3x3 男子日本代表の現在地 ジャンルの域を超えた強化体制確立 群雄割拠の"世界"を向こうに準備急ぐ

3人制と5人制の垣根を越えて、3x3男子日本代表は強化に邁進している。2013年に始動した男子代表は、これまで3x3のプレー経験が豊富な国内ランキングの上位選手を中心に選考を行っていたが、強化責任者に就任したトーステン・ロイブル氏の下、2019年より新たな試みを実施。国内ランキング1位の落合知也(TOKYO DIME/越谷アルファーズ)を筆頭とした3人制のトッププレイヤーたちだけではなく、5人制のプロバスケットボールリーグ「Bリーグ」でプレーする選手を数多く招集。過去最大級の代表候補強化合宿を皮切りに、日の丸をつけるメンバーを選抜していった。そして昨年6月のFIBA 3x3 W杯には落合、小松昌弘(TOKYO DIME)の国内ランキングでトップ10に入る2人と、Bリーガーである小林大祐(UTSUNOMIYA BREX.EXE/茨城ロボッツ)と保岡龍斗(秋田ノーザンハピネッツ)の4人で出場。それ以降もBリーグのレギュラーシーズンの中断期間を利用するなどして、代表チームとして初めて複数回の国内合宿を開催した。5人制の代表経験があるアイラ・ブラウン(大阪エヴェッサ)や、橋本拓哉(同)、永吉佑也(京都ハンナリーズ)を追加招集して、チームの土台作りを進めている。

3x3男子日本代表の主力選手たち

落合知也 TOKYO DIME/越谷アルファーズ 小松昌弘 TOKYO DIME 小林大祐 UTSUNOMIYA BREX.EXE/茨城ロボッツ 保岡龍斗 秋田ノーザンハピネッツ

男子日本代表のストロングポイント

「試合前の準備」
「試合中の戦術遂行力」

新たなメンバーを加えて形作る男子代表は今後、より鮮明な姿になっていくだろうが、これまでの国際大会を見ると、すでに強みとなる部分がうかがい知れる。ひとつは"遂行力"だ。どうやって相手に勝つのか、試合前の入念な準備に基づき、それを10分間コートでやり通す力である。先のW杯では、国内合宿や海外遠征を経て、4人(落合、小松、小林、保岡)が初めて迎えた大きな大会であったにも関わらず、初戦で強豪・ラトビアに敗れたものの、終盤にリードを奪うなど勝利の可能性を見出した。畳みかけるようなテンポの速い攻撃で、W杯の銀メダリストになるほどのチームを前にして、日本は激しいプレッシャーをかけるディフェンスをコンセプトに、失点を最小限に抑えるロースコアゲームへ持ち込んだ。落合はW杯のあと、「ラトビア戦は代表チームのスタッフが最高のスカウディングをしてくれて、彼らのおかげで良い戦い方ができました」と振り返る。また小松も次のように大会について語っていた。「伸びしろはまだまだあったチームでした。オフェンスで課題は残りましたが、ディフェンスは意思疎通ができて、それぞれができる範囲のことを120%できたと思います」。準備期間は決して長くなかったが、やるべきことを4人が理解して、チームが一丸となって戦っていた。

「2ポイントシュート」の成長

もうひとつの武器は、"2ポイントシュート"が勝利を引き寄せる武器になること。W杯を初めて経験したBリーガーたちはシュート力に定評があり、怪我人が出て3人で戦いながらも勝利を収めたポーランド戦で保岡はチーム最多4本の2ポイントシュートを決める活躍を見せた。落合や小松も年々、外からのシュート力を高めており、3人制の所属先であるTOKYO DIMEで出場した国際大会では、試合を決定づけることもあった。さらに追加招集の橋本はBリーグで3ポイントシュート成功率(2019-2020シーズン)が4位と精度が高く、アウトサイドから思い切りシュートが打てるよう、リバウンドに強いブラウンや永吉を合宿へ呼んでいることも見逃せない。日本は世界に出れば体格で劣るだけに、ここを磨くことで、勝つチャンスはさらに広がっていく。

5人制に比べ、アウトサイドの価値が高い3x3

世界ランキングに見る勢力図

しかし一歩ずつ強化を進める男子代表であるが、世界ランキングは12位。強豪国と肩を並べるにはまだ道半ばだ。年齢制限のない代表チームとしては、2018年のFIBA 3x3 アジア杯での銅メダル獲得が最高位。W杯は過去4度出場したが、一度も決勝トーナメントにはたどり着けていない。


男子チーム 世界ランキング

現在、国際舞台でこの競技をリードするのはヨーロッパ勢であり、世界ランキング1位のセルビアだ。W杯は2012年に世界選手権として初めて開かれてから昨年まで6度あったが、彼らはそのうち4度の優勝を誇る。その背景には、FIBA 3x3ワールドツアーというクラブチーム世界一を決めるツアー大会の存在がある。強豪国で活躍する代表選手は、クラブの一員としてこの舞台に出場することで実力と経験値を高めて、母国の代表を兼務することが多い。セルビアはここに参戦するクラブが世界最多で、その中でもファイナルと呼ばれるツアー大会のシーズン優勝決定戦を4度制覇したノビサド、クラブ別の世界ランキングで世界1位のリマンの選手たちによって、ナショナルチームが結成されている。3人制の戦い方を熟知し、相手の守備を崩してからノーマークに近い状態で得点を奪うことに長け、勝負所でシュートを決めきる精神的な強さも印象的だ。そしてワールドツアーを転戦する強豪クラブが多いロシア(世界ランキング3位)、スロベニア(同4位)、ラトビア(同5位)、オランダ(同6位)らがセルビアに負けまいと、しのぎを削ってきた。

ただ、この流れに変化も訪れている。バスケットボールの本場アメリカの台頭だ。2019年のW杯では欧州列強を破って、初優勝を手にした。そして、この要因はやはり、ワールドツアーで力をつけたことである。W杯の彼らは、元NBAプレイヤーを擁し、高いシュート力を備えたプリンストンというクラブチームの選手たちが中心的な役割を果たした。ボールハンドリングなどの技術に優れ、身体能力に秀でた選手がそろうニューヨークハーレムという双璧も、同ツアーで好成績を収めるなど、アメリカは最新の世界ランキングで2位へ上り詰めている。さらにアジアへ目を向けても、モンゴル(世界ランキング9位)は同国代表に名を連ねる選手たちによってクラブチームを編成。ワールドツアーを転戦して、アジア勢で最高位を記録するなど、結果を出している。

東京2020オリンピックへの強化は?

背中を追いかけなければいけない強豪国は多いのは事実だ。それでも日本の代表候補選手たちも今後、国際大会を十分に戦って、経験を積んでいくことができれば、ライバルたちにどんどん近づいていくだろう。落合、小松、小林の3人は2019年のワールドツアーへ出場、最高峰の3x3を体感してきた。落合は常にそこで得た経験は「代表へ還元できる」と話しており、「バスケットボールという競技で日本人は高さや体格が課題になると思いますが、3x3は本当に(海外勢と)戦える手応えがあります。しっかりとディフェンスをやり抜き、外角のシュートを決めることで、どこが相手でも勝てると思います」と語っている。彼らのように世界トップレベルを知る選手たちが増えていくことで、国際大会の表彰台に立つ光景が見えてきそうだ。

※記載のランキング(国別、チーム別、個人別)、年齢、所属チーム等はすべて2020年7月31日時点に基づく

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