地域とともに歩む3x3クラブ

2万4千もの郵便局を全国に展開する日本郵政は、局が位置する地域との関係が深い。それは3x3のクラブも同様で、地域との関わりをベースに様々な活動を行っている。ここでは地域との活動が活発な3つのクラブを取り上げ、どのように地域との関係を深めているかを紹介していく。さらに日本郵政が3x3をはじめとするスポーツをどのようにサポートしているのかもあわせてレポートする。

TOKYO DIME,SANJO BEATERS,TRYHOOP OKAYAMA,日本郵政の取り組み
地域とともに歩む3x3クラブ バスケの聖地"渋谷"を拠点に日本の3x3をリード~TOKYO DIME

何のためにこのチームがあるのか
というビジョン

TOKYO DIMEは2014年の3x3国内プロリーグ設立に伴って誕生し、常に3x3シーンの先頭を走り続け、日本を代表するチームと言っていい。

オーナーを務めるのは3x3だけでなく5人制でも現役選手の岡田優介とお笑い芸人の麒麟・田村裕大西ライオンの3人。公認会計士や日本バスケットボール選手会会長など当時すでに多数の肩書を持っていた岡田は、チーム設立の打診を一度は断っているが、再オファーを受けて「3x3の普及や発展は、バスケットボールの発展に軸足を置いている僕自身の活動の趣旨にも沿う」としてTOKYO DIME設立に動いた。

自身が選手である岡田は、「選手に寄り添った経営をしたいという想いがあって、何のためにこのチームがあるのかというビジョンを落としこんだ」と語る。設立時からチームの理念を確立した結果、実力のある選手がその理念に共鳴して集結。それがチームの好成績を生んでいる。

「DIME」の名を冠するチームは他にも女子チームを含めて3チームある。岡田は「こういう展開になるとは思っていなかった」と言うが、「やっているうちに競技全体の課題が見え、チーム経営の大変さに気づくことも多くなった。その中で『新しくチームを作りたい』という相談が僕のところにもくるようになったんです」と規模拡大の理由を説明する。

大阪府が拠点のOSAKA DIMEはまさにその相談から設立に至り、岡田が青森県八戸市で実施した講演会などがきっかけで生まれたHACHINOHE DIMEはTOKYO DIMEでアドバイザーを務めていた2人の人物がオーナーに就いている。理念を共有する中、OSAKA DIMEは新規事業の若年層向けスクールに多くの申し込みがあり、HACHINOHE DIMEに関してはメディアで取り上げられることも多く、地元での認知度は最も高いとのこと。地域に根差す活動が実を結び、「DIME」の名は着実に浸透している

熱意が少しずつ伝わって
地域の人に響いていった

TOKYO DIMEの拠点は東京都渋谷区。1964年の東京オリンピック以来あらゆるカテゴリーの試合が開催されてきた国立代々木競技場体育館があり、バスケットボールとは縁の深い街だ。何より大きな理由となっているのが、岡田が青山学院大学で4年間を過ごし、その近くでチーム設立前の2012年から2019年までスポーツバーを経営していたこと。「DIME」というチーム名もその店名に由来する。

ただ、最初からすべてがうまくいっていたわけではない。渋谷という大きな街に対し、いきなり派手なことをやるのではなく、地道に取り組んだことがTOKYO DIMEの成長に結びついたと岡田は言う。

「最初は相手にされなかったんですが、めげずに行政に挨拶に行くことなどをコツコツと重ねてようやく認知されてきた。ここでやると決めたからには腰を据えて、やれることをやっていこうとしたことで、熱意が少しずつ伝わって地域の人に響いていったのかなと感じます。バスケットボールだけでなく、社会的な観点からももっと渋谷を盛り上げて、いろんな人の役に立っていきたい」

渋谷という街の規模に臆することなく成長を続けるTOKYO DIME。3x3のリーディングチームとして、今後の活動からも目が離せない。

地域とともに歩む3x3クラブ 「半農半バスケ」で新潟から世界へ~ SANJO BEATERS

農場との兼業でプレーをサポート

日本にはプロと銘打った3x3のリーグが存在するが、完全プロとして活動している選手は少数派。多くの選手は他に仕事を持つか、学業と並行してプレーしている。その中で、チームとして興味深い取り組みを実践しているのが2019年に誕生したばかりのSANJO BEATERSだ。

その拠点は新潟県三条市。新潟県といえば米どころとして有名だが、きのこ類やすいかの一大産地でもあり、農業全体が盛んな県だ。SANJO BEATERSは「半農半バスケ」を掲げ、選手がバスケットに励みながら農作業をこなしている

チームを運営しているのは「ソーシャルファームさんじょう」というNPO法人。三条市の中でも特に旧下田村地域を農業とスポーツで活性化しようと立ち上がった団体で、買い上げた耕作放棄地でアスリートが農業に従事することで、若い世代にも農業の価値を知らしめるなどの狙いがある。過去にはサッカーやBMX、陸上競技などで実績があり、SANJO BEATERSはその流れをくんで誕生したというわけだ。

バスケが盛んな新潟で
課題は「知名度アップ」

現在チームの中心的役割を担っているのは、チームが設立された2019年から在籍し、今年キャプテンに就任した松岡一成。「遊びで出場した」という3x3の大会で全国大会の出場権を勝ち取り、SANJO BEATERSからオファーが届いたという。

チームでは選手がスポンサー営業やファンクラブ運営、若年層向けのスクール事業などにも直接関わっており、多忙な日々を送っている。それでも「自分の好きなことができる環境があるのはすごく幸せなこと」と松岡は言う。その松岡には特に、今の充実感をより強く感じる事情がある。

大学卒業時にかつてのJBL2クラブからの誘いを断って一般企業に就職した松岡は、その後2度にわたって急性骨髄性白血病を発症。寝たきりの生活から骨髄移植を経て社会復帰を果たした時、松岡の胸中に「もう一度バスケに熱中したい」という想いがふつふつと沸き上がった。SANJO BEATERSからのオファーが届いた時、松岡は東京都内の企業から内々定を受けていたがそれを断り、全く縁のなかった三条市に移住している。

「突然このリーグに入ったわりには、ずっとプロでやってきている選手ともそこそこ張り合えた。もう少し頑張って体を作れば、もっと高いレベルでプレーできる」とバスケットで手応えを感じる一方、地域住民に頼んで座学でも農業を学ぶなど、どちらもおろそかにすることなく「半農半バスケ」に全力で取り組む松岡。「つないでもらった命でこうしてまた好きなことができるのはありがたい。今の環境でできる限りの努力をしたいし、三条から世界を目指すことが支えてくれた人たちへの恩返しにもなると思います」と決意を新たにしている。

現状の課題はチームの知名度アップ。県内には国内トップリーグのBリーグとWリーグのクラブがあり、地元の三条高校はインターハイ優勝の経験もある。SANJO BEATERSも存在感を示すべく「アルビレックスさんとも交流の機会をうかがっています」と松岡は語る。その熱が三条市から県内全域、そして日本国中に伝わっていくことを期待したい。

地域とともに歩む3x3クラブ 行政、メディアを巻き込みバスケ掘り起しに着手~TRYHOOP OKAYAMA

3x3を足がかりにBリーグに
参入したレアケース

大会優勝経験こそまだないものの、TRYHOOP OKAYAMAは3x3の国内プロリーグ発足2年目に参入し、存在感を示し続けているチームの1つ。5人制バスケットのBリーグから3x3に参戦するクラブはいくつかあるが、TRYHOOP OKAYAMAは逆に3x3を足がかりに「トライフープ岡山」としてBリーグに参入したレアケースとなった。

チームを立ち上げた中島聡は、岡山大学卒業後に地元・大阪で薬剤師として働きながら5人制プロクラブの練習生となったが、そこでプロ契約を勝ち取ることはできなかった。岡山という土地を気に入っていた中島は、当時まだバスケットの土壌がなかった岡山を盛り上げるべく、岡山に戻って若年層向けのスクールを立ち上げ、ほどなくしてチーム代表兼選手として3x3参戦を決意。これがチーム設立の経緯だ。

設立初年度から選手として在籍している比留木謙司は、プロ選手としてのキャリアを歩み始めた当初からクラブマネージメントに興味があったといい、入団すると中島とタッグを組んで運営面にも注力。ただ、当初はBリーグ参入を目指すことは念頭になかったという。その後のチームの規模拡大のきっかけとなった出来事が、設立2年目にあったと比留木は振り返る。

「地元テレビ局の協力もあって、イオンモール岡山という大きな商業施設で試合を開催することができたんです。2日間で何万人という方の目に触れる機会ができて、評判も良かったんですよ。ここからメディアや行政が注目してくれて、プロとしての扱いを受けるようになったんです。そのことに僕と中島は可能性を感じて、これだけ地元が後押ししてくれるのであればいけるところまでいこうと、Bリーグ参入を目指すことになりました。後押しがあったからこそ、僕らも岡山にバスケットの灯をつけようと思った。地域と良い関係を築けていることは間違いないです」

ユース層が流出しない受け皿を岡山に作る

前述の通り、もともと岡山にはバスケットの土壌がなく、国内トップリーグのクラブもなかった。中島はまず、岡山に受け皿を作ることを重視していると比留木は証言する。

「岡山は中学までは強いのに、その先になると選手は県外に出てしまう。彼らにしても、大学までの7年間を勝ち抜かなければプロにはなれない。彼らが帰って来る場所、あるいは岡山でバスケットを続けていればプロになれるかもしれないと思える場所を作ることが大事だし、選手じゃなくてもバスケットに携われる受け皿を作りたいという中島の考えで、今クラブの社員を増やしているところです」

2019年には岡山市に加えて津山市もホームタウンに認定。また、県内に拠点を持つ他競技のトップクラブと連携して、県全体にチームの周知を図っている段階でもある。比留木は「僕が突拍子もないことを言っても面白がってくれる。一度受け入れるとコミットしてくれる」と岡山の県民性を分析。それは比留木個人だけでなく、クラブとしての実感でもある。地域の後押しを受け、TRYHOOP OKAYAMAのバスケットの土壌作りはどんどん加速していくに違いない。

地域に密着したネットワークを生かした日本郵政の取り組み
ゴールボール体験会の様子(豊橋市)

「競技の発展に貢献したい」
とスポーツをサポート

今やどのスポーツもユニフォームにスポンサーロゴがつき、各競技の日本代表も企業の協賛を受けて戦う時代になった。国内トップレベルともなれば、企業の支援なくして成り立たないと言っても過言ではない。

その中で、日本郵政グループもスポーツの支援に意欲的な企業だ。2019年までは7人制も含めたラグビー男女日本代表を2年間サポートしたほか、2019年から日本ゴールボール協会のオフィシャルパートナーとなり、パラ卓球界の第一人者である別所キミヱを支援。また車いすテニスの有望株である大谷桃子にはグループ会社がサポートしている。

その理由について、日本郵政の担当者は「これから発展性のある競技の魅力をより多くの方に知っていただく機会を作ることで、弊社グループのイメージ向上に加えて競技の発展にも貢献したいという想いです」と語る。

日本郵政 オリンピック・パラリンピック室 池辺恭平さん

具体的には、金銭的な支援だけでなく、社員を大会のボランティアスタッフや各地域での審判講習会に派遣すること、競技体験のイベントを開催することなども支援に含まれる。大都市圏以外では住民が競技と接点を持つ機会も少なく、「そういったイベントを行って、少しでも地方のお客様に興味を持っていただくということも支援になると思います」と地域に根差した活動を重視している。

全国にある約2万4千の郵便局をベースに
お客様の生活に寄り添う

その根底にあるのは、日本郵政が全国に約2万4千の郵便局を持つ、地域に密着した企業であるという事実。「経営理念に"地域のお客さまを支援し、お客さまの幸せを目指します"とあるとおり、弊社グループは創業以来、地域に根差して生活をお支えする企業」と担当者が言うように、郵政事業は人々の暮らしの中で小さからぬ役割を果たしてきた。それを踏まえ、「スポーツは生活の一部であり、スポーツを支えることはお客様の生活に寄り添うこと。競技に実際に触れ、それがライフワークになる方もいらっしゃると思いますので、そのお手伝いができれば」と担当者は力説する。

地域に根差した企業ゆえの強みも、日本郵政にはある。全国各地にある郵便局がネットワークとして機能し、支社から各地でのスポーツに関する多くの情報が寄せられているとのこと。来年に延期された東京2020パラリンピックにおいて、ゴールボールのリトアニア代表のホストタウンになっている愛知県豊橋市が機運を高めようとしているという情報を得て、同市でゴールボールのイベントを開催した実績もあるという。

社内に女子陸上部も抱えている日本郵政は、「引き続き"スポーツ"という観点から、お客様の健康増進や生きがいを増やすといったところで生活に寄り添っていきたい」としている。中でも、東京2020オリンピックから正式種目となる3x3(3人制バスケットボール)に関しては「一緒に成長したい。日本郵政が入り口になることで3x3のファンが増え、3x3のファンの方にとっても日本郵政がより身近な存在になればと思います」と、大きな期待を寄せている。

日本郵便は、東京2020オリンピックの各競技参加国のホストタウンになっている自治体と連携し、地域の小学生が選手宛てに手紙を書く取り組みを実施。すでに5万通が寄せられているという。スポーツと地域をつなぎ、人々の暮らしをより豊かにする日本郵政グループにかかる期待は大きい。

日本郵政グループ女子陸上部による
陸上教室の様子
(仙台市)
車いすテニス体験会の様子(いわき市)
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