も厳しいものとなると予想しています。

その中で我々は、郵便局ネットワークを活用し、ユニバーサルサービスを生かしながら様々な取組みで収益を上げていくのだという気持ちを盛り込んだのが、新中期経営計画であり、具体的には以下の方針を掲げています。

1つ目は、郵便・物流事業の方針です。郵便物数の減少が続く一方、宅配便市場はeコマース市場の成長に伴い、今後も拡大が見込まれます。そこで、労働力確保難や人件費単価上昇への対応も含め、郵便の集荷担当者を宅配便の配達にシフトするといった限られた社員リソースの流動化等を進めてまいります。また、荷物の小型化の促進等により、我々が得意とする郵便受箱投函を進めてまいります。

2つ目は、金融窓口事業の方針です。郵便局に求められる役割は、地域に応じて異なることから、従来のように、全国一律で商品・サービスを提供するのではなく、必ず実施すべきユニバーサルサービスに加え、地域ごとに異なるニーズに応じた商品・サービスを追加的に提供する、個性・多様性のある郵便局展開を推進してまいります。大切なお客さまとの接点である郵便局ネットワークを引き続き活かした取組みを行っていきます。

3つ目は、国際物流事業の方針です。経営改善策を着実に実施するとともに、JP・トールのシナジー強化による国内のコントラクトロジスティクス展開を図るなど、経営資源の選択と集中による収益の向上を目指します。

4つ目は、ゆうちょ銀行の方針です。ATM等による手数料収益や投資信託残高の一層拡大を目指すほか、運用の高度化・多様化に取り組み、リスク性資産と戦略投資領域を拡大させ、厳しい環境を打ち返していきます。

5つ目は、かんぽ生命保険の方針です。保障重視の販売強化、募集品質の向上により、保有契約年換算保険料の反転・成長に取り組みます。また、ICTを活用したサービスの向上、事務の効率化による経費削減も進めてまいります。

そして、不動産事業の展開については、2018年4月に日本郵政不動産を設立しましたが、グループ保有資産の開発をより効果的に行うとともに、共同事業参画、収益物件取得などにより新たな収益源を開拓していきます。

また、資本提携・M&Aについても、「トータル生活サポート企業グループ」としてグループの成長につながるよう、幅広い分野で資本提携・M&Aを検討し、2020年度までの3年間で数千億円規模の投資も視野に入れ利益貢献を目指します。

これらの方針により、日本郵政は1株当たり50円以上で安定的な株主配当の実施を目指します。

この新中期経営計画により、厳しい環境の中で、安定的な利益の確保と持続的な成長に向けたスタートを図ります。引き続き「トータル生活サポート企業グループ」を目指して、グループ一丸となって取り組んでまいります。

日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 長門真貢

経営における重要な「人材」と「教育」

前述の計画を遂行する上で、特に重要だと考えているのが「人材」と「教育」です。

時代は変わっていく、お客さまも変わっていく、それを感じ取り、カスタマイズすることが大事なのです。お客さまが何を求めているのか、どの方向に時代は動いていこうとしているのかを見極めて、組織としてそれにすぐ適応できるスピード感を持つことが求められています。どんどん世の中のニーズが変わってきている中、もちろん最初は新しい動きに精通した人材がいた方がいい。

ただし、人材がいないから新しい仕事をやらないというわけにはいきません。そこにニーズがあるならば、たとえノウハウがなくても「やるぞ」というのが、私たちのアプローチの方法だと考えています。時代が変わる、それに対して自分も変わらなければいけないと覚悟することにより何でもできるようになるだろうとも考えています。新たな人材の導入と社員の教育の両方に取り組んでいく必要があると考えています。

また、人材を生かすために経営者として意識していることがあります。それは誰から見ても「誇れる会社でありたい」ということです。

「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」という小説家のチャンドラーの言葉があります。企業は、世の中に尊敬されるような組織にならないといけないと考えます。特に上場企業になったからには、相応のパフォーマンスを上げるような体力がないと、誰も尊敬してくれません。一方であの企業すごいよね、というふうにもならないといけません。幸い、日本郵政グループには、公の機関であった歴史があり、全国に郵便局ネットワークもあります。たとえ地方に元気がなくなってきたとしても、我々は撤退せずに最後までお客さまに奉仕するぞと覚悟している組織です。

私自身、振り返りますと、お金儲けのためではなく、天下国家をみんなで論じて、国のためにいろいろ尽くすことができると考え、大学卒業後は当時の日本興業銀行へ入行しました。だから、個人的には巡り巡って日本郵政グループのように国のために必要な組織に戻ってきたな、という感慨はあります。運命的な出会いなので、一生懸命にグループの将来のためにできることをやろうと考えています。for Japanにいくらか貢献できるというのは、個人的にはうれしいことです。

もっと真に尊敬される会社になるには10年20年かかるでしょう。私の任期中はもちろん、続く若い人たちに襷をつなげて尊敬される会社を作っていきたいです。郵便局が好きで入社している社員が大勢います。そういう社員の志や夢が叶えられるような環境を作るのが私の責任だと考えています。

日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 長門真貢

もう一つ経営にとって重要な「一体感」

また、日本郵政グループの中長期的な経営を考える上で、 重要な要素が「一体感」です。

日本郵政グループは4社で一塊(ひとかたまり)ですが、4社体制で法人体系が分かれているとなかなか難しいこともあります。3社が同時に上場したこともあり、気をつけないと遠心力が働いてきます。経営の仕掛けとして、グループがひとつのチームとして動くことを絶えず言い続ける必要があります。そのために「チームJP」というスローガンを作りました。グループ全体でシナジーを考えるためのキャッチフレーズです。

人事異動の際には現場と本社をもっと混ぜて欲しいと各社に頼みました。ずっと本社にいそうな人を現場に派遣して欲しい。人事が一番の経営メッセージだから分かりやすいと考えています。「チームJP」を成し遂げるためにさまざまな方法で「チームJP」を発信していかなければいけないと考えています。

結び~ステークホルダーの皆さまへ

日本郵政グループには様々なステークホルダーがいらっしゃいますが、そのすべての皆さまに幸福であってほしいと考えています。株主のためには、上場企業として、株価を上げ、配当をきちんと払えるようにしなければいけません。また、社員に対しては、給与水準と報酬水準をしっかりとしていくほかに、企業として、ダイバーシティ、介護、育児の課題を考えなければなりません。また、女性登用のみならずLGBTの差別や偏見に気を配らなければなりません。そうなると、クオリティー・オブ・ワーキングライフが必要なわけです。社員が幸福に出社してくれるような環境を整えたいですね。それぞれのステークホルダーが幸福になるように、「チームJP」として、みんなで頑張ろうということです。これから来る新入社員に、あの会社に絶対入りたいと言われるような企業になることが目標です。

日本郵政株式会社
取締役兼代表執行役社長

長門 正貢